―「記事(167)」の「間違ひ」を、正します。―
(01)
① 虎求百獸而食之得狐=
① 虎求(百獸)而食(之)得(狐)⇒
① 虎(百獸を)求めて(之を)食ひ(狐を)得たり=
① 虎は、すべてのけだものをつかまえてはこれを食べていたが、(あるとき)狐をつかまえた。
といふ場合の、【百獸】といふのは、
【百獸】すべてのけだもの。あらゆる獸類(旺文社、漢文の基礎、1973年、40頁)。
従って、
(01)により、
(02)
① 虎求百獸而食之得狐=
① 虎百獸を求めて之を食ひ狐を得たり=
① 虎は、すべてのけだものをつかまえてはこれを食べていたが、(あるとき)狐をつかまえた。
といふのであれば、『虎は狐を食らふ。』
然るに、
(03)
1 (1) ∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)} A
2 (2) 虎a&∀y(獸y→求ay&食ay) A
2 (3) 虎a 2&E
2 (4) ∀y(獸y→求ay&食ay) 2&E
2 (5) 獸b→求ab&食ab 4UE
6 (6) ∃x∃y(虎x&狐y&獸y&得xy) A
7 (7) ∃y(虎a&狐y&獸y&得ay) A
8(8) 虎a&狐b&獸b&得ab A
8(9) 狐b 8&E
8(ア) 獸b 8&E
2 8(イ) 求ab&食ab 5アMPP
2 8(ウ) 食ab イ&E
2 8(エ) 虎a&狐b 39&I
2 8(オ) 虎a&狐b&食ab ウエ&I
2 8(カ) ∃y(虎a&狐y&食ay) オEI
2 7 (キ) ∃y(虎a&狐y&食ay) 78カEE
2 7 (ク)∃x∃y(虎x&狐y&食xy) キEI
1 6 (ケ)∃x∃y(虎x&狐y&食xy) 12クEE
従って、
(03)により、
(04)
(1)あるxは虎であって、すべてのyについて、yが獸であるならば、xはyを求めてこれを食らふ。 と「仮定」して、
(6)あるxは虎であって、あるyは狐であって獸であり、xはyを得る。 と「仮定」すると、
(ケ)あるxは虎であって、あるyは狐であり、xはyを食らふ。 といふ『結論』を得る。
従って、
(02)(03)(04)により、
(05)
① 虎求百獸而食之得狐=
① 虎百獸を求めて之を食ひ狐を得たり=
① 虎は、すべてのけだものをつかまえてはこれを食べていたが、(あるとき)狐をつかまえた。
といふ「漢文訓読」は、
② ∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}&∃x∃y(虎x&狐y&獸y&得xy).
といふ「述語論理」に、「翻訳」される。
然るに、
(06)
1 (1)∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)} A
1 (2) 獸b→∃x(虎x&求xb&食xb) 1UE
3 (3) ∃x∃y(虎x&狐y&獸y&得xy) A
4 (4) ∃y(虎a&狐y&獸y&得ay) A
5 (5) 虎a&狐b&獸b&得ab A
5 (6) 虎a A
5 (7) 狐b 5&E
5 (8) 獸b 5&E
1 5 (9) ∃y(虎x&求xb&食xb) 28MPP
ア(ア) 虎a&求ab&食ab A
ア(イ) 食ab ア&E
5 (ウ) 虎a&狐b 67&I
5ア(エ) 虎a&狐b&食ab イウ&I
5ア(オ) ∃y(虎a&狐y&食ay) エEI
1 5 (カ) ∃y(虎a&狐y&食ay) 9アオEE
1 5 (キ)∃x∃y(虎x&狐y&食xy) カEI
1 4 (ク)∃x∃y(虎x&狐y&食xy) 45キEE
13 (ケ)∃x∃y(虎x&狐y&食xy) 34クEE
従って、
(06)により、
(07)
(1)すべてのyについて、yが獸であるならば、あるxは虎であり、xはyを求めてこれを食らふ。 と「仮定」して、
(3)あるxは虎であって、あるyは狐であって獸であり、xはyを得る。 と「仮定」すると、
(ケ)あるxは虎であって、あるyは狐であり、xはyを食らふ。 といふ『結論』を得る。
従って、
(02)(06)(07)により、
(08)
① 虎求百獸而食之得狐=
① 虎百獸を求めて之を食ひ狐を得たり=
① 虎は、すべてのけだものをつかまえてはこれを食べていたが、(あるとき)狐をつかまえた。
といふ「漢文訓読」は、
③ ∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)}&∃x∃y(虎x&狐y&獸y&得xy).
といふ「述語論理」に、「翻訳」される。
従って、
(05)(08)により、
(09)
① 虎求百獸而食之得狐=
① 虎百獸を求めて之を食ひ狐を得たり=
① 虎は、すべてのけだものをつかまえてはこれを食べていたが、(あるとき)狐をつかまえた。
といふ「漢文訓読」は、
② ∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}&∃x∃y(虎x&狐y&獸y&得xy).
③ ∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)}&∃x∃y(虎x&狐y&獸y&得xy).
といふ、「ニ通りの、述語論理」に、「翻訳」される。
然るに、
(10)
(a)
1 (1) ∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)} A
2 (2) 虎a&∀y(獸y→求ay&食ay) A
2 (3) 虎a 2&E
2 (4) ∀y(獸y→求ay&食ay) 2&E
2 (5) 獸b→求ab&食ab 4UE
6(6) 獸b A
26(7) 求ab&食ab 56MPP
26(8) 虎a&求ab&食ab 37&I
26(9) ∃x(虎x&求xb&食xb) 8EI
2 (ア) 獸b→∃x(虎x&求xb&食xb) 69CP
2 (イ) ∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)} アUI
1 (ウ) ∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)} 12イEE
(b)
1 (1) ∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)} A
1 (2) 獸b→∃x(虎x&求xb&食xb) 1UE
3 (3) 獸b A
13 (4) ∃x(虎x&求xb&食xb) 23MPP
5(5) 虎a&求ab&食ab A
5(6) 虎a 5&E
5(7) 求ab&食ab 5&E
13 (8) 求ab&食ab 457EE
1 (9) 獸b→求ab&食ab 38CP
1 (ア) ∀y(獸y→求ay&食ay) 9UI
1 5(イ) 虎a&∀y(獸y→求ay&食ay) 6ア&I
1 5(ウ) ∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)} イEI
1 (エ) ∃x(虎x&求xb&食xb)→
∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)} 5ウCP
従って、
(10)により、
(11)
(a)∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}
(b)∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)}
に於いて、
(a)ならば(b)であるが、
(b)ならば(a)ある。ではない。
従って、
(11)により、
(12)
(a)∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}
(b)∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)}
に於いて、
(a)=(b) ではない。
従って、
(12)により、
(13)
① 虎求百獸而食之得狐=
① 虎百獸を求めて之を食ひ狐を得たり=
① 虎は、すべてのけだものをつかまえてはこれを食べていたが、(あるとき)狐をつかまえた。
といふ「漢文訓読」は、
② ∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}&∃x∃y(虎x&狐y&獸y&得xy).
③ ∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)}&∃x∃y(虎x&狐y&獸y&得xy).
といふ、「ニ通りの、述語論理」に、「翻訳」されるものの、その一方で、
② ∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}
③ ∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)}
に於いて、
②=③ である。
といふ、わけではない。
従って、
(04)(07)(12)により、
(14)
(a)あるxは虎であって、すべてのyについて、yが獸であるならば、xはyを求めてこれを食らふ。
(b)すべてのyについて、yが獸であるならば、あるxは虎であり、 xはyを求めてこれを食らふ。
といふ「日本語」に於いても、
(a)=(b) ではない。
然るに、
(15)
(a)
1(1)∀x{∀y(Fxy)} A
1(2) ∀y(Fay) 1UE
1(3) Fab 2UE
1(4) ∀x(Fxb) 3UI
1(5)∀y{∀x(Fxy) 4UI
(b)
1(1)∀y{∀x(Fxy)} A
1(2) ∀x(Fxb) 1UE
1(3) Fab 1UE
1(4) ∀y(Fay) 3UI
1(5)∀x{∀y(Fxy)} 4UI
cf.
(E.J.レモン 著、武生治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、163頁改)
従って、
(15)により、
(16)
(a)∀x{∀y(Fxy)}
(b)∀y{∀x(Fxy)}
に於いて、
(a)ならば(b)であり、
(b)ならば(a)である。
従って、
(16)により、
(17)
(a)∀x{∀y(Fxy)}
(b)∀y{∀x(Fxy)}
に於いて、
(a)=(b) である。
然るに、
(18)
(a)
1 (1)∃x{∀y(Fxy)} A
2(2) ∀y(Fay) A
2(3) Fab 2UI
2(4) ∃x(Fxb) 3EI
1 (5) ∃x(Fxb) 134EE
1 (6)∀y{∃x(Fxy} 5UI
(b)
1 (1)∀y{∃x(Fxy)} A
1 (2) ∃x(Fxa) 1UE
3(3) Fba A
3(4) ∀y(Fby) 3UI?
3(5)∃x{∀y(Fb)} 4EI
1 (6)∃x{∀y(Fxy)} 235EE
然るに、
(19)
ただ一つの誤った段階は、(b)の(4)である。(3)は、「a」を含み、その結果UIの制限が破られている点が誤りである。
(E.J.レモン 著、武生治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、166頁改)
従って、
(18)(19)により、
(20)
(a)∃x{∀y(Fxy)}
(b)∀y{∃x(Fxy)}
に於いて、
(a)ならば(b)であるが、
(b)ならば(a)ある。ではない。
従って、
(20)により、
(21)
(a)∃x{∀y(Fxy)}
(b)∀y{∃x(Fxy)}
に於いて、
(a)=(b) ではない。
従って、
(21)により、
(22)
(a)∃x{∀y(Fxy)}=ある人は、すべての人の親である。
(b)∀y{∃x(Fxy)}=すべての人は、ある人の子である。
に於いて、
(a)=(b) ではない。
従って、
(12)(14)(22)により、
(23)
(a)∃x{∀y(Fxy)}=ある人は、すべての人の親である。
(b)∀y{∃x(Fxy)}=すべての人は、ある人の子である。
に於いて、
(a)=(b) ではなく、
(a)∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}=あるxは虎であって、すべてのyについて、yが獸であるならば、xはyを求めてこれを食らふ。
(b)∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)}=すべてのyについて、yが獸であるならば、あるxは虎であり、 xはyを求めてこれを食らふ。
に於いて、
(a)=(b) ではない。
然るに、
(01)(23)により、
(24)
(a)∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}=あるxは虎であって、すべてのyについて、yが獸であるならば、xはyを求めてこれを食らふ。
(b)∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)}=すべてのyについて、yが獸であるならば、あるxは虎であり、 xはyを求めてこれを食らふ。
に於いて、
(a)の場合は、
(a)少なくとも、「一頭の虎」がゐて、その「一頭の虎」が、「単独で、100獣を求め、これを食らふ。」
といふ「意味」であるが、
(b)の場合は、
(b)例えば、 「二頭の虎」がゐて、その「二頭の虎」が、それぞれ「50獸」づつ、「50獸+50獸=100獸を求めて、これを食らふ。」
といふ「意味」であることも、「可能」である。
従って、
(24)により、
(25)
(a)∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}=あるxは虎であって、すべてのyについて、yが獸であるならば、xはyを求めてこれを食らふ。
(b)∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)}=すべてのyについて、yが獸であるならば、あるxは虎であり、 xはyを求めてこれを食らふ。
に於いて、確かに、
(a)=(b) ではない。
然るに、
(26)
① 虎求百獸而食之=
① 虎求(百獸)而食(之)⇒
① 虎(百獸を)求めて(之を)食ふ=
① 虎は、すべてのけだものをつかまえてはこれを食べていた。
といふのであれば、
(a)少なくとも、「一頭の虎」がゐて、その「一頭の虎」が、「単独で、100獣を求め、これを食らふ。」
といふ「意味」であって、
(b)例えば、 「二頭の虎」がゐて、その「二頭の虎」が、それぞれ「50獸」づつ、「50獸+50獸=100獸を求めて、これを食らふ。」
といふ「意味」ではない。
従って、
(25)(26)により、
(27)
① 虎求百獸而食之=
① 虎求(百獸)而食(之)⇒
① 虎(百獸を)求めて(之を)食ふ=
① 虎は、すべてのけだものをつかまえてはこれを食べていた。
といふ「漢文訓読」は、
① ∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}=あるxは虎であって、すべてのyについて、yが獸であるならば、xはyを求めてyを食らふ。
といふ「述語論理」に、相当する。
然るに、
(28)
1 (1)∃y{虎y&∀x[獸x→求yx&食yx&∃z(狐z&獸z&得yz)]} A
2 (2) 虎b&∀x[獸x→求bx&食bx&∃z(狐z&獸z&得bz)] A
2 (3) 虎b 2&E
2 (4) ∀x[獸x→求bx&食bx&∃z(狐z&獸z&得bz)] 3UE
2 (5) 獸a→求ba&食ba&∃z(狐z&獸z&得bz) 4UE
2 (6) 獸a→求ba&食ba 5&E
2 (7) ∃z(狐z&獸z&得bz) 6&E
8(8) 狐a&獸a&得ba A
8(9) 狐a 8&E
8(ア) 獸a 8&E
28(イ) 求ba&食ba 6アMPP
28(ウ) 食ba イ&E
28(エ) 虎b&狐a 39&I
28(オ) 虎b&狐a&食ba エオ&I
28(カ) ∃x(虎b&狐x&食bx) オEI
2 (キ) ∃x(虎b&狐x&食bx) 78カEE
2 (ク)∃y∃x(虎y&狐x&食yx) キEI
1 (ケ)∃y∃x(虎y&狐x&食yx) 12クEE
然るに、
(29)
2 (7) ∃z(狐z&獸z&得bz) 6&E
8(8) 狐a&獸a&得ba A
8(9) 狐a&獸a 8&E
8(ア) ∃z(狐z&獸z) 9EI
2 (イ) ∃z(狐z&獸z) 28アEE
2 (〃) ある狐は獸である。 28アEE
然るに、
(30)
獸の変域(ドメイン)={a、b、c、d}
とするならば、
∀x( 獸x)=( 獸a)&( 獸b)&( 獸c)&( 獸d)
∃z(狐z&獸z)=(狐a&獸a)∨(狐b&獸b)∨(狐c&獸c)∨(狐d&獸d)
従って、
(28)(29)(30)により、
(31)
2 (4) ∀x[獸x→求bx&食bx&∃z(狐z&獸z&得bz)] 3UE
2 (5) 獸a→求ba&食ba&∃z(狐z&獸z&得bz) 4UE
2 (6) 獸a→求ba&食ba 5&E
2 (7) ∃z(狐z&獸z&得bz) 6&E
8(8) 狐a&獸a&得ba A(7の代表的選言項)
に於ける、(8)に、「問題」はない。
従って、
(28)~(31)により、
(32)
(1)あるyは虎であり、すべてのxについて、xが獸であるならば、yはxを求めてxを食らひ、あるzは狐であり、獸であって、yはzを得る。 といふ風に「仮定」すると、
(ケ)あるxは虎であって、あるyは狐であり、xはyを食らふ。 といふ『結論』を得る。
従って、
(01)(28)(32)により、
(33)
① 虎求百獸而食之得狐=
① 虎求(百獸)而食(之)得(狐)⇒
① 虎(百獸を)求めて(之を)食ひ(狐を)得たり=
① 虎は、すべてのけだものをつかまえてはこれを食べていたが、(あるとき)狐をつかまえた。
といふ「漢文訓読」は、
① ∃y{虎y&∀x[獸x→求yx&食yx&∃z(狐z&獸z&得yz)]}=
① あるyは虎であり、すべてのxについて、xが獸であるならば、yはxを求めてxを食らひ、あるzは狐であり、獸であって、yはzを得る。
といふ「述語論理」に、相当する。