ホセ・クーラは、2019年3月14日、モスクワでオペラ・アリアとデュエットのコンサートに出演しました。1日だけの公演でしたが、チケットは完売、当日も満席、観客は大喝采、大興奮の一夜だったようです。レビュー、SNSなどに画像や動画がアップされていますので、いくつか紹介したいと思います。
このコンサートは、ロシアのソプラノ、ヒブラ・ゲルズマーワさんが、毎回ゲストを招待して行う一連のコンサートのひとつだったようです。場所は、ロシアのチャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院大ホール。
クーラ出演のきっかけは、2018年3月3日に、ドレスデン歌劇場のオテロに病気のテノールに代わってクーラが急きょ出演したことにありました。この時、ヒブラさんがデズデモーナでロールデビューした公演で、クーラのオテロと共演し、突然の交代にも関わらず素晴らしい舞台になったことから、コンサートにクーラを招いてオテロの場面を歌いたいと考えたようです。
→ 2018年ドレスデンのオテロについてはこちらの記事で紹介しています。
≪プログラム≫
このプログラムを見ると、クーラは、コンサートの冒頭、道化師のプロローグを歌い、その後、前半にカニオのアリア、ヴェルディの運命の力の二重唱などを歌ったようです。後半は、オテロの第3幕、4幕、デズデモーナとの場面を歌いました。
指揮は、同じくドレスデンのオテロで共演したダニエレ・カッレガーリさんです。
≪コンサートの様子からーー写真と動画≫
終了後、大興奮、大満足の観客から、たくさんの画像、動画がSNSにアップされていました。"何という情熱、愛、ドラマティック!"、"コンサートなのに、これほど刺激的なオテロを見たことがない!素晴らしい!"などの感想が添えられていました。
レビューでも、"ヒブラ・ゲルズマーワとホセ・クーラがセンセーションを巻き起こした""このコンサートは、ステージ上の素晴らしいアーティスト、完璧なパフォーマンス、素晴らしいオーケストラ、そしてファイナルでの拍手の嵐など、一連の歴史的なものだった"と書いたものなど、会場内の熱狂を伝えていました。
ヒブラさんとクーラは、演技や歌唱のスタイルでとても相性が良いように思われます。キャラクターのドラマを伝えることを大切にし、コンサートであっても役柄に入り込んで演技し、歌う、自然な演技、役柄にふさわしい自然な体の動きと表情、という点で共通していて、ドレスデンのオテロや今回のコンサートでも素晴らしいケミストリーを生み出したようです。イタリアオペラの情熱を熟知したベテランのカッレガーリさんとともに、素晴らしいトリオで、観客を一体にしたコンサートになったことが、SNSなどからもよく伝わってきました。
ネットにアップされている写真と、クーラが歌ったものを中心に動画を紹介します。動画は劇場内で撮影されたもので画質も音質もあまりよくないですが、雰囲気を伝えてくれています。
●ヒブラさんがFBにアップした写真
●こちらはロシアのメディアのFBより
Leoncavallo "Pagliacci"
●前半のハイライト、ヴェルディの「運命の力」から第1幕の二重唱
第1幕、父に結婚を反対され悩むレオノーラと、屋敷に忍び込み駆け落ちしようと説得するアルヴァ―ロの二重唱。クーラは1999年にスカラで、ムーティ指揮でこの役を歌っていますが、それ以来、オペラでは歌っていません。コンサートでも珍しいのでは?
Verdi "La Forza del Destino" Leonora and Alvaro
●後半、ヴェルディの「オテロ」より、第3幕のオテロとデズデモーナ
イアーゴに誘導され、妻デズデモーナへの疑いをもつオテロ。ただ純粋にカッシオの許しを願うデズデモーナ、一方のオテロは自分が贈ったハンカチはどこにいったかと執拗に問い詰める。話は噛み合わず、オテロだけが疑念を深めていく。コンサートであるが、2人の演技と歌唱はオペラの舞台さながら。とりわけクーラの表情には厳しく深い苦悩と怒りが。大迫力の二重唱。
Verdi "Otello" Act3
●ヴェルディの「オテロ」第4幕、デズデモーナの「柳の歌」~「アヴェ・マリア」、オテロの登場~オテロの死「私を恐れることはない」(“Niun mi tema”)
ヒブラさん自身がアップしてくれたもので、画質も音質も良く、約30分の動画です。コンサート用に、オテロとデズデモーナ以外の部分をカットして編曲してありますが、ほとんど4幕全体です。オテロの登場は後半16分頃から。見ているうちに、コンサートとは思えないほどドラマに引き込まれます。
Hibla Gerzmava and Jose Cura. Final scene from the Opera G.Verdi "Otello"
●アンコール プッチーニ「 ラ・ボエーム」より、ロドルフォとミミの二重唱「愛らしい乙女よ」(”O suave fanciulla”)
ヴェルディづくしのコンサートでしたが、アンコール曲には、プッチーニから「ラ・ボエーム」の美しい二重唱が歌われました。大喝采のうちにプログラムを終了し、とてもリラックスした雰囲気でアンコールに応えています。ユーモラスで、2人の親密さ、息がぴったり合った様子が伝わります。
Hibla Gerzmava, Jose Cura and conductor Daniele Callegari
●ロシアのメディアのFBより、カーテンコールの動画や画像
≪取材を受けるクーラ≫
モスクワ滞在中に、マスコミの取材もいくつか受けたようです。
●テレビインタビューの取材風景
●インターネットにアップされたスペイン語のインタビュー
こちらもロシアのメディアでスペイン語版。とてもおもしろそうなインタビューですが、スペイン語のため、内容は理解できず・・。
"En los tiempos de la inmediatez es difícil que el arte clásico entre en la sociedad"
コンサートは大成功、モスクワ滞在は、なかなか盛りだくさんだったようです。
昨年ロシアのマリインスキー劇場でハウスデビューしたクーラですが、今後また、ボリショイ劇場など、モスクワでもオペラ出演が実現してほしいです。ヒブラさんとのオテロの舞台をぜひ見てみたいものです。
今年は上海で、クーラのオペラアリアコンサートが予定されています。いまだに日程、場所が不明なのが心配ですが、このモスクワのコンサートのような盛り上がりが期待されます。楽しみに待ちたいと思います。
観客の大喝采に応えて笑顔の3人
終了後、リラックスして記念撮影のようです。
*画像はヒブラさんのFB、報道などからお借りしました。