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コロナ禍で牙むく中国「債務のワナ」

2020年08月09日 18時36分15秒 | 日記

 

ニューズウィークが、一帯一路が岐路に立っていることを詳述していた。一帯一路が、後進国のインフラ整備で。当初は大いに貢献したが、その後、後進国が債務不履行に陥って、後進国を乗っ取りか、狡猾な再建回収を考えだすか、後進国の将来に障害にならないよう、世界が監視する必要があると説く。

いか、記事の引用::::::::::::::::::::::::::

コロナ禍で牙むく中国「債務のワナ」新型コロナ危機のあおりで新興国の対外債務問題が深刻化している。焦点に浮上しているのが中国。最近の研究で、広域経済圏構想「一帯一路」に絡んだ新興国の巨額の隠れ債務に光が当たり、貸し手の中国が他国を圧倒する「新興国のメインバンク」としての姿をあらわにしつつあるからだ。

だが新興国の中国依存は危うさもはらむ。コロナ禍による経済苦で、多くの国は債務返済の負担が増した。コロナ対応が後手に回れば、新興国が感染爆発や債務危機の震源地になりかねない。そこで主要国は債務の減免を探るが、中国は及び腰。むしろ危機で強まる貸し手としての力を背景に、地政学的な野心の実現に動くとの警戒感も広がっている。牙をむく「債務のワナ」に、世界はどう向き合うべきか?

■影響力強める中国

中国の王毅外相の元には途上国の債務救済を求める声も寄せられている
中国の王毅外相の元には途上国の債務救済を求める声も寄せられている

パキスタンのクレシ外相は4月15日、中国の王毅(ワン・イー)外相に電話をかけた。わが国はいかなる時も中国の戦略的友好国だと強調し、新興国の債務救済で中国が積極的な役割を果たすよう要請した。要は自らの債務負担を減らすよう求めたのだ(。

15日は20カ国・地域(G20)の財務相と中央銀行総裁が、電話会議で一部途上国への対外債務の支払い猶予を決めた日だ。クレシ外相もこの決定に言及して中国の決断を促した。パキスタンの切迫感が伝わってくる。

同様の債務救済要請は、キルギスやエチオピア、ガーナといったアフリカ諸国からも寄せられている。危機前から中国に対し多額の債務を負っている国々が多く、その額は2017年時点でパキスタンが国内総生産(GDP)の7%、エチオピアが20%、カザフスタンに至っては40%に達する。

コロナ危機の発生後も、中国への債務を膨らませている国は少なくない。深みにはまるのがスリランカ。2017年、中国の援助で建設したハンバントタ港の債務返済に行き詰まり、99年の長きにわたる港の運営権を中国企業に譲り渡した事件は「債務のワナ」の典型例として批判された。ところが5月下旬、今度はそのハンバントタ湾と同国中心部の工業団地とを結ぶ高速道路を整備するため中国輸出入銀行からさらに約10億ドルを借り入れた(。

ラオスでもコロナ危機下、中国へと延びる鉄道と高速道路の工事が続いている。このプロジェクト向けに借りた資金の返済が絶望的になっているにもかかわらず、だ。プロジェクトを糸口に、中国がラオスへの影響を一段と強めるのは必至とみられている。

コロナ危機下で中国が債権国としての立場を強め、新興国に影響力を及ぼす余地が増している。米欧などで高まる債務減免の要請には、こうした中国の影響力をそぐ狙いもあるとみられ、新興国の債務問題は経済・人道面の問題であるとともに、覇権競争の色彩も帯びつつある。

■コロナ危機前から危険水準

新興国の対外債務は、コロナ危機の前から深刻な状況にあった。所得の低い120カ国を対象とした分析では、政府の歳入に対する対外債務の支払いは10年の6%台から18年には12%台に急上昇していた。

国際通貨基金(IMF)と世銀が今年2月にまとめた報告書も、低所得国のうちすでに半数で対外債務が返済不能に陥ったか、その危機にあると指摘していた。

そこへコロナ危機が直撃し、08年のリーマン危機をしのぐペースで新興国から資金が流出した。通貨が急落して債務の返済が難しくなり、多くの国々は乏しい資金と貧弱な保健インフラで危機に立ち向かわざるを得なくなった。

国連開発計画(UNDP)は途上国が危機の克服に必要とする資金と調達額との差は2兆~3兆ドルにのぼるとはじく。

そこでIMFは緊急融資などで当座の資金を供給するとともに、低所得国に対して6カ月間、債務の返済を猶予した。さらに4月15日のG20会議は80近い国々を対象に、政府間で貸し付けた債務の元本と金利の支払いを20年末まで繰り延べることで合意した。

■不十分な債務救済

ただ合意したのはあくまで一時的な支払いの停止にすぎず、21年以降の道筋は不明だ。民間の債務についても対応を呼びかけるにとどまった。官民が債務の減免などに大なたを振るうかは、これからの課題だ。

最も動きが読めないのが中国だ。経済協力開発機構(OECD)メンバー国を中心につくる「パリクラブ(主要債権国会議)」に加盟していないこともあり、どんな債務をいかなる形で救済するか不透明なのだ。中国がとりあえずG20の合意に名を連ねたことを各国は歓迎したが、これを米外交問題評議会(CFR)の国際経済ディレクター、ベン・スティール氏は「茶番」だと切って捨てる。

最大の理由は、中国が一帯一路の関連プロジェクトで貸し付けた債務の救済に応じるつもりがないからだという。

実際、G20会議の翌日、中国商務省傘下のシンクタンク国際貿易経済合作研究院(CAITEC)の幹部は、共産党系の英字紙グローバル・タイムズに寄稿し、国外のインフラ開発などに提供した優遇ローンについて「債務救済の対象外だ」と述べ波紋を呼んだ。

スティール氏の分析によると、中国開発銀行などが一帯一路の初年度にあたる13年以降に融資した関連プロジェクトは67カ国で1800案件、金額で1350億ドルに達する。それが、すべて救済の対象外になるという。

しかも、これら融資の金利は世銀などに比べはるかに高い。スティール氏は中国が今も世銀融資の主要な借り手だと指摘し、「世銀から安くお金を調達して新興国にまた貸しししている」とも批判した。

■「隠れ債務」浮き彫りに

中国の新興国向け融資の実体はよくわからない(新華社=共同)

国向け融資の実体はよくわからない(新華社=共同)

中国の対外融資の実体はベールに包まれている。融資の多くが国営企業や特別目的会社を通じて提供され、その内訳も明らかになっていないためだ。IMF、世銀や国際決済銀行(BIS)の報告制度から漏れた融資も多くあるとされる。

これにメスを入れようと、ここへきて活発に研究が進んでいる。中心的な役割を果たしたのが、5月に世銀の首席エコノミストに任命されたカーメン・ラインハート米ハーバード大教授だ。ドイツのシンクタンク、キール世界経済研究所の研究者らとともに、個別の借り入れ契約や国家間の協定、政府の報告書、学術研究など多くの情報源から幅広くデータを集め分析を行った。

この結果、新興国が中国に対して負う債務のうち約50%、額にして2000億ドル相当が、表に出ていない「隠れ債務」であることが判明したという。

これらを含めた新興国の対中債務の総額は3840億ドル。13年と比べて2倍近くに膨らんでおり、1カ国でパリクラブに加盟する22カ国の合計(2460億ドル)を超えるという。世銀(3000億ドル強)をも上回り、中国は名実ともに世界最大の貸し手の地位を確立している。

中国から新興国への融資総額3840億ドルに対し、外交評議会のスティール氏がはじいた一帯一路向けの融資額は1350億ドル。基準が異なるので厳密な比較はできないが、大まかには中国の新興国向け融資の約3分の1が一帯一路関連ということになる。

■中国融資の特徴は

ラインハート氏らの研究は、中国の融資の特徴にも切り込んでいる。

第1に、企業などを通じた民間の形態をとっていても、資金の出どころをたどると国やその関係機関が背後におり、ほぼすべてが実質的に公的な融資だという。

第2に、融資条件は必ずしも借り手に有利ではない。世銀がゼロか年1%程度の低い金利を適用しているのに対し中国は民間銀行並みで、年6%も珍しくない。返済までの期間は短く、多くの融資には天然資源や対象事業の収入、国有資産といった担保が設定されていると分析する。

第3に、返済が難しくなった場合も、債務を減らすことはまれで、返済期限の延長で対応する例が多い。しかも米欧日などパリクラブの国々が多国間で明確な基準を決めて債務のリストラを進めるのと対照的に、借り手と相対で交渉し内容もほとんど明らかにしないという。外交評議会のスティール氏は、これに関し「一帯一路の国々を分断しておきたいからだ」との見方を示している。

■噴出する不満

もともと中国の融資姿勢には「互恵的な経済発展よりも戦略、安全保障上の目的が優先されている」と疑念をもつ国が少なくない。

多額の債務を負った割に雇用面などで自国への恩恵が小さい。中国企業がインフラ建設を一手に受注していることも問題視されており、コロナ禍で経済の苦境が深まるなか不満が増幅されている。

ナイジェリアの議会は5月中旬、00年以降の中国からの融資を調査することを決めた。事業の実現性を精査し、条件を再交渉する狙いだ。他のアフリカ諸国、そしてマレーシアなど東南アジアの各国でも似たような動きが出てきた。

中国は難しい立場にある。新型コロナをまん延させた中国への不満は根強い。債務救済への要請を拒否すれば、火に油をそそぐことになる。露骨に担保資産の差し押さえなどに動こうものなら、食料にも困っている国の弱みにつけ込むのか、と国際的な批判も噴出するだろう。

他方、安易な債権放棄などに応じれば、経済の落ち込みで不満をためた自国の国民から突き上げられかねない。中国自身、板挟みの状況だ。

英紙フィナンシャル・タイムズは一帯一路向けの融資を担う中国開発銀行の研究員に匿名で内情を聞いている。研究者は「一帯一路向けの融資は援助ではないので、少なくとも元本と若干の金利はとる必要がある」と指摘している。「ポートフォリオの20%に問題が起きてもなんとかなるが、半分が貸し倒れになると耐えられない」とも明かし、救済は返済期限の延長や金利引き下げにとどめたい意向を示した。

 

記事はまた中国の政府系シンクタンクの見方として、中国開発銀行などが中国に友好的な国に対しては金利減免と若干の元本削減をするかもしれない、との声を紹介している。救済の可否や度合いも中国政府との関係次第というわけだ。

■中国融資の強みは

中国が債務の減免に消極的との見方は必ずしもあたらない、と主張する専門家もいる。北京に拠点を置く開発問題のコンサルタントで、ケニア出身の元外交官ハンナ・ライダー氏だ。

同氏らの研究によると、中国は00年から18年の間に世界で38億ドルの債権を償却した。融資全体に占める額こそ大きくないが、同じ期間中の米国の23億ドル、英国の8億ドルよりは多いという。低所得国が経済発展に伴って中所得国に分類されると国外からの援助が6割近くも減るため、中国に頼る国が相次いでいるとも指摘する。

米シンクタンクの開発専門家らが世銀と中国の融資を比べた最近の研究も、中国が多くの新興国にとって魅力的な貸し手となっていることを示している。

世界157カ国を対象に00年から14年までの15年分のデータをもとに、支払いの猶予期間、金利、返済期限などを分析したところ、中国の融資条件は世銀より厳しいものの、民間よりは有利だった。また中国の融資は1件あたり平均3億ドル強と世銀の2倍強の規模があり、大規模なインフラ事業などに向いていることも分かった。さらに世銀が対象としていない30カ国に融資しており、特にデフォルト(債務不履行)の危険がある国々への新規の貸し出しは、半分近くを中国が占めていた。

■金融混乱の火種に?

これは裏を返せば中国が大きなリスクを抱えていることも意味する。コロナ危機による打撃が広がるにつれ、経済基盤の弱い国々で融資の焦げ付きが増えるのは避けられない。その最大の貸し手となった中国が透明性を欠いている現状は、国際金融における適正なリスク評価や政策対応を妨げ、きわめて危険だとラインハート氏は警鐘を鳴らす。見えにくい中国の融資と対応が、金融市場を混乱させる火種になりかねない。

一帯一路への影響に目を向ければ、中国が目先は融資に慎重になり、関連事業が一時的に滞る可能性も指摘される。

それでも「中国が債権国に対してもつ影響力は増す」との見方は少なくない。とりわけ戦略的に重要な国や事業に対しては、背に腹は変えられず手綱を引き締める可能性があるからだ。中国が地政学上の要衝と位置づけるスリランカやラオスの事業に追加融資しているのは、まさにその兆候と言えるだろう。

ケニアでは中国の融資で整備されたモンバサ港が債務不履行に陥り接収されるとの懸念もくすぶる。「返済が滞ることによる悪影響は加速度的に前倒しで起きるだろう」との悲観的な見方もある。

■警戒強める米国

米国は、中国の動きに警戒感を強めている。

16年の米大統領選でトランプ大統領と共和党候補指名を争ったテッド・クルーズ氏ら16人の上院議員は、ムニューシン財務長官とポンペオ国務長官に書簡を送った。新興国が中国に対して抱える債務が金融面、地政学面でもたらす影響を注視するよう求める内容だ。

議員らが警戒するシナリオは2つ。一つは中国の国内経済が悪化、期限が来た融資の借り換えに応じなくなり、新興国の資金繰りを逼迫させる事態。もう一つは、中国が戦略的に重要とみて巨額の資金を投じたインフラ事業が行き詰まり、資産の差し押さえや政治的な影響力行使への誘惑に駆られる展開だ。

議員らは米国や同盟国の納税者が結果として中国の金融機関を救済し、しかも「債務のワナ」を使った外交を手助けする事態は断じて避けねばならない、と主張している。

具体策として中国への債務返済に苦しむ国々に目配りし、必要ならIMFや世銀を通じて支援するとともに、支援にあたっては対象国が中国に対して負うすべての債務や法的な義務を開示するよう求めるべきだと訴えた。

■米中対立の前線に?

 

ポンペオ米国務長官は中国に厳しい融資条件の見直しを求めている(ロイター)
 

ポンペオ米国務長官は中国に厳しい融資条件の見直しを求めている(ロイター)

こうした動きに呼応したのか、ポンペオ国務長官は最近「中国共産党がアフリカ諸国に対して巨額の債務を課している」と批判し、厳しい融資条件を見直すよう中国に求めるべきだとけしかけた。債務問題が米中対立の新たな戦線になる可能性が出てきた。

そうでなくとも債務の見直しは、米中関係の悪化で複雑化する見通しだ。中国が最大の債権国になった今、その存在抜きに実効性のある債務減免は難しい。ただ米国も中国も、相手が主導する債務減免の取り組みには乗りたがらない。また両国とも自らが債権放棄などで負担した資金が、相手への支払いに使われるのを嫌がるから、結局にらみ合いになって対応が暗礁に乗り上げる――。そんな可能性をIMFも懸念している。

そうこうしている間に格下げや債務不履行が同時多発的に起こり、金融市場が混乱する事態も視野に入ってくる。

では、どうしたらいいのか。何よりもまず中国を債務救済の枠組みに引き入れよ、多くの専門家は口をそろえる。

米保守系シンクタンクのハドソン研究所は、米国主導でパリクラブを拡大するか、さらに大きな債権国の国際的な枠組みを創設せよと説く。そこで主要国や国際機関、国営企業に対し、「低所得国で9割」といった大胆な債権放棄を呼びかけよと提唱する。相対での交渉にこだわる中国は反対するだろうが、「中国の融資慣行を変えるには避けて通れない道だ」という。

■一帯一路の多国籍化

パリクラブの見直しや拡大に加えて、一帯一路構想そのものを多国籍化し、世銀やその他の国際金融機関を関与させるべきだとの声もある。これにより融資の基準や契約を透明化できるとの見立てだ。

一帯一路の関連事業は、もともと融資よりも長期投資になじむプロジェクトが多い。そこで債権を株式に転換する「デット・エクイティ・スワップ」を実施し、一帯一路構想を巨大な政府系ファンド事業に衣替えしてはどうかとの意見もある。資金を受け入れる側の国にも土地などを提供する見返りに株式を割り当てるのがポイントで、これにより十分な発言権を与えるとのアイデアだ(With the coronavirus imperilling belt and road borrowers, China must not simply write off debt)。

一方、先の北京在住のコンサルタントで元外交官のライダー氏は、むしろ必要なのは、貸し手の集まりのパリクラブとは対極の、借り手によるクラブだという。これにより中国が提示する金利や返済期限などの条件について債務国どうしが情報交換し、有利に交渉できるようになるとみる。

■問われる新たなガバナンス

もっとも仮に債務の軽減策が実現したとして、浮いたお金が無関係な用途に流用されては元も子もない。そこでUNDPは新たな国際組織を立ち上げて、資金が感染症対策や経済の下支えに効果的に使われるよう監視することを提唱する。

同様の構想は開発金融や債務問題の権威からも提案がされており、こちらは新機関でなく、世銀やアジア開発銀行など既存の機関が監視の機能を担うことを想定する。実現した場合、中国は当然これらの枠組みで中心的な役割を果たすことになろう。

中国が巨大な債権国として台頭した新たな世界に、今の国際金融のガバナンス(統治)が対応できていないのは明らかだ。新興国にとって国外からの融資は、経済発展になくてはならない糧である半面、他国への依存を強め、政治的な圧力も招きうるもろ刃の剣だ。不意の金融不安や国際秩序の動揺をまねく債務の悪用を防ぐためにも、中国の存在を前提にした透明性の高いルールとチェックの仕組みは不可欠。コロナ禍を奇貨として、その体制を早急に検討する必要がありそうだ。


中国はファーウェイ5Gで通信傍受する、英米の歴史からそれは明らか

2020年08月09日 18時35分46秒 | 日記

 

2020年8月6日(木)14時15分
ニューズウィークが『中国はファーウェイ5Gで通信傍受する、英米の歴史からそれは明らか』という長論文を掲載しているが、最近の中国の動きを見ると在り得る話と思う。民主国家でも、私企業に命令を出せば、そう簡単に拒否できない。中国の巨大企業は中国共産党の支持は拒否するというが、それは絵空事。著者はカルダー・ウォルトンというハーバード大学ケネディ政治学大学院研究員。

<エニグマ解読からNSAの電話情報収集まで──その機会があればいつだって熱心に他国の通信情報を盗み取ってきた国家の歴史を教訓とするならば、中国政府がファーウェイを悪用しないはずがない>

国内で整備する第5世代(5G)移動通信システムから中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)を排除する──イギリス政府は7月半ばに、そう発表した。アメリカ政府の科す制裁措置を考慮するとファーウェイ製の通信機器は使用できないと、英国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)が結論を下したとされている。

表向きの理屈はさておき、本当にファーウェイの機器が安全保障上の脅威をもたらすのか否かは真剣に検討する必要がある。なにしろNCSCも最近までは、5Gネットワークの「周辺」部分に同社製品を使っても「中核」部分に使わない限り問題ないと主張していたからだ。

 
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NCSCを管轄する英政府通信本部(GCHQ)は、ファーウェイがインターネットの高速通信網に参入した当初から、そのリスクをひそかに調べていた。そして幸か不幸か、現在に至るまで中国政府がファーウェイ製品を悪用してサイバー攻撃を仕掛けた証拠はない。

だが証拠の不在は、必ずしも不正行為の不在の証明とはならない。国益や安全保障を理由に、国家が自国の民間企業を動かして通信の秘密を侵し、機密情報を収集しようとするのは今に始まったことではない。どこの国も、そうした行為の加害者であり被害者でもある。

その事実は長く秘められてきた。しかし近年における情報公開の法制化とその厳格な施行により、昔の、とんでもない秘密の数々が明るみに出てきた。イギリスもアメリカもひそかに通信会社と契約を結び、国益のためと称し、通信機器に暗号解読機能を忍び込ませていたらしい。

これが歴史の教訓であれば、結論は明白だ。ファーウェイ製品で構築した5Gネットワークを使って中国政府が他国の情報を収集することなどあり得ないと考えるのは幼過ぎるし、あまりにも甘い。

ずっと昔から、権力者は敵の通信を傍受して利用することに熱心だった。昔は封筒に湯気を当て、そっと開封していた。今はインターネット上の膨大な交信データを、人工知能で解析している。

海底ケーブルの切断作戦

時代を画したのは、1902年のグリエルモ・マルコーニだ。イタリア人の彼はこの年、初めて大西洋横断の無線通信を成功させた。同じ年、イギリスの著名作家ラドヤード・キプリングが「無線」と題する短編を発表した。モールス信号による通信が傍受されるという話で、当時はSF的な夢物語に思えたが、数年後には現実になっていた。

12年後、第1次大戦が始まるとイギリスは緊急事態法制として国土防衛法を制定し、郵便と電報の大掛かりな傍受を許した。

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第1次大戦後に米政府の暗号解読部門を率いたヤードリー U.S. NATIONAL SECURITY AGENCY

 

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1914年8月の開戦時には、ドイツが敷設した海底ケーブルをひそかに切断した。海底ケーブルは当時の先端技術で、大英帝国はその広大な範図を長い海底ケーブルで結んでいた。そして、他国が同じことをするのをひそかに妨害した。

「戦時検閲」と称し、ドイツがイギリスの海底ケーブルを通じて流した情報を全て傍受し、解読できるようにもした。あの大戦中、英国本土には180人の検閲官がいて毎日5万件の通信に目を通していた。海外120カ所の拠点にも400人の検閲官がいた。

大西洋を横断して英米両国を結ぶ海底ケーブルも傍受の対象だった。その起点は、イングランド南西部のコーンウォール。そこにはGCHQの施設がある。100年後にエドワード・スノーデンが盗んだのも、そこに集められていた情報だ。

当時のイギリスは、アメリカを含む中立国の通信も傍受していた。1917年には海軍省の暗号解読部門「40号室」が、いわゆる「ツィンメルマン電報」を解読した。ドイツ帝国のアルトゥール・ツィンメルマン外相がメキシコに言い寄り、反米同盟を結ぼうとしていることを示す通信だった。

その電報は、あえてアメリカの通信網を介して送信されたが、イギリスはそれも傍受し、解読した。そしてアメリカ政府に伝えたのだが、通信傍受の事実は伏せ、スパイが命懸けで入手した情報を装った。

ツィンメルマン電報は1917年3月に公表され、アメリカが第1次大戦に英仏側の同盟国として参戦するきっかけとなった。一通の電報の傍受と暗号解読がアメリカ政府を動かし、参戦を決断させた。通信傍受の歴史に残る大きな成果だった。

第1次大戦後、アメリカ政府も暗号解読部門「ブラックチェンバー」を創設した。責任者を務めたハーバート・ヤードリーは外国との間で交わされる電報の複写を入手するため、ウェスタンユニオンをはじめとする米通信各社と秘密裏かつ非合法の契約を結んだ。毎朝、首都ワシントンにある電信会社の事務所に職員が出向き、電報文の写しをブラックチェンバーに持ち帰り、夕方までに返却する約束だった。ブラックチェンバーは「全てを見る。全てを聞く。感度は抜群で、どんな小さな声も聞き漏らさない」。ヤードリーは後に、そう述べている。

だが、そうはいかなかった。アメリカ政府が心変わりしたからだ。盗聴は卑劣な行為で、膨大な労力を費やす価値はないと考えるようになり、盗聴への関心を失ってしまった。

1929年に大統領になったハーバート・フーバーは、ヘンリー・スティムソンを国務長官に起用した。スティムソンは、公務に対して高い道徳的基準を要求することで知られており、ブラックチェンバーとは対立する運命にあった。

ブラックチェンバーの活動を知ったスティムソンは、すぐに部門を閉鎖し、紳士は他人の手紙を読むものではないと言い放った。

この決定の結果、アメリカは1930年代に暗号化された通信を傍受できず、戦術的かつ戦略的な脅威に直面した。一方、アメリカと敵対する外国政府は、アメリカ人の通信を傍受することにそのような紳士的な自制心を発揮しなかった。

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もしスティムソンがブラックチェンバーに紳士的ではない仕事を続けることを許していたら、通信会社と密約を交わし、ケーブルを通る通信をことごとく盗聴できたはずだ。そして当時の世界に潜む戦略的脅威について、もっと情報を得ることができただろう。

スティムソン自身はその後、フランクリン・ルーズベルト政権の陸軍長官となり、皮肉なことに、アメリカの暗号解読部隊によって得られた日本軍の暗号通信文を第2次大戦で大いに利用することになった。

エニグマ解読の大きな成果

あの大戦でイギリスがドイツの通信を大量に収集し、それが連合軍の勝利に貢献したことは、今ではよく知られている。ドイツはエニグマという暗号機を開発した。キーボードとスクランブラーと呼ばれる装置で構成されるエニグマは、何十億種類もの暗号を生成できた。だから当時の技術では、事実上解読不能だった。

だがマシンの弱点を調べ、ドイツの捕虜が持っていたコードブックを利用することで、ロンドン郊外のブレッチリーパークに集まった暗号解読チームは、エニグマ暗号を解読するマシンを作り上げた。こうして通信の解読は一大産業となり、1943年には毎月3000~4000件の暗号を解読していた。

ブレッチリーパークの戦争中の業績は今やよく知られているが、戦後の歴史はあまり知られていない。イギリスの諜報機関が戦後になってブレッチリーパークの業績をなるべく秘密にしようとした主な理由は、当時の植民地政府がエニグマを通信に利用していたからだ。

実際、戦争末期にイギリス側はドイツから何千台ものエニグマを押収し、通信の秘密に不可欠と説いて各地の植民地政府に渡していた。

エニグマ機を使用したこれらの植民地の通信は、戦後ブレッチリーパークに代わって暗号解読基地となったGCHQの格好のカモだった。

イギリス政府はまた、独立後の元植民地の政府を説得して、GCHQが作った暗号を採用させた。1957年にサハラ以南のアフリカで初めて独立した英領ゴールドコースト(後のガーナ)もGCHQが渡した暗号を使っていた。公表された記録では事実関係は不明だが、ガーナ政府の通信はイギリスに筒抜けだったと考えるのが妥当だろう。

冷戦の時期に通信を大量収集できたことは、イギリスの国益に貢献した。当時の英米両政府にとって、独立を求めるアフリカなどの植民地国家がソ連に同調するかどうかは死活的に重要な問題だった。

元植民地におけるソ連の、そして共産主義の脅威について、イギリスは高度な情報評価能力を持ち、政策立案者の不安を緩和できた。

戦後、冷戦が始まると、イギリスのGCHQとアメリカの国家安全保障局(NSA)は改めて大手通信会社と秘密裏かつ非合法の契約を結び、それを通じて大規模な通信傍受プロジェクトを続けた。

米政府の大量通信傍受作戦

GCHQの支援を受けた米軍の諜報機関(NSAの前身)はコードネーム「シャムロック」という作戦で、ウェスタンユニオンをはじめとするアメリカの大手通信会社3社と秘密契約を結び、ケーブルを通じてアメリカに送受信される全ての通信のコピーを毎日入手した。

企業は「愛国的な理由」から協力し、アメリカの国家安全保障を支援していると考えていた。

シャムロックがアメリカの安全保障や政治に実際に与えた影響について、公の情報ではほとんど知られていない。NSAで長年副部長を務めたルイス・トルデラは、シャムロックは第2次大戦の初期から「誰からも大きな注意を払われずに」活動を続けたが、実際には「あまり価値を生み出さなかった」としている。だが、そうだとすれば、なぜ活動が続いたのかという疑問が湧く。

1975年に政府情報機関の非合法活動の調査のために設立された上院の情報活動調査特別委員会、通称「チャーチ委員会」はシャムロックの活動を暴き、「おそらくこれまでで最大の政府による通信傍受プログラム」と結論付けた。このことは、アメリカ国民の通信の傍受を規制する1978年の外国情報監視法(FISA)につながった。

 
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だがシャムロックで確立された原則は生きていた。通信会社は違法と思われる場合でも、アメリカの情報当局に自ら進んで協力した。

現代のデジタル革命は、政府による情報収集の本質、範囲や規模を根本的に変え、それによって諜報の本質そのものも変わってきた。

だが情報収集のために通信会社を利用するという基本原理は、インターネット時代になった今も変わらない。情報通信という干し草の山の中にわずかに含まれる重要な情報を見つけ出すためには、国がその干し草の山を所有する必要があるからだ。

今では通信会社と秘密の合意を結ばなくても、政府の情報収集活動を支える法的な枠組みがある。NSAによる電話のメタデータ(通信記録)の一括収集プログラムは、米愛国法第215条を通じて行われた。GCHQはスノーデンに暴露されるまで、時代遅れの曖昧な法律の下で大量の情報収集を行っていた。

こうした情報収集は継続的な監視を行う「監視社会」だと批判されるが、実際にはそうでもなかった。スノーデンによる暴露後に作成された米諜報活動の透明性報告書によれば、NSAは通話やテキストメッセージに関する大量の情報を収集したものの、それが特定の人物(またはそれらしき人物)に関する具体的調査につながった例はごく一部だ。

しかし彼らの情報収集プログラムは国の安全保障には貢献してきたようだ。イギリスの独立調査では、情報収集プログラムがスパイ対策やテロ対策、麻薬対策や人身売買対策に役立ったことが明らかになった。ロシアのハッカー集団「ファンシーベア」による2015年の英総選挙介入の試みをGCHQが突き止めた(そして阻止した)きっかけも、この情報収集だったようだ。

数十億の「秘密の裏口」

国家が新たな通信プラットフォームを使ってスパイ活動を展開しているのではないかという疑惑は、中国やファーウェイに限った話ではない。

例えばカスペルスキー社のウイルス対策ソフトは、ロシアの諜報機関と関連があると考えられている。アラブ首長国連邦のメッセージアプリ「ToTok」は、同国政府の諜報活動に使われているといわれている。中国政府は、大人気の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を悪用していると疑われる。

党独裁国家の中国には、真の独立組織などない。米英の諜報機関がかつて通信会社を利用したように、中国政府がその気になれば、ファーウェイの通信機器を悪用しないはずがない。実際、2017年に制定された中国国家情報法は各企業に対して、必要とあれば国の諜報活動に協力するよう求めている。

イギリスの専門家たちは以前、5G網の「周辺」と「中核」部分を区別して、中国スパイが「中核」に触れられないようにすることは可能だと示唆していた。だが5Gの「仮想化」された通信網の中では、両者の区別が曖昧で、たとえ末端部分でもアクセスされれば脅威が増すという主張もある。

 
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それに、「周辺」部分しか悪用できないとしても、中国政府が得る情報面での利益(そしてイギリスの国家安全保障の弱体化)は相当なものになるかもしれない。

中国が経済スパイ活動を展開して、イギリスの知的財産を盗み出す可能性もある。英国民に関する一見無害なデータが盗まれ、そこから英政府が秘密にしておきたい類いの(国防や安全保障に関わる)活動が明かされる可能性もある。中国がイギリスの5G網に片足を踏み込んでいる状態の中、イギリスの安全保障や諜報にまつわる情報が中国政府に渡る可能性は十分にある。

サイバー攻撃による破壊工作が行われる可能性もゼロではない。中国政府がファーウェイの通信機器を使って、国際的な危機のさなかに、あるいはサイバー攻撃の一環として、イギリスの電気通信網を破壊することもあり得る。

5G網にファーウェイの通信機器を導入するとどれほどの脅威がもたらされるのか、想像してみてほしい。それらの通信機器は、家庭やオフィス、通信インフラに内蔵される何十億台もの通信機器につながっている。それらの機器の多くはまともなセキュリティー対策を施されておらず、所有者はそれが通信網につながっていることさえ知らないかもしれない。イギリス社会に侵入するための「秘密の裏口」が何十億個もできることになるのだ。

アメリカもイギリスも、かつては通信会社との秘密契約を通じて通信機器に細工を施し、大々的な情報収集を行ってきた。その価値は十分に承知している。中国がファーウェイの技術に、それと同様の価値を見いださないはずはない。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の中、私たちはテレビ会議アプリのズーム(Zoom)を使う仮想化された生活に浸り、超高速の5G網はこれまで以上に魅力的なものとなっている。だがコンピューターの世界に「移住」しつつある私たちにとって、パンデミック前の脅威を忘れないこともまた、これまで以上に重要だ。

もしもファーウェイが中国ではなくロシアの企業だったら、イギリスはそもそも、自国の高速通信網への参入を認めていただろうか。

その答えは間違いなく「ノー」である。


北西太平洋の海面温度、上昇始めた?

2020年08月09日 18時35分19秒 | 日記

 

気象庁の表記の海面温度データを見ると、梅雨が明けたら、温度上昇傾向かと見える。TVの気象解説者も、今年も大型台風が発生する恐れがあると言っていたが、素人目にも、気象庁のデータの通り、、台風が発達する東シナ海、フィリッピン西側がすでに30度を超えているから、今年は昨年以上の大型台風が来ると思わないといけ無さそう。

 

昨日のデータを見ると、北西太平洋の海面水温、特に台風の通り道、30℃に達している。台風の大型化につながるのでは?

 

気象庁は、傾向を7月に発表しているが、おおむね北西太平洋の海面温度は平年より高いと解説している。

解説

北西太平洋の海面水温

2020年7月下旬の北西太平洋の海面水温の実況は、表のとおりでした。

表:北西太平洋の海面水温の実況
図中の記号 海域名 海面水温の実況
P1(注) オホーツク海中部および北部 平年よりかなり高くなった
P2 カムチャツカの東、ベーリング海およびアリューシャン近海 平年より高くなった
P3 アリューシャンの南 平年並となった
P4 日本のはるか東から日付変更線付近 平年より高くなった
P5 南鳥島近海から日付変更線付近 平年よりかなり高くなった
30℃以上の海域がみられる
P6 南シナ海 平年よりかなり高い状態が続いている
30℃以上の海域が広くみられる
P7 フィリピンの東 平年よりかなり高い状態が続いている
30℃以上の海域が広くみられる
P8 マリアナ諸島近海 平年より高い状態が続いている
30℃以上の海域がみられる
P9 ミンダナオ島の東からニューギニア島の北 平年よりかなり高い状態が続いている
30℃以上の海域が広くみられる
P10 赤道域の日付変更線付近 平年並となった
30℃以上の海域がみられる
  その他の北西太平洋の海域 赤道から北緯10度、東経150度から東経160度の海域では、平年よりかなり高い状態が続いており、30℃以上の海域が広くみられる

(注)P1の海域では、海面が広く海氷で覆われているため海面水温データがない場合、海面水温の実況の欄に「−」を表示します。

今後の見通し

カムチャツカの東、ベーリング海およびアリューシャン近海、南鳥島近海から日付変更線付近、マリアナ諸島近海の海面水温は、向こう1か月、平年より高いでしょう。

オホーツク海中部および北部、南シナ海、フィリピンの東、ミンダナオ島の東からニューギニア島の北の海面水温は、向こう1か月、平年よりかなり高いでしょう。