少し息抜きとして(読んでくださっている方のためというよりわたし自身の)、「旅淡シリーズ挿入」。
実はわたくし、今回大曲に行ったのが「初めての秋田」です。
「雪ん子」「米」「秋田美人」・・・・。
つまり、ほとんどフジヤマゲイシャレベルの知識しか秋田に対して持っていません。
そこでいきなり大曲の花火大会という王道的直球的観光をしてしまったわけです。
花火大会の次の日、ご招待下さった方が秋田観光に連れて行って下さいました。
今日はその写真を淡々と貼っていくことにいたします。
先日、カールツァイスのレンズ搭載カメラを買った件でその選択に皆さまのご支持をいただき、
何も知らない素人なりにいいものを選んだ己の野性の直感に少し自信を持ち、
今回の旅行もこのカメラで風景を撮るのを楽しみにしていたのですが、
相変わらずと言うかなんというか、カメラの充電コードを持ってくるのを忘れ、
後半、電池切れして写真が撮れませんでした。
というわけで、冒頭写真はわたしのカメラが息絶えた後、
うちの天才的にシャッターを切るのがヘタなTOが、iphoneで撮ったものなのです。
ちょっと・・・・・これ、どう思います?
誰が取ってもヘンな写真の撮りようがない景色とはいえ、絶望的に写真のヘタなTOが(しつこい)
これだけの絵を残せるって・・・、もしかしたら、iphoneって、カメラとして結構すごいんじゃ?
わたしのカール・ツァイスの立場は?
それにしても、この風景。まるでヨーロッパの田舎。
コローの風景画にありそうじゃないですか?
実は佇んでいるだけで汗が噴き出してくるほど不快な気候であることが全く感じられない、
見事なまでに静謐な、絵になる場所です。
どこまでもまっすぐ流れているのは、これが人工の川であるからなんですね。
ここは八郎潟。ごぞんじ人工の干潟です。
ですから道はどこまでもまっすぐ、川はどこまでもまっすぐ。
二枚目の写真はちょうどここでカーブしているんですね。
道沿いにどこまでも植えられた桜が5月(秋田は桜が遅い)に一斉に咲くとき、
それはそれは美しい桜並木がどこまでもどこまでも続くのだそうです。
わずか数十メートルの区間に桜が植わっているだけのただの道路に四月になると人が押し掛ける、
文京区茗荷谷の「桜並木」、あれが桜並木ならこれを何と呼べばいいのか。って感じです。
(昔住んでいたもので)
ここは「地元の人が知っているちょっといい景色」に過ぎず、勿論のことおっしゃれーなカフェも、
こじゃれたレストランももありませんから、車を停めて写真を撮るだけ。
勿論観光バスも停まらない、「ただの道」です。
でも、一瞬でもこういう場所を見るために行くんですよね、旅というのは。
このように、地元の方の案内ならではの「穴場」に連れて行っていただいたのですが、
勿論これは「オプション」で、メインはこれでもかと王道の観光コースでございました。
大曲花火の夜、深夜12時、秋田駅にぼろ屑のように疲れて帰ってきて、主催の方が
「それでは明日、朝9時にお迎えにあがります」
この方はわたしたちを案内するために9時から5時までの観光スケジュールを組み、
日本の企業人らしく、どんな疲れている花火大会翌日にも、その任務を遂行して下さろうと、
常務取締役であるその年齢にありえないほどの気力を振り絞って下さるつもりだったのですが、
いかんせんわれわれの気力体力は、すでに限界を迎えていました。
「あのう・・・・・その時間なのですが・・・・・・」
こういうときはこちらから開始を遅らせる提案をするのが気遣いというものかもしれません。
集合時間を一時間遅らせ、朝10時から秋田観光開始。
向こう様がほっとなさったかどうかは知るべくもありませんが、
われわれにとって、とにかくこの一時間は、次の朝実にありがたかったです。
わたしはツァーというものに一度しか参加したことが無いのですが、その一度が、
息子がまだ1歳半の時、アメリカから参加したイタリア観光でした。
息子は赤ちゃんのときから飛行機や電車、衆人のなかで泣いたり騒いだりがことが一度も無く、
おかげでこのような旅行にも肩身の狭い思いをせずにすんだどころか、他の参加者に可愛がられ、
あまり子供好きでなさそうな男性が「子供って大概騒がしいものだけどねえ、おとなしいね」
としみじみ言うくらいであったのですが、じつはストレスを受けていたのは息子本人でした。
朝ロビーに8時集合、というようなタイトなスケジュールが何日か続いたころ、
ぐっすり寝ているのを起こしたところかれはしくしくと泣き出し
「お家に帰りたい・・・・・」と呟いて、父母を落涙せしめたのでございます。
小さいお子さんをお持ちのお父さんお母さん、観光なんて大人のためのものなのよ。
このときのイタリア旅行は勿論、アラスカ鉄道、氷河クルーズ、エッフェル塔、フロリダディズニー、
後から聞いたら息子は
何一つ覚えちゃいないんですから。
話がそれましたが、何しろ、こんな思いをしてまで人はなぜ旅をするのか、
ついその理由について深く模索してしまいそうなくらい、タイトなスケジュールの旅行は、
朝が辛いものだということが言いたかったわけです。
さて、常務取締役のA氏の車は、我々を乗せて一路男鹿半島へと向かいます。
東北に全く縁故のないわたくし、男鹿半島?あのトンカチ状の?と、一瞬考えたほどのモノ知らず。
どうも東北というと、秋田青森がごっちゃになってしまうのですね。
これはしかしわたしだけではなく、秋田の震災、とくに原発の被害は皆無であったにもかかわらず、
東北と十羽一からげに被災地扱いされる傾向はいまだにあるということです。
写真は男鹿半島にある寒風山。
ここは全面が芝生のような草に覆われた山で、展望台からは
西=日本海
東=八郎潟
南=秋田市と海岸線
が一望できます。
パノラマ模型のようですね。
惜しむらくは写真が展望台のガラス越しにしか撮れなかったこと。
この展望台、いまどき、と言ってはなんですが、床ごと回っていました。
一昔前、赤坂のホテルのトップラウンジがこれを売り物にし、一時全国で流行ったようですが、
この、床ごと回る展望ラウンジ、最近はとんとお目にかかりませんね。
10年以上前、中国は南京に行ったとき、地元で一番のホテルに泊まりましたが、
夜に行ってみたらスカイラウンジが回っていました。
その回る客席の中央に中国人の楽団がいましてね。
クリスマス間近だったんで「ホワイトクリスマス」なんぞをやったりしていたんですが、
これが何と言うのか、おそらく中国人のバンマスが、よくわからないままコードをつけたらしく、
「よくよく聴き、理解しようと努めればホワイトクリスマスに聞こえる可能性もある」
という「あなたの知らない世界の音楽」だったんですねー。
文化、というものはかくも地理情報の隔絶に置いては模倣にも限界があると感じた瞬間でした。
この展望台まで、駐車場から階段を延々と昇っていくのですが、辿りついたら気息えんえん、
心臓バクバク。そんなあなたのためにあるのが、これ。 見たところ誰もやってませんでしたが。
この展望台の入り口に、コリアンドラマの「アイリス」のポスターが貼ってありました。
勿論、誰も一顧だにしていませんでした。
なんでも、ドラマ中、主人公のカップルがこの階段をふざけながら昇ったというんですが、
これが観光の目玉になって客寄せができると、本当に考えているのか秋田県?
そう言えば秋田駅にもこのドラマの大看板が掛けてあって、その写真と共に
「ロケ地にようこそ!」なんて書いてあったのですが、このドラマって、そんな人気あったんですか?
そもそも、失礼ながらこの秋田の、しかも三昔前くらいのセンスの展望台が、なぜわざわざロケ地に?
麻生首相にカップラーメンの値段を聞いた民主の牧山ひろえというお花畑議員が、
「もっと日本にコリアンドラマのロケを招へいして文化交流、観光客招致を」
などという、この非常時に開いた口もふさがらない質疑をしていましたが、
そういう「それで儲ける人々」の意向のなれの果てが、このドラマのロケってことなんでしょうかね。
コリアンドラマはお好きな方に言わせると「あの昭和な臭みが懐かしい」というものらしいですが、
こういうところをロケ地に選ぶ制作側のセンス、さらにそれで客寄せができると信じている
秋田観光協会、このあたりの認識のずれというのが、南京の楽団にも感じた
「文化伝達の地域ラグ」あるいは「決して超えられない情報隔絶の壁」
を感じずにはいられません。
納骨堂?(多分違う)の横でパラセイリングを楽しむ人々。
気持ち良さそうでしたが、もし一旦事故ったらヘルメットなどは何の役にも立たないかと。
どの程度安全なものかは知りませんが、高所恐怖症気味のわたしは絶対に無理。
飛行機だと全然平気ですのにねえ・・・。
さて、ここから車は八望台へ。
何万年も前に火山ガス爆発でできたマール湖があります。
まあるいからマール湖、というわけでもないようです。
非常に深いように見えますが、所詮爆発の穴ぼこなので、せいぜい40mの水深なのだとか。
この写真の湖はわずか11メートルです。
おそらく人一人立ち入った事のない湖岸に森が迫っている様子は神秘的です。
このような絶景を見るため観光客が車で立ち寄って比較的新しい展望台に登るわけですが、
ここにはそれだけしかありません。 なまはげ食堂・・・・・・。
どうやら経営が立ちいかなくなり、閉店の憂き目を見てしまった模様です・・・・。
なんだかこういうのを見ると「ああ~・・・・」と思ってしまいます。
こんな絶景の景観地にたった一つしかないレストランなのに、何が悪かったんでしょうね。
もしかして、店の名前?
ふじた、という普通の食事処もあったようですから、名前ではないでしょう。
「八望台をもりあげる店」
と言う大きな看板が、今はただ哀しい・・・・・・。
実はこの日、秋田県全域は前日の花火客のうち少なくない人数が一泊後秋田観光をしており、
かき入れ時というか、秋田観光協会にとってはフィーバー状態?だったのです。
我々のように個人で観光する客のみならず、この大曲の花火大会は、旅行会社が
花火+翌日の観光付きで大々的にツアーを組んでいたりするものですから、
この後に行った入道崎のパーキングなど、大型バスが全て「花火大会」というカードを
つけて止めていたくらいでした。
しかし、ここは駐車場が狭く、バスが停まらない。
つまり、観光バスのコースに入らなかったことが、八望台がもりあがれなかった原因でしょう。
と言うわけで、怒涛の秋田旅行、焦熱地獄の苦難と忍耐の限界の果てに
エリス中尉は何を見るのか!
・・・・・・というか、観光って、何?
(ほとんどゲシュタルト崩壊を起こしつつ後半へ続く)