―「先ほどの記事(192)」の「続き」を書きます。―
従って、
(01)~(22)により、
(23)
① 今両虎共闘、其勢不倶生。
① 今両虎共に闘はば、其の勢ひ俱には生きず。
① いま、二頭の虎(e.g.藺相如と廉頗)が戦ひ合へば、両方とも死なないで済む。といふわけにいかない。
といふ「漢文訓読」は、
(ⅰ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x& 生y)}
(ⅱ)∀x∀y{闘xy&生x&生y→(~虎x∨~虎y)}
(ⅲ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→ (生x→~生y)&(生y→~生x)}
といふ「三通リの述語論理」に、対応する。
然るに、
(24)
① 今両虎共闘、其勢不倶生。
① 今両虎共に闘はば、其の勢ひ俱には生きず。
ではなく、
② 今両虎共闘、其勢倶不生。
② 今両虎共に闘はば、其の勢ひ俱に生きず。
といふ「漢文訓読」は、
(ⅳ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→(~生x&~生y)}
といふ「述語論理」に、対応する。
然るに、
(25)
① 不倶生=~(生a& 生b)
② 倶不生=(~生a&~生b)
に於いて、
① を、「部分否定」と言ひ、
② を、「全部否定」と言ふ。
然るに、
(26)
「ド・モルガンの法則」により、
① 不倶生=~(生a& 生b)
とは、すなはち、
① 不倶生=(~生a∨~生b)
である。
然るに、
(21)により、
(27)
① 不倶生=(~生a∨~生b)=(aは生きないか、またはbは生きない。)
② 倶不生=(~生a&~生b)=(aは生きず、bも生きない。)
に於いて、
① と ② は、「矛盾」しない。
従って、
(25)(27)により、
(28)
①「部分否定」と、
②「全部否定」は、「矛盾」しない。
然るに、
(29)
① 不倶生= ~(生a&生b)
の「否定」を、
③ ~不倶生=~~(生a&生b)
と書くならば、「二重否定(DN)」により、
③ 倶生= (生a&生b)
である。
従って、
(27)(29)により、
(30)
① 不倶生=(~生a∨~生b)=(aは生きないか、またはbは生きない。)
③ 倶生=( 生a& 生b)=(aは生き、bも生きる。)
に於いて、
① と ③ は、「矛盾」する。
然るに、
(31)
(ⅳ)
1 (1)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x&生y)} A
1 (2) ∀y{虎a&虎y&闘ay→~(生a&生y)} 1UE
1 (3) 虎a&虎b&闘ab→~(生a&生b) 2UE
4 (4) 生a&生b A
4 (5) ~~(生a&生b) 4DN
14 (6) ~(虎a&虎b&闘ab) 45MTT
14 (7) ~虎a∨~虎b∨~闘ab 6ド・モルガンの法則
14 (8) (~虎a∨~虎b)∨~闘ab 7結合法則
9 (9) (~虎a∨~虎b) A
9 (ア) ~~(~虎a∨~虎b) 9DN
9 (イ) ~(~~虎a&~~虎b) ア、ド・モルガンの法則
9 (ウ) ~(虎a&虎b) イDN
9 (エ) ~(虎a&虎b)∨~闘ab ウ∨I
オ(オ) ~闘ab オ
オ(カ) ~(虎a&虎b)∨~闘ab オ∨I
14 (キ) ~(虎a&虎b)∨~闘ab 89エオカ∨E
14 (ク) 虎a&虎b →~闘ab ク含意の定義
1 (ケ) 生a&生b→(虎a&虎b→~闘ab) 4クCP
1 (コ) ∀y{生a&生y→(虎a&虎y→~闘ay)} ケUI
1 (サ)∀x∀y{生x&生y→(虎x&虎y→~闘xy)} コUI
従って、
(31)により、
(32)
(1)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x&生y)} といふ「仮定」により、
(サ)∀x∀y{生x&生y→(虎x&虎y→~闘xy)} といふ『結論』を得る。
従って、
(32)により、
(33)
(1)すべてのxとすべてのyについて、xが虎であり、yも虎であり、xとyが闘へば、xが生き、yも生きる。といふことはない。 といふ「仮定」により、
(サ)すべてのxとすべてのyについて、xが生きて、 yも生きて、 xが虎であり、yも虎であらならば、xとyは、闘はない。 といふ『結論』を得る。
(〃)すべてのxとすべてのyについて、xが死なず、 yも死なず、 xが虎であり、yも虎であるならば、xとyは、闘はない。 といふ『結論』を得る。
然るに、
(34)
(a)
今両虎共闘、其勢不俱生。
吾所以為此者、先国家之急而後私讎也。
廉頗聞之、肉袒負荊、至門謝罪、遂為刎頸之交。
(b)
今両虎共闘、其勢不(俱生)。
吾所⁻以〔為(此)〕者、先(国家之急)而後(私讎)也。
廉頗聞(之)、肉袒負(荊)、至(門)謝(罪)、遂為(刎頸之交)。
(c)
今両虎共闘、其の勢ひ(俱には生き)不。
吾の〔(此を)為す〕所⁻以の者は、(国家の急を)先にして(私讎を)後にすればなり。
廉頗(之を)聞き、肉袒して(荊を)負ひ、(門に)至(罪り)謝し、遂に(刎頸の交はりを)為す。
(d)
今、我々(二頭の虎に譬へる)が争ったならば、成り行きとして、二人の内の、少なくとも一人が、死ななければならない。
私がこれ(廉将軍からの逃げ隠れ)をするの理由は、国家を、危難から救ふことを先にして、個人的な恨みを後回しにするからである。
廉将軍はこの話を聞いて、裸の上半身にムチを背負ひ、門に来て謝り、ついに、刎頸の友となった〔十八史略、刎頸之交〕。
従って、
(31)~(34)により、
(35)
(1)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x&生y)} といふ「仮定」、すなはち、
(〃)すべてのxとすべてのyについて、xが虎であり、yも虎であり、xとyが闘へば、xが生き、yも生きる。といふことはない。 といふ「仮定」により、
(サ)∀x∀y{生x&生y→(虎x&虎y→~闘xy)} といふ『結論』を、すなはち、
(〃)すべてのxとすべてのyについて、xが死なず、 yも死なず、 xが虎であり、yも虎であるならば、xとyは、闘はない。 といふ『結論』を得る。
従って、
(27)(30)(31)(35)により、
(37)
① 不倶生=(~生a∨~生b)=(aは生きないか、またはbは生きない。)
② 倶不生=(~生a&~生b)=(aは生きず、bも生きない。)
③ 倶生=( 生a& 生b)=(aは生き、bも生きる。)
に於いて、たしかに、
① の「否定」は、② ではなく、
① の「否定」は、③ である。