霊媒師 泉 北斎
客「亡くなったものを呼び寄せる霊媒師とお聞きしました」
北斎「はい、わたくし、泉 北斎は死んだものを呼び寄せます。おまかせください」
客「お願いします。僕の光子を呼んでください。お願いします。十六歳でなくなった光子をどうか呼び寄せてください」
北斎「あいわかりもうした。えーい」
北斎は両手を複雑にからませた後ぶつぶつと呪文を唱えた。直後、北斎は四つん這いになった。自分の右足で自分の耳の後ろをかいた。
客「ああ、その仕草は間違いなく光子だ。さあ、一緒に帰ろう」
客は北斎の首にトゲトゲがぐるりと埋め込まれた首輪をつけた。ぐいぐい引っ張って自分の車に押し込もうとする。
北斎「まてーい。北斎は人間。連れては帰れません。光子はこの首輪から想像すると、ブルドックだね」
客「涙が止まりません。まさしく光子そのものの動きでした。北斎先生。どうか一晩だけ光子になったまま一緒に帰ってはいただけませんか。報酬はいくらでもお支払いします」
北斎「いくらでも?例えばこの金額でも」北際は和服の袖から電卓を取り出して数字を入力する。
客「お支払いします」
北斎「あい分かりもうした」
再び北斎は荒い息使いになり、四つん這いになった。客は北斎に首輪をつけて車に乗せた。
客「ジョンが待ってるぞ。今夜はジョンと一緒の檻で光子もいられるな。ジョン喜ぶだろうな。土佐犬のジョン」
北斎は土佐犬の檻に入れられる前にお金をどうやってもらうか考えていた。