五十坂・登りきらずに下り坂

とうとう56才になりました。
ほとんど年寄りと女子供しか
回りにいません。
そんな日常を綴っています。

ホームレス中学生

2008-07-13 00:35:41 | 
ホームレス中学生
麒麟・田村裕
ワニブックス

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前評判はすごくよかった。読んだ人はみんな「泣けた」と言っていた。

・・・どの部分が泣けるの?

「ホームレス中学生」というタイトルなので、中学校時代はずっとホームレスなのだと思っていた。そしたら、夏休みの一時期なんじゃないの。
なーんだ。
確かに人には体験できない体験をしたと思う。
大人の目線で、同級生の家族が彼を救ってくれた事のほうがよっぽどすごいと思う。
私だったら出来ない。きっと役場か学校に通報すると思う。

色々な大人に助けられて彼の今日がある。
その感謝の意味をこめての本の出版だったらすばらしい事だが、
ただ単に「こんな悲惨な目にあいました」の垂れ流しだったらいけ好かない。
彼よりももっと厳しい現実を間の当たりにしている中学生は大勢いる。

この本は文学ではないので、
彼がなぜ兄や姉を頼らないでホームレスを選択し、挙句は友だちの家に頼ったのか、
なぜ唐突に生きるのがイヤになり学校に行かなくなったのか、
心理描写がうまく書かれていないので、なんとなく腑に落ちない。

私としては、彼より兄や姉の方に同情する。
兄姉の手記も読みたいところだが、「まだホームレスで儲ける気か」と心象はよくないかも。

ひとつ気になったのは、彼の兄も姉も大学にいっていた事だ。彼も吉本の専門学校に行ったのだ。どこにそんな金があったのだろう。

今の日本、お金がなくても大学に進学できる制度はいっぱいあるということですね。

進学するお金がないと心を痛めている中高校生の諸氏、
救済制度はいくらでもあるとこの本で知ったのなら、この本の意義はあると思う。