田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

クノイチ48、吸血鬼を追討する/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-24 22:04:22 | Weblog
4

 ルーマニア出身のVの紅子がいうのだからまちがいない。
 目の前の敵。吸血鬼にはみえない。
 とても、そうはみえない。
「病院、あとでいく。これがすんだら、すぐいくね」
 紅子は救急隊員によってキャリヤーで運ばれていった。

 ビルから逃走してきた敵を追って、床に開いた地下通路から勝則があらわれた。
「これだけではない。もっさと大勢いたはずだ」
 異能部隊が庭や屋内で戦っている。
 そのかず20ニンほどの敵と。
「これでは、すくないあとの敵は――」
 目前で火炎放射器の直射をあびた。
 ひげ面の男が燃え上がった。
 その絶叫にまじって、コンクリートの高い塀の外でも叫び声があがった。
「しまった。塀の外に抜ける通路もあった」
 勝則はようやくこの場に翔子も純もいないことに気づいた。
「うちの娘と翔子さんはすでに、外で戦っています」

 翔子と純が持ち場を離れた。
 道をへだてた日本家屋のほうに走り去った。
 GGとミイマもふたりの後を追うことにした。

 GGとミイマが道の向こうに見たものは。
 外人の集団と戦う、クノイチ。
 そこへ、門扉から百子があらわれて参戦した。
 百子が来たので、クノイチの少女たは活気をおびる。
 門扉はさらに翔子と純を噴出させた。

「みなん!! あとには引かないで。日名子さんのお父さんを、日本の副総理を自殺に追い込んだ敵よ」
 ミイマが中空を飛んで一気に敵のまっただなかに降り立った。
 降りた時には、バラ鞭で吸血鬼を前後左右に倒していた。
 青い血が飛び散り。
 青い粘塊の小さな山がそこかしこにできる。
 それでも吸血鬼が多すぎる。
 多すぎるが吸血鬼は追いたてられている。
 彼らを攻め立てる日本の若者の気迫に打たれている。
 GGが鬼切丸で首をはねた。
 勝則がきいたのは、この首をはねられた吸血鬼の悲鳴だった。

 門扉からぞくぞくとVセクションのメンバーが走り出てきた。
 走りながら拳銃を発射している。
 吸血鬼がゲームの世界みたいにバタバタ倒れる。
 かれらは――逃走をはじめた。
 吸血鬼ウオーク。
 速い。
 コマ落としの映像を見ているようだ。
 クノイチ48も負けてはいない。
 バイクを始動させると吸血鬼を追って、街に散っていった。



 今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。

にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へにほんブログ村


死にかけている紅子/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-24 07:36:20 | Weblog
3

雑居ビルに突入したVセクションのメンバーが発砲している。
SMGの連射音もする。
なにか判断のつかないような音もする。
テロリストが反抗しているのだろう。

翔子はそれらの音から遠ざかる。
全速力で走りだした。
〈翔子。翔子。翔子……〉紅子が呼んでいる。

コンクリートの塀に身をかがめ警戒しているクノイチ48。
その頭の百子が翔子に気づいた。

「翔子!」

おどろいている。
咎めている声。

「紅子、呼んでいる。紅子がわたしを呼んでいる。なんどもわたし危ないところ助けてもらった。彼女に助けてもらった。その彼女が呼んでいる。いかせて」
「それはいいけど」
百子はあとを麻衣にまかせた。
翔子と並んで百子も土足のまま廊下から部屋にとびこむ。

異能部隊の隊員が棒立ちになっていた。
ふりかえったものもいた。
なにもいわれない。
百子の父がゆびさした。
そのさきには肉片が散乱していた。
遺体は異常な破損。
異常な形で散らばっていた。
うっと吐き気がした。
翔子はこらえた。
百子は顔面蒼白。
「これは?」
「突入したときは――これだ。全員やられていた」

「残留思念がながれています。押し入れです」
思念をリーデングすることに優れた隊員がいる。
翔子もその思念の源流に気づいた。

フスマをあけるために近寄る。
散らばった人の骨。
肉片。内臓の悪臭。
――をもろともせず。進む。
隊員より素早くフスマにたどりつく。
「紅子!!」

そして、いた!?
紅子はいた。
腕。
肩。
足。
そして、ああ!!! 顔が――。

「来てくれると信じていた。翔子になら紅子の声きこえると信じていた」

翔子は絶句した。

「硫酸、かけられた。ヤッラ、わたしたちを溶かす気だった」
「すぐ、病院につれていってあげる」
翔子の声。やっと、紅子にかけられた言葉だ。
唇だけがやけただれた顔の中でマトモモだった。
「わたしを裏切りものだって。翔子のお父さんに携帯したのバレタの」
「そうだよ。紅子は裏切ったのでない。表にもどったのよ」

周囲では隊員が黒のビニール袋に遺体を納めていた。
その光景をみて紅子が嘔吐した。
「わたしも死にたい」
「Vらしくもない。そんな弱音はかないで。紅子はもっと強い。つよい女よ」
 
ふいに、畳が下からはねあげられた。
遺体を収集していた隊員。はねとばされた。
死体であった肉片。袋からまた散らばった。
アラブ系の顔。
そして人種のルッボ。
黒人。
白人。
黄色人種。
どっとあらわれた。
裏のビルからここに地下通路で逃げてきたのだ。

表も騒がしい。
クノイチの戦う声。
女の子のすこし甲高いだが勇ましい声。

「敵が逃亡をはかっている。ワルイ。翔子いくね」
百子が庭を抜けた。
門扉の向こうに消えた。
「わたしにかまわずいって。仇きとって。アイツラ吸血鬼よ」




今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。

にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へにほんブログ村