(01)
① すべてのxについて、xが僕であるならば、あるyは君であって、xはyが好きであって、すべてのzについて、zがyでないならば、xはzを好きではない。
といふことは、
① 僕は君が好きだ。
といふ、ことである。
従って、
(01)により、
(02)
① 僕は君が好きだ。
といふ「日本語」は、
① ∀x{僕x→∃y(君y&好xy)&∀z(~君z→~好xz)}⇔
① すべてのxについて、xが僕であるならば、あるyは君であって、xはyが好きであって、すべてのzについて、zがyでないならば、xはzを好きではない。
といふ「述語論理」に、相当する。
cf.
金谷武洋先生にならって、「僕・私・俺」等は「人称代名詞」ではなく、「単なる名詞」であるとします。そのため、「僕」を「述語」にしても、支障はありません。
然るに、
(03)
① 僕は君が好きだ。
ではなく、
② 僕は君は好きだ。
といふのであれば、
② 君以外は好きではない。
とは、限らない。
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
① ∀x{僕x→∃y(君y&好xy)&∀z(~君z→~好xz)}⇔
① すべてのxについて、xが僕であるならば、あるyは君であって、xはyが好きであって、すべてのzについて、zがyでないならば、xはzを好きではない。
といふ「述語論理」から、
① ∀z(~君z→~好xz)
① すべてのzについて、zがyでないならば、xはzを好きではない。
といふ「命題関数」を除いた、
② ∀x{僕x→∃y(君y&好xy)}⇔
② すべてのxについて、xが僕であるならば、あるyは君であって、xはyが好きである。
といふ「述語論理」が、
② 僕は君は好きだ。
といふ「日本語」に相当する。
従って、
(04)により、
(05)
① 象は鼻が長い。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長x)}⇔
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であり、yは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
に対して、
② 象は鼻は長い。⇔
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}
② すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であり、yは長い。
である。
然るに、
(06)
この組み合わせは次のような場合に現われる。
私が大野です。
これは、「大野さんはどちらですか」というような問いに対する答えとして使われる。
大野は私です。
に置きかえてもほぼ同じ意味を表わすといえる(大野晋、日本語の文法を考える、1978年、34頁)。
従って、
(06)により、
(07)
いづれにせよ、
① 私が大野です。
② 大野は私です。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(08)
② 大野は私です。
といふことは、
③ 私以外は大野ではない。
といふことに、他ならない。
従って、
(07)(08)により、
(09)
いづれにせよ、
① 私が大野です。
② 大野は私です。
③ 私以外は大野ではない。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(10)
① 私が大野です。
② 大野は私です。
③ 私以外は大野ではない。
に於いて、
① 私=象
① 大野=鼻は長い
といふ「代入」を行ふと、
① 象が鼻は長いです。
② 鼻は長いは象です。
③ 象以外は鼻は長いではない。
従って、
(09)(10)により、
(11)
① 象が鼻は長い。
② 鼻が長いのは象である。
③ 象以外の鼻は長くない。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(12)
① 象が鼻は長い。
といふのであれば、
① 象は鼻は長い。
従って、
(11)(12)により、
(13)
③ 象が鼻は長い=
③ 象は鼻は長く、象以外は鼻は長くない。
である。
然るに、
(14)
③ 象以外は鼻は長くない。
といふ「日本語」は、
③ ∀x{~象x→~∃y(鼻yx&長y)}⇔
③ すべてのxについて、xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、そのyが長い、といふことはない。
といふ「述語論理」に相当する。
従って、
(05)(13)(14)により、
(15)
③ 象が鼻は長い。
といふ「日本語」は、
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)}
③ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であり、yは長く、xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、そのyが長い、といふことはない。
といふ「述語論理」に相当する。
cf.
「A⇔B」=「Aならば、そのときに限ってBである。」
といふ風に「定義」すると、
③ ∀x{象x⇔∃y(鼻yx&長y)} は、
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)} に等しい。
然るに、
(16)
③ 兎は象ではない。 ⇔
③ ∀x(兎x→~象x)⇔
③ すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。
然るに、
(17)
1 (1)∀x(兎x→~象x) A
1 (2) 兎a→~象a 1UE
3 (3) 兎a A
13 (4) ~象a 23MPP
5 (5)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)} A
5 (6) 象a→∃y(鼻ya&長y)&~象a→~∃y(鼻ya&長y) 5UE
7(7) 象a A
57(8) ∃y(鼻ya&長y)&~象a→~∃y(鼻ya&長y) 67MPP
57(9) ∃y(鼻ya&長y) 8&E
57(ア) ~象a→~∃y(鼻ya&長y) 8&E
1357(イ) ~∃y(鼻ya&長y) 4アMPP
1357(ウ) ∃y(鼻ya&長y)&~∃y(鼻ya&長y) 9イ&I
135 (エ) ~象a 7ウRAA
135 (オ) ∀y~(鼻ya&長y) イ量化子の関係
135 (カ) ~(鼻ba&長b) オUE
135 (キ) ~鼻ba∨~長b カ、ドモルガンの法則
135 (ク) 鼻ba→~長b キ含意の定義
135 (ケ) ∀y(鼻ya→~長y) ケUI
1 5 (コ) 兎a→∀y(鼻ya→~長y) 3ケCP
1 5 (サ)∀x{兎x→∀y(鼻yx→~長y)} コUI
1 5 (〃)すべてのxについて、xが兎ならば、すべてのyについて、yがxの鼻ならば、yは長くない。
1 5 (〃)すべての兎の、すべての鼻は長くない。
1 5 (〃)兎の鼻は長くない。
従って、
(15)(16)(17)により、
(18)
③ 兎は象ではない。 ⇔
③ ∀x(兎x→~象x)⇔
③ すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。
と「仮定」した上で、
③ 象が鼻は長い。⇔
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)}⇔
③ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であり、yは長く、xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、そのyが長い、といふことはない。
と「仮定」すると、
③ 兎の鼻は長くない。⇔
③ ∀x{兎x→∀y(鼻yx→~長y)}⇔
③ すべてのxについて、xが兎ならば、すべてのyについて、yがxの鼻ならば、yは長くない。
といふ『結論』を、得ることになる。
従って、
(18)により、
(19)
③ 象が鼻は長い。
といふ「日本語」は、
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)}⇔
③ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であり、yは長く、xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、そのyが長い、といふことはない。
といふ「述語論理」に、相当する。
従って、
(05)(19)により、
(20)
④ 象が鼻が長い。
といふ「日本語」は、
④ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長x)}⇔
④ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であり、yは長く、xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、そのyが長い、といふことはなく、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
といふ「述語論理」に、相当する。
従って、
(05)(18)(20)により、
(21)
「番号」を付け替へると、
① 象は鼻は長い。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であり、yは長い。
② 象は鼻が長い。⇔
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長x)}⇔
② すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であり、yは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
③ 象が鼻は長い。⇔
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)}⇔
③ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であり、yは長く、xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、そのyが長い、といふことはない。
④ 象が鼻が長い。⇔
④ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長x)}⇔
④ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であり、yは長く、xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、そのyが長い、といふことはなく、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
といふ「4通り」が、成立する。
然るに、
(22)
括弧は、論理演算子のスコープ(scope)を明示する働きを持つ。スコープは、論理演算子の働きが及ぶ範囲のことをいう。
(産業図書、数理言語学辞典、2013年、四七頁:命題論理、今仁生美)
然るに、
(23)
(ⅰ)論理式または命題関数において、量記号が現れる任意の箇所の作用範囲は、問題になっている変数が現れる少なくとも2つの箇所を含むであろう(その1つの箇所は量記号そのもののなかにある);
(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、183頁)
従って、
(22)(23)により、
(24)
例へば、
⑤ ∀x(Fx)=すべてのxはFである。
であれば、
⑤ ∀x といふ「量記号」の「作用範囲」」は、
⑤ ∀x(Fx)
といふ「論理式の、全体」である。
従って、
(21)~(24)により、
(25)
① 象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② 象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長x)}。
③ 象が鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。
④ 象が鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長x)}。
であっても、「∀x」といふ「量記号」の「作用範囲」」は、それぞれの「文の、全体」ある。
従って、
(25)により、
(26)
① 象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② 象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長x)}。
③ 象が鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。
④ 象が鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長x)}。
といふ「等式」の「左辺」である、
① 象は鼻は長い。
② 象は鼻が長い。
③ 象が鼻は長い。
④ 象が鼻が長い。
であっても、「象は・象が」といふ「主語」の「作用範囲」は、それぞれの「文の、全体」ある。
然るに、
(27)
「象は鼻が長い」という文が大正年間から専門家を悩ませていた。「象は」も主語、「鼻が」も主語。ひとつのセンテンスに二つも主語があってはならない。しかし、この表現は誤りではない。どう説明、合理化したらよいか、というのである。うまく解決する方法は見つからなかった。戦後になって三上章という人がおもしろい説を出した。「象は」は主語ではなくて主題である。「鼻が長い」は主語と述語だというので、これなら二重主語でなくなる。主題というのは、〝 についていえば〝 のように範囲を示す、いわば副詞のようなものだと考える。副詞なら主語になれない(外山滋比古、象は鼻が長い - TranNet New Column)。
従って、
(25)(26)(27)により、
(28)
「象は・象が」といふ「主語」の「作用範囲」は、それぞれの「文の、全体」あって、尚且つ、
「主題というのは、〝 についていえば〝 のように範囲を示す」といふことからすれば、
「象は・象が」は、「二つとも、主題」である。といふ、ことになる。
然るに、
(29)
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であり、yは長い。
② すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であり、yは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
を読めば分かる通り、
① 象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② 象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長x)}。
に於いて、
① は、「象」だけに言及してゐて、
② も、「象」だけに言及してゐて、
① は、「象の鼻」だけに言及してゐて、
② は、「象の鼻」と「象の鼻以外」に、言及してゐる。
加へて、
(30)
③ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であり、yは長く、xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、そのyが長い、といふことはない。
④ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であり、yは長く、xが象でないならば、あるyがxの鼻であって、そのyが長い、といふことはなく、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
を読めば分かる通り、
③ 象が鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。
④ 象が鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長x)}。
に於いて、
③ は、「象」と「象以外」に言及してゐて、
④ も、「象」と「象以外」に言及してゐて、
③ は、「象の鼻」だけに言及してゐて、
④ は、「象の鼻」と「象の鼻以外」に、言及してゐる。
従って、
(26)(29)(30)により、
(31)
① 象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② 象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長x)}。
③ 象が鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。
④ 象が鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長x)}。
に於いて、
「象は・鼻は」は、「象と鼻」だけに言及してゐて、
「象が・鼻が」は、「象と象以外・鼻と鼻以外」に言及してゐる。
従って、
(31)により、
(32)
① 象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② 象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長x)}。
③ 象が鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。
④ 象が鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長x)}。
に於いて、
「象は」は、「象だけ」 を「話題」にしてゐて、
「象が」は、「象と象以外」を「話題」にしてゐる。
従って、
(33)
④{象、キりン、河馬、ライオン、シマウマ}を「変域(ドメイン)」とするならば、
④ {キりン、河馬、ライオン、シマウマ}の「鼻は長くない」が故に。
④ 象が鼻が長い。
といふ、ことになる。
従って、
(32)(33)により、
(34)
「象」を「主題」にする際に、
「象以外の動物(キリン、河馬、ライオン、シマウマ、他」を「念頭に置いてはならない」。
といふ「ルール」を設けるのであれば、
① 象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
② 象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長x)}。
に於ける「象は(主語)」は「主題」であり、
③ 象が鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)}。
④ 象が鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~象x→~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長x)}。
に於ける「象が(主語)」は「主題」ではない。