(01)
「太郎かあるいは次郎が辞書をもっている」と言われるとき、「太郎が辞書をもっている」と「次郎が辞書をもっている」の二つの命題は同時に真になることが可能である。このような選言は両立的選言(弱選言)と呼ばれる。
「太郎は3階か5階にいる」と言われるとき、「太郎は3階にいる」と「太郎は5階にいる」の命題が同時に真になることはありえない。このような選言は排他的選言(強選言)である。
論理学の「・・・あるいは・・・」は両立的選言に取り決めてある。それは論理学の体系がシンプルなものになるからである。とりわけ、∨を両立的選言の方に決めておけば、排他的選言の方は∨と&と~とによって簡単に表現できる ―(P∨Q)&~(P&Q)―(飯田賢一・中才敏郎・中谷隆雄、論理学の基礎、1994年、11頁改)
然るに、
(02)
(ⅰ)
1 (1) (P∨Q)&~(P&Q) A
1 (2) P∨Q 1&E
1 (3)~~P∨Q 2DN
1 (4) ~P→Q 3含意の定義
1 (5) ~(P&Q) 1&E
1 (6) ~P∨~Q 5ド・モルガンの法則
1 (7) P→~Q 6含意の定義
(8) ~P∨P TI(排中律)
9 (9) ~P A
19 (ア) Q 49MPP
19 (イ) ~P&Q 9ア&I
19 (ウ)(P&~Q)∨(~P&Q) イ∨I
エ(エ) P A
1 エ(オ) ~Q 7エMPP
1 オ(カ) P&~Q エオ&I
1 オ(キ)(P&~Q)∨(~P&Q) カ∨I
1 (ク)(P&~Q)∨(~P&Q) 89ウオキ∨E
(ⅱ)
1 (1) (P&~Q)∨(~P&Q) A
2 (2) P&~Q A
2 (3) P 2&E
2 (4) P∨ Q 3∨I
2 (5) ~Q 2&E
2 (6) ~P∨~Q 5∨I
2 (7)~(P& Q) 6ド・モルガンの法則
2 (8) (P∨ Q)&~(P&Q) 47&I
9(9) ~P&Q A
9(ア) ~P 9&I
9(イ) ~P∨~Q ア∨I
9(ウ) ~(P& Q) イ、ド・モルガンの法則
9(エ) Q 9&E
9(オ) P∨ Q エ∨I
9(カ) (P∨ Q)&~(P&Q) ウオ&I
1 (キ) (P∨ Q)&~(P&Q) 1289カ∨E
従って、
(02)により、
(03)
①(P∨ Q)&~(P&Q)
②(P&~Q)∨(~P&Q)
に於いて、
①=② である。
然るに、
(04)
(ⅱ)
1 (1) (P&~Q)∨ (~P&Q) A
2 (2) (P&~Q) A
2 (3) (P&~Q)∨ (Q&~P) 2∨I
4(4) (~P&Q) A
4(5) (Q&~P) 4交換法則
4(6) (P&~Q)∨ (Q&~P) 5∨I
1 (7) (P&~Q)∨ (Q&~P) 12346∨E
1 (8)~{~(P&~Q)&~(Q&~P)} 7ド・モルガンの法則
1 (9) ~{(P→ Q)& (Q→ P)} 8含意の定義(Ⅱ)
1 (ア) ~(P⇔ Q) 9Df.⇔
(ⅲ)
1 (1) ~(P⇔ Q) A
1 (2) ~{(P→ Q)& (Q→ P)} 1Df.⇔
1 (3)~{~(P&~Q)&~(Q&~P)} 2含意の定義(Ⅱ)
1 (4) (P&~Q)∨ (Q&~P) 3ド・モルガンの法則
5 (5) (P&~Q) A
5 (6) (P&~Q)∨ (~P&Q) 5∨I
7(7) (Q&~P) A
7(8) (~P&Q) 7交換法則
7(9) (P&~Q)∨ (~P&Q) 8∨I
1 (ア) (P&~Q)∨ (~P&Q) 15979∨E
従って、
(04)により、
(05)
② (P&~Q)∨(~P&Q)
③ ~(P⇔ Q)
に於いて、
②=③ である。
cf.
実を言ふと、この「計算」は、かなり、難しかった。
従って、
(03)(05)により、
(06)
① (P∨ Q)&~(P&Q)
② (P&~Q)∨(~P&Q)
③ ~(P⇔ Q)
に於いて、
①=② であって、
②=③ である。
従って、
(06)により、
(07)
「日本語」で言ふと、
①(Pであるか、または、Qである)が、ただし(Pであって、Qである)といふことはない。
②(Pであって、Qでないか)、または(Pでなくて、Qである)。
③(PとQの「真理値」が一致する)といふことはない。
に於いて、
①=②=③ である。
(08)
③ ~(P⇔Q)
③ (PとQの「真理値」が一致する)といふことはない。
といふことは、
(ⅰ)PとQ の、両方とも「真」であることは、無く、
(ⅱ)PとQ の、両方とも「偽」であることも、無い。
といふことである。
然るに、
(09)
(ⅰ)PとQ の、両方とも「真」であることは、無く、
(ⅱ)PとQ の、両方とも「偽」であることも、無い。
といふことは、
(ⅲ)Pが「真」であって、Qが「偽」であるか、
(ⅳ)Qが「真」であって、Pが「偽」であるかの、いづれか、一方である。
従って、
(01)(07)(08)(09)により、
(10)
③ ~(P⇔Q)≡Pであるか、または、Qである。
といふ「強選言(排他的選言)」であるならば、
(α)Pであるか、または、Qである。然るに、
(β)Pでない。 従って、Qである。
といふ「推論」は、「妥当」であり、
(γ)Pであるか、または、Qである。然るに、
(δ)Pである。 従って、Qでない。
といふ「推論」も、「妥当」である。
然るに、
(01)により、
(11)
④ P∨Q≡Pであるか、または、Qである。
といふ「弱選言(両立的選言)」であるならば、
(α)Pであるか、または、Qである。然るに、
(β)Pでない。 従って、Qである。
といふ「推論」は、「妥当」であるが、
(γ)Pであるか、または、Qである。然るに、
(δ)Pである。 従って、Qでない。
といふ「推論」は、「妥当」ではない。
従って、
(12)
(α)Pであるか、または、Qである。然るに、
(β)Pでない。 従って、Qである。
といふ「推論(選言三段論法)」であれば、
③ ~(P⇔Q)≡Pであるか、または、Qである。
といふ「強選言(排他的選言)」であっても、
④ P∨Q≡Pであるか、または、Qである。
といふ「弱選言(両立的選言)」であっても、
両方とも、「妥当」である。