日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
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◎本日の想像話「展開図」

2013年12月15日 | ◎これまでの「OM君」
いつからだろう自分の能力に気づいたのは。
一番古い記憶は3歳ぐらいの時のものだろうか。
木製のおもちゃの押し車。
押すと、押し車の前方で「ひよこ」がぴょこぴょこと飛び跳ねる。
突然、バラバラになった展開図が頭に浮かんだ。
押し車を中心にぐるりと回ると、頭の中の展開図も同じアングルで回転した。
それからは、ありとあらゆるものの部品と配置、組立順序が詳細にイメージ出来るようになった。
成長するにつれ、物理的な部品構成だけではなく、LSIのプログラムもイメージ出来るようになった。
その経験の積み重ねにより、現在、軌道エレベーターの設計に携わっている。

ある雨の朝。
通勤には駅からエヤバスに乗り換える。
道路と歩道は完全に分けられ、電磁リニヤと車両のホバーとの組み合わせにより、バスは滑るように進んでいく。
傘を差して人々が行き交っている。
目で追いながら物の展開図を読んでいく。
傘、ソリッドオーディオ、スマホ。
町中には最新機種があふれていて退屈しない。
一瞬の事だった。
「!」
展開図が開かない。
雨だというのに傘も差していない。
顔はよく見えなかった。
服でも靴でも傘でも、部品によって構成されている。
その人物は黒っぽい上下の服を着ていた。
それさえも展開図が開かなかった。

あわてて次の停留所で降りた。
傘を差し、来た道を走って戻る。
いない。

その日は一日中その男の事を考えていた。
何も見えない。
そんな事は今まで一度も無かった。
帰りの駅までのエヤバスの車中。
「!」
今度は女性。
またしても展開図が何一つ開かない。
停留所であわてて降りる。
走る。
いた。
今度は見つけた。
その女は公園の中に入っていく。

雨はやんでいた。
湿った土の地面をふみしめ後に続く。

後ろに人の気配。
おそるおそる振り返る。
約10人の人々。
どの人の展開図も見えない。

あまりのことに立ち尽くす。
人々は追い抜いていった。
その後にもぞくぞくと人が続く。
どの人にも展開図が見えなかった。

意味が分かったような気がした。
公園の中央。
巨大なタワーが見えた。
見えたというのはプログラムの構成が見える展開図的な見え方だった。
ふつうの人には見えないはずだ。
そして、そのタワーの構成部品は・・・
「人」だった。
正確には人型をした人ならず何か。
展開図が見えない人々は、一人一人が一つの部品だったからだ。
そのタワーは天空まで延び、突端は見えない。
思った。
まるで軌道エレベーターだ・・・
コメント
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