情報元 日本経済新聞 電子版
中国ネット大手による人工知能(AI)開発人材の争奪戦が激しさを増している。ニューオーリンズで開催中の米AI学会では、アリババ集団や騰訊控股(テンセント)などが米国留学中の中華系学生を狙い激しいアピール合戦を展開。米国の学会だが、中国語が飛び交っている。
■中国からの論文、57%増える
34社・団体のブースが集まる会場入り口の一等地の公用語は中国語だ。アリババ集団とテンセントが勧誘にしのぎを削り、そこだけが異様な熱気に満ちている。立ち寄る参加者の多くは中華系の学生で、中国語が母国語の担当者が対応している。大会場のブースの半分近くを中国企業が占めている。
2018年の米AI学会の提出論文数は3800以上と過去最高。けん引したのは前年比で57%増えた中国からの論文だ。米中がほぼ同数でトップに並んだ。しかもポスター展示を許された研究の約6割に中華系の研究者が関わっている。研究ポスターの展示会場は中国ネット大手・百度がスポンサーをする。
北京航空航天大学は、スマートフォン(スマホ)の位置データから人口移動を解析する。ネット大手の百度は労働市場での自分の価値をスキルで数値化。復旦大学はツイッター上の名前の主を特定する性能を高めた。展示されている技術自体はいずれも中立的だが、強権的な国家が使えばプライバシー侵害の危険をはらむテーマも多い。
13年ごろからのAIブームで米AI学会の参加者は増加傾向にある。18年は前年比24%増の2300人と過去最高を更新した。直近5年で約3倍に膨れあがっている。AI技術者の人材不足を反映し、近年は同学会も各社の採用の戦場と化している。
■人材は中国に還流
5日には就職フェアが開かれたが、参加企業の3分の1はアジア企業で、ライドシェア最大手・滴滴出行や電子商取引大手・京東集団など中国ネット大手がそろい踏みした。スカウトされた学生たちが、米国で職を得るかといえば、そうでもなさそうだ。実際のサービスで米国市場向けはまだまだ少ない。また米国拠点の人数は限られるため基本は中国で雇うことになる。
米トランプ政権が専門職ビザを厳格化したことも渡りに船だ。AI研究で世界の先頭を走る米国で鍛えられた人材が中国に戻ることで、技術力をさらに高められる。
展示会場では日本勢もそれなりの存在感を見せている。テンセントの横に陣取ったソニーは採用よりもAI開発用のオープンソース普及のためのデモ展示に力を入れている。日産自動車も場所は少し奥ではあるがメイン会場でアマゾン・ドット・コムの隣にブースを出し、それなりの集客ができている。
日本はITの世界でもどこに行くのかさびしくなる。
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