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近接格闘訓練展示〜平成31年度 第一空挺団降下始め

2019-01-28 | 自衛隊

お話ししてきた平成最後の降下始め参加記も最終回になりました。
前回、防衛大臣訓示のところまでお話ししたわけですが、
少しだけ時間を戻して、今日は招待者観覧席前で行われた
近接戦闘訓練のデモンストレーションについてです。

状況終わりとなってから、訓示が行われるフィールドで整列が始まりました。
隊員がたくさんいるので、わたしてっきり今まで、訓示には
「訓示要員」として、今日の仕事はこれだけで終わり、なラッキーな隊員が
参加しているのだと思っていました。
だって皆迷彩メイクしてないんだもん。

でも、ギリースーツの狙撃班は流石に実際に参加した人たちか・・・。

そしてこの丘の上の方では、こんなことが行われていました。

近接戦闘訓練展示です。

招待席の前で行われるので、わたしは近接で見たことがありません。
これまでは完全に丘の向こうで行われていたため、
その片鱗すら覗くこともできなかったわけですが、今年はなぜか
ちょっとだけこちらよりでやってくれたおかげで、優秀な望遠カメラがあれば
なんとかその様子を写真に撮ることはできました。

手持ちなので限界はありますが、それでも画素数が大きいので、
なんとかここでご紹介することができます。

 

さて、自衛隊の格闘術ですが、自衛官は白兵戦や徒手格闘の戦技として
編み出されたものを日々訓練によって身につけています。

自衛隊の格闘術というのもそれなりの歴史がありまして、
それは「平成19年前」とそれ以降に分けられます。

平成19年に何があったかというと、それまでは昭和34年に制定された

自衛隊徒手格闘

自衛隊銃剣格闘

自衛隊短剣格闘

などが廃止され、「新格闘」というものに改変されたのです。
ただし、新格闘になっても「武器技術」という形で後者二つは残っているので、
昔も今も自衛官は銃剣格闘的な訓練を行うものなのだそうです。

陸上自衛官であれば、二佐以下は必ずこの教練を受けることになっており、
海自、空自では警衛などの格闘術を必要とする部隊で取り入れられています。

なので、陸上自衛官あるあるとしては、私服のときに傘を持つと、
気がついたらついつい銃剣術の型をやってしまっているのだとか。

サラリーマンが駅で傘でゴルフをやるみたいなもんですかね。


新格闘はそれまで武道色が強かった格闘を、つまりは
より実戦的に自己を守り、相手を倒すための技術として再編したものですが、
基礎技術は基本的にそれまでと変わったことはないようです。


何度も言いますが、格闘展示が行われていたのは座っていたところから
はるかに遠いところで、肉眼ではほとんど何も確認できない距離です。

そちらにレンズを向けて何枚も連写し、あとで拡大して見てみたら
一人の「主役」的な隊員(この写真でこちらを向いている)が、
次々と襲い来る敵を格闘技で撃退するというシチュエーションのようでした。

ちなみに、画面右側に立っている人は防衛大臣SPだと思われます。

相手の腕を取り、逃げ場を塞いでから急所を攻撃。
これはわたしが息子に付き合って少し体験したイスラエルの軍格闘技
クラブ・マガにしょっちゅう出てきたパターンです。

この短い経験から申しましても、格闘技のデモンストレーションは
やる方もやられる方も大変危険なものです。

クラブ・マガでは男女混合でその都度ペアになって練習しますが、
攻撃側となった時、どこまで「当てるフリ」をするのかが問題です。
特に自衛隊の新格闘などもおそらくそうだと思いますが、武道と違い
相手の急所を躊躇いなく非情かつ冷静に攻撃することが主眼なので、
こちらは少し体が触れただけという認識であっても、

「うっ」

と対戦相手の男性が固まってしまわれたことが二度ほどありました。

クラブ・マガでは本格的になるとプロテクターを付けなくてはなりませんが、
自衛隊ではミズノ社製の軽量かつ着装しやすい防具を採用しています。
これは、従来の防具よりも安全性を高め、肉体の損傷を防止しつつ、
訓練の痛みだけを与えることができる新機軸に基づいて
開発されたそうですが、

それでも怪我人は絶えない

とwikiには書かれています。

ナイフ対ナイフの戦闘。
これは新格闘のジャンルでいうと短剣格闘です。
自衛隊の短剣格闘は旧軍が採用していた古武道の短剣術ではなく
アメリカ軍のナイフ格闘をベースにしているそうです。

銃を持った相手もこの通り。

ナイフを持った手の肘を確保するやり方も確かクラブマガと同じ。
このあと相手の背後に周り後ろから動きを封じてしまいます。

 

ところで次々とやってくる敵を迎え討つヒーロー役の隊員ですが、
おそらく徒手格闘術で段位があれば最有段者、教官のような立場の人でしょう。

しかし特に人よりいかつい感じでもなく、背丈も普通で、
一人だけ鉄帽をかぶったその面持ちは遠目にも優男に見えます。


展示は、周りで片膝ついて待機している無帽の隊員たちが
順番に彼を襲っていく、という形で進んでいるようです。

あっ、短剣を持っただけの彼に対し、敵は銃を突きつけてきました!
もう絶体絶命か・・・・・・・!

「ナイフを捨てて向こうを向け!」

相手が体を小突いてきたらその時が反撃のチャンス!
武器を再び構えるまでの瞬時の隙を突けるからです。

あっという間に相手を組み伏せ優位に立ってしまいました。

やられた人は片膝で待機に戻るので休憩できますが、とにかく主役は
最初から最後まで次々とやって来る敵と格闘しっぱなし。

この写真でも待機していた人が加勢に駆けつけようとしていますよ。

2対1の戦闘も相手の力を自分の力に変える見事な動きで圧勝。

いかにも悪そうな人(ごめんなさい)が棒持って襲ってキター。

スキンヘッドってだけですごい迫力です。
これでどすの利いた声で第一空挺団所属です、とか言われたら
悪いことしてなくてもビビっちゃうよね。

そういえば噂によると、習志野ではタチの悪いヤクザ屋さんも
第一空挺団だけは一目も二目も置いているとか。

空挺団の人が団体で歩いていたら、チンピラ風情では太刀打ちできず
尻尾を巻いて逃げ出してしまいそうです。

でもこんな人たちも、自分の階級章などを制服に付ける時には、
お裁縫セットを使ってチクチクお針仕事してたりするんですぜきっと。

やられると見せて、実は武器を持っている手を取りにいってます。

そして腕を取りいつの間にか武器を奪って床に叩きつけ・・。
しかし左から次の敵が襲って来る気満々。

「仲間のかたき!」

やられた人たちは地面に静かに横たわり、目を瞑って暫しの休息(嘘)

後ろから敵が不意打ちにサンドイッチ攻撃しにくるようです。
うーんこの卑怯者。

キックしてくる脚を取って一人を退治中、後ろから・・・。

しがみ付いてきたー。

あべし!

「んがっ!」

どうっ!(倒れる音)

「ふ・・・・また人を殺めてしまった・・・」

「状況終了〜〜」

というわけで格闘展示の終了。みなさんお疲れ様でした。

プログラムの一番最後には「飛行展示」とあります。
左のほうで待機していたヘリが展示飛行を行いました。

まず攻撃ヘリAH-1Sコブラ

今日は主に人員輸送で活躍、多用途ヘリUH-1J ヒューイ

空挺に始まり車両輸送、人員輸送、装備牽引と出ずっぱりだったCH-47チヌーク

本日登場した装備はこのあと演習場に展示され、近くで見ることができました。
演習場に降りてみたい人、装備を見たことが無い人などは、
このあと全ての装備が定位置に展示されるまで、ここでずっと待っていたようです。

わたしは最初と次の年に見学してからその後はパスしています。

地本のテントの前には、空挺降下している隊員が描かれた顔出しパネルがありました。

顔出しパネルのクォリティが無駄に高い(笑)
おそらく第一空挺団のアーティストによる製作だと思われます。

地本のコーナーで、高校生男子とその母らしい二人が説明を受けていました。
こういう光景を見ると、ヨシッ!と心の中でガッツポーズしてしまいます。

年は何の説明もなく(デビュー時は”これは痛車ではありません”と言い訳付き)
ひっそりと置かれていた千葉地本の痛車、じゃなくて地本車。

車右舷後方の、目を回しているかけるくんが可愛いっす。

展示で使った装備を片付け中。
FH-70は今日出ていたと思いますが、わたしのいたところからは遠かったです。

このあとは、陸上自衛官が自動車教習を行う所を通り退出します。
ふと目を留めた「当直室」の札。

当直室・・・・ここに寝泊まりするのか・・・・。

ここに・・・・・。
確かに一応冷暖房は完備してそうではあるが、何というか
すごいデンジャラスな雰囲気の建築物であるなあ。
向こうの建物はどう見ても昭和30年代に建てられた築60年越えのビンテージだし、

こんな設備で任務に就いている皆さんには本当に苦労をおかけします、
と国民の一人として思わず頭を下げずにいられません。

 

さて、というわけで、今年の降下始めも終了しました。
新しい年号のもとで行われる来年の降下始めに参加するかどうかは
終わったばかりの今は何とも言えませんが、またその時になれば
今年よりバージョンアップした装備を身につけていっちゃうんだろうな(笑)

 

降下始めシリーズ終わり。