つぼみな日々

いろんな花の蕾をもっていたい。たくさんの花を咲かせたい。
言葉を紡ぎたい私のブログです。

すごい夏の嘘みたいな一日

2013-07-08 22:13:14 | 日記
財布を失くす。
最近のこのような傾向は、本当に度を越している。

もう仕方が無いのだけど、どうにも身体も心も酷く疲弊する。
面倒に殺されそうである。
免許証もクレジットカードもキャッシュカードも保険証も、停止と再発行手続きをせねばならず、多めに入っていた現金も財布本体も、瞬間的に失くしてしまった。
更に、引っ越しを控えているので身分証や現住所についてがまた輪をかけて面倒を重ねている。

四条から京都駅に向かおうと何も確かめずに乗ったバスが全く違う場所行きだった。
山奥に入って行くのでまずいと思ってバスを降りた。
両替をして、バス運賃を支払って、この時までは確かに財布はあった。

降りたその場所は京都の街から10分くらいなのに、一歩入るとトトロが出てきそうなほどの山が控えていて、湿った土の匂いがした。
その後逆に戻るバス停が見つからなくて、ハイウェイのような、到底歩行者の道路ではない、車がビュンビュンと通る道を500mほど歩いた。
そんな道の中央分離帯を渡らねばその道路から出られず、何台もの車のドライバーは怪訝な顔で私を一瞥して勢いよく通り過ぎて行った。
さすがに車の波のど真ん中に、生身で取り残されることは恐怖だった。

なんとか車の波間を抜けて道の対岸に渡れた。
少しの恐怖体験だったので、もうタクシーに乗ろうと、そして京都駅に着いてタクシー代を支払おうとしたら財布がなかったのである。

パスモは無事でそこに入っている5000円以外はお金をおろすことすらできない。
新幹線の切符も買えず、これでは帰れない。

タクシーの運転手はこのはた迷惑な奴に情をかけてくれ、今来た道を全部通ってくれて警察まで私を連れて行き、友人にお金が借りれるまでの時間潰し代1000円を貸してくれた。
法人タクシーだから、メーターを空で走るわけにはいかず支払いがないと自分の未収になっちゃうからごめんなと言っていた。
後でタクシーにかかったお金はすべてお返しした。

各種カード手続きの電話を一時間程度して、別れた友人に再度会って3万円を借り、同じタクシーで京都駅まで行く。
あまりにも打ちのめされていた私に、元気付けようとかどうかはわからないけれど、運転手は自分の夢を語り始めた。
今29歳でパイロットになりたくて、東京の訓練所に通っているということ。
私は「そうなんですか」と、好意か何かを受け取る元気もなくて相槌だけ打った。

最後、京都駅で私をおろす時、「絶対負けんなよ、俺も夢叶えるから」と言っていた。
私のはそういう類の話だったろうか、となんだか笑わせてもらった。

借りた3万円で京都駅で新幹線の切符を買い、指定席を取ったのに、なぜだか、本当になぜだか、その指定席のある列車が目の前で発車されてしまう。
別に急いでいたとか混雑していたでもなく、魂を奪われたように私は突っ立っていた。
新幹線の尻尾を見ながら、まさかあれは私の乗るはずだった列車か?と気が付く。
呆然、唖然。

次の新幹線の自由席で、友人に借りた矢沢永吉の「アーユーハッピー?」を読む。
永ちゃんはよく知らないけど、猪突猛進のロッカーであることはわかった。
今の自分に「ハッピーですか?」
人生を歩いて行くのに、延々続く自問。

慰めてくれるわけではないと思ったけれど、お酒が飲みたいと思って外に出る。
「自分」という存在に手厳しい人と話をして、うっとなったり、そうだなぁと思ったり。
でも、お互いにとって、他の人とはできない類の話ができるということは本当に嬉しいことだし、ある側面においての互いの信頼のようなものもあるのではないかと思う。

その人は私に、さすらうことを、独歩することを勧めた。
私のことを欲深いと言った、孤独だと言った。
私はそれを認めた、私は独歩したいと願うようになった。
そして、私がこれからしようとしていることは、すごく楽しいことだと思うよと、そう言ってくれた。
基本的に所謂優しいことを、所謂優しい言葉で言ったりする人ではないけれど。

私はいつもその人から教えてもらうばかりだけど。
それに、私はその人よりも全然省スペースで済む人のような気はしているけれど。
それに、いつもちょっと言いそびれてしまうこともあるのだけど。

寝不足と二日酔いの身体を引きずって、しかし身分証がないのは困るので、会社を午前休にして免許証の再発行に出かける。

係の人に言われた通りの書類を書いて、列に並ぶ。
もうあとは新しい免許証を受け取るだけというところまで来て、椅子にかけてブログを書きながら待つ。

と、そこへ、075で始まる着信。
京都府警からだった。
落し物で財布が届いていますよ。
現金も全て無事で。

私の財布をすくい上げてくれたその誰かは、お礼も何も要りませんと名乗らなかったらしい。

免許証は再発行を止められなかったし、全てのカード各種もこれから面倒な手続きは財布が見つからなかった同然で続くけれど、でも、よかった。
ありがとうございます、とどうやったら伝えられるだろう。

とにもかくにも。
バッグのチャックはきちんと締めよう。
財布を出すときは音楽を止めよう。
乗り物の行く先と時刻を確認しよう。