Kyuhee Park. 'Un Sueño en la Floresta' de Agustín Barrios
この非常に優れたギタリストの存在には実は数年前から気付いていた。
きのう、今日彼女の演奏を見、聞き返してみて、改めてその非凡さ、というか現在の世界に存在しているギタリストのなかでも10本の指には確実に入ってくる力を持ったギタリストだと感じる。
歴史に残る名曲と屈指の名演奏家、このような組み合わせにはそうそう出会うものではないが、この動画などはその幸運な典型例である。
しかも、それがわが日本から出て来たという事実。(名前は韓国名だが完璧な日本語を話すので日本生まれの日本育ちだろう〔のちに韓国生まれで日本と韓国の両方で育ったということが分かった。〕)
それにしてもこの曲の持つ叙情性、豊かな感情量と繊細さ……僕が心から心服、尊敬するAgustin Barrios(正確な発音がわからないので原語で書きます)の手によるものだが、あらためて名曲だと思う。あたかも一人の女性の全人生をこの小さな1曲のなかに凝縮しきったかのような、そして、演奏しながらその女性になり切って見事に演じる名女優のような彼女の演奏。
このような曲を十全に演奏するには、すくなくとも4,50年は生きてきた人でなければならないはず。しかし、彼女は見るところまだ若い。
ここが天才の天才たるゆえんなのかもしれない、自分の実人生での経験が未熟でも、作曲者がその曲に込めたものをほぼ直感的に感じ取り、それをあたかも自分が経験し、知っているかのように感じ取り、再現できる。その解釈力、感受力の説明不能な、不思議なまでの深さ。
そう、まるでBarriosのその人の魂が乗り移ったかのような迫真性。そしてそれを可能にする彼女のこの作品に対する心からの誠実さ、devotion、そのすべてがこの演奏に十全に凝縮している。
「うまく」弾ける人はいるだろう、テクニックも彼女の上を行く人もいるかもしれない、しかし、ここで彼女がみせている誠意、献身、まごころ…の純度の高さにおいて、彼女の右に出るものはたぶんいないだろうと思う。芸術とそれを創造、表現するものの人間的本質がどれだけ大切であるか、それを教えてくれるようなとても貴重な演奏、映像である。
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