日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(929)「ラッセルの確定記述」と「定冠詞(the)」の「一意性」(Ⅱ)。

2021-06-18 18:37:49 | 論理

(01)
{a、b、c}は、「個体(individuals)」であるとして、
 a≠b
 a≠c
 b≠c
であるならば、
{a、b、c}は、「3個の個体からなる、集合」である。
然るに、
(02)
{a、b、c}は、「個体(individuals)」であるとして、
 a=a
 b=a
 c=a
であるならば、
{a、b、c}は、
{a、a、a}に、「等しい」。
然るに、
(03)
「冪等律(Idempotent)」により、
{a、a、a}は、
  {a}  に、「等しい」。
従って、
(02)(03)により、
(04)
{a、b、c}は、「個体(individuals)」であるとして、
 a=a
 b=a
 c=a
であるならば、
{a、b、c}は、すなはち、
  {a}  といふ「1個の個体からなる、集合」である。
従って、
(04)により、
(05)
① ∃x{Fx&∀y(Fy→x=y)}⇔
① あるxについて{xはFであり、すべてのyについて(yがFであるならば、x=yである)}。
といふのであれば、この場合は、
①「1個の個体だけが、性質Fを持ってゐる。」
然るに、
(06)
(ⅰ)
1 (1) ∃x{Fx&∀y(Fy→x=y)} A
 2(2)    Fa&∀y(Fy→a=y)  A
 2(3)    Fa             2&E
 2(4)       ∀y(Fy→a=y)  2&E
 2(5)          Fb→a=b   4UE
 2(6)         ~Fb∨a=b   5含意の定義
 2(7)         a=b&~Fb   6交換法則
 2(8)        ~(a≠b&Fb)  7ド・モルガンの法則
 2(9)      ∀y~(a≠y&Fy)  8UI
 2(ア)      ~∃y(a≠y&Fy)  9量化子の関係
 2(イ)   Fa&~∃y(a≠y&Fy)  3ア&I
 2(ウ)∃x{Fx&~∃y(x≠y&Fy)} イEI
1 (エ)∃x{Fx&~∃y(x≠y&Fy)} 12ウEE
(ⅱ)
1 (1)∃x{Fx&~∃y(x≠y&Fy)} A
 2(2)   Fa&~∃y(a≠y&Fy)  A
 2(3)   Fa              2&E
 2(4)      ~∃y(a≠y&Fy)  2&E
 2(5)      ∀y~(a≠y&Fy)  4量化子の関係
 2(6)        ~(a≠b&Fb)  5UE
 2(7)         a=b∨~Fb   6ド・モルガンの法則
 2(8)         ~Fb∨a=b   7交換法則
 2(9)          Fb→a=b   8含意の定義
 2(ア)       ∀y(Fy→a=y)  9UI
 2(イ)    Fa&∀y(Fy→a=y)  3ア&I
 2(ウ) ∃x{Fx&∀y(Fy→x=y)} イEI
1 (エ) ∃x{Fx&∀y(Fy→x=y)} 12ウEE
従って、
(06)により、
(07)
① ∃x{Fx&  ∀y(Fy→x=y)}
② ∃x{Fx&~∃y(x≠y&Fy)}
に於いて、
①=② である。
従って、
(05)(06)(07)により、
(08)
②   ∃x{Fx&~∃y(x≠y&Fy)}⇔
② あるxは{Fであり、(x以外に、Fであるy)は存在しない}。
といふのであれば、この場合も、
②「1個の個体だけが、性質Fを持ってゐる。」
従って、
(05)(08)により、
(09)
① ∃x{Fx&  ∀y(Fy→x=y)}
② ∃x{Fx&~∃y(x≠y&Fy)}
といふ「述語論理式」は、
①「1個の個体だけが、性質Fを持ってゐる。」
②「1個の個体だけが、性質Fを持ってゐる。」
といふ「意味」である。
従って、
(10)
① ∃x{ヒトラーx&我が闘争x&  ∀y(我が闘争y→x=y)}
② ∃x{ヒトラーx&我が闘争x&~∃y(x≠y&我が闘争y)}
といふ「述語論理式」は、
①「性質(ヒトラーといふ名である)を持ってゐる1個の個体だけが、性質(我が闘争の著者である)を持ってゐる。」
①「性質(ヒトラーといふ名である)を持ってゐる1個の個体だけが、性質(我が闘争の著者である)を持ってゐる。」
といふ「意味」である。
然るに、
(11)
問題5.
ラッセルの確定記述の理論」を用いて、つぎの論証の健全性を確立せよ。
(a)マイン・カンプの著者は1945年に死んだ。ヒトラーはマイン・カンプを書いた。故にヒトラーは1945年に死んだ。
(a)The author of Mine Kamp died in 1945. Hitler wrote Mine Kamp. Hitler therefore died in 1945.
(E.J.レモン 著、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、215頁改)
〔私による解答〕
1   (1)∃x(我が闘争x&45年死x)               A
 2  (2)   我が闘争a&45年死a                A
  3 (3)∃y{ヒトラーy&我が闘争y&∀x(我が闘争x→x=y)} A
   4(4)   ヒトラーb&我が闘争b&∀x(我が闘争x→x=b)  A
   4(5)               ∀x(我が闘争x→x=b)  4&E
   4(6)                  我が闘争a→a=b   5UE
 2  (7)                  我が闘争a       2&E
 2 4(8)                        a=b   67MPP
   4(9)   ヒトラーb                      4&E
 2 4(ア)   ヒトラーa                      89=E
 2  (イ)         45年死a                2&E
 2 4(ウ)   ヒトラーa&45年死a                アイ&I
 2 4(エ)∃x(ヒトラーx&45年死x)               ウEI
 23 (オ)∃x(ヒトラーx&45年死x)               34エEE
1 3 (カ)∃x(ヒトラーx&45年死x)               12オEE
1 3 (〃)あるxはヒトラーであって1945年に死んだ。        12オEE
従って、
(09)(10)(11)により、
(12)
①「性質(ヒトラーといふ名である)を持ってゐる1個の個体だけが、性質(我が闘争の著者である)を持ってゐる。」
①「性質(ヒトラーといふ名である)を持ってゐる1個の個体だけが、性質(我が闘争の著者である)を持ってゐる。」
といふ「意味」であるところ、
① ∃x{ヒトラーx&我が闘争x& ∀y(我が闘争y→x=y)}
② ∃x{ヒトラーx&我が闘争x&~∃y(x≠y&我が闘争y)}
といふ「論理式」は、「ラッセルの確定記述の理論」に基づくところの、「論理式」である。
然るに、
(13)
仮に、「我が闘争(Mine Kamp)」が、「ヒトラーと、他の誰かによる、共著」であったとしたら、
(a)The author  of Mine Kamp ではなく、
(a)The authors of Mine Kamp となると「同時」に、
① ∃x{ヒトラーx&我が闘争x&  ∀y(我が闘争y→x=y)
② ∃x{ヒトラーx&我が闘争x&~∃y(x≠y&我が闘争y)
でなければ、ならない。
然るに、
(14)
定冠詞the)は、それが厳密に用いられるときには、一意性を内含している。確かに、しかじかのひと(So-and-so)がいく人かの息子をもっている場合でさえ、the son of So-and-so という表現を使用するが、本当はその場合には、a son of So-and-so という方がより正しいといえよう。それゆえわれわれの目的のためには、the一意性を内含しているものと考えていく(頸草書房、現代哲学基本論文集Ⅰ、バートランド・ラッセル、指示について、1986年、53頁)。
従って、
(12)(13)(14)により、
(15)
(a)The author of Mine Kamp
がそうであるやうに、
(a)The定冠詞)+名詞(単数
でなければ
① ∃x{ヒトラーx&我が闘争x&  ∀y(我が闘争y→x=y)}
② ∃x{ヒトラーx&我が闘争x&~∃y(x≠y&我が闘争y)}
といふ「論理式」、すなはち、「ラッセルの確定記述の理論」に基づくところの、「論理式」は、成立しない