日本の色は、自然界の色を取り入れて楽しんできた。
朽葉色(くちばいろ)は、前回の柑子色(こうじいろ)に続く、黄赤系の色として平安時代から鎌倉・室町時代の物語に多出する。老いも若きも広く着用している。
衣裳の色を季節に合わせて着ることの出来たのは、藤原氏など上流貴族で、今で言うセレブな人たち、色の黄金時代といわれる。
したがって、物語に残されている色は、贅沢に衣裳を着る事の出来た、一握りの特権階級で、一般庶民はおおよそ色とは無縁であった。貧困層と、都市の貴族の格差は、現代の格差の比ではなかったと思われる。
中世の武人に受け継がれた伝統の色は、時代が下って江戸時代になって、ようやく一般大衆に色への関心が拡がり、好みの歌舞伎役者の衣裳の色が、当時のファッションであった。
日本の伝統色は、今 はその人の好みに応じて誰でもきものにして、楽しめる。
朽葉色は、秋を彩る紅葉(こうよう)が落ち葉となり地面に散り敷いて重なり朽ちてゆく晩秋の景の中に見られる色。
赤みのある赤朽葉、黄色の強い黄朽葉、緑の色合いの残る青朽葉とあるが、微妙な色の違いから朽葉48色と数えられるほど。その代表が朽葉色。
現代のきものに染める場合、柑子色よりも赤味の少ないこの朽葉色の方が、調和がとり易い。
色名事典や、色見本帳は印刷により、同じ色名でも編者の認識により色が異なる。前回も述べたとおり布の染め見本で確認のうえ染め出しされたい。
歳時記にも、枯葉、落ち葉についで、朽葉があるが作例は少ない。
山の井に色よきままの朽葉かな 素外
こちらは古井戸の水底にたまった朽ち葉が以外に色鮮やかなのを詠んだ句。