何の世界でも「達成した喜び」と言うものは、計り知れないものがあります。
「絵画」の世界でも同じで、「出来上がった」という瞬間は誰もが大きな喜びを感じるにのではないでしょうか。
その「達成感」に良く似た感じのものが、「植物」の場合「結実」というものに置き換えられるように思えます。
「花」という「視覚」の世界だけで終わったものが、「収穫」から「「味覚」の世界へと広がりができ、大きな喜びの源泉と同時に「豊潤な世界を味わうもの」へと変化して行きます。
今日、取り上げる「テーマ」はそういう「実」というものを描いている作品を集めてみましたが、「花」とは違った趣が感じられるはずです。
この方の作品から見えてくるのは、「ひと粒の実」がとても大きな存在として作者の目にうつり、それを「赤」で表現していますが、それは単なる「印象」を越えた「成長の成熟期」への「驚き」と「祝福」のようなものまで感じてしまいます。
また、私の目には「つる状」にのびる茎や葉が「命の流れ」のように見え、「生命への賛歌」のようなものさえ感じてしまいます。
この作品を見ていると、「太陽」と「地球」から受けた「恩恵」で実る「果実」の姿が手に取るようによく理解でき、「自然」が創る「命」の喜びのようなものが感じられます。
とても明るい色彩で描かれ、おいしそうな「果実」が太陽光線にあたり、こちらまで元気が出るような作品になっています。
同じ「実」を題材にしていても、この方の場合表現しているのは「ぬくもりのある空間」ではないかと思います。
「結実した実」は、実は「自然のあたたかい恩恵」によりできているわけで、それが「光と影」を使うことにより、自然がくれる「ぬくもりの世界」を私たちに教えているように見えます。
とても穏やかな作品になっているこの作品から、どこか「体温」のようなものまで感じることができます。
「晩秋」の季節でしょうか。どことなく寒さが見にこたえてくる季節を感じる作品となっています。
「四季」の中で、「晩秋」という季節はある意味では「試練」への備えの段階で、これから来る「冬」への心の準備が必要になってくる季節です。
そこには「人」の心に、ある種の「覚悟」と「潔さ」が必要になる段階となりなります。
そうしたことがこの作品には、とてもよく表されており「身が引き締まる」ような感覚さえ起きてきます。
この作品は、「収穫の喜び」と言うようなことさえ考えさせるものがあり、われわれの毎日の生活の中で、「収穫への感謝」という側面さえ感じることができるものになっています。
このように「描く」ことは「単に上手に描く」のではなく、その作者の目を通して我々に何を伝えることができるかが大事なポイントになります。
また、絵を見る人にどれほど作者の思いが伝わるかも大きなウェイトをしめます。
「この絵はいいなー。」と思う時は必ずそこに「絵との対話」が成り立っています。「収穫」というとてもわかりやすい題材から、私たちは絵の世界へ一歩近づけるのではないかと思っています。