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翔子が案内した。
百人町から追いかけてきた。
Vとテロリストの逃げこんだ場所。
あの、廃ビルだった。
あの廃ビルの地下にある飲み屋横丁。
廃ビル。偽装と翔子にはおもえてきた。
あいかわらずの賑わい。
古びた引き戸に貼られた。
コピー。宣伝文句。
濃厚ワイン。
新鮮ワイン。
とりたてしぼりたてだよ!!
純生ワイン。
「エゲツナイ。Vらしいコピーだな」
翔子がもらしたと同じ感想を父が口にした。
あのときは、百子とふたりだった。
いまは、父の勝則のチームの道案内だ。
異能部隊の面々とちがう。
ありきたりの服装だったのがよかった。
白人、だけでなく日本人も交じっている混成チームなのがよかった。
そこへきてGGとミイマ。純。
路地から路地へと酔客を装って歩く。
目立たなかった。
「このさきにゲートがあるの」
父に話しかけた。報告するような口調になる。
「わたしがゲートあけさせるね」
勝則が指でサインをたす。チームが遅足となる。
歩調をゆるめる。翔子から距離を置く。
門衛をかねた少女がいた。
翔子はなれたものでニコニコ笑いながら……。
「きょうは、イラついてるんだ。わたし自傷願望があるみたい」
この前来たとき、教わったとおりのセリフを言ってみた。
話しながらIDカードと赤のアミュレットを提示する。
「だつたら、どうぞ。どうぞおはいりになって」
カウンターのしたに隠しスイッチがあるらしい。
少女がもぞもぞと手を動かしている。
通路の奥。
百子と潜入したときは、ここから引きかえした。
MDGと親切にも真紅の文字がうきでた。
ピカピカよく光る扉・
最危険地帯。
扉がするすると開いた。
換気が悪いのかいやな臭いが鼻を突く。
ばっとかかえこまれた。
外に出て狩りをする度胸のないヤッラだ。
ずるずるひきずられる。
ゲートをくぐってくる。
迷える羊を待ち受けている。
モノグサなヤッラだ。
この音だ。
この音が扉越しにかすかにきこえていた。
あのとき。百子といっしょだった。
ヤッラガ餌を捕獲した。
引きずっていく音だった。
どおりで、不気味な音に感じたわけだ。
「娘、怖がるな。すこし血をすうだけだ」
「そうなの……」
「娘。スリルをもとめてくるビジターだな。初めてではないな」
「そうなのよ。あんたらとは、なんどもたたかっている」
「ゲッ。ハンターか? そうなのか」
勝則がVの目をくらますために発煙手榴弾を転がす。
Vは翔子を放り投げて逃げた。
Vには煙で見えない。
勝則の背後からついてくる者たちの動きや位置は隠蔽されている。
茶褐色の煙に遮られてなにもみえない。
必死で逃げまどうV。
「Vの一般市民なのだろう。逃げ足の速いことだ」
とGGが翔子の脇に立つ。
「翔子。やるな」
と純がほめてくれる。
純にほめられてうれしい翔子だった。
「異能部隊の百々(どど)隊長から連絡がはいった。彼らも、青山墓地の地下に突入した」
「よくよくアナクロなんだから。墓地の地下に街をつくるなんて古いのよね。すこしも進歩していないみたい」
とミイマ。
彼らを追い越していったチームの猛者たち。
前方ではやくも市街戦を展開している気配。
怒号。
銃声。
格闘の気配。
「いや……ここはVが築いた亞空間なのかもしれない」
GGがミイマの言葉をひきついでの発言だった。
そう言われてみれば、煙幕の中で街が奇妙に歪んでいるようだ。
足もとの側溝をなにが流れているのだろう。
生臭い。
腐臭もする。
足元から無数の手が伸びて……。
生臭い腐臭のなかに引きこまれそうだ。
今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
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翔子が案内した。
百人町から追いかけてきた。
Vとテロリストの逃げこんだ場所。
あの、廃ビルだった。
あの廃ビルの地下にある飲み屋横丁。
廃ビル。偽装と翔子にはおもえてきた。
あいかわらずの賑わい。
古びた引き戸に貼られた。
コピー。宣伝文句。
濃厚ワイン。
新鮮ワイン。
とりたてしぼりたてだよ!!
純生ワイン。
「エゲツナイ。Vらしいコピーだな」
翔子がもらしたと同じ感想を父が口にした。
あのときは、百子とふたりだった。
いまは、父の勝則のチームの道案内だ。
異能部隊の面々とちがう。
ありきたりの服装だったのがよかった。
白人、だけでなく日本人も交じっている混成チームなのがよかった。
そこへきてGGとミイマ。純。
路地から路地へと酔客を装って歩く。
目立たなかった。
「このさきにゲートがあるの」
父に話しかけた。報告するような口調になる。
「わたしがゲートあけさせるね」
勝則が指でサインをたす。チームが遅足となる。
歩調をゆるめる。翔子から距離を置く。
門衛をかねた少女がいた。
翔子はなれたものでニコニコ笑いながら……。
「きょうは、イラついてるんだ。わたし自傷願望があるみたい」
この前来たとき、教わったとおりのセリフを言ってみた。
話しながらIDカードと赤のアミュレットを提示する。
「だつたら、どうぞ。どうぞおはいりになって」
カウンターのしたに隠しスイッチがあるらしい。
少女がもぞもぞと手を動かしている。
通路の奥。
百子と潜入したときは、ここから引きかえした。
MDGと親切にも真紅の文字がうきでた。
ピカピカよく光る扉・
最危険地帯。
扉がするすると開いた。
換気が悪いのかいやな臭いが鼻を突く。
ばっとかかえこまれた。
外に出て狩りをする度胸のないヤッラだ。
ずるずるひきずられる。
ゲートをくぐってくる。
迷える羊を待ち受けている。
モノグサなヤッラだ。
この音だ。
この音が扉越しにかすかにきこえていた。
あのとき。百子といっしょだった。
ヤッラガ餌を捕獲した。
引きずっていく音だった。
どおりで、不気味な音に感じたわけだ。
「娘、怖がるな。すこし血をすうだけだ」
「そうなの……」
「娘。スリルをもとめてくるビジターだな。初めてではないな」
「そうなのよ。あんたらとは、なんどもたたかっている」
「ゲッ。ハンターか? そうなのか」
勝則がVの目をくらますために発煙手榴弾を転がす。
Vは翔子を放り投げて逃げた。
Vには煙で見えない。
勝則の背後からついてくる者たちの動きや位置は隠蔽されている。
茶褐色の煙に遮られてなにもみえない。
必死で逃げまどうV。
「Vの一般市民なのだろう。逃げ足の速いことだ」
とGGが翔子の脇に立つ。
「翔子。やるな」
と純がほめてくれる。
純にほめられてうれしい翔子だった。
「異能部隊の百々(どど)隊長から連絡がはいった。彼らも、青山墓地の地下に突入した」
「よくよくアナクロなんだから。墓地の地下に街をつくるなんて古いのよね。すこしも進歩していないみたい」
とミイマ。
彼らを追い越していったチームの猛者たち。
前方ではやくも市街戦を展開している気配。
怒号。
銃声。
格闘の気配。
「いや……ここはVが築いた亞空間なのかもしれない」
GGがミイマの言葉をひきついでの発言だった。
そう言われてみれば、煙幕の中で街が奇妙に歪んでいるようだ。
足もとの側溝をなにが流れているのだろう。
生臭い。
腐臭もする。
足元から無数の手が伸びて……。
生臭い腐臭のなかに引きこまれそうだ。
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