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へリボン部隊による第2次目標確保〜平成31年第一空挺団 降下始め

2019-01-25 | 軍艦

わたしが本年度の降下始めについて、例年になくその展示を
専門っぽい用語で説明できているのには訳があります。

今年は朝演習場に入場したとき、途中で参加者にA4用紙を二つ折りにした
カラーのパンフレットが配られたからで、そこに記された
タイムテーブルと写真を照合して紹介しているからです。

これまで何度か降下始めに参加してきましたが、こんなパンフをもらったのは
今回が初めてで、おそらく配るのも初めての試みではないかと思われます。

特に去年は広い演習場でいきなりサバゲーが始まり、特に一般席で観ていると
説明が聴こえずに何が起こっているかさっぱりわからないまま終わったので、
今年はもう少し丁寧に説明しましょう、ということになったのでしょうか。

というわけで、いわゆる「地上展示」の「フェーズ2」(とは書いてませんが)は、
フェーズ1によって準備された着上陸を済ませた部隊が海岸堡を設定する段階です。

第1次目標線を確保するために投入された主力の日米混合空挺部隊が降下し、
フェーズ2の第2段階は

「へリボン部隊および水陸機動団による第2次目標線の確保」

となりました。

そこで多用途ヘリUH-1Jがドアを全開にして飛来します。
ヘリからは狙撃手が銃を構え地上の敵の掃討を試みます。

へリボン(Heliborne)という言葉は「ヘリ」と運ばれるという意味の「ボーン」の造語で、
ヘリで部隊を輸送することをいいます。

空挺は「エアボーン」ですが、「エア」「ボーン」で「空中輸送」。
旧陸軍がエアボーンを「空中挺進」という造語で表したので、その後
自衛隊でもこの「空挺」という言葉が引き継がれています。

まずプログラムによると「へリボン(狙撃)」から。
なんかものすごくかっこいいギリースーツ軍団が乗ってます。

ヒューイが地面に降りる前に、すでに狙撃兵たちは
銃を持ったままスキッドに立っています。

ヘリパイの練度も半端なさそう。

ヘリは着陸せず、狙撃兵だけを降ろして離脱する気満々。
狙撃兵のヘリボーンの時、いつも機上から錘のようなものが降ろされます。

これはおそらくですが、飛び降りることのできる高さを機上から測るためで、
目視で飛び降りられると判断しても草が深かったり沼だったり、
飛び降りて安全かどうかを確かめているのだと思われます。

非常時でも安全には慎重に。

錘が地面に届くだけの高さをキープしてホバリングしたヘリから
ヘリボーンされてきた狙撃兵たちが一斉に飛び降ります。

右の人、着地失敗して転んでしまったのか?と思ったら・・

そうではなく、着地するなり地面と同化するため匍匐の姿勢になったのでした。
敵がどちらにいるかわからないので、とりあえず全周を警戒します。

そして海岸の第2次目標線まで身を隠しつつ潜入。

どうもこの丘の上が目標線らしいです。

しかしいつも思いますが、降下始めの狙撃兵は夏の総火演で
大変なぶん、ちょっと役得(ギリースーツがあったかい)なのでは。

今年は車を草の葉で偽装した「モフ車」の出演がなかったので、
このギリースーツがかろうじて「モフ的な存在」となりました。

なぜだ。なぜあのハートウォーミングな偽装車を出さない?!
毎年あれを楽しみにしているファンも決して少なくない(はずな)のに。

続いてへリボンされてチヌークから降りてきたオート(バイク)の偵察隊。
何年か前は観客の前に来て銃を構えて見せてくれたものですが、
今年は草葉の陰にこっそり降ろされて、遠くをただ走り去るのみ。

もうちょっとギャラリーにサービスしてくれてもいいのよ?

続いては「ヘリ火力戦闘」です。
次に行われる兵力の投入の前に「露払い」するという意味があるかと。

戦闘ヘリ AH-1Sコブラが2機やってきましたよ。

なるほど、これが火力戦闘中なうってことか。
ものすごい角度で飛びまくるコブラと観客のまったり感のコントラストがシュール。

あ、そういえば今年は攻撃ヘリの「アパッチ」の姿を見なかったな。
今12機しかいないので、温存しているのでしょうか。

プログラムによると次は

「エキスト卸下(しゃが)」

となっていますが、はて「エキスト」とは?

去年電池を入れるのを忘れ、完全にカメラをただの重石にしたわたしにとって、
降下始めを一眼レフで撮るのは実は初めてのことになります。

ニコ1の望遠レンズは優秀だと今でも思っていますが、それでもやっぱり
70−300の望遠を付けた一眼には敵わないと思いましたね。
チヌークの後ろハッチから一番最初に降りる隊員の表情まで写っています。

ところで、この隊員の装備を見ると、これはリペリングではなく、

ファストロープ降下

といわれる方法だと思われます。
つまり25mのロープを短時間に何人もが両手両足だけ使って降りる方法です。

まず後部ハッチからロープが降ろされます。
もしかしたらこれをエキスト卸下と称しているのでしょうか。

カラビナと呼ばれるロープを通す器具なしで降りています。
事前事後に準備と片付けがいらないので、素早く部隊展開できるのです。

必ず手袋を着用し、両手と両足を使ってロープを降ります。
この訓練は最初命綱を付けて行いますが、最終的には高所から
短時間で、もちろん命綱無しで、しかも武器を持っての降下を
最低10回はこなさなくてはなりません。

簡単に見えているようですが、ここに到るまでに厳しい訓練の積み重ねがあります。

またもやヒューイがやってきました。
乗っているのはギリースーツではなく戦闘服の一団です。

ドアの端に座っている二人をよく見ると、命綱が見えますね。
降下する予定の人は小銃を持ち迷彩メイクを施しています。

ところでこのメイクパレットは官品として支給されますが、
メイク落としは自費で購入しなくてはいけないのだそうです。

迷彩メイクは濃いのでウェットティッシュタイプは一度に4〜5枚使ってしまい、
さらにオイルのメイク落としと兼用する人が多いとか。

というわけでコンビニでメイク落としとストッキング(靴磨きに使う)を
買う短髪の男性がいたら、まず間違いなく陸上自衛官です。

ファストロープ降下より細めのロープが降ろされました。
リペリング降下が行われます。

ファストロープとの大きな違いは、脚を使わず両手だけで降りることです。
彼らの体に付けられたカラビナと呼ばれる装具にロープを通し、
命綱のようにして両手で調節しながら降りていきます。

これを懸垂下降といいます。

登山などではこれを使って岩肌を後ろ向きに歩いて行くように降りるわけですが、
ヘリから降下するときにはほとんど一気に滑らせていきます。

これも見ているほど簡単ではなく、訓練せずに行えるものではないということです。

しゅたっ!しゅたっ!しゅたっ!どすっ!(左の人)

という感じで4名がほぼ同時に着地を行いました。

まるで戦隊ヒーローものみたいなのでアップにしておきます。

ファストロープと違って、こちらは着地後ロープをカラビナから外さなければなりません。

皆素早く外し、目標線に向かって駆けていきます。
腕章した人はメディックですか?

「水陸両用車上陸」!

上陸、ということはここは島嶼部だったのね、と気づくわけですが、
それでは海岸はどこかというと、演習場の左の建物のあたりらしいです。

先ほど自衛艦からの艦砲射撃が行われたのもその辺からです。

「エキスト吊下・離脱」

とプログラムにあります。
吊下をなんと読むのかわかりませんが「つりさげ」でしょうか。

つまりこういう状態のものを「エキスト」だということはわかりました。
「エキスト」・・・エクステンションのことかしら。

実際に戦地でこのエキスト係になったらきっと怖いと思うんだが。
この三人、ギリースーツは付けているけどほぼ無防備。

相手に見つかるより先に攻撃をすることで防御となす!というわけか・・。

あれれ、ヒューイが攻撃を?

と不思議だったのですが、あとでプログラムを見たところ、これは

「地雷散布」

をしていたことが判明しました。

プログラムには

「ヘリ機内外搭載」

と今ひとつよくわからない書き方をしてありますが、これは
ヘリの機外にこの120ミリ迫撃砲、内側に車両、人員を搭載している、
という意味だと思われます。

 

さて、ここまでで地上展示のフェーズ2、「海岸堡の設定」は終了し、
平成31年度降下始めは最終段階へと突入していくのでありました。

 

続く。