つけ麺屋にて
店長「どうしてそんな事するんですか」
女性は麺を口から垂らした状態で固まる。
店長「あなたですよ!」
女性は食べかけの麺を噛み切る。店長の剣幕に萎縮した女性は訳が分からないが、とりあえず謝ることにした。
女性「すいません……」
店長「すいませんってね、許せることと許せないことがありますよ」
女性「わたし、何かそんなに悪いことしたのでしょうか……」
店長「にどつけ禁止のルール知らないですか」
女性「にどつけ禁止?」
店長「そう、にどつけ禁止」
女性「それって串カツのやつでしょう。ここは「つけ麺」のお店。麺を二度以上スープに付けるのがだめってどういうことですか」
店長「串カツ?」
女性「そう、串カツ」
店長「二度漬け禁止って、串カツ限定のルールなの?知らなかったな。初耳だな。
世の中の人が二度漬け禁止って言っているから、そばもそうめんもトンカツのソースも刺身の醤油も全てかと思った。俺は一度しかつけない人生を送ってきた。ウナギの蒲焼きだってタレは一回しかかけないで焼いてもらうんだ。どうりで味が薄いと思った。しかし、そのポリシーを曲げるわけにはいかない。それは自分の人生を否定することになる。この店では俺がルールだ。麺をスープに浸すのは一回だけしか許可しない」
女性「めんどうくさいな。どうでもいいですけど、最初からそれならそうと言っといてもらえますか」
店長「失礼いたした」
女性「ちなみにあなた、書道の時はどうするの?すずりに筆をつけるのは一度のみなんでしょう」
店長「筆ペンで書くから問題ない」
女性「あっそう」