国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

スペインの不法移民問題とセウタ・メリリャの領土問題:国際海峡対岸の橋頭堡は必要か?

2007年11月08日 | 欧州
●スペイン国王訪問、外交問題に=モロッコ領有主張の飛び地  2007/11/05 時事通信


 【パリ5日時事】スペインのカルロス国王夫妻が5日、アフリカ北部モロッコと地続きのスペイン領の飛び地セウタ、メリリャ訪問を開始した。1975年の即位後初めてで、スペイン国王としても80年ぶりだが、同地の領有権を主張してきたモロッコが反発、両国関係にさざ波が立っている。
 国王夫妻は、まずジブラルタル海峡の対岸にあるセウタ入り。市庁舎のバルコニーに姿を見せ、「スペイン万歳」「セウタはスペインのものだ」などと叫ぶ市民数万人の歓声に迎えられた。夫妻はこの後、いったんスペイン南部のマラガへ戻り、6日に地中海岸のメリリャを訪れる。
 この訪問日程が明らかになった2日、モロッコ外務省は遺憾声明を発表し、マドリード駐在の大使を本国へ「無期限召還」する措置を取った。
 スペインのサパテロ首相は「国王夫妻の訪問は飛び地住民との親睦を深めるものだ」と強調、モロッコと良好な関係を続けたいと表明した。しかし、モロッコでは既に抗議の座り込みなどが行われている。
http://jiji.com/jc/c?g=int_date2&k=2007110500411







●密航:座礁し飢えなどで45人死亡 北アフリカ沖の大西洋 毎日新聞 2007年11月7日

 フランス公共ラジオによると、アフリカ北西部モーリタニアの治安当局者6日、セネガルからスペイン領カナリア諸島への密航を試みた船がモーリタニア沖の大西洋で座礁、少なくとも45人が飢えなどのため死亡したことを明らかにした。5日に発見された船には生存者98人が乗っていたが、2人は同日中に死亡。乗っていたのはセネガル人が大部分で、マリ人とギニアビサウ人、ガンビア人もいた。
 モーリタニアやセネガルなどアフリカ北西部からは、欧州入りを目指しカナリア諸島へ向かう密航船が急増しており、昨年1年間で3万人以上が上陸した。小さな船で無謀な航海をすることから遭難も後を絶たず、多数が死亡している。(共同)
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20071107k0000e030002000c.html






●地中海沿岸諸国の首脳会議 仏が提唱 実現には曲折も 2007年11月02日 朝日新聞

 地中海沿岸諸国の首脳を一堂に集めた国際会議の開催を、フランスが呼びかけている。不法移民など地中海の南北間の問題を協議するとともに相互の連携も深め、仏が提唱する「地中海連合」構想の実現につなげたい考えだ。もっとも、沿岸には紛争を抱える隣国同士も多く、実現までには曲折が予想される。

 首脳会議の構想は、サルコジ仏大統領がモロッコを国賓として訪問した10月23日、北部の港町タンジールで演説して明らかにした。地中海に面するすべての国家・地域のほか、オブザーバーとして沿岸以外の国の参加も求め、経済、政治、文化など広範囲なテーマを協議する。08年6月、地中海沿岸の仏マルセイユでの開催が有力視されている。

 実現すれば、紛争が絶えないこの地域にとって新たな協議の枠組みになる可能性がある。大統領は5月の就任以来、欧州連合(EU)と同様の地域連合として地中海連合の創設を提唱。アルジェリアとチュニジアを歴訪して両国首脳の協力を取り付けた。

 仏やスペイン、イタリアなど南欧諸国は、アフリカ大陸から地中海を密航船などで渡ってくる不法移民を大きな国内問題と受け止めている。仏は同連合を足がかりに、不法移民の取り締まり強化に向けた南北間協力を進めるとともに、移民を生む原因となっている社会問題を解決するための援助、専門知識を持った労働者の欧州への渡航の促進なども協議したい考えだ。

 ただ、仏大統領府は首脳会議にイスラエルも招く方針を明言。アラブ諸国首脳が参加を嫌がるのは確実で、調整に失敗すればサルコジ大統領に対してしばしば取りざたされる「イスラエル寄り」との評価が強まり、連合結成が頓挫する恐れも捨てきれない。

 ほかにも、緊張関係にあるモロッコとアルジェリアの国境は閉ざされたまま。ギリシャ系とトルコ系で分断されるキプロスなどイスラエル・パレスチナ問題以外にも紛争の種は多い。ギリシャとトルコ、北アフリカに飛び地領があるスペインとモロッコのように確執を経験した国々もある。

 地中海連合を「トルコ嫌いで知られるサルコジ大統領がトルコをEUから排除するための受け皿」とする見方もある。
http://www.asahi.com/international/update/1102/TKY200711020401.html







●セウタ市及びメリリャ市における不法移民問題が激化  独立行政法人 労働政策研究・研修機構/海外労働情報 2005年11月

 北アフリカに位置するセウタ市及びメリリャ市の国境の柵を乗り越えて、スペインに入国しようとするモロッコからの不法移民が増加している。特に、(1)2005年8月末から国境越えを試みる移民が命を落とすケースが続いたこと、(2)越境に際し移民自身が、スペイン側の治安警備隊に投石等の暴力行為に訴えたこと――等から、マスコミでも大きく取上げられ、世論の注目を集めるようになった。しかし、この現象自体は、決して新しいことでない。

 セウタ市及びメリリャ市の周辺のモロッコ住民は、身分証明書を提示するだけで、市内に入ることができる。パスポートは必要ない。こうした状況から、両市には、以前から多くの不法移民が流入していた。彼らは、(1)セウタやメリリャの周辺でない地域に住み、本来ならば入国にパスポートが必要であるにもかかわらず、国境の警備をかいくぐって入国するモロッコ人(未成年が多く、簡単に国外追放処分できない)、(2)モロッコ人と外見が似ていることを利用し、身分証明書を偽造して入国するアルジェリア人、(3)マフィアに金を払い、自動車のトランクに隠れるなどして入国するサブサハラ出身者――に大別される。

 従来は、こうした「正規の国境通過地点を通って入国する」ケースがほとんどであったが、今回は、国境に沿って張り巡らされた柵を、木の枝で梯子を作るなどして乗り越えようとする不法移民が急激に増加したことで注目された。この柵は、有刺鉄線が張り巡らされており、ほとんど全員が負傷している。それでもなお、この柵を越えようとする不法移民は後を絶たない。今回、このような不法移民が急激に増加した理由について、地元メリリャ市の新聞では、移民自身に取材し、以下のように報じている。

(1) 海路密入国の難しさ
数年前から、マグレブ系またはサハラ以南出身の不法移民が、粗末なボートでジブラルタル海峡を越えてアンダルシア南岸、もしくは大西洋のカナリアス諸島に漂着するケースが増加。多数の遭難者・死亡者が出ていることに加え、海上警備も強化。「陸の国境を目指す方が安全」と判断する者が増えた。

(2) 国境の柵の高さ
スペイン政府は、2004年6月、不法移民対策の一環として両市の国境の柵の高さを3メートルから6メートルにすることを決定するも、実行に移されてはいなかった。しかし、最近の状況を受けて、急遽、柵の高さを増す作業を開始。作業が完全に終わる前に、入国を試みる人々が殺到した。

(3) スペイン国内での不法移民合法化政策
スペインでは、2005年1月から施行された外国人法施行規則に基づき、同年2月~5月にかけて、国内に在住する不法移民の合法化手続を実施。サブサハラ出身の不法移民の中にも、合法化されて家族を呼び寄せるケースが出ている。こうした情報が伝わり、「スペインでは、今後再び合法化プロセスが繰り返される可能性が期待できる」という気持ちでスペインを目指す移民が増加した。

 特に(3)については、スペインの移民政策そのものが、不法移民を惹きつける原因となっているという皮肉な内容といえる。 スペインの外国人法では、たとえ不法移民であっても、一定の条件を満たせば、合法化され、労働を許可される。また、移民のほとんどは国籍や氏名を確認できる証明書(パスポート等)を持参していない上に、スペインは彼らの出身国と、移民追放に関する協定を締結しておらず、本国への送還はほとんど不可能に近い。さらに、スペイン国内での違法滞在自体は、犯罪ではなく、あくまでも行政上の違反行為としかみなされない。不法移民は一定期間を過ぎると、国外追放令を手に収容施設を出て、そのままスペイン国内にとどまるか、もしくは他の欧州諸国へと向うことになる。彼らにとって、スペインは、「常に合法化のある国」であり、さらに、国境越えに成功しさえすれば、「国外追放手続を受ける=国内通行許可証を入手する」ということになる。

 スペインの不法移民は、数字上では、「空港経由で入国したまま出国せずに不法移民化する」ケースが最大とされる。今回注目されているセウタ市及びメリリャ市の国境を越えるケースは、少数派に過ぎない。にもかかわらず、この問題がこれほど注目を集めるのは、国境越えの前後の長いプロセスに渡り、サブサハラ移民がおかれている人道上の深刻な状況によるものといわれている。

 不法移民を防ぐために、移民政策を厳しくし国境警備を厳重にすべきか、それとも移民の出身国であるアフリカ諸国の貧困を解決するため、先進国がより多額の経済協力を行うべきか――世論は、この二つの議論の間で揺れ動いており、政府の対応も固まっていないというのが現状である。自国の移民問題にもつながるとして、スペインの移民政策に常々懸念を示してきた欧州のシェンゲン協定各国からの批判も高まりをみせている。

 一方、スペインのマスコミでは、「スペイン(あるいはヨーロッパ)だけで移民出身国の問題のすべてを引き受け解決することは物理的に不可能」としながらも、「アフリカの農産物に対する欧州市場の開放こそが、欧州が今すぐにも手をつけるべき課題である」との声が出始めている。

 いずれにせよ、「貧困との闘い」、「文明間の同盟」を掲げている現社労党政権にとっては、今回のセウタ市及びメリリャ市における不法移民問題激化は、厳しい現実を突きつけられたといわざるを得ないであろう。

http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2005_11/spain_01.htm







●極東ブログ: セウタとメリリャの不法移民問題
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2005/10/post_214f.html






●ヨーロッパ行きを夢見るモロッコ人たち ディプロ2002-6

 毎年10万人以上のモロッコ人が、ヨーロッパ大陸という夢の新天地に密入国しようと、ジブラルタル海峡越えを試みる。そのうち数千人の夢は悲劇で終わる。しかし、この溺死者たちの悲しい運命を聞いてもモロッコの若者たちが冒険を思いとどまることはなく、その数は増えるばかりである。何が彼らを駆り立てているのか。まず、どうしようもないほど古臭く、封建的とすらいえる社会のなかで、新しい世代は将来の展望を描くことができない。そして、ヨーロッパ諸国がテレビ放映を通じて振りまく抗いがたい魅力が、マグレブ(モロッコ、アルジェリア、チュニジア)の若者の夢をふくらませる。しかし、幻影と現実の間には大きな隔たりが横たわっている。

 国を飛び出し、移民になるというのが、1990年代にマグレブ諸国で大ヒットしたポップス「さすらい人よ、おまえはどこへ」のテーマだった。この移民賛歌は、ヨーロッパやカナダへ移住するという望みを多くの者にかき立てる。90年に欧州連合(EU)でシェンゲン協定が成立し、ビザの発給が厳しくなったことで、豊かで自由なヨーロッパ諸国では想像もつかないような閉塞感がマグレブの若者たちの間に生まれた。その結果、特にジブラルタル海峡を渡ったスペインへの密入国が爆発的に増加した。

 海峡越えは非常にリスクの高い冒険である。「パテラ」と呼ばれる40馬力から60馬力の小型漁船が、南は首都ラバト近郊のケニトラに至るまで、モロッコ北岸各地から出航する。海峡警備が厳しくなってきているため、船頭は無謀な行動をとらざるをえない。スペインとモロッコを隔てる最短地点12キロのはずが、危険をはらんだ数百キロの旅へと変わってしまうこともある。目的地が大西洋上のスペイン領カナリア諸島に定められた場合は、さらに凄まじいことになる。2002年4月末には、モロッコ西部アガディール沖で船が難破する事件が起きている(7人のモロッコ人の遺体が発見された)。

 モロッコとスペインの警察では、巡視艇の接近に狼狽した船頭によって海に突き落とされたか、パテラ船の難破で放り出された人々の遺体を収容するという悲しい作業が日常化している。2000年、スペイン側では72人の遺体が収容され、さらに271人の死亡が生存者によって証言された。モロッコの新聞では、こうした北部沿岸での惨事がしばしば報じられている。1998年9月26日には、史上最大級の難破事件が起こり、38人が海峡の泡と消えた。密入国被害者遺族の会(AFVIC)によれば、97年から2001年11月15日までに3286名が海峡沿岸で遺体となって見つかっている。仮に、3人の行方不明者につき1人しか遺体が発見されないとすると、この5年間で1万人が海峡で命を落としたことになる。

 それだけではない。北部沿岸にあるスペインの飛び地セウタとメリリャの近辺は、緊迫した空気に包まれている。モロッコ北部の住民であれば身分証をみせるだけでこれらの領土に入ることができるため、密入国が後を絶たないのだ。セウタには毎日2万5000人が密入国しているといわれる。そこで、電流の走る金網を周囲に張り巡らせるという措置がとられたが、それでもなお、このスペイン要塞として築かれた飛び地には多くの移民が押し寄せている。とくに子どもの姿が目立ち、毎年、数千人が強制送還されている。スペインのラホイ内相は2002年5月9日、「モロッコ政府には自国の未成年者の状況についての憂慮がまったくみられない」という声明を出した。

 モロッコ政府に言わせれば、スペインへの移民はモロッコだけでなくアフリカ全土から(さらに中近東やアジアからも)やって来ている。しかし、スペイン警察は、移民の80%はモロッコ人だと言う。アフリカ諸国からの移民は悲惨な境遇に置かれつつも、(タンジールやラバトの)日常風景になっている。彼らがアルジェリアからサハラ砂漠を越えてやって来ると、運び屋が海峡近くのテトゥアンやナドールへと送り、場合によっては出航準備が整うまでの宿を提供する。また、なんの手続きや救済手段もなく、その上ひとまとめにアルジェリアに強制送還されることもある。しかし、こうした措置は国際法に反している。最近、アルジェリア国境そばの移民収容所はそこの「住人」1万人を退去させた。セウタとメリリャでは数千人がすし詰めにされている。

 国を出ようとするモロッコ人にはあらゆる手段がある。上流階級の子弟なら、出入国の自由を得るのに一番確実なのは外国に留学することだ。国内の公立校の生徒にとっては、事情はもっと複雑になる。2001年には、1万4000人の大学入学資格者(ほぼ4人に1人の割合)が、ラバトのフランス大使館に、フランスで学業を続けるためのビザを申請した。スペインやカナダへの申請も同じくらい多かった。学位取得者の多くは、幅広い選択肢を手にすることができる。例えば、モハメディア技術学校(モロッコで最高の学校)を2001年度に卒業した情報技術者は、全員が外国へ就職した。ここ数年、学位も地位もある30代の専門職(医師、技術者など)が財産を売り払って国を出る例も増えている。とくに人気の高い目的地はカナダやフランスだ。

 一般の人たちの場合には、さらに複雑で金がかかる。第一の方法はシェンゲン協定参加国のビザを取得し、オーバーステイすることだ。モロッコのスポーツ選手たちは、よく海外遠征の機会を利用して姿を消す。この冬、フランス・ラグビー協会は、モロッコの架空のクラブに対して数十件のビザを発給するという大失策を犯した。ビザの入手は容易ではないが、5000から6000ユーロも出せば、偽の証明書を買うことができるとAFVICは言う。

年間1億ユーロの稼ぎ
 空路もまた、国外脱出の手段である。乗り継ぎチケットという方法が、湾岸諸国で身を売るために出国する若い女性たちだけでなく、ヨーロッパに上陸しようとする者の間でも広く利用されている。パリやローマを経由するオーストラリアや中国行きの飛行機に乗り、高額の手数料で雇った共犯者の手を借りて、空港で姿をくらますのだ。7000ユーロの費用が必要だが、これが一番確実な方法だ。陸路を試みる者もいる。ジブラルタル海峡を南から北へと渡るトラックは毎年10万台に上り、かなりのチャンスを提供してくれる。ラバトの工業地帯では毎週のように、わずかばかりの食料を携帯した若者たちが、繊維製品を運ぶトラックの荷台に乗り込もうとする。また、運転手の共謀があれば(5000ユーロ)、チュニス経由でシチリア海峡を渡る長距離バス(3000ユーロ)や、トルコとギリシャを抜ける長距離バスを使うこともできる(2001年8月には、140人のモロッコ人が、カサブランカ南西のエル・ジャディダからこの方法でヨーロッパ入りしようとした)。
 また、個人的な手段も存在する(婚姻、家族呼び寄せ、イタリアでの雇用契約、ワゴン車の利用など)。とはいえ、最も使われるのは悪名高いパテラ船だ。モロッコの移民者は、とくに経済が停滞している北部リフ山地のナドールからウージャ、カサブランカから南東のベニ・メラル、カサブランカから南西のマラケシュという3つの地域の出身者が多い。これらの農村地域では生まれてこのかた海を見たことのない者も多く、この冒険がいかに危険であるか想像もつかないのだ(生存者談)。

 モロッコの辺鄙な土地で、これらの移民志願者たちに声をかけるのは地元の周旋屋だ。この産業は完璧に組織化されている。地元の運び屋が(トラックで海岸まで)連れて行くと、そこでは別の仲間が待ち受けていて、海が穏やかになるまでの宿を提供する。さらに、船頭(多くは船の持ち主ではない中継役)が乗客一人につき200から300ユーロを請求する。海峡越えを手配したマフィアに総額1000から1300ユーロを支払った後、これらのハッラガ(過去を焼き捨てる者)は夜間に小船に乗り込む。この闇の商売は年間1億ユーロの稼ぎをもたらすが、大麻の密輸に比べればたいした額ではない。
<以下省略>

http://www.diplo.jp/articles02/0206-2.html







【私のコメント】
ジブラルタル海峡を挟んでモロッコと接するスペインは、モロッコ領内にセウタとメリリャの二つの飛び地の領土を持つ。このうち、セウタはジブラルタル海峡の南岸という重要な位置に存在している。英国領土のジブラルタルと同様に、これらの飛び地は国際金融資本=シーパワーが世界の主要海峡を支配するための装置として設置されたのだと想像する。

スペインが英国に対してジブラルタルの返還を要求しているのと同様に、モロッコもスペインに対してセウタとメリリャの返還(その他にカナリア諸島の返還も要求しているらしい)を要求している。そして、モロッコが返還を要求しスペインが領有にこだわるこれらの地域はモロッコ人、あるいはサハラ以南のブラックアフリカからの不法移民が大量に流入する玄関口となっていることは皮肉である。11月5-6日にスペイン国王がセウタとメリリャを訪問し、モロッコへの返還に反対する現地住民(モロッコ系も含める)の歓迎を受けた。モロッコは大使を本国に召還するなど、両国関係が悪化している。今回はこのスペインの領土問題と移民問題について考えてみたい。

今回のスペイン国王のセウタ・メリリャ訪問は公式には「住民との親睦を深めること」とされている。しかし、スペイン政府はジブラルタルを英国から奪還する目処を立て、それと同時に不法移民問題で重荷になりつつあるセウタとメリリャをモロッコに返還することを決意し、スペイン国王は両地域に別れを告げるために訪問したのではないかと私は想像する。軍艦と大砲が最新兵器であった19世紀と異なり、ミサイルや超音速戦闘機が最新兵器となった現代ではセウタやメリリャの重要性は低下している。また、国際金融資本の世界支配崩壊に伴ってジブラルタルが英国領土であり続ける必然性はなくなり、EU統合の枠組みの中でスペインに吸収されていくことはほぼ確実である。ジブラルタルを奪還するという悲願とセウタ・メリリャの領有は道義上両立しない。そして、欧州文明にとってはこれらの地域が大きな脅威となっている不法移民の玄関口になっていることも問題であろう。欧州としてはモロッコの経済発展を促進させることでモロッコからの不法移民流入を防止するとともに、不法移民への罰則を強化する(例えば、悪質な不法入国・滞在者に無期懲役あるいは死刑などの極刑を与えるなど)ことが必要になってくるだろう。命懸けで流入してくるアフリカからの不法移民には、それに見合った刑罰でなければ阻止は困難だからだ。

日本から遠く離れたスペインのことなどどうでもよいという考えの人も多いだろう。しかし、重要な国際海峡の対岸の橋頭堡の行方というこの問題は、日本と韓国の関係と似通っている。国際金融資本の世界支配崩壊に伴って現在、世界中で国境線や文明間境界線の引き直しが進んでいる。日本文明と中国文明の境界線は従来朝鮮半島中央部の軍事境界線に存在してきたが、近い将来に米軍が撤退して朝鮮半島は統一され、日本文明と中国文明の境界線は対馬海峡(あるいは鴨緑江?)に移動することになると想像される。その時、日本は陸軍を派遣して釜山の橋頭堡だけは維持すべきか、それとも対馬を最前線にすべきかという問題と、このスペインの問題は重なってくるであろう。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 中近東イスラム圏は中国のよ... | トップ | ロイターが100円を割る大幅な... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (けんじ)
2007-11-08 21:14:14
我国が開国した後、国防と治外法権撤廃と関税自主権を回復することに外交の主力を注いだ。それらは一応日露戦争後に確立され、初めて我国は独立国となった。大東亜戦争後再び同じことになって、未だそれらは解決していない。従がって我国が独立国であったのは40年くらいである。その間にひらいた文化が我々に取って独特のものであったと私は考えている。
 開国以降、外国人との雑居は可か不可という議論がなされた。そしてその結果は不可であったトオモウ。日韓併合以来朝鮮が日本国の一部になった。この日韓併合は今では朝鮮人の宣伝で植民地支配となったが我国にとって朝鮮が欧米のような植民地であったかと考えるとそうではない。では日本帝国の一部であったかというとそうでもない。ではそれを我々はどのように見るか。以前読んだ本に記してあった事が妥当と見るから(その本の題は忘れた)それを紹介する。                                    
 それは親会社から独立した子会社が発展した。ところが親会社が倒産した。ソコで子会社が苛烈な競争をしている中、無理をして倒産した親会社をよく知らずに買収して、かって親会社であるからと思って、何とかして再建しようとしたが、よその会社の邪魔も入ってうまく行かなかった。親会社も頑張って再建しようとはしなかった。
 以上のような見方である。私は之が朝鮮に対して一番正しい見方だと思うが朝鮮はそう思っていないうことも判っている。ではそれを何で検証するか。金の流れを検証すればよい。
 その結果は説明の必要はない。
我国に居る朝鮮人の大半は自らの意志で来た人々か、密入国した人々である。特に大東亜戦争後我国の主権がないときにきた。戦前我国は移民をしており、そこへ更に朝鮮人が入ってくるので苦労した。嘘か本当か調べたわけではないが朝鮮経済は米しかなくそれを我国に出荷していた。今と同じでそれが入ってくると我国の農家が困る。しかし日韓併合である。それを入れないと朝鮮経済は疲弊する。そして入れた。米価が暴落して本土の農民は苦しんだ。                                
 当時日本本土は日本銀行が発券銀行、朝鮮は朝鮮銀行、台湾は台湾銀行がその役目をしていた。戦後それらが持っていた日本本土の資産を基にして日債銀、長銀が設立されたと聞く。それらがつぶれたわけだが、背後に何かあるが私は知らない。
 アングロサクソンは外国を支配する時その地域に別の外国人を入れて、その外国人と支配している地域に元から住む人々をいがみ合わせる。戦前の日本人はそれを知っていたが、戦後わけのわからない、人道とか、平等とか、人種差別反対(国際連盟で我国が主張した人種の平等とは異なる)とかで、我々はわからなくなった。 
 アメリカは我国に対しては朝鮮人にその役目を負わせることにしたと私は考えている。之は朝鮮人が自身をどのように考えようと関係ない。我国における朝鮮人はそれ以外の位置はない。
何故なら戦前我国は朝鮮人の本土移入を厳しく制限していたからである。
 残念ながら、我々は我国に居る外国人である在日朝鮮人に対して、その見方から見た時のみ正しい対処方法が構成できる。
それに対して朝鮮人が今のような態度を取るかそれとも別の態度を取るかは彼等のことであるから我々のしったことではない。
 仮に南北朝鮮が、動揺して難民が押し寄せてきたら、どうするか。私は対馬海峡の鮫の餌になってもらうのが朝鮮人に対しても我々日本人に対しても一番被害が少ない選択だと残念ながら考えている。
 しかし朝鮮人はそのように考えず、何とかして我国へ入ろうとしているだろう。今も盛んにしている。何しろ、今は我国有っての朝鮮であるからである。その逆は国防上の問題だけである。          
 彼等は我国を支配しようとしている。事実マスコミは彼等の手に落ちている。NHKの報道もそうだが民放におけるスポンサーにパチンコ関連が此処2、3年異常に多くなった。
 和田あき子と言う歌い手が居るが彼女は在日の2世と週刊新潮に記してあった。彼女の歌を日本人が歌う歌と思っていた人は騙されたわけであるが、このようなことが他にも多い。之の大きな問題点は和田あき子女史がどのように考えているか知らないが、彼女に童謡 ふるさと、か赤とんぼを歌ってもらいそれを聞けば、わかる。歌は当人の素性が覿面に出るからである。彼女に取っては大きな危機となるだろう。しかしそれが更なる発展に結びつくか、壊れるかは判らないが、彼女に私はしてもらいたい。
 我々は朝鮮史那に対しては福沢諭吉と勝海舟の意見を基にして考えた時我々に取って意味のある考察と現実に作用する方策を構成することが出来ると私は考えている。そしてその中で両民族にとって一番被害の少ない方策を取ることであると考えているが思いつかない。只彼等にはいい悪いに関係なく警戒するべきだとは思っている。
返信する
Unknown (Unknown)
2007-11-10 20:07:26
アメリカの崩壊が秒読みになった。

 外務省にも既に、英国諜報部のロビーグループが出来上がっている。
この英国諜報組織のエージェントリクルーターは、「鷲」「鷹」というコードネームで活動している。
英国の諜報組織は、反米国、親英国、親英国王室=日本の天皇家による日本統治を強く推進する王室派でもある。
日本の言論界でも、近年、この英国諜報組織のエージェントが盛んに活動している。
(略)
英国諜報組織は、巧みに日本の皇室派と結び付き、反米国という「正しい」議論を展開しながら、「王様による支配は正しい」と言う王制復古へのレールを敷いている。
この英国スパイ達はベンジャミン・フルフォード、エハン・デラウィ等といった名前を使っている。
http://alternativereport1.seesaa.net/article/65583319.html
返信する

コメントを投稿