満員電車にて
乗客達は為すすべもなく、車両の加速、減速に身をゆだねている。ただ一人、慣性の法則を無視して逆の動きをするものがあった。
乗客「いたた、すいません、あなたぐいぐい押しつかってきますけど、その立ち方どうにかなりませんか」
逆の動きをするもの「すいません。どうにもなりません」
乗客「なんで?」
逆の動きをするもの「今朝のこの車両、何か気づきませんか?」
客「特に何も感じませんが、強いて言うと、この車両は新しいですね」
逆の動きをするもの「そうです。そのせいです」
乗客「どういうことですか」
逆の動きをするもの「私、こう見えて、この鉄道会社の社員なんです」
乗客「あなた、社員なの。ならなんで、そんな喧嘩を売るような事をするんですか」
逆の動きをするもの「わたしも不本意な現象でして……。会社としても仕方なく私服での業務を認めております」
乗客「あんた今、仕事中なの?」
逆の動きをするもの「そうです。しかも重要な仕事を現在遂行中でございます。できましたら、業務に専念させていただければありがたいのですが……」
乗客「ますます分からない。私にぐいぐい肘てつをくらわすのと、重要な業務と、どういう関係があるの」
逆の動きをするもの「実は私は今、加速、減速をになうトリガーを踏んでおります。このトリガーが何故か、運転席ではなくここに設置されており、運転手の声の指示をインカムで聞いております。私の体の傾きが加速、減速の入力をする設計になっております。その入力が皆様と逆の動きになってしまういう仕様でございます」
乗客「なんでそんな、おもしろ自転車みたいな設計にしたんだ」
逆の動きをするもの「分かりかねますが、強いて言うと、遊びこころ?」
乗客「はったおすぞ」