おーぱっきゃまらーどーぱっきゃまらーどーぱーおーぱーおーぱんぱんぱん、っときたもんだぁ。
どもども、こんばんは。そうだいでございます~。蒸すわねぇ!
いや~、本来ならば、今回の『長岡京エイリアン』のお題は順当に「ざっくりすぎるアイドルグループ史」の続きのはずだったのですが……
なんということか! 昨日やらかした「桜木町恨道中2011入店(さくらぎちょううらみのみちゆきとうぇにいいれぶん・にゅうてん)」が、思いの外みのりの多いハイキングになったので、なんともタイミングの悪いことながら、モーニング娘。総まとめの真ん中にどすーんっとおいちゃう感じでこのあたりのことをつづってみたいと思います。
さらにタイミングの悪いことに、うすうす今月の中ごろから「やば……もしかして?」と思ってはいたのですが、この中断のおかげをもちまして、「ざっくりすぎるアイドルグループ史」の堂々完結は、めでたく実に中途半端なかたちで来月8月にズレこむこととあいなりました。
中途半端も中途半端、8月に入ったらたぶん、2~3回くらいで終わっちゃうからね。なに、この「チョビッとあまっちゃった。」ていう月またぎ感!?
でも、しょうがないのよ~。哀しいけど、これ、個人ブログなのよねぇ。
きれいにやるのならば、昨日のことはまた、「ざっくりすぎるアイドルグループ史」が大団円をむかえてからゆっくりやればいいのかも知れませんが、そんな理性的で器用なことはわたくしにはできません。
申し訳ない! でもねぇ、よかったのよぉ、特に桜木町の映画館で観た映画『大鹿村騒動記』が!!
最近はもう毎月のようにやることにしている、「桜木町を最終ゴールとした、東京方面から見て約15キロ手前の駅から徒歩で向かう」という「桜木町恨道中」。
自分で言うのもナンですが、まったく意味不明です。
普通の方が聞いたら「なんで、また……」と私の正気を疑うでしょうし、シャーロック=ホームズが聞いたら、絶対に私がなんらかの『赤毛連盟』なみのなぞの犯罪計画を進めていると確信するでしょう。探偵さん、おらぁなんにもやっちゃあいねぇよ~。
もうね、タイトルにもあるとおり、「恨み(やつあたりです)」が最初のきっかけになっていたこのハイキングなのですが、もうそんなことはどうでもよろしい。これをやることの明確な目的は「自分の中の桜木町のイメージを良くする」ということだったのですが、それはとっくの昔にクリアされてしまっております。それでも続けてるんですから、もうやること自体が楽しい月課(日課じゃないから)になってるんですね。たーのしいーっ。股関節がガタガタになるけど。
そうそう! 毎月15~20キロ歩いてるとね、足はだんだん丈夫になるから血マメができたり筋肉痛になったりはいちいちしなくなるのですが、とにかく股関節のフル稼働感はぬけないんですねぇ。もう自分の身体がガンプラになった感じ。スポーンッ、カラカラ……って足が抜けそうになります。アスファルトの地面は固いからね~。
今回は東急東横線の「綱島駅」(神奈川県横浜市港北区綱島)を下車してから桜木町を目指して出発しました。直線距離にして11キロ。
県道2号線、いわゆる「綱島街道」を南下して桜木町に向かうのは今回で2度目なのですが、昨日あたりは「雨が降る雨が降る」とさんざん予報されていたので、そんなに暑くなることはよもやないだろうとタカをくくって傘を片手に千葉を出発しました。
かつて劇団に所属していた時には、東京での公演のためはもちろんのこと、なにかしらの用事で電車を使う機会も多かったのですが、最近はこんなふうにむりくり自分で予定でも作らないと、電車に乗ることはめったになくなっちゃうのよね。
そういうこともあるので、たまに乗ると電車の中におもしろい人でもいないものかと、ついつい同じ車両の面々をそれとなく視界に入れてしまうんですね。いや、「それとなく」よ!? あからさまにやったら捕まっちゃうご時世ですから。
そしたらね~、あったあった。ちょっと目にとまった不思議なやりとりが。
これ、私のストーリイテリングでみなさまにどれだけ伝わるのかは非常に不安なのですが、私はほんっっっっとに! おもしろかったのよ。
その時、車両はなかなか混んでまして、座席はすべて埋まっていて吊革で立っている人数も多くなっていました。
ある駅に着きまして、座席にすわっていた50代なかばのスーツ姿の会社員らしい男性が立ち上がり、あわただしく下車していきました。
その時に、彼が去ったあとに座席にポツンと残されていた扇子を、前に立っていた上品なおばさまがた2人が見つけたんですよ。たぶん、座っていたうちに彼のポケットからすべり落ちてしまったのでしょう。
「(互いに顔を見あわせて)あら、これ……」
ご婦人のおひとりはあわてて扇子を手に取りますが、下車した会社員の姿はすでにホームの遠くへ。
困りました、降りて渡そうとしても追いつけるかどうかわからないし、だいいちご婦人の足で電車が出発するまでの短いあいだに車両に戻ってこられるのかどうかもわからない。
扇子を持って当惑するお2人。そうしているうちにも会社員の姿は遠ざかり、電車の停車時間も刻々と過ぎていきます。
どうすればいいんだ!? ささいなことながら微妙な空気が車内に流れます。
するとその時! なんと、そのお2人の真ん前、つまり、扇子を置き忘れた会社員の隣の座席にすわっていた青年がスクッ!と立ち上がった。
いかにもふつうの大学生風。メガネをかけてイヤホンを耳につけたさわやかな男性です。
まさか。扇子を受けとってホームに降り立ってくれるというのか!? おのれの身を挺してこの難局を打開する。キリストかこやつは?
車内の空気が「おお……」と引き締まるなか、青年はご婦人にこう告げました。
「(自分の座っていた場所をさして)あの、よかったら座ってください。」
!!!! 関係ねぇ!!
ぷしゅ~。その直後、ふつうに電車の扉はしまりました。
「あら……どうも。」
かなり釈然としない表情を浮かべたまま、ご婦人2人は青年のどけた座席、つまり会社員のいたスペースもあわせて2人分のあいた場所に腰かけました。所在なげに男ものの扇子をにぎりしめながら。
そうか青年……イヤホンしてたし、扇子のくだりはぜんっぜん見てなかったのね。
あのさ。好意はありがたかったんだけど、「その好意」は今はいらなかったんだ! いや、うれしい! うれしいよ!?
……わかります? このズレズレ感。私もう、たまんなくってさぁ!!
あのねぇ、私、「空気読め!」とかっていう言葉、好きじゃないんですよ。私が空気読めないから。「空気」ってなんだよ、って話で。
このエピソードにはげしく感じ入った私はあらためて認識しました。「私、空気読めない人すき!」おもしろいねぇ~。
まぁこんな感動もありつつ、綱島駅を下車して始まった今回のハイキングだったのですが……
雨、ぜんっぜん降らなかったね。あっちいし。
思い出しました。綱島街道は起伏が大きいのよ! 「山」って言っていいかどうかわかんないんですけど、大倉山と菊名で2ヶ所のアップダウンがあるんでした。
直線距離は11キロなんですけどね……やっぱそれなりに疲れちゃったなぁ~今回も。
時間はだいたい2時間くらいでしたね、桜木町まで。まぁタイムは上々だったでしょうか。雨降ると思ったんだけどなぁ。
で、恒例行事として桜木町からさらに片道2キロ歩いて「あるお店」に行くというミッションも遂行したのですが、こっちはやりはじめてから4回目ぐらいでしょうか。なんと今回はじめて「成果」らしいものが得られたんですよ!
夕方6時ちかくにお店に行ったら、開いてた! お店が! いた! 店の方!
うれしいねぇ~!! やっと人に会えたね~。
私の「計画」とは、そのお店で買い物をすることです。そして、ついでにそのお店の「さるお方」に会うこと。うむむ、買い物とその方に出逢うことは、どっちも同じくらいに重要な目的となっています。
このへんの話はいつこの『長岡京エイリアン』で公表することができるのか。「買い物」の話と「出逢う」話、これ、お互いまったく別の案件として秘密裏に進めていきたいので今は明らかにできないんですけど……まぁ、なんらかのおもしろい展開があったらご披露ということで。
んで、待望の「入店」に際して、そのお店にいらっしゃった方は、「そのお方ご本人」ではなかった。ひっぱるよねぇ~!!
昨日はお店にいた方にもろもろの商品説明をしていただき、近日中にまた私が出向いてあらためて初のお買い物としゃれこむということとあいなりました。
そして、その日には「さるお方」もそのお店にいらっしゃると。
……緊張するなぁ……おぼえてるかな、私のこと。いっそ、忘れてくれているほうが……
ドキドキするよね~! おとこ31歳、眠れない日々が続くよね~。或る阿呆の夜はふけてゆきます。
でよォ、やっと本題に入るんだけどよォ、話はそのあと観た映画のことなんだィ。
いつもどおり、また桜木町に戻って、駅の近くにあるビル内のシネコン「ブルク13」で映画を観ることにしました。食べたジェラートは「ピンクグレープフルーツ」。おいしゅうございました。
で、ちょうど上映時間がぴったしあっていたので選んだのが!
『大鹿村騒動記』(監督・阪本順治 主演・原田芳雄)
いやぁ~……これだけは観ておきたかった。「特別料金1000円」という設定も非常にありがたかったし。私はずかしながら、実は『どついたるねん』や『顔』で有名な阪本監督の作品をまともに観るのは初めてだったんですよ。
おもしろかったねぇ~!!
これは断じて言わせていただきますが、奇しくもついてしまった「名優・原田芳雄の遺作」という付帯条件は私の評価とはまっっっったく!! 関係ありません。
だいいち、この作品に登場する原田さんにそんなにおいはひとっつもしない。実際、撮影がおそらく去年の秋であるらしい描写が随所に見られるので、闘病中だったとはいえ体調も今年とはだいぶ違っていただろうし、スクリーンに映っている原田さんはもう、ノリにノッた「原田芳雄ここにあり感」全開で長野県の大鹿村(おおしかむら)という実在の村を縦横無尽に駆け回っていました。
かっこいいですよ~。だって、70歳をこえた老人であるはずの人が、嵐の吹きすさぶなか、
「たかこォオ~! たァかァアくうゥォオおお~!!」
と絶叫しながら、いなくなった妻の姿を捜して疾走するんだぜ!? くうぅ~。
この作品はなにかと、およそ300年前から大鹿村に実際につたわっている伝統芸能「大鹿歌舞伎」が物語の中心にすえられているという部分が話題となっていますし、事実それは確かにそうなのですが、私がとにかくおもしろかったのは、その年に一度だけ開催される農村歌舞伎にいたるまでに流れる大鹿村の日常の描写でした。
秋の収穫を祝う行事として村人が総出で役者も裏方もつとめる歌舞伎が興行されるわけなので、山の木々は紅葉に美しく色づき、ある人は農作業の追い込みにいそしみながら演じる役のセリフをつぶやき、ある村役場の役員は「地デジアンテナつきテレビ」への交換をスピーカーで呼びかけながら軽トラックで村をのったらのたらと練り走る。
村全体は2045年に敷設されるという「東京・大阪直通リニアモーターカー」の停車駅を誘致するかしないかという問題で二分されているものの、
「ンなこたァいいから、はやく稽古しようぜェ。」
という看板役者の原田さん(ふだんはバイク旅行者向けのシカ料理食堂を経営)の一言でしぶしぶ会議をおひらきにするというぐだぐだ感。
そういった、300年の伝統と今そこにある21世紀の問題というあたりが混在しているようでぱっかり分離している大鹿村に、原田さんの元親友(岸部一徳)と、彼と駆け落ちして失踪していたはずの原田さんの妻(大楠道代)がふらっと戻ってきたところから映画の物語は始まるわけなのですが。
いやぁ~、いい喜劇を観ました。
「伝統」と「村の現状」と「過去のロマンス」という、たった今さしせまって困っているわけではないんだけど、確実に頭痛のタネになっている3つの問題の並立にほんろうされる面々の姿がおもしろいおもしろい。
このあたりの「困っちゃいねぇんだけど……困ったなぁ。」という「立ちつくし感」から喜劇を生み出すことは、なまなかな演技力の俳優さんには不可能な繊細な作業であるはずなのですが、それをなんなく演じきり、観客に安心して肩の力を抜かせてくれる俳優陣には本当に脱帽でした。
原田・大楠・一徳の三角関係はもちろんのこと、三国連太郎、石橋蓮司、小野武彦、佐藤浩市、松たか子……三国さんと浩市さんは父子役ではありません。
物語の重要なキーマンとなる大楠さんと三国さんの2人はちょっと他の人たちとは違う立ち位置なのですが、それ以外の村人のみなさんはとにかく、決して「気を抜いている」わけではない、「力を抜いたように見せる演技」の競演を見せてくれていました。予算ばっかガチャガチャかけた作品では観られない牧歌的な雰囲気ができていてとってもラク~に楽しめました。
特に良かったのがねェ~、やぁっぱり、でんでん!!
でんでんさん、いいわぁ~。『冷たい熱帯魚』を観てしまった人って、けーっこう、「まさかとは思うけど、この映画でもまたでんでんさんが『裏でんでんコード the BEAST』を発動させるんじゃないかとな~んか気になっちゃう」症候群にかかっている方、多いんじゃないでしょうか。私はテキメンにそうです。
でも、もちろんそんなわきゃあないわけなんですが、この映画でのでんでんさんはボケもするしツッコミもするし、とにかく「ごくふつうの良識あるトボけたおじさん」ならではのフットワークの軽さを発揮させています。リベロ。うん、『冷たい熱帯魚』でああいった役を演じきった実績がついた分、今のでんでんさんは現在の日本映画界でも最高の「おじさん俳優リベロ」になっています。
まぁとにかくね、いろいろ言いましたけど、この映画の良さはとにかく「スケールは大きくなくても現場の一致団結感がすばらしいアンサンブル」! こういうことかと思います。
もちろん「主役・原田芳雄」や「農村歌舞伎の舞台裏」もいいわけなんですけど、それ以上に語ることができる良さがもっといっぱい散らばっている豊かさがあります。
それでも1ヶ所だけあげさせてもらえれば、映画後半の要所要所で重要となってくるキーワードの、
「仇(あだ)も恨みも これまで これまで」
という言葉は、原田さんの持ち味と歌舞伎のヒーローのあり方が見事にかさなりあった(決して「融合」ではない)素晴らしいセリフになったと思います。
これは原田さんが演じる歌舞伎の主人公「悪七兵衛 景清」(あくしちひょうえ かげきよ)の名台詞で、
「今までこだわり続けていた、自分にとっての正義だった復讐心も個人的な恨みも、きれいさっぱり捨ててやる。」
という意味の、いかにもヒーローっぽい割り切りの爽快な意思表示なのですが、これをあの原田芳雄が発すると、
「ンなこと言ったって、そんなにあっさり忘れられるワケねぇだろ、ばかやろ。」
という、実に! じっつに愛らしく人間らしい表情のつぶやきをありありとにじませたセリフになるんだからいいんだよねェ。矛盾じゃなくて、それが人間なの! というメッセージがじんじん伝わってきます。感動。
私は大笑いさせてもらえたなぁ。一緒にいたお客さんも、多くは私よりも年上に見えるご夫婦やサラリーマンだったんですけど、みんなでワハハッと笑うシーンはいたるところにありました。
もしかしたら、若い人、あるいは山奥の村という設定にピンとこない人が観たら、「よくわかんないなぁ。」や「ぬるくて飽きちゃう。」という向きもあるかもしれません。それに反論するすべは「よく観て!」と言うことしかないのですが、少なくとも私は、この『大鹿村騒動記』を観て笑うことができる人間に自分がなれたことを非常にうれしく感じています。トクしてんだもんねェ~!
若いと言えば、このレベルのアンサンブルに加わることができる俳優さんが、松たか子さん「以上」の年齢に限定されてしまっていたことは、それ以下の年齢の私としては多少は残念な気はしました。若い人としては瑛太さん(28歳)も出演しているのですが、ほとんど他の俳優さんとからまないカメオ出演のようなあつかいでしたし。
もう1人、これはもう見るからにおさない冨浦智嗣(さとし)くんという20歳そこそこの青年がけっこうな重要度で出ているのですが……まぁ、これからの成長に期待ということで!
人によっては、この冨浦くんが演じている役柄の複雑ゆえの未熟さに「キツいなぁ……」と感じる人もいるかと思うのですが、私はそこらへんは苦痛にはなりませんでした。
なぜなら私自身が、冨浦くんの役柄、というか冨浦くんがかかえている身体的特徴にはげしく共感できる部分を持っているからなのです。「イケメン」っていう部分じゃないよ!?
『大鹿村騒動記』、おもしろかったですよ~。希代の「原田芳雄俳優」原田芳雄の一世一代の花道でございます。なるべく多くの人数で笑って送り出してさしあげましょ~!
原田さんの生涯最後のショットとなったラストカットは、実に原田さんらしい味わいのものになっています。いいよ~、ぜひともスクリーンでご覧ください。そして、あなたも「はへ?」ってなって。
ということでいつにない収穫の多さで終わった今月の桜木町ツアーだったわけなのですが、
来週、また桜木町に行きます。「あのお店」でお買い物をするために。そして「あのお方」に逢うために。
次はどの駅からどのルートで行こうかナ~? あぁ、緊張する。
どもども、こんばんは。そうだいでございます~。蒸すわねぇ!
いや~、本来ならば、今回の『長岡京エイリアン』のお題は順当に「ざっくりすぎるアイドルグループ史」の続きのはずだったのですが……
なんということか! 昨日やらかした「桜木町恨道中2011入店(さくらぎちょううらみのみちゆきとうぇにいいれぶん・にゅうてん)」が、思いの外みのりの多いハイキングになったので、なんともタイミングの悪いことながら、モーニング娘。総まとめの真ん中にどすーんっとおいちゃう感じでこのあたりのことをつづってみたいと思います。
さらにタイミングの悪いことに、うすうす今月の中ごろから「やば……もしかして?」と思ってはいたのですが、この中断のおかげをもちまして、「ざっくりすぎるアイドルグループ史」の堂々完結は、めでたく実に中途半端なかたちで来月8月にズレこむこととあいなりました。
中途半端も中途半端、8月に入ったらたぶん、2~3回くらいで終わっちゃうからね。なに、この「チョビッとあまっちゃった。」ていう月またぎ感!?
でも、しょうがないのよ~。哀しいけど、これ、個人ブログなのよねぇ。
きれいにやるのならば、昨日のことはまた、「ざっくりすぎるアイドルグループ史」が大団円をむかえてからゆっくりやればいいのかも知れませんが、そんな理性的で器用なことはわたくしにはできません。
申し訳ない! でもねぇ、よかったのよぉ、特に桜木町の映画館で観た映画『大鹿村騒動記』が!!
最近はもう毎月のようにやることにしている、「桜木町を最終ゴールとした、東京方面から見て約15キロ手前の駅から徒歩で向かう」という「桜木町恨道中」。
自分で言うのもナンですが、まったく意味不明です。
普通の方が聞いたら「なんで、また……」と私の正気を疑うでしょうし、シャーロック=ホームズが聞いたら、絶対に私がなんらかの『赤毛連盟』なみのなぞの犯罪計画を進めていると確信するでしょう。探偵さん、おらぁなんにもやっちゃあいねぇよ~。
もうね、タイトルにもあるとおり、「恨み(やつあたりです)」が最初のきっかけになっていたこのハイキングなのですが、もうそんなことはどうでもよろしい。これをやることの明確な目的は「自分の中の桜木町のイメージを良くする」ということだったのですが、それはとっくの昔にクリアされてしまっております。それでも続けてるんですから、もうやること自体が楽しい月課(日課じゃないから)になってるんですね。たーのしいーっ。股関節がガタガタになるけど。
そうそう! 毎月15~20キロ歩いてるとね、足はだんだん丈夫になるから血マメができたり筋肉痛になったりはいちいちしなくなるのですが、とにかく股関節のフル稼働感はぬけないんですねぇ。もう自分の身体がガンプラになった感じ。スポーンッ、カラカラ……って足が抜けそうになります。アスファルトの地面は固いからね~。
今回は東急東横線の「綱島駅」(神奈川県横浜市港北区綱島)を下車してから桜木町を目指して出発しました。直線距離にして11キロ。
県道2号線、いわゆる「綱島街道」を南下して桜木町に向かうのは今回で2度目なのですが、昨日あたりは「雨が降る雨が降る」とさんざん予報されていたので、そんなに暑くなることはよもやないだろうとタカをくくって傘を片手に千葉を出発しました。
かつて劇団に所属していた時には、東京での公演のためはもちろんのこと、なにかしらの用事で電車を使う機会も多かったのですが、最近はこんなふうにむりくり自分で予定でも作らないと、電車に乗ることはめったになくなっちゃうのよね。
そういうこともあるので、たまに乗ると電車の中におもしろい人でもいないものかと、ついつい同じ車両の面々をそれとなく視界に入れてしまうんですね。いや、「それとなく」よ!? あからさまにやったら捕まっちゃうご時世ですから。
そしたらね~、あったあった。ちょっと目にとまった不思議なやりとりが。
これ、私のストーリイテリングでみなさまにどれだけ伝わるのかは非常に不安なのですが、私はほんっっっっとに! おもしろかったのよ。
その時、車両はなかなか混んでまして、座席はすべて埋まっていて吊革で立っている人数も多くなっていました。
ある駅に着きまして、座席にすわっていた50代なかばのスーツ姿の会社員らしい男性が立ち上がり、あわただしく下車していきました。
その時に、彼が去ったあとに座席にポツンと残されていた扇子を、前に立っていた上品なおばさまがた2人が見つけたんですよ。たぶん、座っていたうちに彼のポケットからすべり落ちてしまったのでしょう。
「(互いに顔を見あわせて)あら、これ……」
ご婦人のおひとりはあわてて扇子を手に取りますが、下車した会社員の姿はすでにホームの遠くへ。
困りました、降りて渡そうとしても追いつけるかどうかわからないし、だいいちご婦人の足で電車が出発するまでの短いあいだに車両に戻ってこられるのかどうかもわからない。
扇子を持って当惑するお2人。そうしているうちにも会社員の姿は遠ざかり、電車の停車時間も刻々と過ぎていきます。
どうすればいいんだ!? ささいなことながら微妙な空気が車内に流れます。
するとその時! なんと、そのお2人の真ん前、つまり、扇子を置き忘れた会社員の隣の座席にすわっていた青年がスクッ!と立ち上がった。
いかにもふつうの大学生風。メガネをかけてイヤホンを耳につけたさわやかな男性です。
まさか。扇子を受けとってホームに降り立ってくれるというのか!? おのれの身を挺してこの難局を打開する。キリストかこやつは?
車内の空気が「おお……」と引き締まるなか、青年はご婦人にこう告げました。
「(自分の座っていた場所をさして)あの、よかったら座ってください。」
!!!! 関係ねぇ!!
ぷしゅ~。その直後、ふつうに電車の扉はしまりました。
「あら……どうも。」
かなり釈然としない表情を浮かべたまま、ご婦人2人は青年のどけた座席、つまり会社員のいたスペースもあわせて2人分のあいた場所に腰かけました。所在なげに男ものの扇子をにぎりしめながら。
そうか青年……イヤホンしてたし、扇子のくだりはぜんっぜん見てなかったのね。
あのさ。好意はありがたかったんだけど、「その好意」は今はいらなかったんだ! いや、うれしい! うれしいよ!?
……わかります? このズレズレ感。私もう、たまんなくってさぁ!!
あのねぇ、私、「空気読め!」とかっていう言葉、好きじゃないんですよ。私が空気読めないから。「空気」ってなんだよ、って話で。
このエピソードにはげしく感じ入った私はあらためて認識しました。「私、空気読めない人すき!」おもしろいねぇ~。
まぁこんな感動もありつつ、綱島駅を下車して始まった今回のハイキングだったのですが……
雨、ぜんっぜん降らなかったね。あっちいし。
思い出しました。綱島街道は起伏が大きいのよ! 「山」って言っていいかどうかわかんないんですけど、大倉山と菊名で2ヶ所のアップダウンがあるんでした。
直線距離は11キロなんですけどね……やっぱそれなりに疲れちゃったなぁ~今回も。
時間はだいたい2時間くらいでしたね、桜木町まで。まぁタイムは上々だったでしょうか。雨降ると思ったんだけどなぁ。
で、恒例行事として桜木町からさらに片道2キロ歩いて「あるお店」に行くというミッションも遂行したのですが、こっちはやりはじめてから4回目ぐらいでしょうか。なんと今回はじめて「成果」らしいものが得られたんですよ!
夕方6時ちかくにお店に行ったら、開いてた! お店が! いた! 店の方!
うれしいねぇ~!! やっと人に会えたね~。
私の「計画」とは、そのお店で買い物をすることです。そして、ついでにそのお店の「さるお方」に会うこと。うむむ、買い物とその方に出逢うことは、どっちも同じくらいに重要な目的となっています。
このへんの話はいつこの『長岡京エイリアン』で公表することができるのか。「買い物」の話と「出逢う」話、これ、お互いまったく別の案件として秘密裏に進めていきたいので今は明らかにできないんですけど……まぁ、なんらかのおもしろい展開があったらご披露ということで。
んで、待望の「入店」に際して、そのお店にいらっしゃった方は、「そのお方ご本人」ではなかった。ひっぱるよねぇ~!!
昨日はお店にいた方にもろもろの商品説明をしていただき、近日中にまた私が出向いてあらためて初のお買い物としゃれこむということとあいなりました。
そして、その日には「さるお方」もそのお店にいらっしゃると。
……緊張するなぁ……おぼえてるかな、私のこと。いっそ、忘れてくれているほうが……
ドキドキするよね~! おとこ31歳、眠れない日々が続くよね~。或る阿呆の夜はふけてゆきます。
でよォ、やっと本題に入るんだけどよォ、話はそのあと観た映画のことなんだィ。
いつもどおり、また桜木町に戻って、駅の近くにあるビル内のシネコン「ブルク13」で映画を観ることにしました。食べたジェラートは「ピンクグレープフルーツ」。おいしゅうございました。
で、ちょうど上映時間がぴったしあっていたので選んだのが!
『大鹿村騒動記』(監督・阪本順治 主演・原田芳雄)
いやぁ~……これだけは観ておきたかった。「特別料金1000円」という設定も非常にありがたかったし。私はずかしながら、実は『どついたるねん』や『顔』で有名な阪本監督の作品をまともに観るのは初めてだったんですよ。
おもしろかったねぇ~!!
これは断じて言わせていただきますが、奇しくもついてしまった「名優・原田芳雄の遺作」という付帯条件は私の評価とはまっっっったく!! 関係ありません。
だいいち、この作品に登場する原田さんにそんなにおいはひとっつもしない。実際、撮影がおそらく去年の秋であるらしい描写が随所に見られるので、闘病中だったとはいえ体調も今年とはだいぶ違っていただろうし、スクリーンに映っている原田さんはもう、ノリにノッた「原田芳雄ここにあり感」全開で長野県の大鹿村(おおしかむら)という実在の村を縦横無尽に駆け回っていました。
かっこいいですよ~。だって、70歳をこえた老人であるはずの人が、嵐の吹きすさぶなか、
「たかこォオ~! たァかァアくうゥォオおお~!!」
と絶叫しながら、いなくなった妻の姿を捜して疾走するんだぜ!? くうぅ~。
この作品はなにかと、およそ300年前から大鹿村に実際につたわっている伝統芸能「大鹿歌舞伎」が物語の中心にすえられているという部分が話題となっていますし、事実それは確かにそうなのですが、私がとにかくおもしろかったのは、その年に一度だけ開催される農村歌舞伎にいたるまでに流れる大鹿村の日常の描写でした。
秋の収穫を祝う行事として村人が総出で役者も裏方もつとめる歌舞伎が興行されるわけなので、山の木々は紅葉に美しく色づき、ある人は農作業の追い込みにいそしみながら演じる役のセリフをつぶやき、ある村役場の役員は「地デジアンテナつきテレビ」への交換をスピーカーで呼びかけながら軽トラックで村をのったらのたらと練り走る。
村全体は2045年に敷設されるという「東京・大阪直通リニアモーターカー」の停車駅を誘致するかしないかという問題で二分されているものの、
「ンなこたァいいから、はやく稽古しようぜェ。」
という看板役者の原田さん(ふだんはバイク旅行者向けのシカ料理食堂を経営)の一言でしぶしぶ会議をおひらきにするというぐだぐだ感。
そういった、300年の伝統と今そこにある21世紀の問題というあたりが混在しているようでぱっかり分離している大鹿村に、原田さんの元親友(岸部一徳)と、彼と駆け落ちして失踪していたはずの原田さんの妻(大楠道代)がふらっと戻ってきたところから映画の物語は始まるわけなのですが。
いやぁ~、いい喜劇を観ました。
「伝統」と「村の現状」と「過去のロマンス」という、たった今さしせまって困っているわけではないんだけど、確実に頭痛のタネになっている3つの問題の並立にほんろうされる面々の姿がおもしろいおもしろい。
このあたりの「困っちゃいねぇんだけど……困ったなぁ。」という「立ちつくし感」から喜劇を生み出すことは、なまなかな演技力の俳優さんには不可能な繊細な作業であるはずなのですが、それをなんなく演じきり、観客に安心して肩の力を抜かせてくれる俳優陣には本当に脱帽でした。
原田・大楠・一徳の三角関係はもちろんのこと、三国連太郎、石橋蓮司、小野武彦、佐藤浩市、松たか子……三国さんと浩市さんは父子役ではありません。
物語の重要なキーマンとなる大楠さんと三国さんの2人はちょっと他の人たちとは違う立ち位置なのですが、それ以外の村人のみなさんはとにかく、決して「気を抜いている」わけではない、「力を抜いたように見せる演技」の競演を見せてくれていました。予算ばっかガチャガチャかけた作品では観られない牧歌的な雰囲気ができていてとってもラク~に楽しめました。
特に良かったのがねェ~、やぁっぱり、でんでん!!
でんでんさん、いいわぁ~。『冷たい熱帯魚』を観てしまった人って、けーっこう、「まさかとは思うけど、この映画でもまたでんでんさんが『裏でんでんコード the BEAST』を発動させるんじゃないかとな~んか気になっちゃう」症候群にかかっている方、多いんじゃないでしょうか。私はテキメンにそうです。
でも、もちろんそんなわきゃあないわけなんですが、この映画でのでんでんさんはボケもするしツッコミもするし、とにかく「ごくふつうの良識あるトボけたおじさん」ならではのフットワークの軽さを発揮させています。リベロ。うん、『冷たい熱帯魚』でああいった役を演じきった実績がついた分、今のでんでんさんは現在の日本映画界でも最高の「おじさん俳優リベロ」になっています。
まぁとにかくね、いろいろ言いましたけど、この映画の良さはとにかく「スケールは大きくなくても現場の一致団結感がすばらしいアンサンブル」! こういうことかと思います。
もちろん「主役・原田芳雄」や「農村歌舞伎の舞台裏」もいいわけなんですけど、それ以上に語ることができる良さがもっといっぱい散らばっている豊かさがあります。
それでも1ヶ所だけあげさせてもらえれば、映画後半の要所要所で重要となってくるキーワードの、
「仇(あだ)も恨みも これまで これまで」
という言葉は、原田さんの持ち味と歌舞伎のヒーローのあり方が見事にかさなりあった(決して「融合」ではない)素晴らしいセリフになったと思います。
これは原田さんが演じる歌舞伎の主人公「悪七兵衛 景清」(あくしちひょうえ かげきよ)の名台詞で、
「今までこだわり続けていた、自分にとっての正義だった復讐心も個人的な恨みも、きれいさっぱり捨ててやる。」
という意味の、いかにもヒーローっぽい割り切りの爽快な意思表示なのですが、これをあの原田芳雄が発すると、
「ンなこと言ったって、そんなにあっさり忘れられるワケねぇだろ、ばかやろ。」
という、実に! じっつに愛らしく人間らしい表情のつぶやきをありありとにじませたセリフになるんだからいいんだよねェ。矛盾じゃなくて、それが人間なの! というメッセージがじんじん伝わってきます。感動。
私は大笑いさせてもらえたなぁ。一緒にいたお客さんも、多くは私よりも年上に見えるご夫婦やサラリーマンだったんですけど、みんなでワハハッと笑うシーンはいたるところにありました。
もしかしたら、若い人、あるいは山奥の村という設定にピンとこない人が観たら、「よくわかんないなぁ。」や「ぬるくて飽きちゃう。」という向きもあるかもしれません。それに反論するすべは「よく観て!」と言うことしかないのですが、少なくとも私は、この『大鹿村騒動記』を観て笑うことができる人間に自分がなれたことを非常にうれしく感じています。トクしてんだもんねェ~!
若いと言えば、このレベルのアンサンブルに加わることができる俳優さんが、松たか子さん「以上」の年齢に限定されてしまっていたことは、それ以下の年齢の私としては多少は残念な気はしました。若い人としては瑛太さん(28歳)も出演しているのですが、ほとんど他の俳優さんとからまないカメオ出演のようなあつかいでしたし。
もう1人、これはもう見るからにおさない冨浦智嗣(さとし)くんという20歳そこそこの青年がけっこうな重要度で出ているのですが……まぁ、これからの成長に期待ということで!
人によっては、この冨浦くんが演じている役柄の複雑ゆえの未熟さに「キツいなぁ……」と感じる人もいるかと思うのですが、私はそこらへんは苦痛にはなりませんでした。
なぜなら私自身が、冨浦くんの役柄、というか冨浦くんがかかえている身体的特徴にはげしく共感できる部分を持っているからなのです。「イケメン」っていう部分じゃないよ!?
『大鹿村騒動記』、おもしろかったですよ~。希代の「原田芳雄俳優」原田芳雄の一世一代の花道でございます。なるべく多くの人数で笑って送り出してさしあげましょ~!
原田さんの生涯最後のショットとなったラストカットは、実に原田さんらしい味わいのものになっています。いいよ~、ぜひともスクリーンでご覧ください。そして、あなたも「はへ?」ってなって。
ということでいつにない収穫の多さで終わった今月の桜木町ツアーだったわけなのですが、
来週、また桜木町に行きます。「あのお店」でお買い物をするために。そして「あのお方」に逢うために。
次はどの駅からどのルートで行こうかナ~? あぁ、緊張する。