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アジア太平洋諸国海軍大学セミナー〜質疑応答

2019-03-02 | 自衛隊

さて、目黒の海上自衛隊幹部学校で例年行われている海軍大学セミナーに
こっそり参加したわたしですが、行きは恵比寿駅前からシャトルバスに乗り、
幹部学校前まで輸送してもらえました。

帰りは久しぶりの幹部学校内を歩いて門に向かったのですが、なんと
戦前からあるこの建物がどうやら解体工事中のようです。

ここに新しく施設を建て直すのでしょうか。
もうここを使って映画撮影もできないなあと一抹の寂しさを感じましたが、
建物の外観をそのまま残し、躯体を工事するというようなことは
自衛隊の建物に限って許される「贅沢」ではなく、致し方ないのでしょう。

 


さて、兼原信克氏による基調講演が終了し、質疑応答に入りました。

質問者は手をあげて指名されると立ち上がって質問を行うのですが、
最初の質問者は名乗らなかったので、どこの国かわかりませんでした。

当日の産經新聞のニュース、

韓国軍、海自セミナー出席 レーダー照射後 初の交流

という記事の写真に写っている右から6番目の人だったとしたら
インドネシア海軍からの参加者だったかもしれません。

ちなみにこの記事の写真に写っている韓国海軍の中佐の後ろに
退官された前々幹部学校長がおられ、その後ろの席が空いていますが、
実はわたしはここに座って基調講演を聴きました。

写真が撮られたとき、わたしはまだ受付をしていたため、
画面に写り込むのを間一髪で逃れたというわけです。
あぶねー(笑)


それはさておき、その最初の質問者、

「海洋支配による資源の所有権の問題をどう考えるか」

いきなり来ましたねズバッと。

兼原氏の回答は

「国連条約によって定められた領海内の資源はともかく、
その他のものについては共有はしなくてはならない。
線引きは各国ごとに違うので、200海里(FEZ)の場合も
重複する海域が出てきて、その合意については平和的解決は難しい。

しかし、我々は対話によってそれを克服しなければいけない。
200年かけて築き上げてきたルールを瓦解することになっては、
19世紀に世界は逆戻りしてしまうことになる」

というものでした。
以降、次々と質問が上がりましたので、これも要約しておきます。

●ロシア海軍

「少々哲学的な問題になるかもしれないのですが、ある国の
海軍の目的が海を開くことだとすれば、その隣の国にとっては
海がクローズされるということでもあります。
このことから武力衝突への発展が起こり、海軍の衝突が
第三次世界大戦を起こすという可能性はあるでしょうか。
海軍もまた政府の一機関であるという面もあると思いますがどう思いますか」

答え

「はっきり言いますが、核がある限り第三次世界大戦は起こりません。
核を持たない小国もまた同盟によってその一員に含まれることになります。
国際社会において、もし核を実際に使用するようなことがあった場合、
その後その国は世界で生きていくことはできないでしょう。
トップに立つ国は尊敬されなくてはいけません

力で問題を解決しようとする国は大国にはなり得ません」

●ニュージーランド海軍

「海面が上昇することによってフレーミング、つまり沿岸で
陸の形が変わっていくという懸念があるようですが」

答え

「グリーンランドは裸になりつつあり、北極の氷は溶けている、
という問題は確かにあります。
沿岸や島の小さな国にそのリスク、例えば津波などによる
被害が大きくなるなどの危険はあるでしょう。

CO2の削減を検討するとともにエネルギー効率を上げるなど
それに対する検討もなされており、これを推し進めることが重要です」

●マレーシア海軍

「南シナ海の領有権問題について日本の立場をお聞かせください」

♪───O(≧∇≦)O────♪

答え

「わが国の立場は明快です。
いかなる国も海洋法を守り、平和に問題を解決(UNCROSSという言葉を使った)
することを要求します。
この問題について、お互い戦うのか?脅かすのか?
それは決して生産的な解決とは思えません。対話が必要です」

●インド海軍(海自幹部学校の留学生)

「わたしは核の抑止力というのを信じていません。
ならず者の国がこれを持つことによってそのルールはなくなり、
核攻撃を実際に行うことによって応酬が始まってしまうこともあると思う」

答え

「戦略的核兵器の所有によって、70年間この状態が維持されてきました。
もしならず者が持つとすればそれは『小さな核』でしょう。
小さな核については世界で注視してならず者の手に渡らないようにすることです」

(そのならず者が日本の隣にいたりするわけですが、あの国の持っているのは
小さな核なんでしょうか)

●インド海軍

「今世界ではナショナリズムが高まっているように思いますが」

答え

「ナショナリズムというのはグローバリズムがあって初めて起こるものです。
日本は昔薩英戦争で、薩摩という一地方とイギリスが戦争をしました。
この時日本の他の藩は何をしていたかというと、これを見ていたのです。
日本が一つにまとまって国としての意識を持ったのは明治維新の後です。
国として他国に囲まれて初めて生まれてきた概念がナショナリズムです。
他者との接触がなければ、ナショナリズムというのは生まれません。
世界に国という境界が生まれた時からこれは存在するものであって、
昨日今日初めて高まったとはわたしは思いません。

最近のブリグジットなどはナショナリズムの摩擦によるものですが、
コミニュケーションの果てには摩擦が不可避であるのも事実です。
しかし、これらは成熟していき、やがて一つになるのが人類の到達点でしょう」

(この『一つになる』の意味がわかりませんでした。
もしかしたらジョンレノンの『イマジン』的な?)

●女王陛下の海軍

「支配欲を切り離すことができないのが人類の性だと思う。
海においてこの問題を解決し協力し合うことは可能だと思いますか」

答え

「アダムスミスは、市場経済は『神の見えざる手』によって
自然とバランスを取ると国富論で述べました。
欧米人はこの考えにより経済はアニマルスピリット(ケインズの言葉)
を取り入れたマクロ経済が必要だと考えたが、アジア人はそうではありません。
お金はないよりあったほうが幸せには違いないが、倫理がそれに勝ることもあり、
それが阻害されれば武器を持って戦うことを厭わなかった。

世界は産業革命から200年後にバランスを取ることを
ようやく学んだと言える。
我々はもはや戦争によって問題を乗り越えるということはしない」

 

なお、基調講演の追加として・・・

科学技術の革新によって、AI、サイバー技術、ロボットなど
以前はなかったものが生まれ、戦争のあり方も変わっています。

昔日本はモンゴルを神風で撃退したが、これは海に守られたが、
今、海の有無は全く戦争に影響を与えません。

コンピューターのハッカーは楽々と軍のファイアウォールを乗り越える。

これからサイバー空間における新しいルール作りをしなければならないのです。
10年、20年後の量子計算できるコンピュータの開発については
企業はすでに投資を始めている。

例えば攻撃もドローンがこれを行うようになるでしょう。
しかしこれにもルール作りが必要となってきます。
なぜならロボットは考えないのです。
ターゲットが小さな女の子で、彼女が銃を持っている時、人間なら
お父さんの銃を弄んでいるのかが瞬時にわかるが、ロボットは
銃を持った人間を認識しただけで消し去ってしまうでしょう。

そこに、倫理というものを注入していくことが求められます。

また、ニューロンレベルでの攻撃、例えば脳をハイジャックする、
などということも技術的には可能となってくるが、
人間がその領域を許すかどうかです。

これらの倫理を無視して科学技術を進めていくと、人類は
再びジャングルの中に戻っていってしまいます。

●海自一等海佐

「司会の特権として一つ質問させていただきます。
冷戦後の新しい冷戦に突入した時、我々は

歴史から教訓を得ることができるのでしょうか」

答え

「お互い人は理由がなければ戦うこともありません。
しかし、メジャーパワーの国益のあり方が変わることで
富のシフトが起こったとき、異なった価値観を持つ国同士で
争いが起きるのは歴史を見れば明らかです。

戦いを避けるためにはとにかくルールを作ること。
そしてルールは守られねばなりません

 

以上がこの日聴講した大体の内容ですが、いかがでしたでしょうか。

基調講演のなかで歴史を紐解きながら、そこに普遍的な
海軍の役割についての理想と海軍が目指すものを結びつけていくとき、
兼原氏は、各国の権益や支配被支配といった関係性を善悪ではなく
歴史の過程として捉え、その解決を「成熟」と位置付けました。

さらにわたしが注目したのは、その後の質疑応答において、氏が
歴史的な問題にしても、最近の事件に対しても、さりげなく
赤字で記したような、「我が国の立場からの主張」に対する
世界的なコンセンサスを得るための試みを行なっているように見えたことです。

まさか兼原氏ほどの人が、これらの言葉を無自覚に使うはずがありませんし、
トップレベルの軍人たちが、この意図に気づかないわけがありません。

先のレーダー照射事件が現場の軍人の間に起こったことから、
現場の自衛官やOBの間にも動揺が起こっているらしいと聞きますが、
それでも海上自衛隊と韓国海軍について尋ねられると、全ての自衛官は
きっぱりと両軍の仲は良好であり問題はない、と答えるのです。
これはわたしが見聞きしたごく僅かな例からとはいえ断言できることです。

かつて帝国海軍とアメリカ海軍もまた、世界のブルーウォーターネイビー同士、
互いに人的交流を行い、その後政情が両国の関係を悪くしても、
戦争に突入するその瞬間まで変わることはありませんでした。
この日の質問にもあった

「海軍は政府の一機関なのか」

という問いは、この世界の海軍共通の意識から見ると正しくない部分があります。
海軍は同じ海で繋がれた「同族」意識によって、他のいかなる組織にも存在しない
強い連帯感で結ばれており、それは日韓海軍も例外ではありません。

それでは日中海軍はどうかというと・・現役時代、退官後と交流を持った経験を持つ
かつての将官によると、あそこはツンデレというかそれほどでもないようですが(笑)
それでも関係者はお互い「顔を見せあう」高次元の交流を努めて保とうとしています。

 

正直わたしも連日聞こえてくる韓国という国のトンデモ国家ぶり、特に、
天皇陛下への謝罪要求のニュースなどには心底うんざりしています。

わたしのかかりつけの歯医者はタフツ大学で学んだ優秀な韓国人女医で
(留学中日本人歯科医と結婚した)彼女のことは信頼していますし、
息子が日本の学校にいた時には何人かの韓国人の母親と交流がありましたが、
個人的な好悪と国家への嫌悪は全く別のものであり、
やっぱりああいう異常な国を好きかといわれると答えに窮します。

韓流とやらのゴリ押し文化や地域ぐるみの強制的な交流行事など、
特に今は懲罰的にやめてしまっても全く構わないと思っていますし、
国家ぐるみで日本に無理難題をふっかけてくる厄介なあの国に対しては、
あくまでも毅然とわが国の立場を主張し続け、時には戦略的無視や、
あるいは懲罰的措置の行使さえも止むを得ないという考えですが、
軍は別です。

国家間の関係が難しければ難しいほど、不慮の軍事的暴発を防ぐ意味でも
軍同士は交流を絶やしてはいけないものだという考えに変わりはありません。

それは決して相手の要求を飲んだことにも、甘やかしていることにも、
ましてや丸め込まれたことにもなりません。

最悪の場合には国家の総意を受けて互いに戦う事になる両国の軍隊の間に、
万が一不測の事態による偶発的な接触が起きたとき、それがエスカレートし

戦闘に、そして戦争に拡大するような最悪の事態にならないためにも、自衛隊は
今まで通り韓国海軍と、交流という名の互いの存在確認を行うべきなのです。

 

しかしながら、わたしは今回のセミナーに参加して、それが必ずしも
世界の海軍の予定調和的な仲良し懇親会ではないことを、各国軍人の質問や、

特に兼原氏が随所に交えた言葉に含む鋭い示唆から感じました。

特に最後の

「ルールは守られるべき」

というシンプルな言葉が、今回のレーダー照射問題において、
海軍として決してしてはいけないことをした韓国海軍への抗議であり、
この場における全ての海軍関係者に訴えた、あの事件における

我が国の立場だったように聞こえてならなかったのですが、
その点を他の参加者がどのように捉えたか、非常に興味があります。