田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

サムライvampire/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-01-27 10:02:31 | Weblog
8

「バカが。
永遠に生きられる体質にしてやったのに。
このチッポケナ島国のホームレスのくせに。
――なに考えている」

マスターが軽蔑のことばをはいた。

「吸血鬼にされて、夜毎に、はしたなく血を啜り。
――キサマラの奴隷にされるくらいなら。
人間として死ぬ。
そのどこがわるい」
「おう、玉砕ね。
サムライスピリット。
武士の心。
すばらしい。
プラボウ」

おひゃらかされている。
からかわれているのだ。
ほめられているわけではない。

「しょせんは、東と西。
菊と刀の世界は理解されないのか。
四国、九州の武力に屈した幕臣旗本の悔しさを。
歴史の裏に流れる怨念の渦を。
またもっと大きなスケールであじわうとわな。
長い生きはしたくないものだ」

闇法師の嘆きはしかしさわやかなものだった。
明治、大正、昭和、平成と。
怨念の凝り固まった鬼は。
――西の吸血鬼のような。
血まみれのどろどろとした怨念に。
支配されているわけではない。
松林をふきぬける風のような。
澄みきったこころをしていた。
浮浪者仲間のためならいつでも喜んで死ねる。
だからこそ、人で在りつづけるために。
――みずから死を選んだ留吉の気持ちは。
わかりすぎるほどわかる。

「残虐非道なマスターにはなんとでもいわせておけ。
留吉のこころは、この法師がしっかりうけとったからな」

ふたたび、闇法師はエイドリアンと対峙した。

「おう。
その目。
いやですね。
みんな逃げましょう。
この、日本の鬼さんは。
刺しちがえる――気だよ。
そんなの、いやですからね」

おかしな日本語とロックの音だけがのこった。
真正吸血鬼たちはフリットして消えていた。

(注。フリット。吸血鬼が軽く跳ぶように素早く動くこと)


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