ガラス越しに見える限りでは、若いウィルキー氏は懐の温かい人間の旺盛な食欲で夕食を平らげていた。
「チェッ、そうなんだ!」シュパンはちょっぴり羨ましさを感じながら呟いた。「たっぷり御馳走を戴いてるってわけだな……ま、一時間はテーブルに着いてるだろうから、俺もひとっ走りどっかで一口かっ込んで来るか……」
そう決めて、彼は急いですぐ隣の通りに入り、小さな食堂を見つけ、入ると三十九スーもする料理を奮発した。このように散財することはもはや彼の習慣ではなく、彼はけちけちと暮らしていた。いつか金持ちになるのだと誓ってからは。彼の言葉を借りれば、かつては『美味いものに目がない』生活をし、ロンドレス葉巻や小さなグラスで飲む強い酒が大好きだった彼が、今や隠遁者のように、水しか飲まず、勧められたとき以外は喫煙もしないという生活を送っているのだ。
こういう暮らしは彼にとって苦痛ではなかった。たとえ一スーと雖もそれは彼の懐に転がり込む金だからだ。一スーは来るべき一財産という建造物を建てるための砂の一粒となるのである。しかし今夜は、『ボルドーをちょっと一杯』を控えようという気にはならなかった。
「よし、豪勢にいこう!」と彼は考えた。「これは正当に稼いだ金だからな……」
しかしカフェ・リッシュの前の見張りの位置に戻ってみると、ウィルキーはもはや一人ではなかった。テーブルには彼と同じぐらいの年恰好の青年が同席し、二人はコーヒーを飲み終えていた。その相手の青年は素晴らしく美男で、ちょっと美男すぎるほどだったが、その顔を見るとシュパンは思わず声を上げた。
「ああ、誰だったっけ、どこで見たっけ! あの顔は確かにどこかで見覚えがあるんだがな……」
この新しく来た男、そのギリシャ彫刻のような顔はあまりに整いすぎて不安を起こさせるほどだったが、その顔に名前を関連付けようとシュパンは懸命に頭を捻ったが、思い出せなかった。しかし、彼の記憶の底に、過去の記憶の幻影とともに、確かにその人物が蠢いているのだった……。彼の苛立ちが最高潮に達し、自分も店の中に入ろうかと思案していたとき、ウィルキーがウェイターの手から勘定書きを受け取ると、周囲を見回してからテーブルの上に一ルイを置いた。