田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

夕日の中の理沙子(2) 麻屋与志夫

2009-01-03 23:17:10 | Weblog
幻覚


オリオン通り。

イベント広場。

いましも、Jazz の街にふさわしく街頭演奏がおこなわれていた。

ボウカルは地元出身の歌手、宇津木玲菜。

曲は、枯れ葉。

この季節にふさわしい選曲だった。

だが、玲菜はひたいから冷や汗をたらしていた。

それに気づいているものはいない。

マイクをもった手が震えていた。

アーケイド街の外では街は黄昏がれていた。

青い晩秋の空が濃い藍色にかわっていく。

ライトをあびて輝いている特設ステージの向こうの群衆。

おかしなひとたちが混じっている。

乱杭歯。

伸びた犬歯。

鉤爪。

吸血鬼の面。

まるでほんものみたいだ。

いやほんものだ。

まちがいない。

マイクをすててにげだしたかった。

不安は恐怖となった。

恐怖は冷や汗となってながれおちた。

「なにおびえているの?」

弄(いら)うような声がした。

いやからかっているわけではない。

のんびりとした声だったから。

そうおもってしまったのだ。

すごく無真面目な顔だ。

玲菜のすぐまえに陣取った観客のひとりだ。

「心配ないから。わたしは理沙子。あなたは守ってあげる」




one bite,please. ひと噛みして!! おねがい。
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ああ、快感。




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