石狩のマクンベツ湿原へ、水芭蕉を見に行った。
マクンベツ湿原は、水芭蕉の群生地として知られている。
我が家から車で30分ほどだ。
時期的にはかなり遅くて、花は(正確には葉が変形したものだそうだけれど)
終わっているかもしれないと思いつつ、ダメもとで行ってみた。
行ってみると、 寒い日が続いていたせいか、思ったよりも花が残っていた。
茎が長く伸びて、カーラーのようだ。
それに、葉が驚くほど大きく茂っている。
花の見ごろの時期には、こんなに大きくないような気がするけれど、
花が終わる頃に葉が伸びてくるのだろう。
子供のころ、琴似駅の近くに住んでいた。
家がまばらで、谷地のような原っぱがあちこちに残っていた時代だ。
水芭蕉は、線路の傍に群生していたし、家から少し歩いた原っぱの中にもたくさん咲いていた。
母と買い物にでも行った時だろうか、道端に咲いていたこの花に触ろうとしたら、
「へびのまくらだから、さわっちゃダメ」と、母が、私の手を引っ張りながら言った。
どうしてへびのまくらなのだろう?
「蛇が寝てるかもしれないから」と、母が言ったように思う。
それ以来、大きな葉の陰に蛇が潜んでいるようで、近づいたことがなかった。
友人に訊いて見ると、みんな、
「そうそう、へびのまくらって呼んでたよね」と 懐かしげにいっていたけれど、
蛇がいるから触っちゃいけないとは、言われたことがないそうだ。
山深い母の故郷では、きっと、 ほんとうに、花を枕に蛇が寝ていたのかもしれない。
「夏がくれば思い出す はるかな尾瀬 遠い空~
水芭蕉の花が咲いてる 夢見て咲いている水のほとり~」
で、有名なこの歌の中に出てくる水芭蕉が、あのへびのまくらのことだと知ったのは
恥ずかしながら、大人になってから。
水芭蕉と呼んだだけで、へびのまくらが綺麗に見えてくるから不思議だ。
そもそも、へびのまくらという呼び名では、歌にはならなかっただろう。
シクラメンのかほりだって、豚饅頭では、ヒットしなかったよね。