8
「クノイチ三段ギリ」
ガールズ三人がひと組となって吸血鬼の巨体に斬りこむ。
体が大きいというだけでまだ外見はかわっていない。
唯のヒトに見える。
上段の首をはね、胴ギリ、足を切る。
三等分されて、さすがの鬼もドウトたおれた。
再生されてはもともこもない。
ガールズはサッカーボールでも蹴るように、三方向に死体の部分を蹴り飛ばす。
凄惨な死闘の場がガールズの参戦で明るくなったから不思議だ。
ファンタジーの映像のように美しく様式化されたバトルフイルドとなる。
翔子と純はFと戦っていた。
ミイマの元彼だ。
ミイマとは戦わせたくない。
GGとも……。
藤原信行――どんな事情があったのか。
ミイマとどれほどの関係なのか。
知る由もない。それでも戦わせたくはない。
すくなくとも、元彼であることにはまちがいのないことなのだから……。
「なぜです。なぜミイマの邪魔をするのです」
「純、訊いても無駄よ。ひとの心の中のことは言葉では十分に説明できないの」
「でも、元彼ならなぜ……」
Fが鉤爪で襲いかかってきた。
牙のように鋭く、鋼のように夜目にも光っている。
あんな浅ましいお姿になって。
ミイマは父と戦いながら遠目にFをとらえていた。
そして、純と翔子の心づかいが痛いほどわかっていた。
わたしをFと争わせまいとして……。
「よそみするな」
父の声が耳もとをかすめた。
ボシュと拳銃音。
川田刑事がミイマの腕に噛みつこうとしていたBVに発砲した。
「こいつら、むかし塾で先生におそわったアレですか」
「そういうことだ」
「まさか本当にいるとはね――」
「みただけでは普通の人だろう。戦って初めてBVとわかる」
GGが鬼切丸で被弾したBVの首をはねる。
ジワッと青白い液が切り口からふきだした。
斬りおとされた首はニタッと不気味な笑いをみせている。
玲加が走ってきてその首を遠くにけり上げる。
虚空で雷鳴がとどろいた。
こんどこそ雷鳴だ。
稲妻がきらめく。
空のサンゴみたいだ。
ミイマの武器は鞭だ。
リルケのバラで作った。
バラの鞭を駆使してまわりのBVをなぎたおす。
「あんたらバラ園をおそうなんて無粋だよ。バラを讃えたリルケの詩でもヨンダラどうなの。こんなブスイな戦いを仕掛けてくる愚かさに気づくはずよ。アンタラのねらいは権力。人にとって代わってこの世で栄耀栄華をきわめたいのでしょう」
「それがわかっているのなら、邪魔するな」
Fの声が直接頭にひびいてきた。
懐かしいはずの声。
あれほどききたいと思っていた声。
千数百年もの眠りの中でききたいと希望していた声だ。
もしGGとの心の交流がなかったら。
若きGGとの出会いがなかったら。
まだ、きくことを望みつづけたはずの声が耳もとでひびいている。
憎悪がこめられている。
百子とガールズは演武でもしているように鮮やかだ。
中空に跳ぶ。
大地に伏せる。
斬る。
走る。
斬る。
飛ぶ。
跳ねる。
BVは下半身の攻撃に弱い。
さすが高言しただけのことはある。
BVとの戦いは、これがはじめてではない。
大江山の鬼と戦った。
戸隠山の鬼と戦った。
それらの経験が生かされている。
彼女たちが先祖から受け継いだ戦法。
太刀筋にすべてが加味されている。
さすがクノイチ48のツワモノ。
アレっ。ツワモノ、この言葉は女性には使えないのかな? さすが美少女クノイチ48とトトノエマスカ。
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「クノイチ三段ギリ」
ガールズ三人がひと組となって吸血鬼の巨体に斬りこむ。
体が大きいというだけでまだ外見はかわっていない。
唯のヒトに見える。
上段の首をはね、胴ギリ、足を切る。
三等分されて、さすがの鬼もドウトたおれた。
再生されてはもともこもない。
ガールズはサッカーボールでも蹴るように、三方向に死体の部分を蹴り飛ばす。
凄惨な死闘の場がガールズの参戦で明るくなったから不思議だ。
ファンタジーの映像のように美しく様式化されたバトルフイルドとなる。
翔子と純はFと戦っていた。
ミイマの元彼だ。
ミイマとは戦わせたくない。
GGとも……。
藤原信行――どんな事情があったのか。
ミイマとどれほどの関係なのか。
知る由もない。それでも戦わせたくはない。
すくなくとも、元彼であることにはまちがいのないことなのだから……。
「なぜです。なぜミイマの邪魔をするのです」
「純、訊いても無駄よ。ひとの心の中のことは言葉では十分に説明できないの」
「でも、元彼ならなぜ……」
Fが鉤爪で襲いかかってきた。
牙のように鋭く、鋼のように夜目にも光っている。
あんな浅ましいお姿になって。
ミイマは父と戦いながら遠目にFをとらえていた。
そして、純と翔子の心づかいが痛いほどわかっていた。
わたしをFと争わせまいとして……。
「よそみするな」
父の声が耳もとをかすめた。
ボシュと拳銃音。
川田刑事がミイマの腕に噛みつこうとしていたBVに発砲した。
「こいつら、むかし塾で先生におそわったアレですか」
「そういうことだ」
「まさか本当にいるとはね――」
「みただけでは普通の人だろう。戦って初めてBVとわかる」
GGが鬼切丸で被弾したBVの首をはねる。
ジワッと青白い液が切り口からふきだした。
斬りおとされた首はニタッと不気味な笑いをみせている。
玲加が走ってきてその首を遠くにけり上げる。
虚空で雷鳴がとどろいた。
こんどこそ雷鳴だ。
稲妻がきらめく。
空のサンゴみたいだ。
ミイマの武器は鞭だ。
リルケのバラで作った。
バラの鞭を駆使してまわりのBVをなぎたおす。
「あんたらバラ園をおそうなんて無粋だよ。バラを讃えたリルケの詩でもヨンダラどうなの。こんなブスイな戦いを仕掛けてくる愚かさに気づくはずよ。アンタラのねらいは権力。人にとって代わってこの世で栄耀栄華をきわめたいのでしょう」
「それがわかっているのなら、邪魔するな」
Fの声が直接頭にひびいてきた。
懐かしいはずの声。
あれほどききたいと思っていた声。
千数百年もの眠りの中でききたいと希望していた声だ。
もしGGとの心の交流がなかったら。
若きGGとの出会いがなかったら。
まだ、きくことを望みつづけたはずの声が耳もとでひびいている。
憎悪がこめられている。
百子とガールズは演武でもしているように鮮やかだ。
中空に跳ぶ。
大地に伏せる。
斬る。
走る。
斬る。
飛ぶ。
跳ねる。
BVは下半身の攻撃に弱い。
さすが高言しただけのことはある。
BVとの戦いは、これがはじめてではない。
大江山の鬼と戦った。
戸隠山の鬼と戦った。
それらの経験が生かされている。
彼女たちが先祖から受け継いだ戦法。
太刀筋にすべてが加味されている。
さすがクノイチ48のツワモノ。
アレっ。ツワモノ、この言葉は女性には使えないのかな? さすが美少女クノイチ48とトトノエマスカ。
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