——「数時間前の記事(188)」の「続き」を書きます。―
(06)
② 莫民非其臣=
② 莫〔民非(其臣)〕⇒
② 〔民(其臣)非〕莫=
② 〔民にして(其の臣に)非ざる〕莫し=
② 民であって、其の(王の)臣民でないものはゐない=
② All the people are his retainers.
といふ「漢文・訓読・英訳」は、
② ∀x{民x→∃y[王yx&∀z(王zx→z=y)]}⇔
② すべてのxについて、xが民であるならば、あるyはxの王であって、すべてのzについて、zがxの王であるならば、zはyと同一人物である。
といふ「述語論理」に、相当する。
然るに、
(07)
② 莫民非其臣=
② 莫〔民非(其臣)〕。
に於いて、
② 莫=No
② 民=peaple
② 非=aren't
② 其=his
② 臣=retainers.
とするならば、
③ No people aren't his retainers=
③ No〔people aren't(his retainers)〕.
といふ「英文」を得ることになる。
然るに、
(08)
③ No people aren't his retainers.
③ Any people aren't his retainers.
④ All the people are his retainers.
といふ「英文」を、「グーグル翻訳」に掛けると、
③ 誰も彼の擁護者ではありません。
③ 誰も彼の擁護者ではありません。
④ すべての人々は彼の家臣です。
といふ「英文」を、出力する。
従って、
(07)(08)により、
(09)
② 莫民非其臣=
② 莫〔民非(其臣)〕。
に於いて、
② 莫=No
② 民=peaple
② 非=aren't
② 其=his
② 臣=retainers.
とするならば、
③ No people aren't his retainers=
③ No〔people aren't(his retainers)〕.
といふ「英文」を得ることになるものの、その一方で、
② 莫〔民非(其臣)〕。
③ No〔people aren't(his retainers)〕.
に於いて、
②=③ といふ「等式」が、成立しない。
従って、
(06)~(09)により、
(10)
② 莫民非其臣。
③ No people aren't his retainers.
に於いて、
② といふ「漢文」は、「論理学的」であるが、
③ といふ「英文」は、「論理学的」ではない。
(11)
④ 無不我好者=
④ 無〔不(我好)者〕⇒
④ 〔(我好)不者〕無=
④ 〔(我を好ま)不る者〕無し=
④ 私を好まない者はゐない。
(12)
(ⅰ)
1 (1)∀x{人x→~∃y(私y&~好xy)} A
1 (2) 人a→~∃y(私y&~好ay)} 1UE
3(3) 人a A
13(4) ~∃y(私y&~好ay) 23CP
13(5) ∀y~(私y&~好ay) 4量化子の関係
13(6) ~(私b&~好ab) 5UE
13(7) ~私b∨~~好ab 6ド・モルガンの法則
13(8) ~私b∨ 好ab 7DN
13(9) 好ab∨~私b 8交換法則
13(ア) ~~好ab∨~私b 9DN
13(イ) ~好ab→~私b ア含意の定義
13(ウ) ∀y(~好ay→~私y) イUI
1 (エ) 人a→∀y(~好ay→~私y) 3ウCP
1 (オ)∀x{人x→∀y(~好xy→~私y) エUI
(ⅱ)
1 (1)∀x{人x→∀y(~好xy→~私y)} A
1 (2) 人a→∀y(~好ay→~私y) 1UE
3(3) 人a A
13(4) ∀y(~好ay→~私y) 23MPP
13(5) ~好ab→~私b 4UE
13(6) ~~好ab∨~私b 5含意の定義
13(7) 好ab∨~私b 6DN
13(8) ~私b∨好ab 7交換法則
13(9) ~~(~私b∨好ab) 8DN
13(ア) ~(~~私b&~好ab) 8ド・モルガンの法則
13(イ) ~(私b&~好ab) アDN
13(ウ) ∀y~(私y&~好ay) イUI
13(エ) ~∃y(私y&~好ay) ウ量化子の関係
1 (オ) 人a→~∃y(私y&~好ay) 3エCP
1 (カ)∀x{人x→~∃y(私y&~好xy)} オUI
従って、
(12)により、
(13)
(ⅰ)∀x{人x→~∃y(私y&~好xy)}
(ⅱ)∀x{人x→∀y(~好xy→~私y)}
に於いて、
(ⅰ)ならば(ⅱ)であり、
(ⅱ)ならば(ⅰ)である。
従って、
(13)により、
(14)
(ⅰ)∀x{人x→~∃y(私y&~好xy)}
(ⅱ)∀x{人x→∀y(~好xy→~私y)}
に於いて、
(ⅰ)=(ⅱ) である。
従って、
(14)により、
(15)
(ⅰ)すべてのxについて、 xが人であるならば、あるyが私であって、尚且つ、xがyを好きではない。といふことはない。
(ⅱ)いかなるxであっても、xが人であるならば、すべてのyについて、xがyを好きではないのであれば、yは私ではない。
に於いて、
(ⅰ)=(ⅱ) である。
従って、
(15)により、
(16)
(ⅰ)すべての人は、私を好きでない。といふことがない。
(ⅱ)すべての人が、すべての人の中の、ある誰かを好きではないのであれば、その誰かは私ではない。
に於いて、
(ⅰ)=(ⅱ) である。
然るに、
(17)
④ 無不我好者=
④ 無〔不(我好)者〕⇒
④ 〔(我好)不者〕無=
④ 〔(我を好ま)不る者〕無し=
④ 私を好まない者はゐない。
といふことは、
(ⅰ)すべての人が、私を好きでない。といふことはない。
(ⅱ)すべての人が、すべての人の中の、ある誰かを好きではないのであれば、その誰かは私ではない。
といふことに、他ならない。
従って、
(11)~(17)により、
(18)
④ 無不我好者。⇔
④ 我を好ま不る者無し。
といふ「漢文訓読」は、
④ ∀x{人x→~∃y(私y&~好xy)}
④ ∀x{人x→∀y(~好xy→~私y)}
といふ「述語論理」に、相当する。
然るに、
(19)
④ 無不我好者。⇔
④ 我を好ま不る者無し。⇔
④ ∀x{人x→~∃y(私y&~好xy)}。
といふ「漢文・訓読・述語論理」は、「単なる否定」ではなく、「二重否定」である。
然るに、
(20)
④ Anybody doesn't like me.
といふ「英語」は、「単なる否定」であって、
⑤ Nobody doesn't like me.
といふ「英語」は、「二重否定」である。
従って、
(19)(20)により、
(21)
④ 無不我好者。⇔
④ 我を好ま不る者無し。⇔
④ ∀x{人x→~∃y(私y&~好xy)}。
といふ「漢文・訓読・述語論理(二重否定)」は、
⑤ Nobody doesn't like me.
といふ「英語(二重否定)」に相当する。はずである。
然るに、
(22)
このような用法は、特に英語で問題になる。たとえば、Nobody don't like me. (誰も僕を好いてくれない)や I don't know nothing. (僕は何も知らない)などがこれにあたる。このような言い方は2つの否定を意味する語句が対応しあって1つの否定表現を形作るもので、英語は本来はこのように否定文では否定形の語を一貫して使う否定呼応を用いる言語であった。すなわち、否定呼応を用いる言語では、二重に否定語を用いても単純にひとつの否定表現を作るだけであり、論理学的に見た場合は単なる否定である。しかし、否定呼応を用いない言語では、二重に否定語を用いることは論理学的に見るところの「否定」の否定であり、肯定である(ウィキペディア:二重否定)。
従って、
(21)(22)により、
(23)
⑤ Nobody doesn't like me.
といふ「英語」は、「形式」としては、「二重否定」であるにもかかはらず、「意味」としては、「二重否定」ではない。
従って、
(21)(22)(23)により、
(24)
④ 無不我好者。
⑤ Nobody doesn't like me.
に於いて、
④ といふ「漢文」は、「論理(学)的」であるが、
⑤ といふ「英文」は、「論理(学)的」ではない。
従って、
(10)(24)により、
(25)
② 莫民非其臣。
④ 無不我好者。
といふ「漢文」は、「論理(学)的」であるが、
③ No people aren't his retainers.
⑤ Nobody doesn't like me.
といふ「英文」は、「論理(学)的」ではない。