中国・日本、あらゆる人間は砂の城のごときもの

初めて海をみた日の感動を
いまでも ありありと思いだす
転校したての十歳の頃
誰ひとりも
友達ができない頃だった

寝ぼけた朝の顔を
波に浸しては
じゃぶじゃぶと洗った
遠い沖の鴎だけが友だちだった
大きすぎる海と
荒々しい波とに
負けてたまるかと
懸命で作ったぼくの砂の城

いつのまにか日が暮れ
海鳥たちはがねぐらへ
でも誰も
ぼくを呼びに来てくれない砂浜
何度も作り直しては壊された
砂の城の残骸の傍らに立ち尽くす
十歳のぼく

故郷の海と波だけが知っているのは
いまでも変わらないぼくの性格

ぼくの記憶のなかに
いまもありありと聳えてるのは
無鉄砲だったぼくの
もろすぎた砂の城

いまも昔も
奴隷たちの国で
唇を噛みしめながら生きてきた
これからもたぶん　死ぬまで
砂の城の残骸とともに