ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングやメールカウンセリングなどをやっています

村上春樹 『羊をめぐる冒険』(上・下)1985・講談社文庫-ふしぎな「冒険」を味わう

2023年11月25日 | 村上春樹さんを読む

 2015年のブログです

     *   

 村上春樹さんの『職業としての小説家』を読んでいたら,村上さんの小説も読みたくなり,本棚の上に積み上げていた文庫本の『羊をめぐる冒険』を読みました。

 約10年ぶりくらいで,5回目くらいの再読です。

 しかし,とっても新鮮でした。

 あらすじや表現がうろ覚えになっていたというせいもあるのかもしれませんが,ドキドキ,ワクワクしながら読み通しました。

 文体というか,文章がやはり新鮮です。

 こんな文章は村上さんくらいでしょう。

 個人的には,樋口有介さんの文章が少し近い気もしますが,これだけ深く,重い内容を,これだけ軽やかな文章で表せるのは,やはり村上ワールドだと思います。

 今回,気づいたのは(今頃になって気づくのは少しはずかしいのですが…),底流に大きく流れているのは,戦争と権力に反対するというテーマ。 

 戦争,国家,権力,仕事などといった大きなテーマと,個人,恋愛,性といった深いテーマが,重層的,多面的,そして,総体的に扱われているところが魅力の源泉のような気がします。

 それを頭だけではなく,こころ全体に感じることを大切にして描いているので,いつまでも,誰にでも,新鮮に読まれるのではないかと思います。

 またいつかじっくりと読んで,こころを豊かにしたいと思いました。 (2015 記)

     *  

 2017年秋の追記です

 本日のお昼にこの記事の何回目かの更新をしましたところ、夕方、BSのテレビ番組でなんと、羊をめぐる冒険、の番組をやっておりました。

 こういう偶然はたまにあるのですが、本当にうれしいものです(ユングはこれを意味のある偶然といっています)。

 今日は前編で、来週に後編があるとのことなのですが、来週は学会で名古屋に行っていて、見れるかどうか…。

 本当にうれしいびっくりですが、ここからが、遊びごごろの大切なところかもしれません。

 いかに柔軟に、楽しく、ゆとりを持っていけるのか、遊びごころの真価(?)が問われそうです。 (2017.10 記)

     *   

 さらに追記です

 なんと、結局、後編放映の日は、じーじにしてはめずらしく真面目に学会で勉強をして、テレビは見れませんでした。

 いい場組だったので、再放送を楽しみにしています。

     *

 2019年6月の追記です

 4年ぶりに再読をしました。

 一番最初に感じたのは、村上さんの文章が「若い」ということ。

 「若い」文章とは何か?と聞かれると、うまく答えられませんが、なんだか「若い」です。

 じーじが年を取ったせいで、そういうことを感じるのかもしれません。

 今回、印象に残ったことは、欲望、権力、戦争、そして、友情。欲望と権力の際限のなさ、戦争と権力の怖さ、それに対抗できるものの一つとしての友情。

 そういったことを考えながら、感じながら、味わいながら、物語として読んでいました。

 少しはこころが豊かになったでしょうか。それは今日からのじーじの歩みが語ることになるのでしょう。 (2019.6 記)

     *

 2021年1月の追記です

 河合隼雄さんが『青春の夢と遊び』の中で本書について述べていることをすっかり忘れていました(河合さん、ごめんなさい)。

 河合さんのご指摘はとても鋭く、印象的です。 (2021.1 記)

 

コメント

村上春樹『色彩を持たない田崎つくると、彼の巡礼の年』2015・文春文庫-村上版『悪霊』かな?

2023年11月21日 | 村上春樹さんを読む

 2015年のブログです

     *  

 村上春樹さんの『色彩を持たない田崎つくると、彼の巡礼の年』(2015・文春文庫)を読みました。

 単行本が出た2013年4月に一度読んでいますので、久しぶりの再読です。

 記憶力の悪さに加え、老化現象もあって、あらすじはかなり忘れてしまっており、ほとんど新作のように(!)、ハラハラ、ドキドキしながら、読みました。

 そして、とても感動しました(一作で二度、三度と楽しめるところが、じーじの特権です)。

 前回もいいお話だなと思ったことは記憶していたのですが、こんなにすごい話だったことはすっかり忘れていました(?)。

 なかでもラストがすばらしいです。

 決してハッピーエンドではないのですが…(詳しいことは書けません。ぜひご自分で買って読んでみてください)。

 人間の明るさと暗さ、意識と無意識、希望と絶望、苦悩と諦観などが丁寧に描かれています。

 「悪霊」という言葉も出てきました。

 この小説はドストエフスキーならぬ村上春樹版の『悪霊』なのかもしれません。

 また一つ、村上さんの小説が深くなったようにも思います。

 力のある、誠実な小説家と、同じ時代を生き、同じ時代に、一緒に考えながら、行動をしていることに、感謝したいなと思いました。  (2015 記)

     *

 2019年夏の追記です

 4年ぶりに再読をしました。

 このところ、村上さんの小説をずっと読み返しているのですが、いずれの小説も面白しですし、何度読んでも感動します。

 本書も例外ではありませんでした。

 テーマのひとつは、人間のこころの弱さや不可解さ、そして、生きる哀しさでしょうか。

 理不尽な攻撃とその裏に秘められた思惑、事情、願い、などなど。

 年を取って、いろいろな人生を見てきたせいか、特に、人の弱さがこころにしみて、反省をすることも多いです。

 だからこそ、弱い人間、ずるい人間、悪い人間の気持ちも多少は理解できるようになってきたのかもしれません。

 しかし、許せないものは許せません。特に、子どもを守れないおとなは…。

 事情はわかっても、責任は取らざるをえないのでしょう。じーじも含めて…。

 逃げずに、生きてゆきたい、そう思います。 (2019.7 記)

     *

 2020年10月の追記です

 岩宮恵子さんの『増補・思春期をめぐる冒険-心理療法と村上春樹の世界』(2016・創元こころ文庫)に本書についての論文が載っています。

 やはり思春期に焦点を当てて分析をしていて、なかなか刺激的です。 (2020.10 記)

 

コメント

村上春樹『国境の南、太陽の西』1995・講談社文庫ほか-村上ワールドで考える

2011年11月04日 | 村上春樹さんを読む

 2011年のブログです

     *

 このところ、河合俊雄さんや岩宮恵子さんの村上春樹論を読んで深く感ずるところがあったので、再度、村上春樹さんを読み返しています。

 今のところ、『国境の南、太陽の西』のほか、『ダンス・ダンス・ダンス』(1991・講談社)、『雨天炎天』(1991・新潮文庫)、『遠い太鼓』(1993・講談社文庫)、『スプートニクの恋人』(2001・講談社文庫)、『アフターダーク』(2004・講談社)などです。

 エッセイもとても面白いのですが、小説は河合さんや岩宮さんの本を読んだ後でさらに注意深く、しかし、自由に感じながら読んでみると、より深いものが感じられる気がします。

 以前読んだ時より年を取ったせいもあるでしょうし(何しろ20年ぶりに読んだ本もありました)、いろんな経験をしたせいもあるのでしょうが、河合さんや岩宮さんの切り口のすごさによるところも大きいと思いました。

 もうしばらくは村上ワールドに浸りながら、いろいろと考えていきたいと思っています。     (2011.11 記)

コメント