2018年のブログです
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加賀乙彦さんの『海霧』(1992・新潮文庫)を再読しました。
久しぶりでしたが、いい小説で、いい物語を十分に堪能しました。
加賀乙彦さんはご存じのように精神科医で小説家、その加賀さんが描く心理療法士はなかなかリアルです。
描かれるテーマは恋愛、精神科医療、精神病院のあり方、精神病、心理療法、加えて、漁業、貧富の問題、そして、信仰、などなど、多様で多層的です。
さらには、北海道の自然も魅力たっぷりに、しかし、自然の厳しさも含めて、美しく、確かな日本語で丁寧に描かれます。
思わず引き込まれてしまい、ボランティアの最中にも読んでしまい(メンバーさん、ごめんなさい)、あっという間に読みおわりました。
読後感はいいです。
とても充足した感じです。
結末は明るくはなく、幸せでもありませんが、なにか満たされたものを感じます。
あらすじはあえて書きませんが、あらすじより行間にただようものを感じるのがいいのかもしれません。
美しく、確かな日本語の合間から豊かな世界が垣間見れるような感じがします。
精神的に少しだけ豊かになったような錯覚を覚えます。
そう、おそらくは錯覚なのかもしれません。
しかし、その錯覚があれば、しばらくはこころ豊かに過ごせそうな予感がします。
そんないい小説です。
どさんこのじーじは、小説の舞台となった自然豊かな道東の森や海にまた行きたくなりました。
来年の夏が楽しみです。 (2018. 10 記)