長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

総大将っていうか校長 ~ぬらりひょんサーガ 百鬼拾遺・雨~

2011年10月13日 13時45分25秒 | ゲゲゲの鬼太郎その愛
《前回までのあらすじ》
 昭和の「第1次妖怪ブーム」のどさくさにまぎれていつの間にかキャラクターを完成させた妖怪ぬらりひょん。
 しかし、そんな彼がぞんぶんに活躍する機会は、昭和も終わりにさしかかった1980年代なかばの「第2次妖怪ブーム」までなかった……
 2つの妖怪ブームの谷間に位置する1970年代後半、ぬらりひょんはどんな動きを見せていたのだろうか!?


 『ゲゲゲの鬼太郎』はいろんな出版社の雑誌で何回も長期連載されたり書き下ろしの単発長編の形で出版されたりと、現在にいたるまでにかなり多くのシリーズが描かれています。
 猫娘に子泣き爺や砂かけ婆といったアニメおなじみの顔がいっさい登場しないシリーズもけっこうあるんですよ。

 ここで、偉大なる「ゲゲゲの鬼太郎サーガ」の歴史をならべてみましょう。
 便宜上、ここでは「第~シリーズ」という表記を使用しますが、これは水木プロダクションの公式見解ではなく私そうだい個人のナンバリングしたものです。あしからず。


第1シリーズ 貸本『墓場鬼太郎』(1960~64年 全15話)
第2シリーズ 『週刊少年マガジン』版(1965年8月~69年7月 全131話)
第3シリーズ 『週刊少年サンデー』版(1971年9~12月 全14話)
第4シリーズ 『鬼太郎の世界お化け旅行』(1976年1~8月 全16話)『隔週刊少年アクション』連載
第5シリーズ 『続 ゲゲゲの鬼太郎』(1977年7~12月 全23話)『週刊実話』連載
第6シリーズ 『新 ゲゲゲの鬼太郎』(1978年1~12月 全46話)『週刊実話』連載
第7シリーズ 『雪姫ちゃんとゲゲゲの鬼太郎』(1980年8月~81年6月 全11話)『月刊少年ポピー』連載
第8シリーズ 『新編 ゲゲゲの鬼太郎』(1986年5月~87年9月 全52話)『週刊少年マガジン』ほか連載
第9シリーズ 『鬼太郎国盗り物語』(1990年11月~93年3月 全28話)『月刊コミックボンボン』ほか連載
第10シリーズ 『鬼太郎霊団』(1996年2月~97年3月 全3話のみ)『月刊ビッグゴールド』ほか連載


 もちろん、この他にも貸本版を水木しげる自らがリメイクした『月刊ガロ』連載の『鬼太郎夜話』(1966年3月~68年4月 全23話)シリーズがあったり、『鬼太郎のベトナム戦記』(1968年)や『ゲゲゲの鬼太郎 死神大戦記』(1974年)といった長編ものもあるわけなので、上の10シリーズだけがサーガのすべてではないのですが、まぁこんな感じなんですよ。
 世間の「第1次妖怪ブーム」にあたっていたのが「鬼太郎サーガ」の第2~3シリーズで、「第2次妖怪ブーム」にあたるのが第8シリーズであるわけなんですね。

 そして、今回ふれるのは第6シリーズ『新 ゲゲゲの鬼太郎』なんですが、実はここまでにいたるシリーズでは、主人公の鬼太郎少年の身に重大な特徴があったのです!

 ゲゲゲの鬼太郎はちゃんとスクスク成長していた! 第6シリーズの途中まで。

 今でこそ「永遠の少年」みたいな感じで売っている鬼太郎少年なのですが、実はリアルタイムで人間同様に歳をとっていたのです。
 よく見なおせば、貸本での鬼太郎少年はけっこう赤ちゃんの気配も残した幼さがあり(それは「ノイタミナ」でアニメ化された時にもよく再現されています)、シリーズが進むにしたがって、じわじわと鬼太郎の背が高くなってきていることが見てとれるのです。わたくし個人としては、ある程度反抗期も入って不良ぶっていた第3シリーズのころが好き。
 ただ当然ながら、目玉の親父やねずみ男といった鬼太郎以外の妖怪ファミリーの面々はまったく変化していません。そりゃあ何百年も生きてますからね。

 で、ついに第5~6シリーズにいたると鬼太郎少年は鬼太郎「青年」となり、なんと先祖伝来の黒と黄のしましまの「霊毛ちゃんちゃんこ」をセーターに編みなおし、人間社会で「田中ゲタ吉」と名乗って下宿住まいをしながら、妖怪のために妖怪が運営する「墓の下高校」に通学しているのです! お化けに学校、あったんだ……
 そして、あの鬼太郎が思春期らしいエロエロなエピソードにまみれて異様に俗っぽい大人の階段をのぼっていくというせつない物語が展開されていくわけなのですが、この辺の抱腹絶倒のお話の数々は、ぜひとも近年に単行本化された角川文庫版の『ゲゲゲの鬼太郎 青春時代』(第5シリーズ)と『ゲゲゲの鬼太郎 スポーツ狂時代』(第6シリーズの前半部分)をお手にとっていただきたいと思います。「妖怪作家」だけではない、「ハイセンスギャグマンガ家」としての水木しげるの真骨頂が、そこに!!

 ところが。
 そんな「鬼太郎リアル成長」設定は、第6シリーズの連載中に急にガチャッとリセットされてしまい、今回紹介する『野球狂の巻』エピソード(1978年3~6月 全13回)が終わった翌週から、まるで何事もなかったかのように「小学生くらいの体型でちゃんちゃんこを着た鬼太郎少年」の活躍する一話完結の連載に戻ってしまったのです!
 なにゆえ突然……水木先生、飽きた?
 とにもかくにも、この時のリセット&『サザエさん』システムの導入が正しい決断だったことは歴史が証明しているわけなのですが、あのまま大人になっていく鬼太郎も見たかったような。

 んでんで! やっと本題に入るのですが、我らがぬらりひょん先生の2度目の原作マンガ登場は、この「成長する鬼太郎」物語の最後のエピソードとなる『野球狂の巻』でのこととなるのです。
 そういえば、初アニメ化でメジャーになる直前の『墓場の鬼太郎』ラストの敵もぬらりひょんだったし、高校生にまで成長した鬼太郎青年のラストの敵もぬらりひょん……またしても深い因縁を感じさせる関係です。

 ここでのぬらりひょんは、鬼太郎の通っている「墓の下高校」の校長として登場しており、黒の羽織袴を着こなした落ち着きのある教育者の風貌をしています。
 しかし、顔つきは第2シリーズのぬらりひょんとはまったく別人のものとなっており、鬼太郎とも過去になにかあったような感情のやり取りはありません。単なる生徒と校長の関係。やっぱり連続爆弾テロをはたらいていたあのぬらりひょんとは別人のようです。やや若いか? ハゲてるけど。

 ぬらりひょん校長は、表向きは鬼太郎の所属する「墓の下高校野球部」の甲子園出場を応援しているだけなのですが、実はそれに乗じての人間界の支配をもくろんでいるという「悪の顔」が後半に発覚します。
 そして、そのあたりの企てを察知した&高校生活がイヤになっていた鬼太郎の必殺技「地獄流し」によって、ぬらりひょん校長と墓の下高校全職員全校生徒は丸ごと地獄に追放されてしまいます。鬼太郎、怖い!
 ちなみに、鬼太郎はその時に親友であるはずのねずみ男もついでに地獄に流しているのですが、「あいつはそのうち戻ってくるだろう。」と軽くながしていました。なんという関係……ねずみ男はドMなのか?


 こんな感じでぬらりひょん2度目の登場は、「妖怪ぬらりひょん」というよりは「悪徳校長」としての役回りしか与えられませんでした。そしてまた完敗。
 ただ、ここで見逃してならないのは、史上初めてぬらりひょんが「多くの妖怪(職員・生徒)を統率する」立場にたったということなのです! あと、マンガの世界で和服を着たのも初めて。

 総大将じゃないけど、リーダーシップをとる妖怪としてのぬらりひょんを見いだしたのは、やっぱり水木しげるだったのか……神。

 ここにきて、「妖怪総大将」の地位をうかがうことのできる貫禄を手に入れたぬらりひょん! 時は来たれり。

 さぁ~いよいよ次回は吉幾三の歌声が耳にこびりつくアニメ第3期の時代だ~い。
 なつかし……
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いつの間にかキャラ完成!? ~ぬらりひょんサーガ 百鬼拾遺・霧~

2011年10月11日 22時35分57秒 | ゲゲゲの鬼太郎その愛
《前回までのあらすじ》
 そうだいはここ数日、忙しかったりうまくいかないことがあったりして調子が悪かったのだが、「給料日」「亀井絵里写真集」「1人カラオケ」「美女からのステキなお言葉」の黄金カルテットによってみごと回復した!
 いんや~。女性はおそろしい。ありがとうござ~い。


 ひさかたぶり、妖怪ぬらりひょんのお話の続きでございます。

 あのーみなさん、「ぬらりひょんって、どんな妖怪?」と気になってネットや図鑑で調べてみると、たいていのものでこういった記述が出てきませんか。


「忙しい夕方時などに、どこからともなく家に入ってきて、お茶を飲んだりするなどして自分の家のように振舞い、人間が見ても『この人はこの家の主だ』と思ってしまうため、追い出すことができない。妖怪の総大将ともいわれる。」


 要するにですね、ここで説明されている妖怪ぬらりひょんは、「人が複数いる空間でいつの間にか、誰だかわからない人が増えている」という、なんとなく誰もが体験したことのある「ちょっと不思議な感覚」を擬人化した存在になっているのです。
 まぁ、こんなものはつきつめれば「自分が知らないだけの誰かの知り合い」だったり「その人が場所を間違えてまぎれ込んだだけ」だったりするわけで、「あっ、知らない人がいる。」と気づいた人がいても、その見知らぬ人が特別に変な行動をとらないかぎり、あえてそこを踏み込んで「なんだチミは!?」と詰問する『だいじょうぶだぁ』のマーシーのような人はあまりいないわけです。

 現代の日本では、ほとんどの地域でちょっと外を歩けば知らない人に出会うことができるわけなのですが、交通手段が圧倒的に不便だったり、村の中での数十人ほどの共同生活で一生を暮らせたりしていた江戸時代の(大都市をのぞいた)おおかたの地域では、「エイリアン(外来者)」は今よりもはるかに異質な存在だったということなのでしょうか。
 ただ、知らない人がいても気にならない現代にぬらりひょんの存在意義はもはやないのかというとそうでもなさそうで、そんな人口過多の時代だからこそ、ふと少人数になった時に感じる「あれ、人増えてる……」の恐怖は倍増するみたいで。
 ぬらりひょんはただ家にあがりこんで飲み食いするだけなのですが、子どもが外で遊んでいるうちに人数が増える「座敷わらし」や、まっ暗な部屋の隅に散らばって1人ずつ移動する運動をしているうちにギャ~!となる「雪山の避難小屋」怪談なんかは同じ系統でも怖い方向によったやつなんじゃないかしら。


 さて、こんな感じでほとんどの紹介記事でぬらりひょんのいちばんメジャーな活動内容になっている「いつの間にかいる」属性なのですが、この要素は何回か続けてきた今までの「ぬらりひょんサーガ」には、いぃ~っさい!登場してきておりません。
 つまり、ぬらりひょんが誕生したと思われる江戸時代から、『ゲゲゲの鬼太郎』による「第1次妖怪ブーム」の巻き起こる直前にいたるまで、「いつの間にかあなたの家にぬらりひょんが!」なんていう設定はまったく存在していなかったのです。
 だとしたら、現在まことしやかに語られている、このぬらりひょんパズルを補完する「最後にして最大の1ピース」がどうやって生まれたのかというと、これこそが「第1次妖怪ブーム」のたまものだったというわけなんですねぇ!

 「都市にいる頭の長い爺さん」「ウソが得意」「妖怪の親玉」「百鬼夜行にいる」といったピースのほとんどが根拠不明なぬらりひょんなのですが、最後に登場した「いつの間にか家にいる」もまた、どうやら鳥山石燕の『画図百鬼夜行』にいる「ぬうりひょん」の絵の印象から、それを見た昭和のライターさんがたが類推して創作しただけの情報のようなのです! テキトーか!?

 戦後に到来した妖怪ブームによって、怪獣やポケモンのように「この妖怪ってどんなことするヤツなの? 武器は? 弱点はぁ~?」というデータ渇望状態におちいった全国のガキンチョにこたえるべく、多くの「妖怪図鑑」というふれこみの児童書が出版されていったわけなのですが、その中で「ぬらりひょん」の項目にまさしく「いつの間にか」書き加えられた情報こそが!「いつの間にか」属性だったのです。ぬらりひょんらしい~!!

 当時のおもな「いつの間にか」資料にはこんなものがありました。


『墓場の鬼太郎・大妖怪ショッキング画報』(『週刊少年マガジン』で1967年6月に掲載された特集記事)
 文章を執筆したライターは不詳
 イラストと短い文章で83体の日本の妖怪が紹介されている(その時点では『鬼太郎』未登場のものも多い)
 ぬらりひょん(本編登場の4ヶ月前)も『画図百鬼夜行』の「ぬうりひょん」をアレンジしたイラストで紹介されており、「いそがしい夕ぐれどきに、ぬらりひょんと、みょうなものが家にはいってくる。あとでさがしてもいない。」という解説文がある
 ※これが史上初の「いつの間にか」解説?

『いちばんくわしい日本妖怪図鑑』(1972年 立風書房ジャガーバックス)
 作家の佐藤有文(さとう ありふみ 1939~99)の執筆
 子供向けの妖怪図鑑
 ぬらりひょんを「年の暮れで多忙な家に勝手に上がりこんで座り込む。」と解説

『おばけ文庫』(1976年 太平出版社)
 作家の山田野理夫(やまだ のりお 1922~)が執筆
 子供向けの妖怪図鑑
 ぬらりひょんを「和歌山県の山中に住む妖怪で、山家が忙しい日暮れ時に人家に現れる。」と解説


 だいたいこんなあたりが、当時の子どもたちに圧倒的なスピードで浸透していったんですなぁ。そして、あっという間に「ぬらりひょんはいつの間にか家に入ってくる妖怪」というメインイメージが定着してしまったのです。
 だからこそ、同じ「第1次妖怪ブーム」につくられた作品であるのにもかかわらず、水木しげるの『墓場の鬼太郎 妖怪ぬらりひょん』や映画の「大映妖怪3部作」シリーズに登場するぬらりひょんには「いつの間にか」属性はいっさい導入されていなかったのです。それらのあとにできた属性なんだから。そして、このブームの去ったあとに創作された『地獄先生ぬ~べ~』や『ぬらりひょんの孫』のぬらりひょんには「いつの間にか」属性が当ったり前のように取り入れられているというわけ。

 ぬらりひょんのイメージはつい最近(昭和後期)に「いつの間にか」できあがっていた!
 実のところ、1970年代に出版されたこれらの「妖怪図鑑」の再版本をバイブルのようにかかえて育ってきた私そうだいも、長い間ぬらりひょんの「いつの間にか」属性は江戸時代の昔から伝わっている歴史のある情報かと思っていたのですが……完全にだまされていました。
 でも、これをもってぬらりひょんの「いつの間にか」属性がでたらめだとはもはや言えないわけです。だって、それをもとにしたぬらりひょんイメージが現代にこうやって浸透してしまっているわけですからね。出自の正当性なんかどうでもいいという、実力本位・結果オーライの姿勢こそが「伝承されてナンボ」の妖怪のたくましさなんですなぁ~。変幻自在とはまさにこのことです。

 それにしても、『おばけ文庫』の「和歌山県出身」情報はなに根拠なのだろうか……瀬戸内海出身だと思うんだけどなぁ。

 こうやって出そろった現代におけるぬらりひょんパズルの全ピースだったのですが、それらを反映したぬらりひょんの活躍は、「第1次妖怪ブーム」が落ち着いて以後、1980年のバブル期にアニメ第3期『ゲゲゲの鬼太郎』の大ヒットによって再来した「第2次妖怪ブーム」以後のこととなります。
 いよいよ青野武ぬらりひょんのご登場だ~! 長かったネ。

 次回はですね、その「第1次」と「第2次」とのブームの谷間に、ひょっこりとあだ花のように再登場した「ヘンな顔のぬらりひょん校長」の紹介からいきたいと思います。

 みなさん、水木しげる先生のゲゲゲの鬼太郎は、実は高校生くらいまでリアルタイムに成長していたって、ご存じですか~?
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ついに動いた!

2011年10月09日 23時12分43秒 | アニメらへん
 てぇへんだ、てぇへんだぁ~い!!

 とにかくこいつを見とくれっ。


『ルパン三世』最新作は新声優で! 銭形警部の声優に山寺宏一! 峰不二子、石川五ェ門も一新!
 (シネマトゥデイ 2011年10月9日付の記事より)


 9日、人気アニメシリーズ『ルパン三世』最新作『ルパン三世 血の刻印 ~永遠のMermaid~』の製作発表記者会見が都内スタジオで行われ、主要キャラクターである銭形警部、石川五ェ門、峰不二子の新キャストが発表。銭形警部には「七色の声を持つ男」と呼ばれている山寺宏一(50歳)が、石川五ェ門には浪川大輔(35歳)、峰不二子には沢城みゆき(26歳)が、それぞれの声を演じることになった。銭形警部役を担うことになった山寺は、
 「小学生のころから大好きだった作品。うれしい半面、怖さもある。」
 と、やや緊張の面持ちで感想を語った。会見にはルパン三世役の栗田貫一(53歳)、次元大介役の小林清志(78歳)も出席した。

 1971年より放送開始されたテレビアニメ『ルパン三世』シリーズは、今年で区切りの40年を迎えた。そのメモリアルとなる一作が『ルパン三世 血の刻印 ~永遠のMermaid~』だ。前作から1年10ヶ月ぶりとなる本作では、主要キャラクターである石川五ェ門、峰不二子、銭形警部がキャストを一新。物語に重要な役割を果たす登場人物だけにその担当声優に注目が集まったが、銭形警部には山寺宏一、峰不二子には沢城みゆき、石川五ェ門には浪川大輔がキャスティングされた。銭形警部の声を演じる山寺は、
 「(これまで銭形警部の声を演じていた)納谷悟朗さんを尊敬していたので、オーディションの話があったとき、自分でいいのかと思いました。自分の個性を出すという考えもありますが、あんまり違う銭形になったら自分自身も嫌なので、なるべく今までの銭形に近づけるようにしたい。自分らしさは二の次です。」
 と恐縮しきり。

 また、峰不二子を演じる沢城も、
 「いろいろな面を持つ不二子ですが、すべて(これまで峰不二子を演じていた)増山江威子さんが演じているので、自分なりの何かというより、峰不二子の美しさをたくさん引き継いでいきたい。」
 と意欲を見せる。
 石川五ェ門役の浪川は、
 「オーディションは記念受験の気持ちで受けたので、まさか自分がという気持ちがありました。五ェ門は言葉数が少ない役ですが、奥の深いキャラ。人気作のプレッシャーはありますが、全力で打ち勝ちたいと思います。」
 と力強くコメントした。

 そんな新キャストに、ルパンの声をつとめる栗田は、
 「これまでの歴史があるので、新キャストの方々は『オリジナルと違う』と言われることもあるだろうから、大変だと思います。」
 と気遣い、勇気づける場面も。新生ルパン三世のチームワークの良さがうかがえるシーンだった。

 本作は2010年2月に放映された『ルパン三世 the Last job』以来1年10ヶ月ぶりとなる新作。峰不二子を人質にして幻の宝「人魚の鱗」をルパンに盗ませた、裏社会を牛耳る女・藤堂。その藤堂も何者かに殺され、謎の残る事件にルパンたちが挑む姿をスリリングに描いている。
 『ルパン三世 血の刻印 ~永遠のMermaid~』は12月2日(金)21時から日本テレビ系で放送。 (文・磯部正和)


 いやぁ……ついに山、動いたね。

 いろいろと頭に浮かぶことはあるのですが、まずは制作スタッフ陣の果断な決定を讃えさせていただきたいと思います。
 まずは観てみようじゃあーりませんか!! 新生ルパン一味ととっつぁん!

 久しぶりにTVが観たくなっちゃったぜ……でも、思うところあって12月初旬に新しいパソコンを購入するつもりはないので、誰か知り合いの家にお邪魔して拝見させていただいちゃおうかしら。


 ちょっとね、今は『ゲゲゲの鬼太郎』に夢中になってるところですんで、『ルパン三世』関連の話題はほどほどにしておきたいと思います。頭の中のキャラクターの頭身設定がグッチャグチャになっちゃうから。

 ということで、今回はおまけに担当声優さん+俳優さんの資料だけをあげておいてお茶をにごしま~す。


アニメ『ルパン三世』 悠久の俳優列伝(2011年10月時点)

ルパン三世(年齢不詳)
1、山田 康雄(1971年10月~1994年7月 39~61歳)
 ※TVシリーズ3作・劇場版3作・TVスペシャル6作
2、目黒 祐樹(1974年8月 27歳)
 ※実写劇場版『ルパン三世 念力珍作戦』
3、古川 登志夫(1987年12月 41歳)
 ※劇場版『ルパン三世 風魔一族の陰謀』(当初はOVAとして制作)
4、栗田 貫一(1995年4月~ 37歳~)
 ※劇場版2作・TVスペシャル16作・OVA2作
その他、1969年のパイロット版で野沢那智(31歳)、1971年のパイロット版で広川太一郎(31歳)が担当

次元 大介(年齢不詳)
1、小林 清志(1969年~ 36歳~)
 ※パイロット版から『念力珍作戦』と『風魔一族の陰謀』をのぞく全作品を担当!
2、田中 邦衛(1974年8月 41歳)
 ※『念力珍作戦』
3、銀河 万丈(1987年12月 39歳)
 ※『風魔一族の陰謀』

石川 五右ェ門(年齢不詳 アニメ版の「五ェ門」表記じゃなくて、原作マンガ版の表記にさせていただきます)
1、大塚 周夫(1971年10月~72年3月 42歳)
 ※TVシリーズ1作
2、井上 真樹夫(1977年10月~2010年2月 36~69歳)
 ※TVシリーズ2作目以降、『風魔一族の陰謀』をのぞく全作品を担当
3、塩沢 兼人(1987年12月 33歳)
 ※『風魔一族の陰謀』
その他、1969年のパイロット版で納谷悟朗(40歳)、1971年のパイロット版で小林修(36歳)が担当
(実写劇場版『念力珍作戦』には登場していない)

峰 不二子(年齢不詳)
1、二階堂 有希子(1971年10月~72年3月 31歳)
 ※TVシリーズ1作
2、増山 江威子(1969年~2010年3月 33~73歳! まことにお疲れさまでございました……)
 ※パイロット版からTVシリーズ1作目、『念力珍作戦』、『風魔一族の陰謀』をのぞく全作品を担当
3、江崎 英子(1974年8月 23歳)
 ※『念力珍作戦』
4、小山 茉美(1987年12月 32歳)
 ※『風魔一族の陰謀』

銭形 幸一(年齢は「戦中派=だいたい1920年代生まれ」「昭和ヒトケタ=1926年12月25日~1934年12月31日生まれ」「1937年12月25日生まれ」「大学時代はルパン三世の3学年先輩」などと諸説ある)
1、納谷悟朗(1971年10月~2010年2月 41~80歳!)
 ※TVシリーズ1作目から『念力珍作戦』『風魔一族の陰謀』をのぞく全作品を担当
2、伊東 四朗(1974年8月 37歳)
 ※『念力珍作戦』
3、加藤 精三(1987年12月 60歳)
 ※『風魔一族の陰謀』
その他、1969年のパイロット版で近石真介(38歳)、1971年のパイロット版で大塚周夫(42歳)が担当


 いやぁ~……まさしく錚々たる面々。

 つらつら眺めてみてわかるのは、「ルパン一味は30歳をすぎてナンボ!」ってことですよね。どんなにバカな追っかけあいをしていても、芯にはしっかりした実力が通っていなくてはならないと。
 記事ではかなり増山さんを意識した発言をなされている新不二子役の沢城さんなのですが、実はアニメの世界で「20代の峰不二子」が活躍するのは史上初なんですね! だったら、20代の沢城さんなりの、若くて新しいふ~じこちゃ~んをドーンと始めちゃったらいいんじゃないでしょうか。

 クリカンさん、もう15年以上ルパンやってんのねぇ。あと10年くらいやり続けたら、実年齢もルパン歴も山田さんをこえることになるのね……
 今回のリニューアルの反響次第によっては、まさかの「クリカンのTV第4シリーズ」が始まっちゃったりなんかしちゃったりして~!?

 それじゃあ、『ルパン三世』関連の話題はそのうち、まったいっつか~。
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ふ~ん、秋

2011年10月08日 22時44分06秒 | 日記
 ハイど~ぉもー。そうだいでございますよ。
 秋ですねぇ。夜になると寒いねぇ~。そろそろ電気ストーブも引っぱり出しますか。みなさま、カゼもひかずにお元気でいらっしゃいますでしょうか?

 最近ず~っとぬらりひょんぬらりひょん言い続けているんで、今回は一息つきましょう。


 今日ね、けっこう久しぶりに舞台を観てきました。ミュージカルですね。

『中野ブロンディーズ』(作・金房実加 演出・大岩美智子)

 いやー……チラシ持たないで行っちゃうと、東京・池袋のサンシャイン劇場は場所がわかんないわかんない。思ったよりも迷ってしまいました。

 言わずと知れたAKB48。その中でも屈指の歌唱力とうたわれ、今年の第3回総選挙で満を持しての初当選を果たした増田有華(ゆか)さん主演のミュージカルです。
 出演者には、他にもSDN48の梅田悠(はるか)さん、浦野一美さん、SKE48の原望奈美(みなみ)さん、9nine(ナイン)の西脇彩華(さやか)さんといった現役アイドルの面々が出演されています。うおお。

 私がこの『中野ブロンディーズ』を観たのは2回目で、最初に観たのは3年前。2008年の12月に上演された新国立劇場小劇場での再演でした(初演は同年3月)。
 また2回も観るのはなぜかと言いますと、この作品に歴代ずっと同じ役で出演されている女優の中島愛子さんが好きだからなんですね。

 3年前とキャスティングが大幅に変わっている『中野ブロンディーズ』なのですが、相変わらず楽しいストーリーや中島さんの役どころは時の流れを感じさせない魅力にあふれていました。実は作品そのもののおもしろさの他にも、こういったものを観ながら、3年前に同じ舞台を観た時の私と今現在の私とで、変わったことと変わっていないことに思いをはせて不思議な気持ちになる……これも楽しいんですよ! まさに再演の舞台を観る醍醐味。

 サンシャイン劇場は客席およそ800ですが、ほぼ満員となった中には親子で来るお客さんも多かった! ここらへんが天下のAKB48パワーということなんでしょうか。3年前に観たときはおたくっぽい空気に満ちてたから、私も含めて。

 そういえば、『中野ブロンディーズ』はアニメ、ゲーム、歴史などそれぞれの分野のおたく少女たちが集まってチアリーディングに挑戦するという内容なのですが、私の前の座席に30歳前後のお母さんと小学校低学年の娘さんの2人づれがいて、セリフの中でアニメおたくの役が『機動戦士ガンダム』ネタを言ったときにお母さんが爆笑して、ゲームおたくの役が『ドラクエ』ネタを言った時に娘さんが「キヒヒヒヒ。」と笑っていたのはよかったね。
 「あえて言おう、カスであると!」でカラカラと笑うお母さん……日本もついにここまできたか。

 『中野ブロンディーズ』はサンシャイン劇場公演のあと、初の神戸公演もおこなうとか。
 中島さん、明日も昼夜2回がんばってくだしゃ~い。


 話題はまるっと変わりますが、ネットでこんな記事が。


映画史に残る悪役50人選出(映画.com 2011年10月7日付の記事より)


 アメリカの『エンターテインメント・ウィークリー』誌が、史上最高(最悪)の悪役キャラクター50人を発表した。
 第1位に選ばれたのは、『スター・ウォーズ』シリーズのダース・ベイダー。人間以外の架空のキャラクターとしては、おそらく最も有名な悪役だろう。また俳優別では、レイフ=ファインズとケビン=スペイシーがともにトップ20に2本ランクインされている。トップ20は以下の通り。

1、ダース・ベイダー 『スター・ウォーズ』シリーズ(1977~2005年)
2、ハンニバル=レクター(アンソニー=ホプキンス)&バッファロー・ビル(テッド=レビン) 『羊たちの沈黙』(1991年)
3、アーモン=ゲート(レイフ=ファインズ) 『シンドラーのリスト』(1993年)
4、ノーマン=ベイツ(アンソニー=パーキンス) 『サイコ』(1960年)
5、レザーフェイス(ガンナー=ハンセン) 『悪魔のいけにえ』(1974年)
6、カイザー=ソゼ(?) 『ユージュアル・サスペクツ』(1995年)
7、フレディ=クルーガー(ロバート=イングランド) 『エルム街の悪夢』(1984年)
8、ヴォルデモート(レイフ=ファインズ) 『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』(2011年)
9、カーン=ノニエン=シン(リカルド=モンタルバン) 『スター・トレック2 カーンの逆襲』(1982年)
10、ゴラム(アンディ=サーキス) 『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ(2001~03年)
11、T-1000(ロバート=パトリック) 『ターミネーター2』(1991年)
12、ダミアン(ハーベイ=スティーブンス) 『オーメン』(1976年)
13、ハンス=グルーバー(アラン=リックマン) 『ダイ・ハード』(1988年)
14、フランク=ブース(デニス=ホッパー) 『ブルーベルベット』(1986年)
15、アントン=シュガー(ハビエル=バルデム) 『ノーカントリー』(2007年)
16、ジョン=ドゥー(ケビン=スペイシー) 『セブン』(1995年)
17、西の悪い魔女(マーガレット=ハミルトン) 『オズの魔法使』(1939年)
18、ジャック=トランス(ジャック=ニコルソン) 『シャイニング』(1980年)
19、クルエラ=デ=ビル 『101匹わんちゃん』(1961年)
20、アニー=ウィルクス(キャシー=ベイツ) 『ミザリー』(1990年)


 あの~……この記事をよく読むと、ある映画の重大なネタバレになるんですけど。

 アメリカの雑誌なんだから当たり前ですけど、日本人には興味深いランキングになってますよねぇ。
 スペイシーさんとファインズさんが2回ランクインっていうのがおもしろいですね。意外とギラギラしてない人が悪役に重宝される時代なんですかねぇ。

 こんなの出されたら我が『長岡京エイリアン』も受けて立たなきゃねぇ! ということで。


 そうだいのパッと思いつく悪役20傑(順位づけはできません、恐いから!)

・足利義昭(本人)
・映画『帝都大戦』(1989年)の加藤保憲(嶋田 久作)
 ※映画の内容は語るまでもないけど嶋田さんだけ必見
・アニメ『機動戦士ガンダム』(1979~80年)のマ=クベ(塩沢 兼人)
・映画『ダーティハリー』(1971年)のスコルピオ(アンディ=ロビンソン)
・アメコミ『キリングジョーク』(1988年)のジョーカー
・松永久秀(本人)
・江戸川乱歩の小説『蜘蛛男』(1930年)の蜘蛛男
・映画『八つ墓村』(1977年版)の真犯人
 ※あんな人に洞窟で追いかけられたくねぇ~
・アニメ『機動戦士Zガンダム』(1985~86年)のハマーン=カーン(榊原 良子)
・映画『バットマン』(1989年)のジョーカー(ジャック=ニコルソン)
・NHK大河ドラマ『独眼竜政宗』(1987年)の最上義光(原田 芳雄)
 ※山形県出身としてはほめてる場合じゃないんですが……山形城の照明暗っ!
・クリストファー=リー演じる吸血鬼ドラキュラ伯爵
・アニメ『機動戦士ガンダム』のシャア=アズナブル(池田 秀一)
・俳優の成田三樹夫さんがやってた役ほとんど全部
・時代劇ドラマ『子連れ狼 第3部』(1976年)の阿部頼母(金田 龍之介)
・映画『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964年)の宇宙大怪獣キングギドラ
・特撮ドラマ『ウルトラマンA』(1972~73年)の異次元人ヤプール
・映画『スカーフェイス』(1983年)のトニー=モンタナ(アル=パチーノ)
・クレメンス=メッテルニヒ(本人)
そして……
・やっぱりアニメ第3期『ゲゲゲの鬼太郎』(1985~88年)のぬらりひょん(青野 武)!!


 世界がせまいよ! でも、好きなものは好きなんだからしょうがない。
 もっと他にも、映画『ゴッドファーザー パート2』(1974年)のデニーロとか映画『風の谷のナウシカ』(1984年)のクロトワとか原作版『ナウシカ』(1982~94年)の神聖皇帝ナムリスとかいっぱいいるんですが、やっぱり20人となるとすぐに埋まっちゃいますね。


 ということで、次回からはまた「悪の華」ぬらりひょんにお話もどりま~っす。
 キンモクセイにむせる秋。みなさまもお体すこやかに~。
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昭和妖怪ブームのかげで ~ぬらりひょんサーガ 百鬼拾遺・雲~

2011年10月07日 14時00分57秒 | ゲゲゲの鬼太郎その愛
《前回までのあらすじ》
 得意の知能戦で無敵の鬼太郎少年にいどんだ凶悪妖怪ぬらりひょん。
 しかし、予想以上の鬼太郎の生命力に翻弄されてしまった彼は、ついに鬼太郎の必殺技「先祖流し」によって3万年前の旧石器時代に追放されてしまった……
 少なくとも200歳くらい年下のガキンチョの策にはまって完敗したぬらりひょんに、明日はあるのか!?


 話はまず、当時『ゲゲゲの鬼太郎』を中心として巻き起こった昭和の「第1次妖怪ブーム」から。

 水木しげるの「鬼太郎サーガ」のはじまりは、先年2008年にフジテレビの「ノイタミナ」でアニメ化されたこともある貸本版の『墓場鬼太郎』(1960~64年・全15話)です。それ以前の紙芝居時代(1950年代)に水木しげる、または彼以外の作家が描いていた鬼太郎物語もあったのですが、残念ながらそちらは現存していません。

 しかし、全国的に鬼太郎少年の物語が有名になる直接のきっかけとなったのは、「鬼太郎サーガ」第2のシリーズとなる講談社『週刊少年マガジン』連載版の『墓場の鬼太郎』(1965年8月~69年7月)と、その初アニメ化となる第1期『ゲゲゲの鬼太郎』(1968年1月~69年3月放送・モノクロ全65話)の大ヒットによる「第1次昭和妖怪ブーム」の爆発でした。少年マンガとアニメ化! 現代までに続いているヒットの法則ですよね~。

 ざっくり昭和の男子カルチャーの歴史を見てみますと、1960年代中盤の『ウルトラマン』メインの「第1次怪獣ブーム」、1960年代終盤~70年代前半の「第1次妖怪ブーム」、そして1970年代中盤の『仮面ライダー』『帰ってきたウルトラマン』などの「変身ブーム(第2次怪獣ブーム)」といった感じで、もれなく、こんな『長岡京エイリアン』をつづっている私そうだいの心をゆさぶる黄金の時代が続いていたわけなのです。どの時代にも私、生きてないんですけど。

 とにかく、この妖怪ブームによって江戸時代から日本人の心の隅っこにじめっと生息していた妖怪たちはあっという間にお茶の間のスターダムに引っぱり上げられ、それこそ「怪獣」や「改造人間」や、のちの「ポケモン」や「強そうな昆虫」とまったく同じポップな立ち位置に立たされることとなってしまったのです。照明でネバネバがかわくじゃねぇか。いい迷惑だよ~!


 さてここで扱いたいのは、「水木しげる作品」と、水木しげる以前の「伝承の世界を映像化した作品」、ブームの中でのそれぞれのぬらりひょんの違いです。


 まずは「水木しげる作品」での、ぬらりひょん。
 
 1967年10月に『マガジン』で展開された鬼太郎とぬらりひょん(feat.蛇骨婆)の激闘のもようはすでにふれた通りなのですが、ここでのぬらりひょんは、顔色ひとつ変えずに手製爆弾で住宅を爆破する前代未聞の凶悪妖怪に設定されていました。
 外見は江戸時代の妖怪画家・鳥山石燕えがく「ぬうりひょん」そっくりなのですが、ふだんは背広を着た一般の人間として5階建ての高級マンションに暮らしています。
 彼がどういった生活基盤を持っていたのかは語られていないのですが、常に持ち歩いていた100万円の札束のうち、ねずみ男にあげた1万円札がぬらりひょんの消滅後に単なる木の葉に変わってしまったことからも、彼がまっとうな手段で収入を得ていたということはなさそうです。つまり、ニセ金を作って人間を「だます」という能力が、彼の妖怪としての特殊技能だったというわけです。あとは悪事を考えついたり精巧な爆弾を作ったりする「知性」ですよね。
 くわえて原作の後半では、自分の右手に鬼太郎が取り憑いてしまったことに気づいていないぬらりひょんが、行きつけのパチンコ屋でいつものように玉が入らないことをいぶかしむ描写があることから、ギャンブルの世界である程度イカサマを操作できるような妖力(技術?)も彼は持ち合わせていたようです。福本伸行か!

 そして、『マガジン』版の連載と並行して放送が開始されたアニメ第1期『ゲゲゲの鬼太郎』ですが、『妖怪ぬらりひょん』の回は雑誌掲載からわずか半年後の1968年4月に第12話として放送されています。内容は原作をかなり忠実に映像化したものとなっていました。
 ところで、昨今「ぬらりひょんのパートナーと言えば!」と引き合いに出されることの多い、赤くてでかい顔の妖怪・朱の盤(しゅのぼん)なのですが、原作やアニメ第1期にはまだ登場していません。

 ここでぬらりひょんの記念すべき「初代声優」を演じたのは、ひよわそうな爺さんを演じさせたら天下一品の名優・槐柳二(さいかち りゅうじ 当時40歳)!
 槐さんといえば『元祖天才バカボン』のレレレのおじさん役として、聴いた人の誰もが腰砕けになってしまうヒョロヒョロとしたしわがれ声が有名なのですが、そんな彼が凶悪妖怪を演じるという意外性は、ぬらりひょんの外見と行動の不気味な違和感を的確についたキャスティングだったと思います。ただ、槐さんはあの『仮面ライダー』シリーズの記念すべき敵怪人第1号「蜘蛛男」も演じており、実は悪役としてのすごみも出せるんですよね。
 槐さん、ぬらりひょんとかレレレのおじさんをやってた時、40代だったんだ……これも特殊技能! 現在はアニメのお仕事はされていないようですが、お元気でしょうか?

 余談ですが、アニメ第1期『ゲゲゲの鬼太郎』といえば、のちにアニメ『ぬらりひょんの孫』シリーズでぬらりひょん役を演じることになる大塚周夫(おおつか ちかお 当時39歳)がねずみ男の初代声優を担当していることも見逃せませんね。大塚さんは続くアニメ第2期や『墓場鬼太郎』でもねずみ男を演じています。こう言っちゃあなんなんですが、大塚さんはケチな小悪党の役が最高なんだよなぁ!

 ともあれ、アニメ第1期でのぬらりひょんは原作に忠実であるがゆえに、特に語るべき追加情報はありません。1回のみの活躍でぬらりひょんは退場。
 ちなみに、1971~72年に放送されたアニメ第2期『ゲゲゲの鬼太郎』(全45話・こっちはカラー)は、制作スタッフもメインキャスティングも変わらない第1期の正当な続編にあたるため、3万年前に流されたっきりのぬらりひょんは復活するべくもありませんでした。無念……


 その一方で、水木しげる原作でない妖怪ブーム作品にも、ぬらりひょんはしっかり登場しています!
 『大怪獣ガメラ』や『大魔神』で有名な映画会社・大映が妖怪ものの実写映画化にいどんだ! それがあの「大映妖怪3部作」でした。

・『妖怪百物語』(1968年3月 監督・安田公義)
・『妖怪大戦争』(1968年12月 監督・黒田義之)
  ※鬼太郎サーガのエピソード『妖怪大戦争』や2005年の映画『妖怪大戦争』とはまったく関係がない
・『東海道お化け道中』(1969年3月 監督・安田公義と黒田義之の共同)
 すべての脚本は吉田哲郎

 これですねぇ~。公開時期を見ての通り、まさしく妖怪ブームにあてこんだ企画でございます。
 しかし、この3部作はただブームに乗ったというだけではなく、それまで日本の映画界に連綿と続いてきた『東海道四谷怪談』『番町皿屋敷』『怪談牡丹灯籠』などの「怪談時代劇」ものの流れをしっかりと継承したシリーズで、江戸時代を舞台にした完全な時代劇に仕上がっています。

 これらの作品では、クライマックスで必ず当時の特撮技術をフル活用したぬいぐるみだらけの百鬼夜行が跳梁跋扈するシーンが用意されていたのですが、そこのレギュラーメンバーに我らがぬらりひょん先生もエントリーされていたのです。やった!
 ところが、ここでのぬらりひょんは完全なモブの1匹であり、百鬼夜行のリーダーの座は「油すまし」ということに。なぜ?

 ここでぬらりひょんを演じたのはかぶりものをつけた子役で、金色っぽい豪華な着物を身にまとい、鳥山石燕の「ぬうりひょん」そのまんまの芸術的なにやけ顔をさらしてぶらぶら歩いています。ほんとに歩いてるだけ!
 つまり、「大映妖怪3部作」は水木版のぬらりひょん=凶悪妖怪の構図をまったく導入していない、江戸時代の「なにやってるのか全然わからない爺さん」イメージを守ったものになっているのです。


 このように、「変な頭と顔の爺ちゃん」「人をだます」「凶悪かも?」というパズルのピースがぽつぽつ集まってきた妖怪ぬらりひょん。いまだ「妖怪の親玉」というピースに着目した作品は出てきていないのですが、この後、ある1ピースが生まれたことによって、ついに「妖怪総大将ぬらりひょん」は現代に活躍する条件をととのえることとなります。

 機は熟した? 妖怪ブームの中でひょっこり出てくるぬらりひょん最後のピースについては、まったじっかい~。
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