先端技術とその周辺

ITなどの先端技術サーベイとそれを支える諸問題について思う事をつづっています。

アメリカの顔認証システムによる市民監視体制は、もはや一線を超えた

2020年09月04日 10時12分25秒 | 日記
ニューズウィークが、『アメリカの顔認証システムによる市民監視体制は、もはや一線を超えた』と長論文で解説。中々よくできた記事と思う。中核にあるのが、エドワード・スノーデンが暴露したPRISMと呼ばれる大量監視システムである。PRISMはNSAの大量監視プログラムで、グーグル、ヤフー、アップル、フェイスブック、マイクロソフトなど大手IT企業および通信事業者からデータの提供を受け、監視していたものである。日本の状況も、すでに公表してあるようで、探してみたい。
 

 

<中国やインドでは国家が主導して国民を監視する体制を整備したが、アメリカでは民間組織と法執行機関がタッグを組んで監視体制を整備している......>

これまで中国、インド、ロシアとデジタル権威主義国の状況を見てきた。今回と次回でアメリカと日本を取り上げたい。ご存じのようにアメリカは一般的には権威主義国には分類されないが、監視やネット世論操作においては世界有数である。そして日本はその影響を受けている。まず監視を取り上げたい。

世界47カ国の監視状況をまとめているサイトcomparitechのランキングでは、アメリカはワースト9位、日本は14位なので民主主義を標榜している国としては低い方だと言ってよいだろう。ちなみにワースト3は、これまで取り上げた中国、ロシア、インドである。

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アメリカの監視システムというと、アメリカ国家安全保障局(NSA)のXKEYSCOREを連想する方もいると思う。XKEYSCOREは、アメリカの大量監視システムを暴いたエドワード・スノーデンの莫大なリーク情報のひとつだ。さまざまな方法を用いて世界中の通話、メールなどを傍受、収集し、検索可能にしている。XKEYSCOREは日本の防衛省情報本部電波部に提供されていることがわかっており、電波部の部長が歴代警察庁出身者であることから警察とも情報が共有されている可能性が指摘されている。日本国内に六箇所の拠点があり、日本政府はそのためにおよそ五百億円を支払った。XKEYSCOREについては次回説明する予定だが、気になる方は他のサイトのクイズの詳しい説明に、おおまかな経緯や、第193回国会衆議院外務委員会で防衛省情報本部電波部の歴代トップが警察庁出身者と暴露された経緯を紹介したのでご覧いただきたい。

だが、あらかじめ申し上げておくとXKEYSCOREは国内監視の主役ではない。その理由は後述するが、主役が誰かが如実にわかる図がある。下図はエドワード・スノーデンが暴露したPRISMと呼ばれる大量監視システムに関する図のひとつである。ご存じの方も多いと思うが、PRISMはNSAの大量監視プログラムで、グーグル、ヤフー、アップル、フェイスブック、マイクロソフトなど大手IT企業および通信事業者からデータの提供を受け、監視していたものである。マイクロソフトのサービスであるスカイプも対象となっていた。

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エドワード・スノーデンがXKEYSCOREを始めとする日本への傍受工作について暴露したため、日本でも彼の暴露に関する本や記事はたくさん出た。しかし、なぜかこの図のど真ん中にある組織への言及はほとんどない。その組織が全ての情報を集めていたことは図から明らかだ。その組織は世界最強の盗聴組織と呼ばれるDITU(Data Intercept Technology Unit、FBIの部局)である。さらに細かく言うと、DITU内のCollections Operation Group(COG)というグループだ。なぜかDITUと書く時、読み方を必ずつけることになっているらしいので、書いておくと「DIH-tooもしくはdee-too(原文ママ)」と発音するらしい。他の略語で読み方が書いてあることは稀だが、DITUに関してはほとんど全ての資料で読み仮名がふられていた。

FBIはPRISMに参加した各企業にport readerと呼ばれるソフトウェアをインストールし、そこから情報を収集していた。その集めた情報をNSAなどに提供していたのである。またFBIは少なくとも6億4千件のデータが登録された顔認証システムを運用していたことがわかっている(ACLU、2019年6月7日)。少なくともアメリカ国内の監視に関してはFBIは中心的役割を果たしていると考えてよいだろう。

民主主義を標榜する国家で基本となる監視システムには法制度の根拠が必要

最初にFBIのDITUが大量監視システムPRISMで、グーグル、マイクロソフト、フェイスブック、アップルなどから情報を集めることができた理由を説明したい。法制度の根拠があったためである。民主主義国家では警察にはさまざまな捜査や監督の権限が委ねられている。おかげでFBIも合法的に大量監視システムのための情報収集を行うことができた。さらに相手の企業に監視ツールをインストールし、運用する技術がない場合は、出向いて運用を手伝っていた。たとえば創業期のフェイスブック社やLinkedIn社に監視ツールの技術的協力を行っていたことがわかっている(Foreign Policy、2013年11月21日)。マイクロソフト社がOutlook.comをリニューアルした際に、暗号化によって内容をFBIが確認できなくなるのを回避する抜け道を作ったのもDITUだった。

FBIとアメリカのネット企業の関係は我々が想像するよりももっと緊密で日常的なものなのである。
CIPAV、オカーニボー、サイバーナイト、マジック・ランタン等といったいわゆるリーガル・マルウェア(法執行機関が使用するマルウェア。通信傍受、PCやスマホのデータを盗む、キーボード操作を記録するなどを行う)の開発と提供もDITUの仕事だった。

DITUはFBIのみならず、NSAやCIAといった他の政府機関にも協力しており、中でもNSAはDITUをよく利用していたため、DITUのあるクワンティコ(バージニア州)とNSAのあるフォートミード(メリーランド州)の間に専用の光ファイバーが敷かれているくらいだ。

民主主的国家においては、法制度の根拠がない監視あるいは民主主義的価値観に反する監視行為は許されない。そのため、監視システムを効果的に利用するためには法制度の根拠を持つ組織=法執行機関が主役となった方がよい。アメリカで中心となるのはFBIと各地の警察になる。

犯罪「事前」捜査の三つの捜査ツール 生体認証、SNS監視、予測捜査

2017年8月、筆者は江添佳代子と共著で『犯罪「事前」捜査』(角川新書)を上梓した。「犯罪が起きる前の捜査」に関する書籍で主としてFBIとアメリカの警察の活動を中心に紹介した。その時点でFBIが使用する主なデータベースには下記のものがあった。なお、FACEの数値は最近のものに変更している。FACEはFACESと表記されることもあるが、FBI自身が使っているのがFACEであり、多くの資料でもFACEと表記しているので、FACEで統一している。

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FBIで電子的な監視を主として担当しているのは次の部局と考えられる。

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これらの部局は以前は自前のシステムを中心に活動を行っていたが、徐々に外部の民間組織(一部非営利団体を含むため企業という言葉を使っていない)を利用するようになってきている。分野は顔認証システム、個人情報データベースなど多岐にわたっている。そして、その情報を利用するのが法執行機関なのだから合法かつ包括的な監視体制が官民の協力によって構築されていると言っても過言ではないだろう。

中国やインドでは国家が主導して国民を監視する体制を整備したが、アメリカでは民間組織と法執行機関がタッグを組んで監視体制を整備している。

こうした監視活動は従来の犯罪が起きてから行う事後捜査ではなく、犯罪が起きる前に行う犯罪「事前」捜査に当たる。なにもしていない多くの市民を監視化においている。現在、犯罪「事前」捜査には大きく三つのアプローチがある。

 ・顔認証システムを中心とする生体認証システム あらかじめ多くの市民の生体認証を収集し、それを個人情報と紐付けておき、迅速に検索、特定できるようにしておく。
 ・SNS監視システム SNSの投稿を監視し、危険な発言を行っている個人やグループを監視し、犯罪の兆候を事前に察知する。
 ・予測捜査 過去のデータを元に将来起こる犯罪を予測し、対処する。

SNS監視システムは前回の黒人人権運動(2014年から2016年、Black Lives Matter)を契機に全米の警察に導入され、市民の監視に用いられるようになった。これについては前述の『犯罪「事前」捜査』(角川新書)にくわしく紹介したので、関心ある方はご覧いただきたい。

これらの監視活動の次、もしくは並行して大量監視以外の手法が用いられる。リーガルマルウェアによる監視および情報収集である。リーガルマルウェアとはポリスウェアあるいはガバメントウェアとも呼ばれる政府機関が使用するマルウェアである。さまざまな種類が存在し、政府機関に向けてマルウェアを開発、提供する民間企業もある。感染したPCやスマホから情報を盗み出す、位置情報を取得する、マイクやカメラを密かにオンにして情報を集める、キーボード操作を記録する、メールやメッセンジャーの内容を盗み見する、交流のある他のPCやスマホに感染を広げるといた活動を行う。FBIも過去にマルウェアを開発し、捜査に活用してきた。

たとえば2011年のOperation Torpedoでは匿名性の高いダークウェブの利用者を特定するためにマルウェアを用いた。2015年に20万人以上の世界最大級の児童ポルノサイト、プレイペンを摘発した際は同サイトをFBIが二週間運営し、サイトを訪れた利用者をマルウェアに感染させて特定していった。

また、FBIは民間企業が開発、販売していたマルウェアも利用していたことがわかっている。2014年8月に、世界各国の政府機関にマルウェアを提供していたガンマグループから大量の資料が流出した。その中に、FBIとのメールも含まれており、イタリアのサイバー軍需企業ハッキング・チームのマルウェア「ガリレオ(Galileo)」のユーザーであったことが書かれていた。そしてFBIは通常は自前のマルウェアを使用し、バックアップとしてガリレオを利用していたという(前掲 『犯罪「事前」捜査』角川新書)。

スティングレイという装置も使われる。これはスマホの通信基地局に偽装する装置で、監視対象がいると想定される範囲内で使用して相手のスマホを接続させ、位置を特定する。この装置の問題は通信基地局に偽装するため周囲の無関係の人々もニセの基地局に接続してしまうことだ。この装置の存在は公には知られていなかったが、「ザ・ハッカー」と呼ばれたリグ・メイデンが逮捕、投獄された後でスティングレイという装置が使われたことを発見し、無罪釈放となった。

ドローンに搭載して利用することもある。X線装置を搭載した自動車(バン)も利用されている。ターゲットの人物、車両あるいは屋内をX線によって調査する。ニューヨーク市警ではRapiscan system社の車両ZBVを使って一般人にX線を照射していた(ProPublica、2015年1月9日)。ちなみにこのZBVはイラクとアフガニスタンでも爆発物の発見などに使われており、イラク兵からは「白い悪魔」(ZBVの車体が白かったため)と呼ばれていた。

このように大量監視でない捜査方法は多種多様なものがあり、かなり以前からFBIおよびNSAなどの他の政府機関はそれらを自前あるいは民間から購入して利用できるようになっていた。これらの手法と問題点についてはブレナン・センター(Brennan Center for Justice)がニューヨーク市警の捜査手法を分析した資料が詳しい。

近年の大きな変化は先に述べた顔認証システム、SNS監視システム、予測捜査ツールの普及である。今回は近年大きな広がりを見せている顔認証システムと予測捜査を中心にご紹介したい。

一線を越えた顔認証システム

FBIとアメリカの警察は以前から顔認証システムを活用していた。ニューヨーク市警ではFacial Identification Section (FIS)がその任に当たっている。前掲の表のFACEはその代表例だ。その後、事態は大きく変化した。民間企業の台頭がめざましい。技術の発展もさることながら大きく変わったのはSNSの普及と顔認証システム提供企業のモラルかもしれない。

具体的にはネット上(主にSNS)にアップされている写真をAIの学習用データやデータベースとして扱い出した。倫理的な問題だけでなく、法律や利用規約に抵触しそうだが、法的にはクリーンなものもある。たとえばMegaPixelsで紹介されているデータベース(現在、七つ)がそうだ。

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いずれも法律および利用規約上の問題はクリアしているのだが、そこに映っている本人たちが自分の動画が使われていることを理解しているかというとそうではないようだ。

MegaPixelsで紹介されているマイクロソフト社のMICROSOFT CELEBはすでに公開を停止しているが、公開時は10万人以上の個人の1,000万枚以上の画像が登録されていた。これらは学術研究用に無償で利用可能だったため、軍事関係の研究者や顔認証システムで知られる中国のSense Time社やMegvii社も利用していた(Financial Times、2019年6月6日)。

現在、アメリカに顔認証システムを提供している民間組織の主なものは次の表の通りである(あくまで代表的な一部の例)。今回は代表的な二つの組織を紹介したい。Clearview AI社とMitre Corporation(非営利団体)である。

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27カ国、2,228の利用者を持つClearview AI社

業界大手のClearview AI社は、超えてはいけない一線を越えたように見える。今年1月、ニュースサイトやフェイスブック、インスタグラム、YouTubeなどのSNSから自動的に顔写真30億枚以上を収集してデータベース化していたことが暴露された(The New York Times、2020年1月18日)。

同社のシステムはアメリカで600以上の法執行機関や国土安全保障省が使用しているという。同社の出資者にはペイパルの創業者であるピーター・ティールもいる。

最初の顧客であるインディアナ州警察は、同社のClearview AIを試しに使ったところ、たった20分で犯人の特定に成功したという。Clearview AIの機能の評価は高く、前述のFBIのFACEを超えたという声もある。

Clearview AI社の危うさは、画像データの集め方だけではない。顧客の検索内容を把握し、その内容を確認して検索結果を歪めたことが、前掲の記事で指摘されている。同社は記者がClearview AIを導入している顧客に自分の名前を検索してもらった際、検索対象にならないように設定していた。特定の人物を法執行機関の検索から除外することもできるし、逆によくヒットするようにもできることを意味している。

2020年2月には同社の顧客リストが漏洩し、2,228の組織が利用していたことが判明した(BuzzFeed News、2020年2月27日)。しかもそのほとんどは同社と正式な契約を結んでいないフリートライアルの利用者で、記事を掲載したBuzzFeed Newsが取材したところ、利用した企業の責任者はなにも知らず従業員が勝手に利用していたケースもあった。

リストには全米の法執行機関(FBIや国土安全保障省などを含む)はもちろん大学や高校といった教育機関、ウォルマートやベストバイといった小売店チェーン、金融機関、AT&Tやベライゾンといった通信事業者などが含まれていた。利用者はアメリカ国外にも及んでおり、オーストラリア、ベルギー、カナダ、ブラジル、サウジアラビアなど27カ国に及んだ。

一連のトラブルは同社に逆風になるかと思われたものの、アメリカ移民・関税執行局(ICE)は同社と契約を締結した(The Verge、2020年8月14日)。

なお、同社は否定しているが、ゴーグルタイプの顔認証端末も開発中という噂もある。これが実現すれば見ただけで、相手の素性がわかるようになる。

アメリカの安全保障を裏で支えてきたMitre Corporation

サイバーセキュリティに関心のある方なら、Mitreの名前を目にしたことがあるだろう。Mitre Corporationは、サイバーセキュリティの世界ではMITRE ATT&CKやCVEで知られている。だが、彼らの仕事の範囲はサイバーセキュリティだけに留まらない。Mitre Corporationは安全保障に関わるアメリカ政府機関に深くむすびついている。

Mitre CorporationのMITはあの有名なマサチューセッツ工科大学(MIT=Massachusetts Institute of Technology)から取られている。冷戦時代に空軍が同大学に防御システムの構築の支援を依頼したことから始まっている。Airborne Warning and Communications Systems(AWACS)やSurveillance Target Attack Radar System(STARS)、GPSの開発に関与していた(Forbes、2020年7月13日)。

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Mitre CorporationとFBIの関係は少なくとも1990年代には始まっており、1993年にBoston Globe紙がMitreがFBIのデータベースNational Crime Information Center(NCIC、前掲のFBIのデータベース)に関与していたことを報じている(Forbes、2020年7月14日、)。

2014年には顔認証システムと、Next Generation Identification (NGI) systemの構築を手伝った。2015年にはFBIのOperational Technology Divisionのためにフェイスブック、インスタグラム、ツイッターから生体認証情報(顔認証用画像など)を収集した。

2017年にはスマートウォッチやフィットネストラッカーあるいは家庭内の室温計といったIoT機器へのハッキング技術を国土安全保障省に提供していた。

Mitre CorporationはFBIのMultimedia Exploitation Unit (MXU)の最大の発注先だったことがわかっている。2016年以降、FBIのMXUは、毎年日本円にしておよそ1,000億円から2,000億円をMitre Corporationに支払って監視カメラの映像などマルチメディアの調査方法の開発を委託していた。この他に同ユニットはAzimuth社にマルチメディアのバルク検索および画像クラスタリング技術の開発を依頼していたこともわかっている。

顔認証システムを巡る動き

2019年5月にアメリカ自由人権協会(ACLU)がアメリカ下院に提出した資料では現在の顔認証システムには精度、特定の人種などへの偏見の助長、憲法に抵触する危険、透明性の欠如などさまざまな問題があり、いったん利用を禁止し、調査と法制度の整備を行う必要があると指摘されていた。

顔認証システムについてはMIT(The Washington Post、2019年1月25日/)やアメリカ国立標準技術研究所(NIST)(The Washington Post、2019年12月19日)がテストを行っている。両方で性別、年齢、肌の色によって認識の精度が変わることがわかっている。性別では女性、年齢は若年層と老人、肌の色は白くない場合の精度が低かった。

これでは差別や偏見を助長するという批判が起きるのも仕方がない。また、MITのテストではAmazon社のRecognitionはマイクロソフト社やIBM社よりも成績が悪かった(Amazon社はNISTのテストには参加していない)。前掲のACLUの資料では顔認証システムのご認識のために逮捕、拘留された事例が紹介されており、精度の低さが一般市民にとって深刻な脅威になることがわかる。

こうした問題に加えて2020年5月、ジョージ・フロイドの死をきっかけに全米に人種差別への抗議活動=黒人人権運動(Black Lives Matter)が広まり、いまだに収まっていない。Amazon、マイクロソフト、IBM、グーグルといった企業は顔認証システムの提供を停止した。

NISTの顔認証システムのテストは2017年から行われており、2019年まではテスト対象のアルゴリズムとベンダ数は急増していた。しかし、2020年には大きく減少した。アルゴリズム数、ベンダ数ともに2019年の半分以下である。NISTのページで最新の情報を確認できる。黒人人権運動の影響の大きさがうかがえる。

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顔認証システムベンダにとっては見直しの時期なのだろう。ただし、前述したようにICEはClearview AIの契約を締結しており、政府機関の利用は必ずしも減っていないのかもしれない。

次回取り上げる予測捜査ツールではよりはっきりするが、犯罪「事前」捜査にAIを用いることで、「テック・ウォッシング(tech-washing)」が起きている。「テック・ウォッシング」とは、最新の技術を使うことで科学的かつ中立的のように見えるものの、実際には人間の偏見や差別が残っており、むしろそれを永続させてしまう問題のことである。現状の顔認証システムも「テック・ウォッシング」を起こしていた、ということだ。

その是非は置くとしてアメリカでは民間と政府が密接に協力し合って、顔認証システムを広げていた。この傾向は予測捜査ツールでも軍事でも見られる。政府機関と民間組織の間での人の行き来もさかんである。近年は特に民間組織で開発された技術や製品を政府機関が利用することが増えているようだ。

今回はアメリカの顔認証システムを利用した監視についてご紹介した。次回は日本における顔認証システムを用いた監視をご紹介したい。

また、アメリカでは仮に犯人を逮捕しても、違法な捜査方法であったことがわかれば無罪となることからも合法的であることは重要と言える。FBIに「ザ・ハッカー」と呼ばれたサイバー犯罪者リグ・メイデンは、獄中でFBIの捜査方法(密かにスティングレイという装置を利用していた)が違法であったことを突き止めて無罪となり、釈放された(『犯罪「事前」捜査』角川新書、2017年8月10日、第二章でリグ・メイデンとスティングレイについて書かれている)。


官房長官も頭が上がらない横浜の首領、会うたびに『おい菅(すが)くん、安倍を守ってやんなよ』

2020年09月04日 10時00分48秒 | 日記
 
東洋経済が、2017年10月28日号の記事を掲載していたが、面白いので引用してみた。横浜市の港湾工事会社の社長が中々の人物で菅官房長官の横浜市議時代からの支援者で、また、横浜市の現林市長のIRカジノ誘致にも反対を表明していたり、港湾工事業ということで、父親が全国港湾荷役振興協会(現在は解散)の会長だったときに、副会長を務めたのが神戸の甲陽運輸の社長だった田岡氏だった。幸夫氏は田岡氏のことを「田岡のおじさん」と呼ぶとかで本人は裏社会の商売には関係がないが、裏社会とも知り合いがあるとか。菅官房長官、たたき上げで、いままでの総理総裁とは違った政策が出来るかも。
 
以下、その記事の引用::::::::::::::::::::::::::::::::::
 
全国的には無名でも、地元では圧倒的な存在感を誇る企業がある。地域経済を引っ張るだけでなく、政治や教育、文化にも大きく貢献しているのが特徴だ。日本を根っこで支えている名門企業の実態に迫る。
 
船の荷物を積み降ろしする荷役会社として横浜港を取り仕切ってきた(写真は本社、撮影:今井康一)

「今までは会うたびに『おい菅(すが)くん、安倍を守ってやんなよ』と言っていたんだけど、3月に初めて言いましたよ。『菅くん、安倍はもうダメだな』って。森友学園の問題が出たときにかみさんと別れていればよかった。それも菅には言ったんだよ」

こんな歯に衣着せぬ物言いをするのは藤木幸夫氏。横浜に本社を置く藤木企業の会長だ。

横浜の首領(ドン)──。藤木氏を形容するときに、この言葉がよく使われる。藤木企業の売上高は75億円と、決して大きな企業ではない。にもかかわらず、そう呼ばれるのはなぜなのか。

理由の一つは、横浜港の仕切り役であることだ。藤木企業の創業は1923年。港の岸壁にある巨大なガントリークレーンなどを使って、船の荷物を積み降ろしする荷役を本業としている。創業当時は作業時間を予定より大幅に短縮するのが常だったことから、「藤木の早荷」と呼ばれて顧客の信頼を獲得し、事業を拡大してきた。

藤木氏は現在、港運事業者を取りまとめる横浜港運協会会長だ。また85年に開局した横浜エフエム放送の立ち上げに参加、現在も社長を務める。かつては横浜スタジアム会長でもあった。

地域への貢献が認められ、藤木氏は藍綬褒章や勲三等瑞宝章などを受章している。

もう一つは国政の中枢とのパイプが太いことだ。冒頭の発言の「菅くん」とは菅義偉・官房長官のこと。菅氏は秋田出身だが、横浜市出身の小此木彦三郎・元衆議院議員の秘書を長年務めていた。藤木氏はもともと小此木氏と親密で、その地盤を引き継いだ菅氏の有力な後援者になっている。菅氏にとっては頭の上がらない存在だ。

二階俊博・自民党幹事長とは、藤木氏が「兄弟分」と語るほど親しい関係にある。それは2016年9月に「藤木幸夫会長の86歳の誕生と二階俊博先生の幹事長就任をお祝いする会」が開かれたことからもわかる。元参議院議員の村上正邦氏が主催したこの会には、政財界などから多くの関係者が参加した。

さらに藤木氏が畏怖されるのは、山口組3代目の田岡一雄組長と交流があったからだ。藤木企業の創業者である藤木幸太郎氏(幸夫氏の父)が全国港湾荷役振興協会(現在は解散)の会長だったときに、副会長を務めたのが神戸の甲陽運輸の社長だった田岡氏だった。幸夫氏は田岡氏のことを「田岡のおじさん」と呼ぶ。

そうした幅広い人脈や地元経済への貢献もあり、横浜の政財界は藤木氏の意向を無視できない。

カジノ構想阻止へ横浜市長に直言

「私は林(文子・横浜市長)さんに言ったんだよ。『あんたね、カジノやるって言ったら(7月の市長選で)絶対落ちるよ』って。そしたら次の日の新聞に『林市長、トーンダウン』って書いてあった」と藤木氏は笑いながら言う。

横浜の関係者が今、行方を注視しているのが山下埠頭の再開発だ。横浜市は倉庫や荷さばき地などがある47ヘクタールの敷地に、観光やMICE(国際会議や展示会などのイベント)の拠点を作る計画を進めている。ここにカジノを含む統合型リゾート(IR)を誘致する案が浮上しているのだ。

横浜市の調査では、IRを導入した場合の経済効果は年間約4100億円。就業者が約4万1000人増加し、そこから上がる税収は年間61億円になるという。政府が3月に設置した「IR推進本部」の副本部長は菅氏が務めている。

再開発が計画される山下埠頭。山下公園や日本郵船氷川丸など観光スポットに隣接(右下図)

林市長も当初は前向きな姿勢を見せていた。だが今年に入ってから慎重な姿勢に転換し、現在は「白紙」としている。その心変わりが藤木氏のアドバイスによるものなのかはわからない。ギャンブル依存症などへの懸念から誘致に反対する市民が多く、選挙で勝つためにトーンダウンしたというのが実態だろう。

しかし、藤木氏が「横浜にカジノはいらない」と主張している中で、カジノ構想を進めるのは容易ではない。藤木氏は地元企業が山下埠頭を再開発する独自の青写真を持っている。

再開発の具体案が決定するのはこれからだ。藤木氏の思惑どおりに進むのか。ドンの手腕に注目が集まる。


ソフトバンクの携帯ショップが、ソフトバンクに一矢報いようとしている!

2020年09月04日 01時30分17秒 | 日記
東洋経済が、ソフトバンクの携帯ショップが、フランチジ―のソフトバンクに一矢報いようとしていると報じていたが、ソフトバンクの政策に歯がゆい思いをしているがどうする手もないエンドユーザーとして応援したい。私の場合は、携帯とAirの契約停止で、多額の違約金をブンとられ、金輪際、ソフトバンクは使わないと決めている。
 
記事の話は、

ソフトバンクショップを運営する携帯電話販売代理店IFC(本社は大阪市西区)の代表を務める大西誠氏は、東京都内にソフトバンクショップを3店舗持つが、うち2店舗は今年1月、ソフトバンクから今夏までに「強制閉店」させることを通告された。同社はこれを不当として6月、東京地方裁判所に閉店処分の差し止めを申し立てた。何とか応援したいものだ!

 

以下、記事の引用:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 
「携帯ショップ法廷闘争」の激震
2020年9月5日号
強制閉店を命じられた代理店が「不当だ」として差し止めを申し立てた。ありの一穴になるか。
本誌:奥田 貫、山田雄一郎
写真:強制閉店を宣告されたソフトバンクショップ。だがオーナーが差し止め請求をし現在も営業を継続中だ
 

「ソフトバンクとは奴隷契約を結んだつもりはない。このまま黙って引き下がることはできない」。ソフトバンクショップを運営する携帯電話販売代理店IFC(本社は大阪市西区)の代表を務める大西誠氏は、そう憤る。

IFCは東京都内にソフトバンクショップを3店舗持つが、うち2店舗は今年1月、ソフトバンクから今夏までに「強制閉店」させることを通告された。同社はこれを不当として6月、東京地方裁判所に閉店処分の差し止めを申し立てた。

ソフトバンクが強制閉店の理由とするのが、IFCの成績不振だ。ソフトバンクは同社独自の基準による成績評価により、一定水準に達しない店舗を強制閉店させる制度を取っている。

法廷で焦点となっているのは、この強制閉店制度や評価指標の妥当性だ。

これらの施策はソフトバンクショップを運営するほかの代理店も対象となっており、司法がどのように評価するのかは、代理店全体やソフトバンクショップの利用者にも影響する。

評価項目の中心となるのは、大容量プランの契約をどれだけ取れたかや、ソフトバンクが指定する端末をどれだけ売れたかの成績だ。

このため代理店は顧客のニーズに関係なく大容量プランなどを積極的に薦めるケースが多く、結果的に不必要に高額なプランに加入させられている利用者も少なくないとみられる。

この評価制度が今後も続くかどうかという点で、ソフトバンクとIFCの争いの結果が持つ意味は大きい。

5段階にランク分け

ソフトバンクが強制閉店を含む評価制度を導入したのは2016年3月ごろで、その骨格は以下のとおりだ。

ソフトバンクは代理店が運営する各ショップをさまざまなサービスや商材の販売成績によって採点したうえで、相対評価で店舗をS、A、B、C、Dの5段階にランク分けしている。

この店舗評価は毎月ある。6カ月間でD評価を3回取ると「低評価店舗」となり、一定の閉店準備期間を置いた後に強制的に代理店契約を解除する措置が取られる。C評価は2回でD評価1回分とカウントされる。

なお、店舗評価のほかに、運営する全店舗の成績などから決まる代理店へのオーナー評価もある。こちらは四半期ごとに1回で、店舗評価と同様にS~Dの5段階評価だ。2期連続でD評価を取ると全店舗の経営権を事実上、剥奪される。

店舗評価とオーナー評価は、悪ければ強制閉店につながるだけでなく、ほかにも重要な意味を持つ。両評価の組み合わせにより、店舗が顧客対応でソフトバンクからもらえるインセンティブの水準が大きく変動するからだ。

評価による傾斜は激しく、スマートフォンの機種変更のケースなら両評価がSの場合、1件の契約につき3300円のインセンティブがもらえるが、両評価が真ん中のBなら、同じ手間を割いてもインセンティブは0円だ(図表1下表)。店舗評価、オーナー評価は代理店の収益に直結するのだ。

[図表1]

IFCが強制閉店を通告された2店舗は、今年1月までの間にDを3回受けた。

問題は、この強制閉店制度が後出しであることだ。IFCがソフトバンク側と代理店契約を結んでソフトバンクショップ事業に参入したのは12年12月で、その時点ではこの制度はまだ存在していなかった。

当時結んだ代理店契約書では契約解除について、「委託業務の履行実績が一定の期間を通じて不振である等相当の理由があると甲が判断する場合、1カ月以上前に予告することによって契約を解除できる」と記されているのみだ。

なお、IFCは2次代理店で、正確にはこの「甲」は1次代理店のテレコムサービスを指すが、IFCに対して「ルールに基づいて両店とも他社への譲渡をお願いします」と強制閉店の通告を行ったのはソフトバンクの担当部長だ。実態からしてソフトバンクが契約解除の判断を行う主体だ。

IFCを含む代理店が、ソフトバンクから契約書にはない強制閉店制度の導入と開始を知らされたのは突然で、かつ一方的だった。

ソフトバンクは代理店に対して、150ページ前後にも及ぶ大量の文書を毎月送付し、施策方針を一方的に伝達している。この中に記載する形で、販売実績への採点による強制閉店制度が伝えられたのだ。複数の代理店によれば、ソフトバンクは代理店各社に合意を取っていないばかりか、事前に協議をすることもいっさいなかったという。

代理店側からすると、過失などによる業績不振などの理由がない場合でも、ソフトバンク側の都合による評価指標で販売実績を厳しく査定される。「不振」と判定されると短期間で契約を解除される制度があれば、大きなリスクとなる。

ショップを始めるには多額の初期投資がかかる。このため、代理店は事業を継続的に行って利益を出し続けることで回収する必要がある。突如、契約を打ち切られるようであれば、大打撃を受ける。

大西氏は「強制閉店制度が初めから存在していて、まじめに業務をやっていても解約されるリスクがあるとわかっていれば、このソフトバンクショップ事業には参入しなかった」と話す。

「制度が導入された4年前から一貫して、『強制閉店制度はおかしい』と何度も訴えてきたが、ソフトバンクは聞く耳を持たなかった」(同氏)

こうした経緯も含めてIFCは「ソフトバンクが圧倒的な力関係によって一方的に導入した強制閉店制度に従うことを強いるのは、独占禁止法の優越的地位の濫用に当たる」と主張する。

[図表2]

ソフトバンクの言い分

これに対し、ソフトバンクは強制閉店制度を「契約書の解除条件の『不振』について具体化したにすぎない」とし、「導入前から不振の店舗に退出を促す施策をしており、その意味では突然ではない」と反論する。

IFCはソフトバンク側から不振と認定されたこと自体にも異論を唱え、「ソフトバンク側だけから見て不振と判定するのはおかしい」と主張する。強制閉店対象とされた2店舗は営業黒字で、IFCから見れば不振ではないからだ。

IFCは「代理店契約書の解除条項にある『不振』は故意・過失での業務懈怠(けたい)があり、再三の注意・勧告等があっても改善がない場合等に限られるべきである」として「IFCは誠実に店舗を運営しており、強制閉店を求められる理由がない」と主張している。

店舗評価のランクを決める成績査定の妥当性についても、ソフトバンクとIFCは真っ向から対立する。

成績評価はソフトバンクのサービスや商材をどれだけ売ったかの積み上げで決まる。が、大きな比重を占めるのは通信契約の獲得やスマホ端末の販売だ。ソフトバンクはこれを「ボリューム評価」と称している。

ただし、この評価点は単なる量だけでは決まらない。むしろ、ソフトバンクが売りたいものを売っているかが極めて重要となる。

ショップで最も多い販売形態は、通信契約のタイミングでスマホ端末を購入してもらうものだ。

ボリューム評価ではまず、この販売端末の種類によって得点をつける。ソフトバンクが売りたい端末ほど高得点となる。例えばスマホでもグーグル「Pixel」なら7点だが、「iPhone」は消費者に人気なのにわずか2点だ。ここに、通話に必要な音声の「基本プラン」でつく8点を加えたものが基準点となる。

この基準点に、ソフトバンクが重視する通信契約の評価が係数として掛けられ、店舗が得られる点数が確定する仕組みだ。(図表1中央図)

この係数は、通信契約が「新規」なのか「継続」(いわゆる機種変更)なのかや、他社からの乗り換え(MNP)なのか、月間のデータ容量が50ギガバイトの大容量プランなのか、データ容量が少なく月額料金も安い小容量プランなのかによって大きく変わる。

小容量プランの場合は、係数0.5が掛けられる。つまり大容量プランに加入させることができなければ、端末販売と音声の基本プランで獲得した基準点が半減することになる。他方でMNPの評価は非常に高く、係数は4.0だ。

顧客ニーズは二の次

このボリューム評価に、顧客のニーズに沿った販売なのかはまったく関係がない。むしろニーズを無視してでもソフトバンクが売りたいサービスや商材を売ったほうが高得点となるのだ。

例えばiPhoneの購入を希望し、かつ月間のデータ通信量がさほど多くない顧客が来店した場合。iPhoneを売って小容量プランの契約を取ると獲得できる点数は5点だ。だが、もし端末を先述のPixelに誘導し、かつ大容量プランに加入させれば、点数は3倍の15点になる。

この得点の積み重ねが店舗ランクを左右するため、IFCは「代理店が顧客の希望に沿った販売をしていては獲得ポイントが低下しかねない。顧客の利用形態に合ったプランの提案を行うことを困難にする評価制度だ」として、評価の中身に妥当性がないとしている。

このほか、この3月までは「重点項目評価」という制度も存在していた。現在は廃止されているが、この制度はショップが顧客をどれだけ高水準の割合で大容量プランに加入させたかで評価づけするものだった。

大容量プランの項目の場合、加入率が80%ならば4点、75%未満なら0点と採点されるようになっていた。複数の項目の加入率などで決まる総合点が悪ければ店舗評価が1ランク下がる仕組みだった。

この重点項目評価とボリューム評価の締め付けの影響は非常に大きく、複数の代理店関係者は「相手がほとんどデータ容量を使わない高齢者であろうが、大容量プランを薦めてしまうことが多々ある」と証言する。

総務省の電気通信事業法のガイドラインでは、料金プランやオプションについて、「利用実態に合った適切な説明をすること」を求めたうえで、「利用者のニーズを踏まえずに特定の料金プランの推奨を行うことは不適切である」と明記している。IFCは、ソフトバンクの評価制度はこの適合性の原則にも反していると指摘する。

ソフトバンクは、「18、19年の実績で店舗評価Dの割合は4~9%、Cの割合は6~14%にすぎない。また重点項目評価は補足的な位置づけであり、かつこれによって店舗ランクが降格する割合は5~7%程度だ」と反論する。

そして、低評価に該当する店の割合が小さいことを理由に、「販売代理店の健全な新陳代謝を促し、顧客の満足度を維持するうえで強制閉店は必須の制度である」と主張している。

このソフトバンクの論理からすると、強制閉店の対象店舗は接客サービスなどに問題があり、退出してもらったほうが顧客のためになる、ということになる。

[図表3]

だが、はたして本当にそうなのか。両社の言い分を検証するうえで、興味深い成績結果がある。

IFCが半年間でのD評価3回を理由に閉店を求められている2店について、ともに1回目のD評価は19年10月だが、実はその直前の同9月はそれぞれA、Bの好評価だった。

それがいきなり、両店ともにDとなり、その後にIFCが運営する3店のうちa店は11、12月も連続でD評価、b店は12月と年明けの1月にD評価がつき、あっという間に強制閉店措置の対象になったのだ。

本誌が関係者から入手したD評価を3回受けると強制閉店となることを図示した施策資料

この急転落の背景にあるのが、19年10月に施行された改正電気通信事業法だ。

それまで、ソフトバンクの代理店では、10万円前後のスマホ端末を実質0円まで値引くなどの高額なキャッシュバックによってMNPを獲得し、成績評価を保つところもあった。それが法改正で困難になり、MNPに依存していた代理店ほど評価が悪化している。

IFCもその1社だ。自社の持ち出しによって大幅な端末値引きをしていた間は、財務的にはきつくても、店舗評価を一定以上のランクに保っていたのだ。

だが、法改正によって過度な端末の値引きやキャッシュバックは禁じられた。同法が施行された昨年10月を境としてIFCの獲得点数は大幅に下がり、評価も急激にダウンしたのだ。

評価を左右したのは

この事実が明らかにするのは、IFCの評価を大きく左右していたのは、ソフトバンクが求める販売実績をあげられているかどうかだったということだ。もしIFC自体に大きな欠陥や問題があり、それが評価を決めていたのであれば9月以前の評価も低いはず。が、実際は高かった。

もしソフトバンクの評価指標が利用者のためになる店舗なのかどうかを反映するようなものであれば、IFCのように店舗評価が急降下するとは考えにくい。

IFCの弁護人の早稲田リーガルコモンズ法律事務所の川上資人弁護士は「ソフトバンクの施策は、消費者や販売代理店の利益をいっさい考慮せず、ソフトバンクの利益のみを基準に策定した極めて一方的なものだ。それを合意もなく押し付けて閉店を強いることは認められるべきではない」と言う。

ソフトバンクとIFCがその是非を争う強制閉店制度や店舗評価はソフトバンクの代理店施策の根幹を成すものだ。もし、今回の法廷闘争でIFCの言い分が通れば、ソフトバンクは施策の大幅な見直しを迫られる可能性があり、大きな波紋を生み出しかねない。

次回期日の9月4日に双方審尋があり、早ければ同月中に結論が下される。


COVID-19は、深紫外線で

2020年09月04日 01時12分31秒 | 日記

 

日経オンラインによると、ウィルスは、LED照明が得意とする微弱な深紫外線で、殺菌できるという。生鮮食品に照射しても傷めたりすることはないというから、食品小売業に大いに役立てるのでは?食品スーパーとかに行くと、みんなが食品を手に取って矯めつ眇めつ挙句の果ては元の食品箱にポイ。食品が人の手で汚れまくっているのではと思われる。こういうのにも、この深紫外線殺菌、大いに役に立つ。

 

深紫外LED市場は拡大する

殺菌効果を持つ深紫外線

 COVID-19禍において、ワクチンと並んで技術開発の注目を集めるのは「殺菌」の分野です。日経バリューサーチで「コロナ」「殺菌」で検索・分析して抽出されるワード群の中で、一見結びつきにくい『紫外線』が目にとまります。

 自然界では太陽から放射される紫外線のうち、殺菌効果を持つ200~280㌨(ナノは10億分の1)㍍のものは「深(しん)紫外線」と呼ばれますが、地球に届く前に消滅してしまいます。その深紫外線をLEDによって人工的に生み出し、殺菌技術に応用した商品が日本企業の中で広がっています。

 これまで深紫外線の光源としては水銀ランプが主流で、新興国の飲料水を確保するための浄水器内殺菌などの用途に使われてきました。ただ重金属の水銀は環境への負荷が大きく、代替品が求められています。LED化することで水銀ランプよりも安全になり、小型化も可能。米国では水筒に深紫外LEDを搭載した商品がすでに発売されています。水だけでなくスマートフォンやパソコンなど身の回りの物に照射する機器や、空調機器などの用途も期待されます。

 

自然環境への影響少ない

 スタンレー電気が手掛ける深紫外LED製品の波長は265㌨㍍と菌やウイルスを不活化するのにより効果が高いことが特徴。照射することでDNA⁄RNAの構造を変化させ、水や空気中の菌やウイルスが増殖機能を失い死滅します。薬品を使わずに殺菌でき、装置の手入れもしやすく自然環境への影響が少ないとされます。

 2月には国際協力機構がSDGs支援事業として、「インドでの安全な飲料水供給のための、紫外線消毒装置の普及・実証・ビジネス化事業」を同社に委託しました。

車内空間の衛生管理にも

 スタンレー電気では当面の利用シーンとして駅や空港などの公共施設にあるトイレやエレベーター、エスカレーター、医療施設、老人ホームを挙げています。また車載向けにも販路を拡大したい考えで、車内においても、空気や手を触れる場所を殺菌する使い方などを提案していくといいます。今後は自動運転技術や次世代移動サービス「MaaS(マース)」の普及で車内空間のあり方が変わり、衛生管理がより重要になると考えられます。

 深紫外LEDは日本企業に加えて海外勢など各社が新市場の開拓をにらんでいます。COVID-19を機に衛生に意識が低かった国での需要も見込まれ、殺菌市場の競争が一層激しくなりそうです。