長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

はやく総大将になりたい!! ~ぬらりひょんサーガ 第14回~

2011年10月22日 14時50分05秒 | ゲゲゲの鬼太郎その愛
《前回までのあらすじ》
 ちまたの、『妖怪人間なんとか』実写ドラマ化とかいう心底ど~でもいい話題など、どこ吹く風!
 そうだいは相変わらず妖怪総大将ぬらりひょんの一大叙事詩をたどる途上にあったが、サブタイトルに使っていた鳥山石燕の『画図百鬼夜行』シリーズの副題が全部つきてしまったことに驚愕していた。
 え、もう14回目なんだ……猫娘は4回で終わったのに……これも、愛!!


 アニメ第3期『ゲゲゲの鬼太郎』の大ヒットによって1980年代中盤に巻き起こった「第2次妖怪ブーム」でしたが、このブームは1970年前後に起きた「第1次妖怪ブーム」とは、内容において大きな違いがありました。

 簡単にいえば、「第1次」の主役はあくまでも日本の伝承の世界に棲んでいた妖怪たちであって、水木しげるによるマンガ作品『ゲゲゲの鬼太郎』は、あくまでもその中にあるコンテンツのひとつに過ぎなかったのです。いやいや、もちろん最大級の貢献度はになっていたわけですが、先に紹介したように、大映の「妖怪3部作」といった「鬼太郎サーガ」と直接の関係がない(水木しげるによるコミカライズはあったらしい)ヒット作もちゃんといっしょに並んでいたわけです。無論のこと、アニメ『妖怪人間ベム』(1968~69年)もそういった流れのひとつですよね。

 そういった「第1次」にたいして、結果的に昭和最後の妖怪ブームとなった「第2次」はどうだったのかといいますと、こちらは「妖怪ブーム」というよりも「鬼太郎ブーム」といった方が正しいような内容でした。
 要するに、「第2次」はほぼすべてが『ゲゲゲの鬼太郎』というフィクション作品に起点を持つものであり、表向きは「日本古来の……」といったていをなしているようでいながら、実は最近できたばかりの特徴で全身を塗り固めていた妖怪たちでいっぱいだったわけなのです。
 そして、言うまでもなくその代表格のような例が、我らがぬらりひょん先生だったということなんですねェ~。

 いつの間にか「邪悪なことばっかしか考えていない妖怪」というイメージをばっちり身にまとい、「第2次妖怪ブーム」に欠かせないヒール役になりおおせていたぬらりひょん。
 瀬戸内海でぷかぷかしていた過去がなつかしい……


「わしも、もしあのままでおだやかな日々を過ごせていたらどうなっていただろうかと、時々ふと思うことがある……ひまな漁師にしか相手にされないつまらない妖怪のままだったとしても、金とも名声ともまるで縁のないぷかぷかのくり返しだったとしても、それでも、それなりの幸せはあったのではないかと。」

「……ぜんぶ、この大都会が悪いんですよ、ぬらりひょんサマ。オヤジ、ちくわぶ。」


 深夜のガード下の屋台で、コップ酒に目をおとしながらつぶやくぬらりひょんと、何かを忘れようとするかのように機械的におでんを口に入れていく朱の盤。
 目に浮かぶねェ~。2人の明日はどっちだ!?


 さて、そういった感じで、「第1次」ほどの幅の広さはなかったものの、少なくとも「鬼太郎サーガ」という作品世界限定では爆発的な広がりを見せることとなった「第2次妖怪ブーム」。現在の妖怪カルチャーに色濃く影響を与えている新展開が目白押しだったわけです。

 ところが、ここで気をつけなければならないのが、「第2次妖怪ブーム」の盛り上がりが、必ずしも「鬼太郎サーガ」の造物主こと水木しげるの意図する展開ばかりでなかったということです。というか、鬼太郎がオカリナムチをあやつる正義の少年になったりアニメ第3期がめまぐるしいバトルシーンを売りとしたアクションものになっていたりした時点で、すでに『ゲゲゲの鬼太郎』という作品は水木しげるの「フハッ。」な世界から解き放たれた存在になってしまっていたのです。

 実際に、「第1次」で2度アニメ化された『ゲゲゲの鬼太郎』は、純粋に水木しげるのマンガ作品(本来「鬼太郎もの」ではなかったものも含む)を動画にしたものでしかなかったわけなのですが、1980年代における「第2次妖怪ブーム」でのアニメ第3期『ゲゲゲの鬼太郎』と水木しげるのマンガ作品『ゲゲゲの鬼太郎』との間には、どうにも埋めがたい不思議な「差異」があったのです。
 もちろんそこには、妖怪ぬらりひょんのあつかい方ひとつをとっても大きすぎる違いがありました。


 ちょっとここで、アニメ第3期『ゲゲゲの鬼太郎』の放送されていた1985年10月~88年3月のあいだに展開されたその他の「鬼太郎サーガ」作品を時系列順にあげてみましょう。


『最新版 ゲゲゲの鬼太郎』(1985年9月~87年8月 全26話)
・『月刊コミックボンボン』(講談社)で連載された鬼太郎サーガ番外編シリーズ
・このシリーズは「水木プロダクション製作」となっており、実質的な原作者は特撮ライターの金田益実、作画者は当時水木プロに所属していた森野達弥だった
 ※森野は現在独立して活動しており、そのためか『最新版 ゲゲゲの鬼太郎』の単行本コミックスは、連載時以降再版されていない
・アニメ第3期のタイアップ作品で世界観はほぼ同じであるものの、だいぶ自由にアニメから逸脱した長編ストーリーマンガとなっている
・ぬらりひょんが実際に日本妖怪の3分の2を統率する「妖怪総大将」に設定されていて、アニメとは比較にならないほど強大なラスボスに設定されている
 ※鬼太郎によって約7千万年前に追放されたぬらりひょんと朱の盤が現代に復活した経緯がしっかりと説明されている唯一の公式作品
・この作品でのぬらりひょんは、洋装の軍服とマントを身にまとった大男となっており(顔つきはアニメ第3期に近い)、シーンによっては身長50メートルくらいまでに巨大化して自ら闘う
・物語のクライマックスで、ぬらりひょんは三原山噴火口に落下して巨大ゾンビ妖怪「食妖鬼」に変貌し、伊豆大島を壊滅させて鬼太郎と決戦する

『新編 ゲゲゲの鬼太郎』(1986年5月~87年9月 全52話)
・『週刊少年マガジン』(講談社)で連載された、水木しげるによる鬼太郎サーガ8番目のシリーズ
・ラスト4話分の『鬼太郎地獄編』はアニメ化にさきがけた『月刊少年マガジン』での連載(1987年6~9月)
・このシリーズはアニメ第3期の放送開始後に連載が始まっているが、ほとんどのエピソードがアニメ化されているため、第3期の実質的な「原作」にあたる
・『地獄編』も含めて、ぬらりひょんと朱の盤がいっさい登場しない
・妖怪ハンター・ヒ一族、魔女ジニヤー、鬼道衆などといった強豪が登場している

アニメ第3期の劇場版第4作『激突!!異次元妖怪の大反乱』(1986年12月 48分)
・「東映まんがまつり」の1作で、4作製作されたアニメ第3期『ゲゲゲの鬼太郎』オリジナル劇場版の最終作
・ストーリーは原作マンガの『朧車(おぼろぐるま)』(1968年10月発表 全4回)をもとにしている
・原作では「妖怪総理大臣ぐわごぜ(ガゴゼ)」と「朧車」がラスボスとなっていたが、この作品ではさらにその上に「妖怪皇帝ぬらりひょん」が設定されている
・ぬらりひょん率いる妖怪軍団は東京都心を占拠することに成功しており、アニメ第3期の中でぬらりひょんが「妖怪総大将」になったのはこの1回だけ
 ※この映画が公開された当時、TVアニメ本編はシリーズ中盤の第60話付近にさしかかっていたのだが、ぬらりひょんは相変わらずの小悪党のままであり、劇場版での「総大将ぶり」はかなり異質
・妖怪皇帝ぬらりひょん自身にさほどの外見の変化はないが、『最新版 ゲゲゲの鬼太郎』のような洋装軍服にマント姿で、終始、顔も鋼鉄のカブトと鉄仮面で隠している(けど、声でぬらりひょんだとすぐわかる)
・どういった経緯でかは不明なのだが、この作品だけであの「蛇骨婆」がひょっこり復活している(やっぱりぬらりひょんは彼女を忘れてはいなかった……愛だ)
・アニメ第3期名物「正義に目覚めたねずみ男(演・富山敬!)」の涙の演技が炸裂するウェッティな傑作

オリジナルビデオ『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪奇伝・魔笛エロイムエッサイム』(1987年7月リリース 56分)
・東映による実写版『ゲゲゲの鬼太郎』の第2作(Vシネマとしての製作)
・ゲゲゲの鬼太郎と「悪魔くん」が共演するオリジナルストーリー(脚本・大原清秀)
 ※水木しげる原作の『悪魔くん』は1963~94年に執筆された名シリーズで、1966年10月~67年3月には実写版連続ドラマ(モノクロ)、1986年9月には『月曜ドラマランド』版実写スペシャルドラマ、1989年4月~90年3月にはテレビ朝日でアニメシリーズが放映されている
 ※鬼太郎と悪魔くんはマンガ『鬼太郎対悪魔くん』(1976年7月)でも共演(というか、文字通りの対決)したことがあるが、内容はまったく違う
 ※「悪魔くん」というキャラクターは複数の原作シリーズによってそれぞれ別の少年が名乗っているため、すべてが同一人物ではない
・主役の鬼太郎をはじめ、キャスティングは『月曜ドラマランド』版から一新されている(当然ながら、目玉の親父役の田の中勇だけはいっしょ)
・ぬらりひょん役を演じたのは、時代劇の悪代官役や『仮面ライダースーパー1』(1980~81年)の帝王テラーマクロ役などでも有名な、名悪役俳優の汐路章(しおじ あきら 59歳)
・ぬらりひょんは『最新版 ゲゲゲの鬼太郎』や劇場版『激突!!異次元妖怪の大反乱』に準拠した洋装軍服姿
・この作品でもぬらりひょんは悪のラスボスを演じており、従えている妖怪は朱の盤、桜の精、濡れ女、鉄鼠、カラス天狗、夜道怪(やどうかい)、ぬっぺっぽう、河童、家鳴り(やなり)


 こういった作品が「第2次妖怪ブーム」をいろどっていたわけなんですね。

 いや~しかし、こうやってならべてみただけでも、ぬらりひょんというキャラクターの哀しい境遇が容易に見てとることができるのではないでしょうか。
 水木先生、ぬらりひょん一味はガン無視ですか……かわいくなくても一応レギュラーにはなっていた猫娘さえもがうらやましく見えてしまうこの扱い。

 とにかく、ぬらりひょんはアニメ本編ではうだつのあがらないしけた悪役にあまんじていたのですが、早くもすでに、この1980年代の時点で、マンガ『最新版 ゲゲゲの鬼太郎』と劇場版『激突!!異次元妖怪の大反乱』の2作品で見事に「妖怪総大将」の立場をつかみ取ることに成功していました。まぁ、そんなに長い時間じゃなかったし、その末路もかなりキッツイものにはなっていましたが。
 『魔笛エロイムエッサイム』では、前作の『月曜ドラマランド』版にくらべて配下の妖怪が倍増するという快挙をなしとげてはいたのですが、それでも10匹そこそこじゃあ「総大将」とは呼べませんやねぇ。

 まぁ、こういった感じで、わかりやすい「勧善懲悪」をむねとするアニメ第3期『ゲゲゲの鬼太郎』周辺において、ぬらりひょんは屈指の名悪役としてのポジションを手堅く確保することに成功したのでありました。


 さぁ最後に、「鬼太郎サーガ」でも異色の作品と言える『最新版 ゲゲゲの鬼太郎』の中で妖怪総大将ぬらりひょんご本人が語っていた、彼と朱の盤が7千万年の時を超えて現代に復活することができた、その衝撃の真相を紹介して今回はおしまいにしましょう。

「きみ(鬼太郎)に原始時代に流されてから わしはずっと時をまった。
 いわば2億年という長い年月をへて ふたたび帰ってきたわけだ。
 それまでのわしには たいした力などはなかった。
 ところが人間のみにくい欲望や悪行を見ているうちに……
 わしの頭にさまざまな変化があらわれた。
 人間のかずかずの戦争の記憶が流れだした。
 戦乱とにくしみの邪悪なエネルギーがわしに力をあたえてくれ、
 人間の悪が多くなれば多くなるほど わしの力は強くなるのだ!」
                   (第6回『出現!妖怪総大将』の巻より)

 ……要するに、過去から現代まで、鬼太郎に会うために長生きして待っていた、ということなのね。
 なんか発言があいまいなのですが、流されたのが「原始時代」だったら時間は「3~5万年前」だし、アニメどおりに「白亜紀末期」だったとしてもせいぜい「7千万年前」ですよね?
 「2億年」はいくらなんでも言いすぎだろ……さすがはぬらりひょん、「ウソの精」なだけはある!

 なるほど、ということは、現在の「妖怪総大将ぬらりひょん」があるのは、ひとえに他ならぬ「ゲゲゲの鬼太郎」その人のおかげ、ということになるのね!!

 なんか、ほんとに「バットマンとジョーカー」とか、「アンパンマンとばいきんまん」みたいな根元的でウロボロス的な関係にあるのね、このお2人。

 ぬらりひょんサーガ、ふーかーいーぞぉ~!!(なぜか味皇)
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輝かしい銀幕デビュー!の、はずが ~ぬらりひょんサーガ 百鬼徒然袋ノ下~

2011年10月20日 23時23分26秒 | ゲゲゲの鬼太郎その愛
《前回までのあらすじ》
 1980年代にバブル期を象徴する悪役として復活した妖怪ぬらりひょん!
 しかし、初回の登場はあくまでも原作マンガの焼き直しであり、やっぱりぬらりひょんは過去の世界に追放されてしまった……しかも、原作より2千倍も昔。
 本当の「妖怪総大将への道」は、まさしくこの敗北から幕を開けるのであった。おぬォれ鬼太るゥオ!!


 今でこそ、「宿敵はぬらりひょん!」というイメージが定着しているアニメ第3期なのですが、フタを開けてみると、実はぬらりひょんは全115話の最初っから最後まで出ずっぱり、というわけではありませんでした。
 前回にもふれたように、早くも第4話に登場したぬらりひょんと若手ホープの朱の盤だったのものの、キレた鬼太郎少年によって白亜紀末期に流されたあとはしばらくのあいだ、シリーズ本編には現れていません。
 けっこうインパクトのある悪役っぷりだったのに、やっぱり原作通りにフェイドアウトなのかな……といい加減に視聴者も忘れようかと思いだしたころ。

 秋に始まったアニメ第3期もたちまち大人気となり、年もあらたまった1986の1月。第16話『妖怪のっぺらぼう』の回に奇跡は起こりました。
 なんと、約2ヶ月ぶりにぬらりひょんと朱の盤のコンビがブラウン管に戻ってくる(表現が古い……)こととなったのです。なぜ?

 『妖怪のっぺらぼう』は、読んで字のごとくのっぺらぼうが外見に似合わない凶悪ぶりを発揮して人間の魂を喰いまくり、意外な強さで鬼太郎との死闘を繰り広げるというエピソードで、そのもととなった1968年5月発表の原作マンガには、ぬらりひょんがかかわる要素はいっさいありませんでした。
 そんなお話にぬらりひょん一味がどうかんでくるのかと言いますと、「のっぺらぼうを影であやつって鬼太郎にけしかけた黒幕」としての再登場となったんですねェ~。

 これ、これ! 「その回のゲスト妖怪をあやつっていた黒幕」というポジショニングはほんっとに便利!! だって、この手を使ったら原作マンガの全話にぬらりひょんがかかわることが可能になるんだぜ!?
 いったい誰が考えついたのか……ともあれ、勧善懲悪のヒーローアニメに欠かせない「悪のラスボスぬらりひょん」が、正義も悪もあったもんじゃない鬼太郎ワールドに出現することとなったのであります。


 もっとも、だからといってぬらりひょん一味が第16話以降ず~っとアニメ第3期に登場していたというわけではなく、私の調べたかぎりでは彼らが出てきたエピソードは、

第4(蛇骨婆)・16(のっぺらぼう)・45(タヌキ妖怪あしまがり)・51(世界妖怪ラリー)・58(目目連)・60(ダイダラボッチ)・86(再生妖怪軍団)・91(ヒ一族)・104(妖怪狩りツアー)・105(めんこ天狗)・108(本所七不思議)・112~115(地獄編の後半)話

 の15話でした。
 そうなんです。全115話中の15話なんですから、全体の13%くらいしかぬらりひょんは出てきていないわけなんですよ。意外と少ないと思いません?

 ただし、実質の最終話にあたる第108話と連続ショートシリーズ『鬼太郎地獄編』(第109~115話)にもしっかり悪役として出演しているので、ちゃんとラスボスとしての筋は通しているんですねぇ。

 ここで確認しておきますが、このアニメ第3期でのぬらりひょんの立ち位置は「妖怪総大将」ではありません。
 「妖怪総大将をめざしている姑息な悪役」ってところが正しい実状かと。つまり、それぞれのエピソードに出てくるゲスト妖怪をだますのが精一杯で、とてもじゃないですが多くの妖怪たちの上に立つふところの広さは持ち合わせていない卑劣なキャラクターとなっているのです。第91話のヒ一族にいたっては、交渉決裂で殺されかけて鬼太郎に助けてもらってますからね。結局は手下は朱の盤ひとりという哀しさがあります。

 でもねぇ……第16話以降のアニメ第3期すべての登場エピソードを担当し、のちには2007~09年の第5期でも再登板を果たすこととなった3代目ぬらりひょん声優・青野武(49歳)のイメージは強かった。

「久しぶりだな鬼太るゥオ。今度こそ死ぬェエイ!!」

 ドスのきいた巻き舌ぎみのわる~い声には心底惚れてしまいました。壮年のエネルギッシュなパワーがみなぎる、悪役としては最高の時期での当たり役となったのではないでしょうか。
 「お~い、まるこぉ~。」なんて言ってる場合じゃねぇ! さくらともぞうとは180°真逆の魅力に満ちていました。

 このように、経歴だけを見ればつまらない小悪党としか言いようのないアニメ第3期でのぬらりひょんだったわけですが、ひとえにそんな彼が現在にいたるまでの人気を保てているのも、この時の3代目青野ぬらりひょんの功績のたまものであるということは申すまでもないでしょう。

 ただし、ぬらりひょんにとって最も必要なのは、完全無欠の悪役になりきれない「おっちょこちょいさ」!
 欠点がなければぬらりひょんは鬼太郎に勝利してしまうので、ツメの甘さは毎回毎回必ず露呈して敗北する流れとなるのですが、そこで出てくる、あわてふためいた局面でのコミカルな演技こそが青野ぬらりひょんの真骨頂とも言えます。ここがちゃんとおもしろい!
 さすがは、かつてイギリスの伝説的コント番組『モンティ・パイソン』で常識と狂気、ツッコミとボケの両面をこなしたマイケル=ペイリンの日本語吹き替えを一手に引き受けた青野さんだけのことはある。

 実際、ちょうどアニメ第3期『ゲゲゲの鬼太郎』と同じころ、言わずと知れた国民的大ヒットアニメ『ドラゴンボール』(Zじゃない)で、血も涙もない正真正銘の大悪役「ピッコロ大魔王」(ジュニアじゃない)も演じきった青野さんですが、そこにちゃんとコメディの要素も入っていた「ぬらりひょん」のほうが私は大好きでした。

 青野さん、MY LOVE。
 第5期『鬼太郎』では、さすがに70代ということで落ち着いた老いの味わいもありましたが、『ドラゴンボール』の収録で絶叫しすぎて身体をぶっこわしたというエピソードも有名な青野さんなので、まずは仕事のことは考えずにゆっくりと静養していただきたいと願うばかりです。叫んじゃダメ~!


 さてさてそんな青野ぬらりひょんだったのですが、実は! 世間の前にお披露目した「ほんとうの最初の登場」は、最初にあげたアニメ第3期・第16話ではなかったんです。
 でも、青野ぬらりひょんが「ブラウン管に現れた」最初が『妖怪のっぺらぼう』の回だったことは間違いないんです。ウソじゃないの。

 つまり、ななんとな~んと、約7千万年前に流されたぬらりひょんと朱の盤の2人が(蛇骨婆はいない……)帰ってきたのは、第16話のわずか1ヶ月前、1985年12月に堂々劇場公開された『ゲゲゲの鬼太郎』史上初のオリジナル劇場版でのことだったのです!! 銀幕での復活だ~。

 アニメ化されるたびに人気のあった『ゲゲゲの鬼太郎』は、アニメ第1・2期それぞれでTV放映された回をブローアップしたものを劇場公開したことはあったのですが、映画館でしか観られないオリジナルエピソードが制作されたのは、この1985年12月の劇場版『ゲゲゲの鬼太郎』(公開当時は特にサブタイトルはつけられていなかった)が初めてでした。
 とはいえ、この作品は子供向けのアニメ映画オムニバス企画「東映まんがまつり」の1作として上映されたため、本編時間は24分と、通常のTV放映エピソードとさほど違いのないボリュームとなっています。
 この時の同時上映は、『キャプテン翼』と『キン肉マン』。なつかしいねぇ~! 私ももちろん映画館に観に行きました。『キャプテン翼』はサッカーのルールがわかんなかったのでぼんやりしてました。

 『ゲゲゲの鬼太郎』史上初の劇場オリジナルとなるこの作品は、原作マンガの名エピソード『妖怪軍団』(1968年4月発表 前後編)をもとにした物語。

 原作は、沖縄や東南アジアといった南方から「妖怪軍団」が金銀ギラギラの巨大軍船に乗ってやってくるという興奮の内容だったのですが、実際に登場したのは軍団の尖兵として日本に上陸してきた沖縄妖怪「アカマタ」と水木しげるの創作妖怪「やし落とし」だけで、その2匹が鬼太郎に倒されるのを観た妖怪軍団本隊はそのまま撤退してチャンチャン、となっています。妖怪軍団、鬼太郎双方ともに「今日はこのぐらいにしといたるわ。」という感じにおさまるラスト……実に水木しげるらしい玉虫色のエンディングです。

 もちろん、熱血バトルアニメの第3期がそれでおさまるはずもなく、劇場版ではアカマタとやし落としに合わせてキジムナーと巨大妖怪・蛟龍(こうりゅう)、そして妖怪軍団を統率する首領として、世界妖怪史上でも屈指のインパクトを誇るおそるべき南方妖怪「チンポ」といった面々が鬼太郎ファミリーとの激闘を展開していました。ち、チン……彼は、一見ふつうの南国の浅黒い肌の現地人にしか見えない姿をしているのですが、ズバリ言うと陰茎が3本ありまして、そこからジェット水流のように水分を噴射してホバークラフトのように空中を高速飛行する前代未聞の特殊能力を持った強豪妖怪です。もちのろん、水木しげる神先生のオリジナルキャラ。
 もともとは原作の『妖怪軍団』には影も形も出てこなかった蛟龍とチン×なのですが、蛟龍は八百八狸軍団が大暴れした『妖怪獣』に、チン×は鬼太郎サーガ第4のシリーズとなる『鬼太郎の世界お化け旅行』(1976年 双葉社『隔週刊少年アクション』で連載)に重要なキーマンとして登場しています。


 で、さぁ。こういった南方妖怪軍団を影であやつっていたのが、あのぬらりひょんと朱の盤だったという衝撃の展開……となるはずだったのですが。
 子ども、特に男子がギュウギュウにつまった「東映まんがまつり」に妖怪チン×登場。ここまできたらもうみなさんおわかりでしょう。

「ぎゃはははは!! ちんぽー! ちんぽみっつ~!!」

 おそらく、私が生まれて初めて「劇場が揺れるレベルの熱狂」を体感したのは、この時ではなかったかと記憶しております。

 残念ながら、7千万年の時を超えて復活した2人、わけても青野ぬらりひょんの初登場に興奮するお客さんは誰もいなかった!! もうその前に下ネタで大興奮してたから。
 そういえば私も、この作品でぬらりひょんを見た記憶がいっさいねぇ! 頭に残っているのは、スクリーンいっぱいに映し出されていた衝撃の「3連チン×噴射」シーンだけ。

 なんという不運。銀幕での復活を果たしたぬらりひょんは、あまりにもインパクトの大きすぎる出オチキャラによって画面の片隅に追いやられてしまっていた!
 ドンマイドンマイ、誰も勝てねぇから。

 ちなみに、そんなアニメ初登場の南方妖怪チン×の初代声優をつとめたのは、『ヤッターマン』のドクロベー様や『ぶらり途中下車の旅』のナレーションで不世出の名演をみせていた、今年8月のご逝去が惜しまれる滝口順平さんでした。
 問題のチンチン妖怪を演じた当時は54歳だったわけですが、そんな外見とはうらはらに意外や意外、冷静沈着で底の知れない悪役っぷりを見せつけてくれていました。
 声に低音の貫禄があり、悪役をやらせたら思いのほか怖い滝口さんなのですが、実はのちに、不思議な場でぬらりひょんそのものの役も演じています。おぼえといてね!

 さぁさぁ次回は、そんなぬらりひょんと朱の盤がどうやって現代に復活してきたのか? その謎を解き明かすストレートすぎる真相にせまりま~っす。
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あら~、秋

2011年10月18日 22時31分19秒 | すきなひとたち
 どうもこんばんは~、そうだいでございます。
 めっきり秋ねぇ。みなさま、カゼもひかずに元気にやっておられますでしょうか? 夜はもう寒いね!

 いや~、もはやドロ沼ベトナム戦争状態におちいってしまっている「ぬらりひょんサーガ」なんですけどね。
 まぁ、そのうち終わるよ! ここまできた以上は、私の気が済むまで遠慮なくやり通させていただきますよ。
 いつになったら「孫」がはやってる現在に戻ってこられるのやら……これもゆがんだ愛のかたちということで。

 もうねぇ、こんなことやってる最中にも世間ではいろんな動きが!
 ちょっと、好対照な2つのトピックがあったのよね。


「今日は祭りだ!」 ドリームモーニング娘。のステージに後藤真希と辻希美が登場
 (BARKS 2011年10月16日付け記事より)

 10月16日に東京・中野サンプラザにて開催されたドリームモーニング娘。の全国ツアー「ドリームモーニング娘。 コンサートツアー2011秋の舞 続・卒業生 DE 再結成」東京公演のステージに、エイベックスへ移籍し、2011年で活動休止を発表した後藤真希(26歳)と、育児休暇中の辻希美(24歳)がサプライズで登場した。
 開演前につんく♂プロデューサー(42歳)が「ドリムス。 YOU出ちゃいなよだよなぁ。」とツイッターでつぶやいていたことから、誰もが「誰かがくる」ことはある程度想定していたであろう今回の公演。しかしフタを開けると、そこにはごっちんと辻ちゃんの登場。特に事務所も異なるごっちんの登場を予期していた人は、2200人のオーディエンスのうち、一体どのくらいいただろうか。

 今回の後藤真希の登場は、本人曰く、TV番組に出演した際につんく♂から電報をもらったことがきっかけ。そこでつんく♂から、ドリームモーニング娘。の公演に遊びにくるよう誘われ、「行きます。」と番組内で返事したところ、それがつんく♂によって「YOU、出ちゃいなよ。」という流れになったという。
 一方、辻希美の登場は、モーニング娘。第6代リーダー高橋愛(25歳)の卒業公演を観に行った際につんく♂から「YOU、出ちゃいなよ。」と誘われたことがきっかけとのこと。

 ステージ上に姿を見せた後藤と辻に、かつてないほどの大声援(というか雄叫び)が巻き起こる会場。矢口真里(28歳)も、「このメンバーがステージに立つのってすごいね!」と話せば、中澤裕子(38歳)は「嬉しいよね! 今日は祭りだ!」とオーディエンスを煽る。また久住小春(19歳)は、後藤と辻に思わずタッチと、ドリームモーニング娘。のメンバー9名(藤本美貴は妊娠でライヴを降板中)も大興奮。
 後藤は、「12月4日に活動休止前最後のライヴがあるので、そこにみんなも遊びにきてほしいな。」との言葉を口にする。そんな後藤の誘いに、ドリームモーニング娘。メンバーはそれぞれ「行く、行く」と答えていた。

 後藤真希はモーニング娘。の第3期メンバーとして1999年8月22日に加入して、2002年9月23日にモーニング娘。を卒業。ドリームモーニング娘。のメンバーとの共演は、2007年7月29日に行なわれた「Hello!Project 2007 Summer 10th アニバーサリー大感謝祭 ハロプロ夏祭り」以来となる。
 後藤と辻は、ステージへの登場を終えたのちは、客席でドリームモーニング娘。のステージを楽しんだ。


 このニュースと、これ。


SDN48 突然の全員「卒業」にファン激怒 運営ブログと支配人ツイッターが炎上
 (J-CASTニュース 2011年10月17日付け記事より)

 AKB48の姉妹グループ、SDN48のメンバーが2012年3月末で全員「卒業」することが発表された。事実上の解散と見られているが、突然の発表にファンが激怒し、運営ブログが炎上状態になるなど、混乱が広がっている。
 決定内容は2011年10月15日、SDN48劇場支配人の公式ブログ上で明らかにされた。翌2012年3月31日のさよならコンサートで現メンバーが卒業する。キャプテン野呂佳代さん(27歳)の、「私たちもどこかで区切りをつけなければいけない時期にさしかかっています。」というコメントも発表された。

 SDN48は、2009年にAKB48の姉妹グループとして発足。20歳以上のメンバーで構成され、東京・秋葉原のAKB48劇場で、お色気を全面に出した「18歳以下観賞不可」の公演を行ってきた。
 大堀恵さん(28歳)や野呂さんら元々AKB48に所属していたメンバーも多数いて、AKB48メンバーにとっては卒業後の再就職先としても機能している。
 結成当初は「色物」グループという見方もされていたが、2011年4月にリリースされた2ndシングル『愛、チュセヨ』がオリコンで週間最高3位を記録。9月にリリースされた『MIN・MIN・MIN』も企業CMとのタイアップで同3位を記録した。
 最近は雑誌グラビアにもSDN48メンバーがよく出ている。特に芹那さん(26歳)が人気で、9月に発売されたイメージDVDも10月17日現在、アマゾンのDVD女性アイドル部門で4位に入っている。

 メンバー知名度も上昇し、「売れかけている」最中での突然の「全員卒業」発表で、ここまで応援してきたファンは怒り心頭だ。
 SDN48劇場支配人ブログには非難コメントが殺到。また、AKB48支配人のツイッターにも同様のメッセージが寄せられ、炎上状態になった。

 一方で、今回は現メンバーの全員卒業が発表されただけで、SDN48というグループ自体は残るという説もある。そのためネット上は「来年SDN48第2章に加入するAKB48メンバーは?」という話題で盛り上がっていた。


 ……対照的なんだよねェ~。なんかこの、それぞれのニュースを読んだ時の感情の温度が。ホットとコールド。

 アイドルグループは実に奥が深い。
 全盛期を過ぎたとか同じメンバーでなくなったとか、お母さんになったとか所属事務所がかわったとかいう障壁を超えた舞台での再会。
 容姿のかわいさや楽曲の良さ以外に、「時間の経過」からの感動が生まれるのもアイドルグループなのね。


 かたや、SDN48の「全員卒業」発表は。
 年齢制限のある劇場公演を活動の中心にしているライヴアイドルグループであるのに、リリースしているシングルが3枚連続でオリコンチャート上位につけているという状況はかなりの健闘といえるでしょうし、少なくとも今の段階をもって原因が「不人気」であるということはないですよね。

 どうやら来年の3月いっぱいでSDN48がなくなるのではないようなのですが、現メンバー全員がいなくなる以上は……ねぇ。

 なんか判断が「先を見越しすぎ」なんじゃないかと。これから起こすいろんな動きに向けての事前シミュレーションというか、ファンの反応をうかがうためにあえて過激に出た実験に感じられてしょうがないんですが。
 むろん、SDN48のメンバーはしっかりした方々ばかりでしょうから「路頭に迷う」なんてことはないのでしょうが、せっかくできた「SDN48」という看板が将来、触れられない、とか触れたくないゾーンのものにならないといいんですけど。そりゃ哀しいっすよ。

 何年後かに成長したメンバーがまた同じ舞台に集合して、それを目の当たりにしたファンが熱狂し、感動する。
 これをやれてこその、「みんなのアイドルグループ」よねぇ~!!

 中野サンプラザ……次はここだな。
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千葉耕市ぬらりひょんの意義 ~ぬらりひょんサーガ 百鬼徒然袋ノ中~

2011年10月17日 14時18分20秒 | ゲゲゲの鬼太郎その愛
《前回までのあらすじ》
 『ゲゲゲの鬼太郎』物語が1980年代によみがえる!
 戦後のかおりを色濃く残していた原作マンガに、大幅な現代的アレンジをほどこしたアニメ第3期『ゲゲゲの鬼太郎』がついにスタート。
 数々の名エピソードが「弱きを助け強きをくじく」勧善懲悪のヒーロー鬼太郎(演・戸田恵子)を中心に置いたストーリーに変換されていくなか、ヒーローに対立する強力な悪役妖怪の存在も必要となり、ついに! あのぬらりひょんにスポットライトが照射される。


 前回はアニメ第3期の「おためし」「パイロット版」という感じで、1985年8月に同じフジテレビで放映された実写特撮ドラマ『ゲゲゲの鬼太郎』と、そこで見事な悪役を演じきった「史上初の妖怪総大将ぬらりひょん」についてふれてみました。つってもまぁ、4~5匹の妖怪をしたがえていたというだけなんですが、まずまずのデビュー戦にはなったわけです。

 この実写ドラマ版の内容は、その2ヶ月後の10月から開始されたアニメ第3期とのつながりはまったくないのですが、それでも、原作マンガとはかなりスタイルの異なる「正義のアクションヒーロー鬼太郎」がバブル期の現代日本に活躍するというインパクトを十二分に予告宣伝してくれるものとなったのです。
 それと同様に、「今度のアニメに出てくるぬらりひょんも、実写版のようにひと味違う感じになるのか?」という予兆にもなっており、まさしくその通り、アニメの世界で1985年に登場したぬらりひょん先生はだいぶ印象の違った大活躍を見せてくれることとなりました。

アニメ第3期『ゲゲゲの鬼太郎』第4話 『妖怪ぬらりひょん』(1985年11月)

 繰り返しますが、アニメ第3期のコンセプトは「原作マンガの1980年代版リメイク」ということになっており、このぬらりひょん初登場エピソードもまた、以前にこの「ぬらりひょんサーガ」で紹介した『週刊少年マガジン』版『墓場の鬼太郎』のぬらりひょん登場回をもとにした内容となっています。
 ただしアニメ第3期全体としては、その放映と並行して新たに連載されていた『新編 ゲゲゲの鬼太郎』(1986年5月~87年9月 水木しげるによる鬼太郎サーガとしては8番目のシリーズ)をすぐにアニメ化したエピソードも後半にいくにしたがって増えているため、全話が旧作の焼き直しというわけでもない、鬼太郎ワールドの新展開を見せてくれています。

 さぁ、原作マンガでは孤高の爆弾魔だった妖怪ぬらりひょん。リメイク版ではいったいどんなことになっているのでしょうか?

「ビルなどを急速に劣化させる特殊爆弾を使って、強引に建築事業を受注していく悪徳建設業者の社長」。

 な、なんというアレンジ……「爆弾」っていうワードしか残ってねぇ!!
 ただねぇ、この「悪徳建設業者」ってところが、いかにもバブル期の凶悪妖怪らしくていいんですよねぇ。

 原作マンガでは自分の気の向くままに自由に悪事を働いていたぬらりひょんだったのですが、アニメ第3期での彼は、人間社会に「企業人」としてかなり計画的にまぎれこみ、結果的に自分の儲けとなる地上げのための戦略として「劣化爆弾」を炸裂させたり手下の妖怪「朱の盤(しゅのぼん)」を暴れさせて土地の評判を落としたりする「社会ルールを利用した悪人」になりおおせているのです。原作マンガのように「社会ルールをいっさい無視した悪人」もこわいんですけど、こっちもこっちで手がつけられないワルです。「進学塾」といい「建築会社」といい、1980年代に入ってぬらりひょんは経営の楽しみを知るようになっていたのか? 手っ取り早く木の葉を札束にして使っていた過去と比較すると、かなりの心境の変化です。

 現在、『ゲゲゲの鬼太郎』でのぬらりひょんの名パートナーとして不動の地位を築いている、赤くてでかい顔の朱の盤(「朱の盆」とも)。このアニメ第3期・第4話での登場がお初となります。朱の盤自体が単独で鬼太郎に挑むという原作マンガは存在していないんですね。
 まぁ……そのしゃくれた顔で人を驚かすくらいしか能が無く頭もそんなによろしくないので、「名パートナー」と言うとぬらりひょん先生にキレられかねないくらいに頼りにならない朱の盤なのですが、東北(か中部)の山間部出身という人の良さがにじみ出てしまうキャラクターは、どうしても憎めない魅力にあふれています。
 朱の盤はアニメ第3~5期を通じてほぼ同じキャラクター&デザインでセミレギュラー出演を果たしているのですが、第3期を担当する初代声優は小林通孝(30歳)。

 アニメ第3期で一転、テロリストから悪徳業者社長になったぬらりひょんですが、会社はおかげで繁盛しているようで、東京都心にかなり大きな本社ビルをかまえ、移動は常に人間に化けた朱の盤にロールスロイスを運転させるといったリッチライフを満喫しているようです。長いこと鬼太郎サーガに出演しているぬらりひょんなのですが、生活上で彼が最も安定していたのは、鬼太郎に出会うまでのこの時期だったのではないでしょうか。

 さて、こんな「バブル期の大悪人」に変身したぬらりひょんだったものの、エピソードの大筋はだいたい原作マンガを踏襲したものとなっていまして、「ぬらりひょんがねずみ男を通じて鬼太郎と出会う」「ぬらりひょんが鬼太郎をだましてコンクリート詰めにする」「鬼太郎が秘術『鬼太郎憑き』を駆使してぬらりひょんを苦しめる」「困ったぬらりひょんが盟友・蛇骨婆に相談する」「ぬらりひょんと蛇骨婆が魔法の壺を使って鬼太郎に逆襲する」「鬼太郎が必殺『先祖流し』でぬらりひょんと蛇骨婆を過去に葬り去る」といった流れはまったく同じになっています。
 ニューフェイスの朱の盤がいるのに、やられ方がまったく同じって……朱の盤が役にたたなすぎるのか、鬼太郎が無敵すぎるのか。
 ちなみに、ここで蛇骨婆を演じていた2代目声優は山本圭子(42歳)。山本さんは鬼太郎サーガの中では、同じ婆さんでもむしろ「砂かけ婆」役として有名です。だって、アニメ2・4・5期で砂かけ婆やってるんですからね! たいへんな功労者ですよ。蛇骨婆としてゲスト出演したこの第3期では、のちにオリジナルキャラ・シーサー(沖縄の正義妖怪)としてレギュラー出演しています。ちなみにちなみに、白黒のアニメ第1期(1968~69年)で蛇骨婆を演じた初代声優は、『ウルトラQ』(1966年)の名キャラクター・カネゴンの声としても有名な麻生みつ子(37歳)さんでした。婆さん婆さんって、みんな若いじゃねぇか!

 ぬらりひょんの悪事の内容が変わっている他に特筆すべき変更点としては、最終的にぬらりひょんと蛇骨婆(と朱の盤)が放置された過去世界がマンモス時代でなくティラノサウルスが闊歩する白亜紀末期になっていること、ぬらりひょんが鬼太郎との因縁について「あいつには先祖代々、邪魔をされてきている……」と語るシーンがつけ加えられていることがあります。鬼太郎本人は明らかに戦後(1950年代)生まれなので、ぬらりひょん一族は鬼太郎の先祖にあたる幽霊族と抗争を繰り広げていた、という解釈になるのでしょうか?

 それにしてもさぁ……
 たぶん、「絵的にマンモスよりもハデだから。」という理由で恐竜のいる白亜紀に変更されたのでしょうが、マンモスと原始人のいた旧石器時代が「3~5万年前」だったのに対して、ティラノサウルスのいた白亜紀末期は「6850~6550万年前」なんだぜ。
 爺さん婆さんを置きざりにする時間を2千倍くらい昔にしてしまうとは……アニメ第3期の熱血鬼太郎は、どうやら原作マンガの鬼太郎よりも2千倍こわい少年のようです。

 みなさんもご存じの通り、のちにぬらりひょんと朱の盤のコンビは約7千万年の時を超えて1980年代ニッポンに奇跡の生還をとげるのですが、残念ながら蛇骨婆は第3期ではダメだったようです……ま、ま、第5期では戻って来てたみたいだから、いっか!


 最後に、バブル期にふさわしい巨悪としての再登板を果たしたアニメ第3期でのぬらりひょんについて。

 デザイン上はかなりのワル&クールぶりを体現した面がまえにリニューアルされており、なぜか冒頭にディスコに興じる若者たちの前に現れた際だけは原作マンガに準じた「背広姿にニヤケ顔」なのですが、悪事が成功した後は一貫してキリッとして背筋の伸びた眼光の鋭い和服の老人として描かれています。こういったあたりは、まさに前回の実写版にも影響を与えた水木しげるのイラスト「ダークぬらりひょん」を意識したものになっているようです。ハゲてるわりに下まつげが銭形警部なみにパリッとはえそろってるのがカッコイイ!

 つまり、一瞬ではあったものの原作マンガの風貌を見せているということは、このアニメ第3期・第4話でのぬらりひょんが、「過去」のマンガ版ぬらりひょんと「これから」の大悪役ぬらりひょんとをつなぐ重要なジャンクションの役目を果たしているということになるのです。
 そして! もうひとつ重要なのは、このエピソードのぬらりひょんだけが、アニメ第3期の中で「担当声優」が違っているということなんですよ!!

 アニメ第3期でのぬらりひょんの「声」といえば、言わずと知れた激シブ名優・青野武の名前が挙がるかと思われるのですが、実は超有名な青野さんはアニメのぬらりひょん声優としては3代目にあたり、アニメ第1期の槐柳二(さいかち りゅうじ)さんに続いて2代目をつとめたのはベテラン声優の千葉耕市(54歳)さんでした。
 そう、その後何度となく復活を遂げる第3期のぬらりひょんだったのですが、鬼太郎との最初の対決となるこの第4話だけは、青野さんではなく千葉さんがぬらりひょんの声をつとめているのです!

 なにゆえ、初登場という重要なこのエピソードだけ声優さんが違うのか……

 ここで見逃してはならないのは、千葉さんの声質!

 千葉耕市さんは、一言でいえば「にごったおじいさん声」の第一人者。
 彼のキャリアは、アニメの声優と同じかそれ以上に洋画の日本語吹き替えに定評があり、往年のホラー映画の名門、イギリスのハマープロで数々の名演をみせたクリストファー=リー(ドラキュラ伯爵など)やピーター=カッシング(ヴィクター=フランケンシュタイン博士など)の吹き替えを担当していました。とにかくホラーに水の合う声だったんですね。
 あと、千葉さんの仕事として特に有名なのは、あの『ロッキー』シリーズの老コーチ・ミッキー(演・バージェス=メレディス)役ね! これは当然おどろおどろしい役柄ではないのですが、歳月のこもった味わいのあるダミ声をいかんなく発揮しています。
 アニメ第3期『ゲゲゲの鬼太郎』では、千葉さんはのちに劇場版第4弾の『激突!!異次元妖怪の大反乱』(1986年12月)で、ゲスト妖怪「ぐわごぜ(ガゴゼ)」役として、青野ぬらりひょんとの夢の共演を果たしています。

 とにかく、ひょうひょうとした軽さゆえに逆に怖かった初代・槐ぬらりひょんに比べ、正攻法で悪賢いジイさん妖怪を演じた2代目・千葉ぬらりひょんは「老獪」を絵に描いたようなピッタリぶりで魅せてくれていました。
 ただし大切なのは、そうでありながらもついついゲゲゲの鬼太郎を見くびって大失敗してしまう「ツメの甘さ」があること! 朱の盤ほどじゃないけど、どこかおっちょこちょいな感じがあるのねぇ。この愛嬌がなければ、いくら悪くてもぬらりひょんじゃあないんだなぁ。

 で、千葉ぬらりひょんはのちに見事復活した時の3代目・青野ぬらりひょんに比べると、実年齢から言ってもいかにも老人然としています。当時、千葉さんは54歳で青野さんは49歳ですね。
 つまり、自分の悪事が大成功してのほほんと余生を送ろうとしていた老人ぬらりひょんが、にっくき鬼太郎に出逢ってしまい敗北のズンドコに落とされ、復讐の熱意のあまりに若返ってゼロからの「妖怪総大将」ロードの出発を始めるという起伏の激しいぬらりひょんサーガにおいて、迫力のある青野さんが最初からぬらりひょんではいけなかった! どうしても「火がつく前の」老人ぬらりひょんを演じてくれる声優さんが必要だったのであります!!

 現代に通じる妖怪総大将ぬらりひょん。そこには必ず、アニメ第3期序盤での「総大将らしくないアブラのぬけた千葉ぬらりひょん」という前提が必要不可欠だったのです!
 さっすがアニメ第3期。なんという巧妙な設定構成!


 まぁ……そんなことよりも、声優さんのスケジュール上の都合とか、「ぬらりひょんがそんなによく出てくるレギュラーになるとは当初思ってもみなかった。」とかいうスタッフさんの事情とかがあるんでしょうけどねぇ。
 実は3代目を担当する青野さんは、この千葉ぬらりひょんの活躍するアニメ第3期・第4話の前週にあたる第3話に悪役の「猫仙人」役として出演しており、
「2週つづけて同じ声優さんがジジイ妖怪を演じるのはちょっと……」
 という配慮もあったのではなかろうかと、勝手に私そうだいはふんでおります。子どもが混乱しちゃうから!


 さぁさぁ、アニメ第3期の第4話はだいたい原作どおりだったわけですが、ここからついに! やっと! 新生・青野ぬらりひょんのサクセスストーリーが始まるのでありましたっ。
 無二のパートナー・朱の盤も加わったぬらりひょんの「妖怪総大将への道」。

 これからいったい、どんなことになるのやら~!?
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妖怪総大将への道 ~ぬらりひょんサーガ 百鬼徒然袋ノ上~

2011年10月15日 13時56分36秒 | ゲゲゲの鬼太郎その愛
《前回までのあらすじじゃないです》
 今日から公開になった映画『電人ザボーガー』、おもしろそうだねぇ!
 これは必ずスクリーンで観よう。なんかボロボロ大泣きしながら歯を食いしばって楽しむことになりそう。


 1970年前後の数年間に水木しげる作品『ゲゲゲの鬼太郎』『悪魔くん』などの複数メディアでの大ヒットによって巻き起こった、昭和の「第1次妖怪ブーム」。
 それにのっかって名前を広めることに成功した妖怪ぬらりひょんだったのですが、伝承とマンガと図鑑本とでいまいちキャラクターが一致しないまま、「なんだかよくわかんない爺さん妖怪」というイメージどまりで最初のブームは過ぎ去ってしまいました。

 そして、それから10年以上の時がたった1985年。
 高度成長の果てに日本がたどりついたバブル期も本格的なものとなり、ちょっと前だったはずの1960~70年代さえもが、はるか昔か別の国のことでもあるかのように遠くなってしまったこの頃、「だからこそ!」日本古来の妖怪の恐ろしさや存在意義を復活させるべきだという動きが持ち上がったのです。

 そんな盛り上がりの中で生まれたのが、あの「歴代最も鬼太郎らしくない鬼太郎」、正義のスーパーヒーロー鬼太郎が邪悪な妖怪たちに闘いをいどんでいくアニメ第3期『ゲゲゲの鬼太郎』(1985年10月~88年3月 全115話)だったというわけなのです! うひょお~。
 いやーもう、この第3期こそが! 私そうだいがリアルタイムで観て楽しんだ『ゲゲゲの鬼太郎』なんでございますよ。ただ、残念ながら本物のガキンチョだったために第3期のオリジナルヒロイン「天童ユメコちゃん」の魅力は全然わからなかった……修行が足りぬ。

 前回シリーズの第2期から実に13年ぶりの復活となった第3期だったわけなのですが、純粋なる「水木しげる原作マンガの忠実なアニメ化」だった第1~2期と違って、第3期は多少複雑な作品設定となっています。

 第3期は、「バブル期日本を舞台にした『ゲゲゲの鬼太郎』物語のアップデートリメイク」。
 つまり、毎回起こる妖怪事件の大筋は原作と同じなのですが、妖怪が出現した背景や登場人物のキャラクター設定などに必ず1980年代当時の社会風潮が影響しているのです。たとえば、人間側の強引な土地開発のために妖怪が古くからの住みかを破壊されたとか、お受験戦争の毎日がイヤになった子ども達が妖怪の誘惑に負けて異世界にさらわれてしまうとか。
 こういった感じで全エピソードが放映当時の事件に書き換えられているため、アニメ第3期は、前回に紹介した原作マンガ第1~7シリーズやアニメ1~2期の内容とはパラレルな関係にあります。それらの過去の作品と時間軸でつながっているということではないんですね。

 今でも思い出しますね……第3期『ゲゲゲの鬼太郎』を目の当たりにした時の驚きといったら。

 私は当時、幼稚園を出るか出ないかの幼児だったわけなのですが、おぼえたての日本語力を駆使してその日の新聞のテレビ欄をながめていたところ、夕方の項目に「(新)ゲゲゲの鬼太郎」とあるのを発見しました。アニメ第3期の初回放映日は1985年10月12日なのですが、私の暮らしていた実家は山形県なので、もしかしたらもうちょっとあとの日だったのかも知れません。
 そのころから常に「講談社マガジンコミックス」版の『ゲゲゲの鬼太郎』をかたわらに置いており、レンタルビデオやTVの再放送でアニメ第1~2期の『鬼太郎』をビクビクしながら楽しんでいた私はてっきり、
「あぁ、またあの古いのの再放送をやるのかな。」
 と思いこんでコタツに入りながら放送の時間を待っていたのですが、オープニングが流れだしたのを観てまぁ~ビックラこいた。


 ダンツツダンッ! ひょお~チャラッチャーチャチャひょお~ダダツツダンッ、ひょお~チャラッチャーチャチャひょお~チャラララチャラララ、
「んゲッ、んゲッ、んゲッゲ~ゲんのっ、んゲェ~!!」


 な、なんだ、このビート&気合い入りまくりのヴォーカルは!? こんな打ち込みシンセバリバリの『ゲゲゲの歌』は、今までかれこれ5年生きてきたが、聴いたことがねぇ!

 また、オープニングアニメもカットバックがめまぐるしくてカッコイイ。明らかに過去のものではない、現代の高層ビル街を背景に雄々しくゲタをブッ飛ばす鬼太郎の勇姿を目撃して非常にドキドキしたのをおぼえています。
 吉幾三の歌声といいスピーディな画面構成といい、かつてのすべてのイメージを一新したあのオープニングにはイチコロになっちゃったねぇ。

 それに続いて始まった第1回の本編も、名エピソード『妖怪城』を現代にアレンジしたもので、マンガで前に読んだことがあるようでどこか新しい絶妙なバランス感覚には思わず「うむぅ……!」とうなってしまったことを記憶しています。幼稚園児だけど。


 ところで今回は、そういった感じで大幅にリニューアルされたアニメ第3期にいく前に! それとシリーズ化をあらそう形で企画された「実写特撮ドラマ版『ゲゲゲの鬼太郎』」に登場した妖怪ぬらりひょんのことを紹介していきたいと思います。

 今でこそしっかり定着している「鬼太郎=アニメ」イメージなのですが、実は1985年当時は、『ゲゲゲの鬼太郎』をもとにした新シリーズを始めるにあたって、制作会社の東映とそれを放映するフジテレビとのあいだで、「実写特撮ドラマ」にするか「アニメ」にするかの議論がなされていたというのです。
 まぁ結局は、上のとおりにフジテレビの主張する「アニメ」化案に落ち着いたわけなのですが、「スーパー戦隊シリーズ」や「仮面ライダーシリーズ」を擁する日本特撮界の大看板・東映は当時、1982年の『宇宙刑事ギャバン』から続いていた「宇宙刑事シリーズ」を大ヒットさせており、その流れで、バトルヒーロー鬼太郎がゴテゴテの着ぐるみで立体化した悪の妖怪たちをビームサーベルみたいな武器や火薬系攻撃で退治していく(闘う場所は、もちろん採掘場!)アクションものとしての『ゲゲゲの鬼太郎』リメイクを推していたのです。

 そうなってたら……どうなってたんでしょうね。まぁ、今みたいな幅広い「鬼太郎カルチャー」はおそらくできなかったでしょう。

 ただ、ここで却下されたからといって「鬼太郎物語の実写化」がなくなったというわけではなく、東映は単発ドラマという形で、アニメ第3期にさきがけた1985年8月(アニメ放映開始の2ヶ月前)に、フジテレビの『月曜ドラマランド』(夜7時30分~9時)の中で実写バトルアクション版『ゲゲゲの鬼太郎』を制作することとなりました。『月曜ドラマランド』は先月の『おれがあいつであいつがおれで』特集にも出てきましたが、要するにおニャン子クラブなどの当時のアイドルタレントさんたちが出演するゆる~い感じの単発ドラマを毎週放送していくという番組枠でした。

 ここで放映されたのが史上初の「実写版『ゲゲゲの鬼太郎』」だったわけなのですが、主人公の鬼太郎役を演じたのは子役俳優で、人形で立体化された目玉の親父役はアニメ版と同じ田の中勇。他のキャスティングとしては、ねずみ男役を若き日の竹中直人(29歳)、砂かけ婆役を「おしゃまんべ。」の由利徹(64歳)が演じたことでも有名な作品となっています。
 
 この作品が「史上初の実写化」と同時に重要なのは、「悪の妖怪たちを率いるラスボスぬらりひょん」が史上初めて登場した作品だった、ということなのです!

 以上のような経緯で、東映の「バトルヒーロー路線」の文法にのっとって制作された実写版のストーリーは完全なオリジナル展開で、脚本は『ルパン三世 カリオストロの城』を手がけたことで有名なアニメ・特撮界のベテラン山崎晴哉が担当しています。
 そして、「バトルヒーローなら強力な悪役がいなきゃあねぇ。」ということで物語のラスボスとなったのが我らがぬらりひょん!

 実写版での彼は、ふだんは人間のセクシーな美女(演・夏樹陽子 32歳)に変身して進学塾「ぬらり塾」を経営しており、通ってくる子どもを洗脳して人間界の侵略をねらう凶悪妖怪に設定されています。前回は「校長」だったし、教育関係が得意なのか?
 と同時に、ぬらりひょんは「吸血鬼エリート(演・佐渡稔)」「おっかむろ(大首)」「あみきり」「見越し入道」といった強豪妖怪も使役しており、まさしく「妖怪の親玉」としての面目をかちえています。

 そういった悪事が鬼太郎に露見したあと、ぬらりひょんは本来の「和服にヘンな頭」の正体をあらわすわけなのですが、この作品ではまさにバトルアクションもののボスキャラといった感じで、おじいちゃんとは思えない身のこなしで激しい殺陣をズビズバこなしながら日本刀から怪光線をビカビカ撃ちまくって鬼太郎と激闘を展開する若々しさを見せてくれています。正体を現した時のぬらりひょんの声を演じたのは、壮年の悪人の危険さのただよう桑原たけし(48歳)でした。カッコイイ。
 この作品でのぬらりひょんは、その頃に水木しげるによってイラスト化された「ニヤリとほくそ笑みながら民家に入ってくる、ダンディで怖い面構えのぬらりひょん」を忠実に立体化した特殊メイク造型で、かつて基本的にどの作品にでも反映されていた鳥山石燕の『画図百鬼夜行』でのニヘラ~っとした緊張感のない「ぬうりひょん」とはまるで似ても似つかない風格を持っています。実は、ここで登場した「ダークぬらりひょん」こそが現在に伝わっているぬらりひょんイメージの中心をなすものなんですよねぇ。


 このように、アニメ第3期に先行して「勧善懲悪もの」設定を導入した『月曜ドラマランド』版で、水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』の世界観とはまっっっったく関係のない文脈によって「悪の親玉」として復活してしまった妖怪ぬらりひょん。

 21世紀の現在にいたる「妖怪総大将ぬらりひょん」の本当のサクセスストーリーはここから始まった!!
 次回はいよいよ、そんな実写版初代ぬらりひょんのイメージを継承して、満を持して登場したアニメ第3期版のぬらりひょんのご登場だ~い。

 あれ、最初だけ、声が青野武さんじゃない……
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