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新しいテスラ・モデルXはタイムマシン?

2020年05月10日 18時25分37秒 | 日記
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2025年のEVはどうなっているのか。先月、テスラ・モデルXに乗って、近未来にタイムスリップしてきた。そう、タイムマシンがあるとしたら、このモデルXが一番近いと言えるだろう。この非常にユニークなクルマはどう考えても、現在のクルマ社会からかけ離れている気がする。


自動運転の機能はもちろん、特徴的な翼のようなドア、「対生物兵器」モード、異次元の速さ、アッと言わせる巨大なタッチスクリーン、宇宙船みたいな室内、世界一優れたテスラ専用の急速充電器ネットワークなど、どれを取り上げても驚くだろう。さらに、これらが全てこの1台に搭載されていると知れば、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のドックとマーティ君の仕業だと見なしてもおかしくない。



実は、5年前にもテスラ初のSUVである初代モデルXに乗ったのだが、その時も未来的な味が強かった。今回は試乗したのは、EVパワートレイン効率やエアサスペンションなどが強化された改良版のロングレンジだ。まず驚くのは、航続距離が507kmまで伸びていること。ついに500kmを突破し、量産型EVの中で最も航続距離の長いクルマの一つと言える。

さらに驚くことに、モデルXは常にインターネットと繋がっており、今年5月に新しいソフトウェアをダウンロードすることによって、航続距離は20、30kmはさらに伸びるとテスラが言う。

ブレーキ踏まずに自動で停車してくれるホールド機能


2400kg以上とかなり車重が重いにもかかわらず、4WDで2モーターを採用するモデルXは十分速い。今回乗ったロングレンジ仕様はおよそ550psを発揮する4輪駆動だからこそ、1速のA/Tを通じて瞬時に4つのタイヤにパワーを伝達するので、0-100km/hの加速は4.6秒とスーパーカー並みだ。

異次元の加速性で、いつアクセルを踏んでも、瞬間的に加速する。パワートレーンの効率向上でそれはさらにスムーズになり、また今回初めてホールド機能がついた。つまり、 ACC(アクティブクルーズコントロール)を使っていると、前方の交通状況によって、ブレーキを踏まなくても車両が自動的に減速して完全に止まってくれる。



また、モデルXではバッテリー、モーター、インバーターなどのハードウェアがフロアより低い位置に配置されているため、その低重心のおかげで、コーナーでのボディロールを抑えて、安定した姿勢を保つ。さらに、ステアリング感覚も向上していて、路面からのフィードバックがさらに良くなり、ステアリングホイールの重さはちょうど良いセッティングになっている。

もともと、ロールを抑えるために改良されたエア・サスペンションは硬めの設定だけど、街乗りでは気持ちの良いしなやかな乗り心地だ。ブレーキは普段の走りでは充分だろうけど、重い車重に対して、僕はもう少し制動力が欲しいと感じた。静粛性が素晴らしいからこそ、風切り音やタイヤノイズなどの細かい音が聞こえてくる。
 
さて、モデルXで一番話題になっている特徴はなんと言っても、翼っぽいドア。テスラがこのドアを「ガルウィング」ではなく、「ファルコンウィング」(鷹)と呼ぶのは、ヒンジ(関節)が2つ付いているからだという。6秒ぐらいで開くこのドアは賛否両論だけど、僕は素晴らしい特徴だと思う。



そのメカニズムは複雑だったようで、開発には予定よりも半年も長くかかり、同車の導入も同様に遅れた。このドアについては「開閉が遅い」とか、「格好つけすぎだ」とかという人もいるけど、僕はあまりにも優れていると思うので、普通のドアが付いているモデルXは考えられない。このドアを含め珍しい機能満載のモデルXは、デロリアンのように伝説的なクルマになっていくと思っている。



室内は、スタンレー・キューブリック監督の「2001年、宇宙の旅」に現れるコクピットみたいだ。トリムの質感やレザーは上品だし、スイッチ類のないスパルタンな割には、ハイテクなできが見事。運転席から周りを見渡すと、リアのウィンドー以外は視認性がとても良く、キャビンの開放感はクラストップといえる。

やはり、何よりもドライバーの頭の上まで伸びるウィンドースクリーンが際立っている。まるで、ドライバーのためのサンルーフみたいだ。運転していると、普段は頭上を見上げることはできないが、僕は今回、運転席から初めて星空や流れ星を見た。ただ、真夏の炎天下では、その広いガラス面のスモークの濃さが足りないので、かなり眩しいとは思う。

医療用フィルター採用の「対生物兵器モード」


インパネの最大の特徴である17インチ大型タッチスクリーンは見ものだ。この1枚で、エアコン、GPSナビ、オーディオ、充電状況、ゲーム、「対生物兵器モード」などの車両の全てのシステムの調整ができる。「対生物兵器モード」は特に面白い。



業界初の医療用HEPAフィルターを採用し、バイ菌、花粉、ウイルス、PM2.5などを除去する能力は通常の車の300倍以上だという。画面の中のアイコンをタッチすると、いきなり車内の気圧が上がり、外気をフィルターで清浄する。新型コロナウイルスに対してどの程度効果的なのかは未公開だけど、かなり効くと思われる。

テスラの自動運転モード「オートパイロット」も業界一と言える。もちろん、ほとんどの国では手放しの自動運転を許可していないので、テスラが「オートパイロット」と呼んでいても、この機能は「半自動運転」と解釈した方がいいだろう。しかし、「自動運転」レベル3以上の法律ができたら、テスラはすぐさまそのオートパイロットの導入ができるようになっている。

車両には、カメラが6つ、センサーが12個、そしてレーダーも付いているので、モデルXは常に周囲360度にある車両の動きを把握しているし、オートパイロットが作動している時にウィンカーをつければ、後方の安全を確認してから、クルマは自動的に車線変更してくれる。

モデルXの独自性や新しく加わった機能に触れれば触れるほど、このクルマの個性や珍しさが見えてくる。今までにこんなクルマはなかった。このモデルXは、近未来のEVの異次元の加速、走り、充電状況、意のままダウンロードできる新しいソフトウェアなど、全ての機能を大型タッチスクリーンで調整することができる。

これはまったく新しい時代の幕開けのような存在だ。このタイムマシンのプライスは1110万円から。決して手の届きやすい価格ではないが、「これだけの技術や可能性を積んでいるのだから、そんなに高くはない」と思うのは僕だけだろうか。

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