【ダイジェスト】臼杵陽:われわれはテロとの戦い方を間違えていないか
2015/12/19 に公開
http://www.videonews.com/
マル激トーク・オン・ディマンド 第767回(2015年12月19日)
われわれはテロとの戦い方を間違えていないか
ゲスト:臼杵陽氏(日本女子大学教授)
パリの同時多発テロに米カリフォルニア州の福祉施設における銃乱射事件と、イスラム国もしくはそのシンパによると見られるテロが相次いだことで、イスラム国が掲げる「グローバルジハード」や、先進国の住民がある日突然テロリストと化す「ホームグロウン・テロリスト(home-grown terrorist)」の脅威が、にわかに現実味を増してきている。確かにイスラム国はテロの戦法を変えたように見えるし、テロの形態も多様化しながら進化しているように見える。世界は先進国に住むわれわれも、常にテロの恐怖に怯えなければならない時代に入ったのだろうか。中東情勢やイスラム教に詳しい日本女子大学教授の臼杵陽氏は、現在のアメリカを中心とするいわゆる「対テロ戦争」の方法は、まったく間違っていると指摘する。イスラム過激派勢力によるテロがここまで大きな脅威となった背景には、1979年以降にアメリカが採用してきたイスラム圏に対する外交政策の破たんがある。その政策的な失敗のつけをイスラム諸国側に負わせ続けた結果、これまでイスラム諸国側では戦乱に次ぐ戦乱の中で未曾有の犠牲者を出し、しかも現在イスラム圏は底なしの混乱状態に陥っている。こうした怨念の中から生じているテロという行為を、単に軍事力によって抑え込むことができないのは自明だ。なぜならば、テロは軍事的に戦っても敵わない相手に対する弱者側の唯一の報復手段だからだ。欧米諸国は自分たちの国益のために中東地域に勝手な国境線を引き、民族的なまとまりや宗派的なまとまりを無視して、イスラム教徒たちを欧米の概念である「国民国家」の枠内にはめ込もうとした。特にアメリカは1979年にイランで発生したイスラム原理主義革命の拡散を恐れ、隣国イラクのサダム・フセインを支援することで、イランを抑え込もうとした。アメリカの支援を受けたフセイン政権は宿敵イランとの戦争状態に入り、この政策はイランの勢力拡大を抑え込むことには一定の効果はあった。しかし、早晩、フセインが暴走をはじめ、隣国のクウェイトに侵攻するまでになった。するとアメリカは今度は、湾岸戦争、イラク戦争の2度の戦争でイラクのフセイン政権を倒し、傀儡政権を設置してイラクの間接統治を試みようとした。しかし、過去の政策的な失敗を顧みないまま行う間接統治が、まともに機能するはずもなく、イラクは未曾有の混乱状態に陥った。また、その過程でアメリカが主導する空爆や掃討作戦などによって、一般市民の間におびただしい数の犠牲者を出すこととなり、これが一般市民の間にまでアメリカに対する激しい怨念を蓄積させる結果となった。そのようなイラク国内の混乱に乗じる形で登場したのが、現在のイスラム国だった。その意味で、イスラム国はアメリカの外交政策の矛盾の産物と言っても過言ではないかもしれない。しかし、アメリカも他の欧米諸国も、今のところイスラム国やそこから派生するテロを、また力で押さえ込もうとしている。アメリカの軍事力を以てすれば、イスラム国を抑え込むことは可能かもしれないが、それではまた新たな怨念を生み出すだけで、テロの無限連鎖が続くことは避けられない。この問題を解決するためには、アメリカをはじめとする欧米諸国は自らの外交政策の失敗を顧みた上で、拗れに拗れた中東との関係を根本から解きほぐすような政策転換を図る必要がある。・・・・特に日本はこれまで中東地域を侵略したり、植民したりした歴史がない、先進国の中では数少ない「手を汚していない」国だ。日本にしか果たせない役割があると臼杵氏は言う。アメリカの後を盲従するのではなく、いまこそ日本の積極的平和外交の本領を発揮すべき時ではないか。今世紀をテロの世紀としないための方策を、ゲストの臼杵陽氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
●辺野古埋め立て反対
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2015/12/19 に公開
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われわれはテロとの戦い方を間違えていないか
ゲスト:臼杵陽氏(日本女子大学教授)
パリの同時多発テロに米カリフォルニア州の福祉施設における銃乱射事件と、イスラム国もしくはそのシンパによると見られるテロが相次いだことで、イスラム国が掲げる「グローバルジハード」や、先進国の住民がある日突然テロリストと化す「ホームグロウン・テロリスト(home-grown terrorist)」の脅威が、にわかに現実味を増してきている。確かにイスラム国はテロの戦法を変えたように見えるし、テロの形態も多様化しながら進化しているように見える。世界は先進国に住むわれわれも、常にテロの恐怖に怯えなければならない時代に入ったのだろうか。中東情勢やイスラム教に詳しい日本女子大学教授の臼杵陽氏は、現在のアメリカを中心とするいわゆる「対テロ戦争」の方法は、まったく間違っていると指摘する。イスラム過激派勢力によるテロがここまで大きな脅威となった背景には、1979年以降にアメリカが採用してきたイスラム圏に対する外交政策の破たんがある。その政策的な失敗のつけをイスラム諸国側に負わせ続けた結果、これまでイスラム諸国側では戦乱に次ぐ戦乱の中で未曾有の犠牲者を出し、しかも現在イスラム圏は底なしの混乱状態に陥っている。こうした怨念の中から生じているテロという行為を、単に軍事力によって抑え込むことができないのは自明だ。なぜならば、テロは軍事的に戦っても敵わない相手に対する弱者側の唯一の報復手段だからだ。欧米諸国は自分たちの国益のために中東地域に勝手な国境線を引き、民族的なまとまりや宗派的なまとまりを無視して、イスラム教徒たちを欧米の概念である「国民国家」の枠内にはめ込もうとした。特にアメリカは1979年にイランで発生したイスラム原理主義革命の拡散を恐れ、隣国イラクのサダム・フセインを支援することで、イランを抑え込もうとした。アメリカの支援を受けたフセイン政権は宿敵イランとの戦争状態に入り、この政策はイランの勢力拡大を抑え込むことには一定の効果はあった。しかし、早晩、フセインが暴走をはじめ、隣国のクウェイトに侵攻するまでになった。するとアメリカは今度は、湾岸戦争、イラク戦争の2度の戦争でイラクのフセイン政権を倒し、傀儡政権を設置してイラクの間接統治を試みようとした。しかし、過去の政策的な失敗を顧みないまま行う間接統治が、まともに機能するはずもなく、イラクは未曾有の混乱状態に陥った。また、その過程でアメリカが主導する空爆や掃討作戦などによって、一般市民の間におびただしい数の犠牲者を出すこととなり、これが一般市民の間にまでアメリカに対する激しい怨念を蓄積させる結果となった。そのようなイラク国内の混乱に乗じる形で登場したのが、現在のイスラム国だった。その意味で、イスラム国はアメリカの外交政策の矛盾の産物と言っても過言ではないかもしれない。しかし、アメリカも他の欧米諸国も、今のところイスラム国やそこから派生するテロを、また力で押さえ込もうとしている。アメリカの軍事力を以てすれば、イスラム国を抑え込むことは可能かもしれないが、それではまた新たな怨念を生み出すだけで、テロの無限連鎖が続くことは避けられない。この問題を解決するためには、アメリカをはじめとする欧米諸国は自らの外交政策の失敗を顧みた上で、拗れに拗れた中東との関係を根本から解きほぐすような政策転換を図る必要がある。・・・・特に日本はこれまで中東地域を侵略したり、植民したりした歴史がない、先進国の中では数少ない「手を汚していない」国だ。日本にしか果たせない役割があると臼杵氏は言う。アメリカの後を盲従するのではなく、いまこそ日本の積極的平和外交の本領を発揮すべき時ではないか。今世紀をテロの世紀としないための方策を、ゲストの臼杵陽氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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