10
見られている。
コウモリに。
窓越しに。
それが美香には見えている。
コウモリの目が赤く光っている。
だがベッドだ。美香は――。
寝ている。
眠っている。これって金縛り。それとも予知夢?
迎え討たなければ。
となりのべッドの香世を起こさなければ。
でも声が出ない。
起き上がれない。布団が重い。お母さん。お父さん。誰か来て!!
起き上がれない。上から押さえつけられている。誰に? 姿は見えない。
起き上がれない。いま襲われたら助からない。誰か助けて。
もがいてもだめ。
声もでていないようだ。
グッショリと冷や汗をかいている。
「オネエ。オネエ。美香。夢だよん」
香世に起こされた。
「ああ、よかった。起こしてくれてありがとう。怖い夢だった」
夢のなかで恐怖を感じた。
目覚めてからも震えが止まらない。
「窓からコウモリがこちらを窺っていたの」
「こんなふうに」
香世の顔がコウモリの顔になった。
ジイッと赤い兇暴な目で美香をにらんでいる。
「やだぁ。香世からかわないで。へんなところで能力つかわないでよ」
いや、香世ではないらしい。
こころが読めない。
なんにもない。
からっぽ。
不気味なこころのもちぬしだ。
こんな人間がいるわけがない。
ただあるのはわたしにたいる憎しみ。
わたしを憎悪している。
危害をくわえようとしている。
コウモリだ。吸血鬼だ。どうしょう。
バリッと窓ガラスがわれた。
コウモリの群れが部屋いっぱいに侵入してきた。
部屋の中が真っ暗になる。
コウモリに喰いつかれた。
腕も脚も。
痛い。
ワタシの体が子ウモリのおなかに収まっていく。
「オネエ。オネエ」
「香世なの。香世なの。たすけてぇ」
絶叫した。
頬をばんとなぐられた。
「オネエ。わかる。夢をみていたのよ」
こんどこそ覚めた。
怖い夢から覚めた。
はじめて吸血鬼を斬った。
恐怖の粒子がまだ体にのこっていたのだ。
「怖い夢みるところは、かわいい普通の女の子ね」
香世がお姉さんにみたい。笑っている。
今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
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窓越しに。
それが美香には見えている。
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眠っている。これって金縛り。それとも予知夢?
迎え討たなければ。
となりのべッドの香世を起こさなければ。
でも声が出ない。
起き上がれない。布団が重い。お母さん。お父さん。誰か来て!!
起き上がれない。上から押さえつけられている。誰に? 姿は見えない。
起き上がれない。いま襲われたら助からない。誰か助けて。
もがいてもだめ。
声もでていないようだ。
グッショリと冷や汗をかいている。
「オネエ。オネエ。美香。夢だよん」
香世に起こされた。
「ああ、よかった。起こしてくれてありがとう。怖い夢だった」
夢のなかで恐怖を感じた。
目覚めてからも震えが止まらない。
「窓からコウモリがこちらを窺っていたの」
「こんなふうに」
香世の顔がコウモリの顔になった。
ジイッと赤い兇暴な目で美香をにらんでいる。
「やだぁ。香世からかわないで。へんなところで能力つかわないでよ」
いや、香世ではないらしい。
こころが読めない。
なんにもない。
からっぽ。
不気味なこころのもちぬしだ。
こんな人間がいるわけがない。
ただあるのはわたしにたいる憎しみ。
わたしを憎悪している。
危害をくわえようとしている。
コウモリだ。吸血鬼だ。どうしょう。
バリッと窓ガラスがわれた。
コウモリの群れが部屋いっぱいに侵入してきた。
部屋の中が真っ暗になる。
コウモリに喰いつかれた。
腕も脚も。
痛い。
ワタシの体が子ウモリのおなかに収まっていく。
「オネエ。オネエ」
「香世なの。香世なの。たすけてぇ」
絶叫した。
頬をばんとなぐられた。
「オネエ。わかる。夢をみていたのよ」
こんどこそ覚めた。
怖い夢から覚めた。
はじめて吸血鬼を斬った。
恐怖の粒子がまだ体にのこっていたのだ。
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香世がお姉さんにみたい。笑っている。
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