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都電の通過するレトロな音がしている。
雑司ヶ谷駅が近いのだろう。
墨の匂いは途切れがちだ。
時々立ち止まって……かすかな匂いを辿らなければならない。
これもレトロな商店街をぬけると廃ビルがニョキッと夜空に立っている。
周りは住宅地だからその荒廃したビル風景とはミスマッチだ。
「このビル知っているよ。
テレビで見た。
霊園にある墓地から小泉八雲の幽霊がでる。
琵琶の音が聞こえる。
夏の特番で「怪談を体験できるスポット」として紹介されていた」
ビルの外壁にくの字、
くの字に見える赤さびた非常階段がある。
錆のふき出した建造物なので内部までスケルトン――透けている。
ヒトの隠れられる部屋などない。
せっかくここまでたどりついたというのに。
翔子はあせった。
「これでアノ階段を上らなくてすむわ。わたし高イトコ苦手なの」
百子が翔子の緊張した顔に話しかける。
そうだ。
翔子はいま別れてきたばかりの菜々美にメールをおくる。
どこかでかすかに携帯の着メロがなっている。
菜々美が信子を呼びだしてくれている。
百子と翔子はかすかな着メロを、
発信音をたよりに走りだした。
地下への階段のわきに発信源の携帯はあった。
「菜々美さん、ありがとう。
どうやら敵の隠れ家がわかったみたい」
信子の携帯をひろって翔子は菜々美に話しかけた。
「信子とカレンさんは、救いだすから……安心して」
階段の入り口は鉄の鎖で閉鎖されていた。
ふたりはくジャンプして飛び越す。
降りるに従って異臭が強くなる。
「八雲の怪談の亡霊でもでそうね」
「わたしもそう感じる。だってミイマの元彼がよみがえっているのよ。平家物語りより古い話よ」
ふたりは恐怖をまぎらわそうと小声で話している。
でも話題はさらに恐怖をつのらせることになる。
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ビルの外壁にくの字、
くの字に見える赤さびた非常階段がある。
錆のふき出した建造物なので内部までスケルトン――透けている。
ヒトの隠れられる部屋などない。
せっかくここまでたどりついたというのに。
翔子はあせった。
「これでアノ階段を上らなくてすむわ。わたし高イトコ苦手なの」
百子が翔子の緊張した顔に話しかける。
そうだ。
翔子はいま別れてきたばかりの菜々美にメールをおくる。
どこかでかすかに携帯の着メロがなっている。
菜々美が信子を呼びだしてくれている。
百子と翔子はかすかな着メロを、
発信音をたよりに走りだした。
地下への階段のわきに発信源の携帯はあった。
「菜々美さん、ありがとう。
どうやら敵の隠れ家がわかったみたい」
信子の携帯をひろって翔子は菜々美に話しかけた。
「信子とカレンさんは、救いだすから……安心して」
階段の入り口は鉄の鎖で閉鎖されていた。
ふたりはくジャンプして飛び越す。
降りるに従って異臭が強くなる。
「八雲の怪談の亡霊でもでそうね」
「わたしもそう感じる。だってミイマの元彼がよみがえっているのよ。平家物語りより古い話よ」
ふたりは恐怖をまぎらわそうと小声で話している。
でも話題はさらに恐怖をつのらせることになる。
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