日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(165)「矛盾(韓非子)」の「述語論理」。

2019-04-09 19:39:52 | 訓読・論理学
(01)
楚人有鬻盾与矛者。
誉之曰、
吾盾之堅、莫能陥也。
又誉其矛曰、
吾矛之利、於物無不陥也。
或曰、
以子之矛、陥子之盾、何如。
其人弗能応也。
(02)
楚人有[鬻〔盾与(矛)〕者]。
誉(之)曰、
吾盾之堅、莫(能陥)也。
又誉(其矛)曰、
吾矛之利、於(物)無〔不(陥)〕也。
或曰、
以(子之矛)、陥(子之盾)、何如。
其人弗〔能(応)〕也。
(03)
楚人に[〔盾と(矛)とを〕鬻く者]有り。
(之を)誉めて曰く、
吾が盾の堅きこと、(能く陥す)莫きなり。
又た(其の矛を誉めて)曰く、
吾矛の利なること、(物に)於いて〔(陥さ)不る〕無きなり。
或ひと曰く、
(子の矛を)以て、(子の盾を)陥さば、何如ん。
其の人〔(応ふる)能は〕ざるなり。
(04)
[一]矛盾〈韓非子〉
(通 釈)
楚の国の人に、盾と矛を売り歩くものがあった。
(その人)がこの商品をほめて「わたしの盾の堅くてじょうぶなこといったら、これを突きとおすことのできるものはない。」と言い、
またその矛をほめて「わたしの矛の鋭利なことといったら、どんな物であろうと突きとおしてしまう。」と言った。
(これを聞いた)ある人が「あなたの矛でもってあなたの盾をついたら、どういうことになりますか。」と言った。
(盾と矛を売っていた)その人は何とも返事をすることができなかった。
(旺文社、漢文の基礎、1973年、31頁)
(05)
1        (1)  ∃x(盾x)&∃y(矛y)       A
 2       (2)  ∀x{盾x→ ∃y(矛y& 陥yx)} A
  3      (3)  ∀y{矛y→ ∃x(盾x&~陥yx)} A
1        (4)  ∃x(盾x)              1&E
1        (5)  ∃y(矛y)              1&E
   6     (6)     盾a               A
    7    (7)     矛b               A
 2       (8)     盾a→ ∃y(矛y& 陥ya)  2UE
  3      (9)     矛b→ ∃x(盾x&~陥bx)  3UE
 2 5     (ア)         ∃y(矛y& 陥ya)  58MPP
  3 7    (イ)         ∃x(盾x&~陥bx)  79MPP
     ウ   (ウ)            矛b& 陥ba   A
      エ  (エ)            盾a&~陥ba   A
     ウ   (オ)            陥ba       ウ&E
      エ  (カ)               ~陥ba   エ&E
     ウエ  (キ)           ~陥ba&陥ba   カオ&I
 2 5  エ  (ク)           ~陥ba&陥ba   アウキEE
 2357    (ケ)           ~陥ba&陥ba   イエクEE
1235     (コ)           ~陥ba&陥ba   57ケEE
123      (サ)           ~陥ba&陥ba   35コEE
 23      (シ)~{∃x(盾x)&∃y(矛y)}      1サRAA
 23      (ス)~∃x(盾x)∨~∃y(矛y)       シ、ド・モルガンの法則
 23      (セ) ∃x(盾x)→~∃y(矛y)       ス含意の定義
       ソ (ソ)~∃x(盾x)               A
       ソ (タ)~∃y(矛y)∨~∃x(盾x)       ソ∨I
        チ(チ)~∃y(矛y)               A     
        チ(ツ)~∃y(矛y)∨~∃x(盾x)       チ∨I
 23      (テ)~∃y(矛y)∨~∃x(盾x)       スソタチツ∨EE
 23      (ト) ∃y(矛y)→~∃x(盾x)       テ含意の定義
 23      (ナ) ∃x(盾x)→~∃y(矛y)&
             ∃y(矛y)→~∃x(盾x)       セト&I
従って、
(05)により、
(06)
(1)ある盾xが存在し、ある矛yが存在する。 と「仮定」して、
(2)すべてのxについて、xが盾ならば、あるyは矛であって、yはxを陥す。  と「仮定」して、
(3)すべてのyについて、yが矛ならば、あるxは盾であって、yはxを陥さない。と「仮定」すると、
(ナ)ある盾xが存在するならば、ある矛yは存在せず、
   ある矛yが存在するならば、ある盾xは存在しない。 といふ「結論」を、得ることになる。
従って、
(04)(06)により、
(07)
夫不可陷之楯與無不陷之矛、不可同世而立。
夫不〔可(陷)〕之楯與[無〔不(陷)〕之矛]、不[可〔同(世)而立〕]。
夫れ陥すべからざるの楯と、陥らざる無きの矛とは、世を同じくして立たつべからず。
といふ「主張」、すなはち、
「わたしの盾の堅くてじょうぶなこといったら、これを突きとおすことのできるものはない。」
「わたしの矛の鋭利なことといったら、どんな物であろうと突きとおしてしまう。」といった、「そのやうな盾と矛は、同時には、存在しない」。
といふ「主張」は、「述語論理(Predicate logic)」としても、「妥当(Valid)」である。

(164)「吾輩は猫である。」の「述語論理」。

2019-04-09 13:58:33 | 論理

(01)
1     (1) ∃x{吾輩x&猫x& ~∃y(名前yx)} A
1     (〃)あるxは吾輩であって猫であるが、名前は無い。 A
1     (〃)    吾輩は猫である。名前はまだ無い。   A
 2    (2)    吾輩a&猫a& ~∃y(名前ya)  A
 2    (3)    吾輩a                2&E
 2    (4)        猫a             2&E
 2    (5)            ~∃y(名前ya)  2&E
  6   (6) ∃x{タマx&     ∃y(名前yx)} A
  6   (〃)あるxはタマであり、あるyはxの名前である。 A
  6   (〃)    タマには名前が有る。         A 
   7  (7)    タマa&     ∃y(名前ya)  A
   7  (8)    タマa&               7&E
   7  (9)             ∃y(名前ya)  7&E
 2 7  (ア)   ~∃y(名前ya)&∃y(名前ya)  59&I
 26   (イ)   ~∃y(名前ya)&∃y(名前ya)  67アEE
 2    (ウ)~∃x{タマx&     ∃y(名前yx)} 6アRAA
  2    (エ)∀x~{タマx&     ∃y(名前yx)} ウ量化子の関係
 2    (オ)  ~{タマa&     ∃y(名前ya)} エUE
 2    (カ)   ~タマa∨    ~∃y(名前ya)  オ、ドモルガンの法則
    キ (キ)   ~タマa                A
    キ (ク) ~∃y(名前ya)∨~タマa        キ∨I
     ケ(ケ) ~∃y(名前ya)             A
     ケ(コ) ~∃y(名前ya)∨~タマa        ケ∨I
 2    (サ) ~∃y(名前ya)∨~タマa        カキクケコ∨E
 2    (シ)  ∃y(名前ya)→~タマa        サ含意の定義
 2 7  (ス)           ~タマa        9シMPP
 2 7  (セ)     吾輩a&~タマa          3ス&I
 2 7  (ソ)     吾輩a&~タマa&猫a       4セ&I
 2 7  (タ)  ∃x(吾輩x&~タマx&猫x)      ソEI
 26   (チ)  ∃x(吾輩x&~タマx&猫x)      67タEE
1 6   (ツ)  ∃x(吾輩x&~タマx&猫x)      12チEE
1 6   (〃)あるxは吾輩であってタマではなく猫である。  12チEE
1 6   (〃)    吾輩はタマではないが、 猫である。  12チEE
従って、
(01)により、
(02)
(1)吾輩は猫である。名前はまだ無い。然るに、
(2)タマには名前が有る。      従って、
(3)吾輩はタマではないが、猫である。
といふ「日本語による推論」は、「述語論理による推論」としても「妥当(valid)」である。
然るに、
(03)
(01)に於いて、
F=吾輩(人称代名詞
G= 猫 ( 普通名詞 )
N=名前( 普通名詞 )
T=タマ( 固有名詞
とするならば、
1     (1) ∃x{Fx&Gx& ~∃y(Nyx)} A
 2    (2)    Fa&Ga& ~∃y(Nya)  A
 2    (3)    Fa               2&E
 2    (4)       Ga            2&E
 2    (5)           ~∃y(Nya)  2&E
  6   (6) ∃x{Tx&     ∃y(Nyx)} A
   7  (7)    Ta&     ∃y(Nya)  A
   7  (8)    Ta&              7&E
   7  (9)            ∃y(Nya)  7&E
 2 7  (ア)   ~∃y(Nya)&∃y(Nya)  59&I
 26   (イ)   ~∃y(Nya)&∃y(Nya)  67アEE
 2    (ウ)~∃x{Tx&     ∃y(Nyx)} 6アRAA
  2    (エ)∀x~{Tx&     ∃y(Nyx)} ウ量化子の関係
 2    (オ)  ~{Ta&     ∃y(Nya)} エUE
 2    (カ)   ~Ta∨    ~∃y(Nya)  オ、ドモルガンの法則
    キ (キ)   ~Ta               A
    キ (ク) ~∃y(Nya)∨~Ta        キ∨I
     ケ(ケ) ~∃y(Nya)            A
     ケ(コ) ~∃y(Nya)∨~Ta        ケ∨I
 2    (サ) ~∃y(Nya)∨~Ta        カキクケコ∨E
 2    (シ)  ∃y(Nya)→~Ta        サ含意の定義
 2 7  (ス)           ~Ta       9シMPP
 2 7  (セ)     Fa&~Ta          3ス&I
 2 7  (ソ)     Fa&~Ta&Ga       4セ&I
 2 7  (タ)  ∃x(Fx&~Tx&Gx)      ソEI
 26   (チ)  ∃x(Fx&~Tx&Gx)      67タEE
1 6   (ツ)  ∃x(Fx&~Tx&Gx)      12チEE
といふ「推論」は、「述語論理による推論」として「妥当(valid)」である。
然るに、
(04)
第1に、固有名詞をつぎの符号のひとつとして定義する。
     m,n,・・・・・
第2に、任意の名前をつぎの符号のひとつとして定義する。
     a,b,c,・・・・・
第3に、個体変数をつぎの符号のひとつとして定義する。
     x,y,z,・・・・・
第4に、述語文字をつぎの符号のひとつとして定義する。
     ,・・・・・
(E.J.レモン 著、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、176頁)
従って、
(03)(04)により、
(05)
「述語論理」の場合は「人称代名詞・普通名詞・固有名詞」の「区別」は、「不要」である。
然るに、
(06)
それでは、狭義の述語論理において究極的な主語となるものは何であろうか。それは「人間」というような一般的なものではない。また「ソクラテス」も述語となりうるし、「これ」すらも「これとは何か」という問にたいして「部屋の隅にある机がこれです」ということができる(沢田允茂、現代論理学入門、1962年、118頁)。
(06)により、
(07)
沢田允茂先生は、
「述語論理」は「普通名詞(人間)・固有名詞(ソクラテス)」の「区別」は、「不要」である。
と、されてゐる。
然るに、
(08)
「日本語に即した文法の樹立を」を目指すわれわれは「日本語で人称代名詞と呼ばれているものは、実は名詞だ」と宣言したい。どうしても区別したいなら「人称名詞」で十分だ。日本語の「人称代名詞」はこれからは「人称名詞」と呼ぼう(金谷武洋、日本語文法の謎を解く、2003年、40・41頁)。
従って、
(08)により、
(09)
金谷武洋先生は、
「日本語」は「人称代名詞(私、あなた 他)・名詞」の「区別」は、「不要」である。
と、されてゐる。
従って、
(05)(07)(09)により、
(10)
「述語論理」の場合は「人称代名詞・普通名詞・固有名詞」の「区別」は、「不要」である。
としても、そのこと自体は、「特別に、ヲカシイ」といふことには、ならない。