ほんの手すさび手慰み。
不定期イラスト連載、第百二十七弾は「今昔見返り美人図」。
まったく個人的な話だが、
「見返り美人」には、ある種の思い入れがある。
小学生の僕は「切手集め」をしていた。
葉書や手紙を頻繁にやり取りしていた昭和の頃、
切手は今よりも身近な存在。
それを収集するのはポピュラーな趣味だった。
熱心なコレクターが大勢いて、
自慢のコレクションを見せ合ったり、交換したりした。
記念切手など希少価値(お値段)の高い逸品を所有するのはステータス。
欲しくてたまらなかったが、ついぞ入手できず仕舞いだった一つが、
「菱川師宣(ひしかわ・もろのぶ)」の肉筆画を元にした「見返り美人」。
一枚でも数千円、シートなら数万円もした高嶺の花だった。
ところで「菱川師宣」が傑作を描いた元禄当時、
お江戸に於ける美人とは、豊かな体と、ふくよかな顔。
顔が丸く、肌は薄い桜色、お目々パッチリ。
口が小さく、歯は粒が揃っていて白い事。
・・・そんな感じだったらしい。
やがて世の好みは変化し、
柳腰のほっそりした体と、細面、清楚な顔つきが「粋」とされた。
「美人の条件」は、時代や国、個人の好みによって異なる。
特に1990年代以降、インターネットの普及により、
ますます「多様」になったと言えるだろう。
映画やドラマ、雑誌など、マスメディアに登場して顔が知れた昔と違い、
ネットやSNSを通じて、美はあっと言う間に拡散する。
地方アイドル、市井小町、女優、アスリート、海外セレブ。
様々な美人さんを見る事ができる。
美の許容は広がり、認知も忘却もスピードが速くなり、
その基準も千差万別になった。
「美人とは何か?」
令和における定義は困難至極。
だが、個人的に「見返りポーズの良さ」は、
是非、入れておきたいと思う。
それは、僕にとって、手の届かない憧れの象徴なのかもしれない。
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