田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

番長襲名/ガントレット5 麻屋与志夫

2010-03-28 03:55:59 | Weblog
part11 番長襲名/ガントレット5 栃木芙蓉高校文芸部(小説)


54

番長が意識を失うまで、倒れるまで気づかっていた仲間だ。
その副番の連中が、あろうことか番長に群がってきた。
「目を覚ませ。操られている。これは番長だ。おまえらのアタマだ」
番長の腰にささった槍を抜きたいのだが、出血がこわい。
「番長。しつかりして。いま石原をよぶから。知美さんに連絡するから」
龍之介は携帯をしながら、
操られている副番たちから番長を守った。
「どうしてこんなことをするんだ」
下館に龍之介は疑問をたたきつけた。
襲われる側には、襲われる理由がわからない。
攻めこむ側には、攻めこむ口実があるのだろう。
でも、応えはもどってこない。

番長に噛みつこうとした副番の足を剣で削いだ。
ばたっとボーリングのピンのようにみごとに倒れた。
こいつらもう人間ではないのか。
もとに戻すことはできないのか。
もとに戻れた時のことをかんがえると、
深く傷つけるわけにはいかない。
「番長。植木さん。目をさまして」

「もう、これまでね。容赦はしないよ」
文子の声が裏返ったようにひびく。
大沢と下館。
吸血鬼は性懲りもなく悪態をつきながら文子を攻め立てていた。
冷酷な眼差しで文子がふたりを睨んだ。
あたりの空気がきゅうに冷えた。
花冷えではない。
酷寒にもどったようだ。
ちらちらと雪が舞っている。
いやサクラの飛花だ。
花びらまで凍てついている。
一瞬文子の姿がゆらいだ。
消えたように見えた。

「はじめからこうすればよかったのよ」
文子の声だけが寒気の中で響いた。
ビュと矢がとんだ。
大沢と下館の心臓に銀の矢がつきたっていた。
「成敗」
鞭が銀色にきらめいた。
ふたりの首が切りおとされた。
文子の姿が、凄惨な悲しみを秘めた立ち姿がそこにはあった。
これが監察官の技なのか。



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