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試験艦「あすか」見学その2

2016-10-12 | 自衛隊


横須賀にある開発隊群の直属試験艦である「あすか」見学記、
二日目です。
実はわたしは「あすか」の見学は全く初めてというわけではありません。
去年の観艦式、わたしは本番でイージス艦「ちょうかい」に乗ったのですが、
「ちょうかい」の出航する木更津港には他に「こんごう」「あすか」が泊まっており、
前日には一般公開していたのでホテルチェクイン前に見学をしたのです。

そのときに、彼女らの舳先が並んでいる様子を撮り、「あすか」だけが
前に突き出したシャープな先端をしていることを確認しました。

こうやってイージス艦と並んでみると、違いは歴然です。
これは何度も説明していますが、艦首・底には新水上艦用ソーナー(OQS-XX)
を設置しているため、投錨したときに当たらないようなデザインなのです。
それは砕波発生装置からソーナーを遠ざけるためでもあります。

このことについて、後に艦長を囲んで歓談となったとき話題にしたのは、ひとえに
「実際に見たので知ってまっせー!」ということを言いたいがためでした(笑)


一般的に自衛隊装備の見学にやって来る一般人、特に女性に対し、
案内の自衛官は「この人はどの程度知っているのだろう」ということを
会話のリアクションから察知し、相手のレベルに合わせて説明してくれます。

それでいうと、わたしはまあそれなり、もう一人の女性はわたし以上に
現場主義?で見学をしょっちゅうしている人、男性は元中の人。
というわけで終わる頃には艦長も

「これはおそらくご存知だと思いますが」

といちいち説明の頭につけておられました。

試験艦「あすか」はいわば「お試し専用艦」なので、
搭載して実験した装備はほとんど
外してしまうのですが、面白かったのは
イージスシステムのフェーズドアレイアンテナが
はずされた跡のある、
今は何もないブリッジ外側の眺めでした。


写真を撮るのを忘れたのが残念です。




食堂階から艦橋に上がっていくことになりました。
「あすか」のこの階のラッタルはこのように上り下りが別の
広いタイプで、わたしは一度このことを

「技官などが乗ることも多いので船乗り以外に優しい仕様になっているのでは」

と推理してみたのですが、実はそれより重要な意味があったのです。



艦長が指差している先には、ロープが通せる穴の空いた部分があります。

「この階段が広いのは、ここから機材を搬入するためで、モノによっては
ここに通したロープで引き上げたりするんです」


 
さて、艦橋に上がってきました。

「広いですねー!」

同行の女性の第一声がこれ。
「ぶんご」「うらが」など掃海母艦よりは少しだけ小さく、護衛艦よりはかなり広め。
 
 

艦橋よりの眺め。
鑑番号116は「てるづき」、その向こうは「ちはや」でしょうか。



米軍基地には

ベンフォールド( USS Benfold, DDG-65)

が見えます。
ベンフォールドというのは朝鮮戦争で戦死した衛生兵の名前だそうです。
2015年10月、アメリカのアジア重視戦略「リバランス」の一環により

配備先のここ横須賀基地に到着し今日に至ります。



右舷側にチャートを広げるデスクがあるのはDDと同じ配置です。
「世界の艦船」「世界の国旗」などと並んで「日本漁具、漁法解説」という辞典が。




信号旗、信号灯と通信関係のファイルらしきもの。



ここに立つのは自衛艦の場合ベテラン海曹というイメージがありますが、
たとえばロナルドレーガンなどの空母では「操舵するだけなら若くてもできる」
と、平均年齢18〜9歳の水兵に任せているというので驚いたことがあります。

自衛隊は海軍時代下士官が操舵をしていたという慣習を受け継いでいるのしょうか。

 

決して特定秘密保護法には抵触しない事例と思われるので、
何が書いてあるかここで発表させていただきましょう。

この日行われた練習艦隊出航時の見送りについての注意点です。

わたしたちは岸壁から見送る人だけが練習艦隊の見送りだと思っていましたが、
実は同じ港内の自衛艦でも、それなりに艦隊見送りを実施していたらしいのです。

この通達によると、

「整列の人員は艦所定(当直員対応)艦首(右)〜艦尾(右)間
手前のマーキング」

「雨天時の雨衣着用の有無は0930のCOMM CKに続き示す」

この下にある、各艦に送られてきたらしい練習艦隊見送りの件は
宛先がたとえば「あすか」だと航海長、副長、当直士官となっていました。

「当日の当直・副直士官、航海科当直員、マイク員等等事前教育を
実地するとともに、
整列位置の確認など事前準備をしておいてください」

という通達となっており、艦隊見送りという一事に対しても、上から下に
申し送ってきっちりと行われるものなのかと結構びっくりした次第です。 




デッドオアアライブ・・・ゲームのあれとは違いますよね。



OPA-6Dはレーダー指示器です。
先の繋がってないヘッドフォンをしている鳥さんにまた遭遇。 



後甲板をずっと映しているモニター。



艦橋デッキ。
望遠鏡の横に「見張り要領」が書かれている艦は初めて見ました。
それによるとこの望遠鏡の「眼高」は(海面から)14・6m。
図で方向角および方位角の判定と、注意事項などが記されています。



外に出ました。
他の艦ではみたことのないくらい広いスペースです。
観艦式の時には人がさぞ詰め掛けたのでしょう。
「あすか」は人員積載量が多いのと階段が前述の理由によって広かったりするので
観艦式などには必ず観閲艦として参加しています。

このもう少し上を撮っていれば、フェーズドアレイの跡が写っていたはずなのですが・・・。



ここも他の艦にはない独自のスペースです。



たくさんの人がシャワーを一度に浴びるためのホース・・・ではありません。
(ってかまじでなんだっけ(; ̄ー ̄A )海水を吸い込むホース?)



艦の性質上、将来的に何かを据えるためのブランクスペースというのもあります。



というわけで艦長曰く「駆け足で」見学を終了しました。
あと、写真を撮れなかったのですが、「あすか」の女性乗組員の
区画に、女性だけが入らせてもらいました。
中にいた女性乗組員の方は今から上陸ということで準備をしていて、
見学者が部屋に入るのに少し戸惑っておられるようだったのですが、
了解を得て少しだけ中を覗いてすぐに外に出ました。

中は自衛艦(というか自衛隊の敷地内)ではほとんど感じたことのない、
いかにも女性の居室ならでは空気が漂っておりました。
目をつぶって入っても、女性の部屋であることがわかるような。


「他ではありえない、いい匂いがしますね」

そして、士官室でお茶をいただきながらもう少しだけ話をして、

わたしだけが艦長自らのお見送りで退艦した次第です。



しかし、そこから出口までが遠かった(笑)
さらに、わたしは車を横須賀駅の向こう側のコインパーキングに停めたので、
舷門を降りてから横須賀を出発するまでたっぷり30分はかかった気がします。

帰りながらほかの船で行われている作業の写真を撮ったりしたし・・・。
これ何をしてるんでしょうか。

向こうに「いずも」らしき艦影が見えます。



艦番号111は「おおなみ」。



「あすか」を降りた時から、ラッパの音が聴こえていました。
見れば、イージス艦の誰も来ないこんなところで、おなじみ「出航ラッパ」から
「総員起こし」「かかれ」など、ラッパを順番に練習している信号員がいました。

やっぱりちゃんと吹けるようになるまでこうやって練習するんですね。


何かとてもいいものを見せてもらったお得な気持ちになりながら、
彼のラッパの音に送られて、横須賀地方総監部を後にしたわたしでした。


終わり。