先端技術とその周辺

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亀裂深まる米大統領と軍首脳、「トランプ流」失敗の理由

2020年09月26日 21時24分39秒 | 日記

ロイターが、「亀裂深まる米大統領と軍首脳、「トランプ流」失敗の理由」という記事を載せているが、トランプ氏は高級軍人や高級官僚を政府のスタッフとしてむかえいれても、短期に更迭している。大統領にふさわしい資質を持ち合わせてないのかも。

 

[ワシントン 23日 ロイター] - ドナルド・トランプ米大統領は就任当初、国家安全保障関連の最高幹部として数名の退役将軍を登用し、自称「史上最大」の国防予算強化を誇らしげに打ち出した。

焦点:亀裂深まる米大統領と軍首脳、「トランプ流」失敗の理由                                  9月23日、ドナルド・トランプ米大統領は就任当初、国家安全保障関連の最高幹部として数名の退役将軍を登用し、自称「史上最大」の国防予算強化を誇らしげに打ち出した。写真は2019年11月、アフガニスタンのバグラム空軍基地を訪問したトランプ米大統領(2020年 ロイター/Tom Brenner)

同盟国に自前の軍事支出の増額を求める政策を外交の要に据えるとともに、米軍に数千名の犠牲をもたらしてきた中東地域での「切りがない愚かな戦争」から手を引くことを公約した。

だが共和党出身のトランプ大統領は、その一方で軍トップの将軍らを嘲笑し、いくつかの重要課題に関する彼らの情報や提言に耳を傾けず、その知性や勇気、兵士たちに対する責任感に疑問を呈した。

トランプ大統領が政権浮揚のために軍を利用し、政治的に中立であろうとする国防総省の努力を意図的に損なっている、との批判もある。

ビジネスマンとして、テレビのリアリティーショー番組でも活躍したトランプ氏は、ときには味方である共和党内も含めてエスタブリッシュメントを批判しつつ、2016年に大統領選挙に勝利して初の公職に就いた。

最近では新型コロナウイルスに関する政府内の公衆衛生専門家の提言を無視するなど、公然とアドバイスを拒絶することも多いが、それでも支持基盤が大きく損なわれることはない。軍上層部に対する態度も含めた侮蔑的なアプローチが、2期目の4年間に向けた11月の選挙での勝利につながるかは不透明である。

今月、軍務経験の無いトランプ大統領は、2018年の訪仏中に第一次世界大戦中の戦没米兵を「負け犬」「カモ」呼ばわりしたとの「アトランティック」誌の報道への対応に追われた。

<現場の兵士には愛されている>

トランプ大統領就任後の演説やツイートの検証、そして側近や軍当局者へのインタビューからは、同氏が将軍たちを絶賛したかと思えば、彼らを無能と表現することもあるなかで、大統領と軍の矛盾した、そして着実に悪化しつつある関係が見えてくる。

トランプ氏が好んで口にするのは、現場に近い兵士たちにより多くの関心を払っている、ということだ。

トランプ氏は2019年に行われた保守派の集会で、「いま何が起きているのか、将軍たちよりも兵士たちから多くを学べる場合がある。本当だ。言いたくはないが、将軍たちにはいつもそう伝えている」と述べている。

今月、現役の軍人を軽んじているとの批判を受け、トランプ氏はまた同じ主張を繰り返し、悪意があることを否定した。

 

「米軍が私を好んでいるとは言わないが、兵士たちからは愛されている」とトランプ氏は記者団に語った。「国防総省のトップ連中は恐らく私が気にくわないのだろう。彼らは、爆弾や飛行機その他もろもろを作っているご立派な企業が皆ハッピーでいられるよう、戦争ばかりしたがっているからだ」

複数の現・元軍当局者によれば、トランプ氏は最初のうち将軍たちを大げさに称賛したものの、彼らの進言が自分の希望に沿わないことで苛立ちを深め、前政権から引き継いだ戦争にウンザリし、軍上層部が政治的中立を維持することを忠誠心の欠如と捉えて不快感を抱いているという。

軍当局者らは、トランプ大統領は米軍内からの政治的支持をあからさまに求めることで行動規範を無視していると訴えている。米軍の忠誠の対象は、いずれかの政党や政治運動ではなく、連邦憲法であると想定されている。

「政・軍のあいだの規範があればこそ、非常に長期にわたって政治からの圧力に耐えることができる」とある軍当局者は匿名を条件にロイターに語った。「だが、すでに亀裂が見られる。軍の政治利用がもう行われている」

トランプ政権のもとで任務に就いていた元国防当局者は匿名を条件に、この問題は、突き詰めればトランプ氏が軍の忠誠をどう考えているかという点に帰着する、と話す。「軍は自分の味方なのか違うのか、自分の側につくのか歯向かうのか、というのが彼の発想だ」

トランプ氏は米軍の兵士たちの擁護者を自称しているものの、「ミリタリー・タイムズ」誌が実施した調査によれば、軍関係者のあいだでの同氏への支持は低下している。

大統領就任当初、トランプ氏を「好ましい」とする回答は46%、「好ましくない」とする回答は37%だった。7月・8月に行われた最新の調査では、それぞれ38%、50%と逆転している。

<国民を団結させない初の大統領>

6月、軍首脳は、短期間ではあるが米国内の政治的分断に巻き込まれた。トランプ氏がホワイトハウスに近い教会を徒歩で訪れ、聖書を掲げて写真を撮らせたとき、国防総省上層部が同行したのである。だがその直前には、州兵部隊の支援を受けた警察が催涙ガスやゴム弾を使って、非暴力的な抗議活動参加者を一帯から排除していた。

州兵部隊のアダム・デマルコ少佐は、連邦議会の公聴会に出席し、この取締りに対する懸念を陳述するという異例の行動に出た。

デマルコ少佐は、「6月1日の夜にラファイエット広場で目撃した出来事は、私や仲間の州兵たちにとって、ひどく気掛かりなものだった」と述べた。

国内で広がる抗議行動への対応にトランプ氏が軍の動員を示唆したことに対し、数名の退役大将はこれを非難する声明を発表するに至った。

トランプ政権の最初の2年間に国防長官を務めたジェームス・マティス元海軍大将の反応には失望感が現われている。

「これまで私が生きてきた中で、米国民を団結させようとしない大統領は、ドナルド・トランプ氏が初めてだ。彼はその素振りさえ見せようとしない」とマティス氏は書いている。「その代わり、彼は私たちを分断しようとする。私たちがいま目にしているのは、これまで3年間の、そうした計画的な試みの結果だ」

陸軍大将のマーク・ミリー統合参謀本部議長は、後になって、その日トランプ氏に同行したことは失敗であり、「軍が国内政治に関与しているという印象」を与えてしまったと認めた。

<称賛したマティス氏を今は酷評>

その後トランプ氏はマティス氏を「世界で最も過大評価された将軍」と酷評するようになった。

将軍たちとの関係悪化の最初の徴候は、政権初期に現われていた。

2017年夏、トランプ氏はホワイトハウスの危機管理室で、マティス国防長官、H.R.マクマスター国家安全保障担当補佐官(陸軍中将)、レックス・ティラーソン国務長官らとアフガニスタンにおける米軍部隊の規模について協議していた(肩書きはいずれも当時)。

政権元幹部がロイターに語ったところでは、[元]将軍らは部隊の増強を求めており、「トランプ氏にその要望をはっきりと示せば、承認が得られるだろうと思っていた」という。

だがその要望に対して、トランプ氏はあらゆる種類の疑問を投げかけた。20分で終る予定の会議は2時間にもわたった。

「彼は、将軍たちであれ誰であれ、とにかく問い詰めた。『なぜ増強するのか』『いつになったら撤退できるのか』『どのような勝利が得られるのか』 ひどく居心地が悪かった」と元幹部は言う。

 

会議が終った後、トランプ氏は彼らに「現実的なオプション」を出すよう求めた。

トランプ氏は、前任のバラク・オバマ大統領によるアフガニスタンからの撤退命令をいったんは覆したものの、任期の終わりを迎える今、年内に駐留部隊の規模を4000人に削減し、和平交渉が成功すれば来年には完全に撤退することを予定している。

マクマスター氏はトランプ大統領のもとで国家安全保障担当補佐官を1年あまり務めた後に解任されたが、同大統領のアフガニスタン政策を厳しく批判しており、米国の支援下にあるカブール政権と対立するタリバーンと手を組んでいると非難している。

国防総省の首脳は、国外における米国の影響力という点でも、国内の安全保障という点でも、同盟国との関係が非常に重要であると考えている。彼らは、トランプ氏が中国やロシア、北朝鮮の首脳との良好な関係を誇る一方で、ドイツや韓国といった同盟国に敵対的なアプローチを取ることに警鐘を発している。

マーケット大学のリサ・ブルックス教授によれば、米軍首脳は、オバマ前大統領が国防分野の問題に過剰介入してきたと感じており、当初はトランプ氏のアプローチを歓迎する向きもあったという。

「だが現在では、(軍と政権の関係は)まったく別のレベルにあると思う。トランプ氏が今やっていることの一部は、組織としての軍の利害・品格に対する挑戦と考えられている、というのが今の状況だろう」と同教授は言う。

分かりやすい例の1つが、海軍特殊部隊シールズのエドワード・ギャラガー隊長が、イスラム国戦闘員捕虜の遺体のそばでポーズを取って写真を撮影させたことで告発された事件に、トランプ氏が介入したことである。

軍上層部により不当な待遇を受けている兵士たちの擁護者を自任するトランプ氏は、ギャラガー隊長の降格処分を撤回させ、後に海軍長官は解任された。

2019年11月にフロリダ州で行われた集会で、トランプ氏は「私は常に、我が国の偉大な戦士たちを支持する」と語った。


スマートフォンが売れなくなった!

2020年09月26日 21時20分37秒 | 日記

 TechTargetというIT系サイトがスマートフォンが売れなくなった、新型コロナ以上に根深い理由ハイエンドスマホはもう必要ない?2020年1~3月期の世界スマートフォン販売台数は、前年同期比で約20%の減少に見舞われた。専門家は原因としてパンデミックに伴う混乱を指摘するが、原因はそれだけではなく、第4世代の携帯の機能で多くは事足りているからだという。となると、第5世代の高速通信はそれが必要となる応用分野でしかまずは捌けないことになり、政府や業界が第5世代で期待している景気浮上策にはならないかも。

 調査会社Gartnerが2020年6月に発表した調査結果によると、2020年1~3月期の世界スマートフォン販売台数は、2019年1~3月期に比べて20.2%減少した。「スマートフォン市場で史上最悪の下落だった」と、同社の上級調査アナリスト、アンシュル・グプタ氏は話す。グプタ氏はその原因として、サプライチェーンの混乱と需要減退の両方を挙げる。このうち需要減退は、外出禁止や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)に関連する経済の不透明性の影響だったと分析する。ただし原因は他にもある。

 Gartnerによれば、スマートフォンベンダー大手3社の2020年1~3月の世界期販売台数はいずれも減少となり、Samsung Electronicsは22.7%、Huawei Technologiesは27.3%、Appleは8.2%の落ち込みだった。世界のスマートフォン販売が低迷した原因については、アナリストによって意見が異なる。ただし企業向けスマートフォンには依然として課題があるという見解は一致する。調査会社Constellation Researchの副社長兼主席アナリスト、ホルガー・モラー氏は「企業が新しいスマートフォンのハードウェアを調達するペースを減速させている」と述べる。

なぜスマートフォンを買わないのか

 「コンシューマー向け市場でしか成長はない。仕事でスマートフォンが必要な人は既に持っている」とモラー氏は解説する。同氏によれば、企業のモバイルデバイス関連投資はスマートフォンやタブレットからセキュリティ対策へと移り、「MDM」(モバイルデバイス管理)を含む「EMM」(エンタープライズモビリティー管理)などのデバイス管理ソフトウェアへの関心が高まっている。

 Constellation Researchの創業者で主席アナリストのレイ・ワン氏は「モバイルデバイスの多様化が進み、企業の枝分かれが始まっている」と指摘する。同社の予想では、企業は携帯電話以外のデバイスを採用するようになる。「IoT(モノのインターネット)デバイスが増え、モバイルデバイス市場に食い込んでいる」とワン氏は言う。

 例えば解像度が増大し続けるカメラのような、ハイエンドのスマートフォンの特筆すべき新機能は「企業の購買意欲を促進させていない」と、独立系アナリストのエリック・クライン氏は解説する。全般的にエンドユーザーが手持ちのデバイスを持ち続ける期間が長くなったのは「アップグレードの必要性がないためだ」とクライン氏は指摘する。「われわれが目にする新機能やイノベーションは、本当に頭打ちになった」(同氏)

今後の市場

 スマートフォン市場は近いうちに回復すると専門家は予想する。2020年のスマートフォン販売は2019年を下回るとGartnerは予想している。グプタ氏によると、年が進み、パンデミック関連の問題が薄まれば、販売は上昇傾向に向かう見通しだ。同氏は「2020年下半期には需要が増え、2021年は前向きな成長が予想できる」と語る。

 クライン氏によると、企業にはハイエンドのデバイスを調達する理由がほとんどないことから、ベンダー各社はローエンドのスマートフォンに軸足を移す可能性がある。「売り上げの大部分はエントリーモデルかミドルモデルが占めるだろう」と同氏は予測。「5G」(第5世代移動通信システム)や折り畳み式ディスプレイといった新要素が一時的に販売を加速させることがあったとしても「エンドユーザーや企業にとっては当面の間、最新の「iOS」と「Android」のアップデートに追い付くことが、アップグレードの主な理由になる」と語る。

 


日本の研究力低下、つまずきは若手軽視 科技立国 落日の四半世紀

2020年09月26日 20時57分56秒 | 日記

 

日経が、『日本の研究力低下、つまずきは若手軽視。科技立国 落日の四半世紀』という記事を載せていたが、日本の科学技術力の低下は若手軽視を第一義的に指摘しているが、国が大学や民間の基礎研究を軽視して来たことが一番である。大学は研究費を見出すため、教授から助手まで、寄贈者を募って廻らなければならず、研究に回す時間が無くなっていることが大きい。これは2000年前半の国立大学法人化や国家公務員の総定員法施行からである。最近までのノーベル賞受賞者がアメリカに次いで2番目であるというのは、ノーベル賞は2、30年前の研究成果で実証されたモノのみに与えられるから、ぼつぼつ、日本人のノーベル賞受賞者は出なくなる時期に来ている。

この状況を解決するには、基礎科学重視の政策に切り替える必要がある。又切り替えてもその成果が出るのは2、30年後という事になる恐ろしい話である。

ノーベル賞は40代前半までの業績で受賞する場合が多い(2014年12月、日本人3氏が物理学賞を受賞)=共同

ノーベル賞は40代前半までの業績で受賞する場合が多い(2014年12月、日本人3氏が物理学賞を受賞)=共同

 

科学技術が経済や安全保障を左右するいま、日本の研究力低下が止まらない。米欧の後追いを脱却しようと、国は1996年度に科学技術基本計画を打ち出し、90年代後半には米国などに次ぐ地位を誇った。その後も世界のけん引役を担うはずだったが、日本の研究力は中国などの後じんを拝し、今では世界9位に沈んだ。日本はどこでつまずいたのか。落日の四半世紀を検証する。

「科学研究から経済成長に必要なイノベーションを搾り取ろうとしたが、明確な成功はなかった」。英科学誌ネイチャーは8日付の論説で、約7年半にわたる安倍政権の科学政策を総括した。

安倍晋三前首相は「世界で最もイノベーションに適した国を造る」として、出口を重視するトップダウンの大型プロジェクトを相次いで立ち上げた。首相がトップの科技政策の司令塔を「総合科学技術・イノベーション会議」に改称するなど、イノベーションを重視したが、日本の研究力低下は止められなかった。

 

 

 

安倍政権下で策定され、20年度に終わる第5期基本計画は、初めて世界が注目する被引用論文の数などを目標に掲げたが、多くは未達で終わる。

論文の数は国の基礎科学力を示す。科学技術・学術政策研究所によると被引用数が上位10%の注目論文シェアで、日本は96~98年の平均で世界第4位だったが、16~18年は第9位に沈んだ。

注目論文数は中国が42倍、米国2割増と多くの国で増えたが、日本は1割減った。主要国で日本だけが取り残された。

この四半世紀、国主導で世界トップクラスの研究体制を目指してきたはずだった。2001年ノーベル化学賞受賞者の野依良治名古屋大特別教授は「科学技術基本法の精神は正しかったが、(明治以来の講座制などの)世界的に異形のシステムが実践を阻み続けた」と悔やむ。

95年に議員立法で成立した基本法は、科学技術が「我が国及び人類社会の将来の発展のための基盤」として、国の役割を強調した。

基本法成立に尽力した尾身幸次元財務相はかつて「(欧米から)技術導入できた時代は終わった。自ら未踏の分野に挑戦し、創造性を発揮して未来を切り開かねばならない」と語っていた。

90年代の日本はバブル経済崩壊の傷口が広がっており、次世代の産業の種を育てる狙いもあった。基本法に基づいて96年度に始まった第1期基本計画は、単年度主義の予算編成の常識を破った。5年間にわたる政府の研究開発投資の目標額を17兆円と設定し、達成した。だが、手応えがあったのはここまでだった。

 

 

 

第2期以降も投資額の目標を掲げ、「選択と集中」や「イノベーションの推進」などを矢継ぎ早に打ち出したが、思惑通りに進まない。改革が進まない旧来型の研究システムが災いした。

最たる犠牲者が、飛躍の源泉となるはずの若手研究者だ。「日本の若手が置かれた環境は日米欧中の中で最も苦しい」。脳神経科学者で米カリフォルニア大学アーバイン校の五十嵐啓アシスタントプロフェッサーは嘆く。

五十嵐氏が日本神経科学学会で優れた若手をたたえる奨励賞を海外で受賞した人の行方を調べたところ、9割が日本に帰国せず海外で自身の研究室を持ったという。五十嵐氏も英科学誌ネイチャーに論文を発表したが日本では任期付きポストしかなく、海外に残った。

欧米や中国では、優れた業績をあげた若手は研究室を主宰するポストと研究室立ち上げに必要な資金を手にする。五十嵐氏は大学から5000万円を用意された。外部資金も合わせて5年で4億円を集めた。

日本では旧帝大を中心に准教授や助教は教授の下に集うメンバーの一人にすぎない。若手の独立ポストは少ない。ノーベル賞級の成果の多くは30、40代であげられている。

国の経済規模が違うとはいえ、なぜ若手が自由な発想で研究できる環境が整わないのか。海外では、独立資金を提供する官民の予算があり、助教や准教授クラスの若手にも思い切って研究室の運営を委ねる傾向にある。

日本は大学の懐事情の厳しさが若手研究者を直撃する。04年の国立大学法人化で産学連携などが進んだ一方、運営費交付金削減の副作用で大学は人件費を抑制した。有馬朗人元文部相は「国立大学の法人化に伴い、交付金を削減したことが大きな間違いだった」と憤る。

研究者の卵である博士課程の学生にも悪影響が及ぶ。博士号取得後の将来展望も描けず、博士課程進学者は03年をピークに減少傾向だ。負のスパイラルに陥る。

「日本は人件費が無料で研究させられるから良いんです」。野依氏は日本の大学教授にこう言われてあぜんとした。野依氏は「博士課程の学生はただ働きで、日本の現状は憲法の精神に反する」とあえて憲法を持ち出して批判する。

問題の根源は国もわかっている。菅義偉首相のもとで大詰めを迎える第6期基本計画の策定を巡り、8月に出た検討の方向性では「研究力強化の鍵は、競争力ある研究者の活躍であるが、若手研究者を取り巻く状況は厳しい」と指摘した。1月には若手研究者を支援する政策パッケージを公表したが、抜本改革にはほど遠い。本気度が問われている。