
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170620/k10011023601000.html
文部科学相 “萩生田副長官と局長面会時の文書存在”
松野文部科学大臣は、学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、萩生田官房副長官が文部科学省の局長と面会した際の発言をまとめたとされる文書が、省内で新たに見つかったことを明らかにしました。
学校法人「加計学園」の獣医学部の新設をめぐって、文部科学省は今月15日、追加調査の結果、「総理のご意向」などと記された14の文書の存在が確認できたことを明らかにしています。
こうした中、松野文部科学大臣は20日、閣議のあとの記者会見で、これらの文書とは別に、加計学園が獣医学部新設の事業者に選定される3か月前の去年10月に、萩生田官房副長官が文部科学省の局長と面会し、官邸や内閣府の考えを伝えた際の発言をまとめたとされる文書が省内で見つかったことを明らかにしました。
文書に記された内容について、松野大臣は、「10月21日に、高等教育局長が萩生田官房副長官に対し、国家戦略特区における獣医学部の新設問題の課題や調整状況について説明し、相談をしていた」と述べ、面会の事実を認めました。
そのうえで、松野大臣は、「確認された文書は、専門教育課の担当官が、高等教育局長から説明を受けて萩生田副長官の発言や高等教育局長が行った説明内容に、関係者から聴取した周辺情報等を補足して取りまとめた。高等教育局長の確認を受けておらず、萩生田副長官の発言ではないことも含まれているとの報告を受けている」と述べました。
さらに、松野大臣は、「萩生田副長官に確認したところ、総理が具体的な開学の時期を示したなどとする発言はしていないということだった。また、高等教育局長からも、副長官から指示があったということではないとの報告を受けている」と述べました。
新文書の内容は
文部科学省が20日、公表した新たな文書はNHKが独自に入手し、19日夜、その内容を報じました。
文書は、国家戦略特区で加計学園が獣医学部新設の事業者に選定される3か月前の去年10月21日、萩生田官房副長官が文部科学省の局長と面会し官邸や内閣府の考えを伝えた発言をまとめたとするものです。
NHKの取材でこの文書は省内の3つの部署のおよそ10人の職員にメールなどで共有され保管されていたことがわかっています。
文書には、萩生田官房副長官が「加計学園」の名前を挙げたうえで、内閣府、そして総理補佐官と相談した結果として、四国で獣医学部新設が認められるようにするため、ハイレベルな伝染病実験ができる研究施設や、既存の大学を上回る教授の数が必要とするなど、具体的な指示を出したと記されています。
そして、「官邸は絶対やると言っている」、「総理は平成30年4月開学とおしりを切っていた」などと文部科学省に具体的な時期を示して、新設を認めるよう求める発言をしたと記されています。
さらに、文書の後半には、「加計学園の事務局長を文部科学省の課長のところに行かせる」という発言があったと記されています。
新文書 全文
文部科学省が20日、公表した新たな文書の全文は以下のとおりです。
「10/21萩生田副長官ご発言概要」として以下の内容が書かれています。
○(11月にも国家戦略特区諮問会議で獣医学部新設を含む規制改革事項の決定がなされる可能性をお伝えし、)そう聞いている。
○内閣府や和泉総理補佐官と話した。(和泉補佐官が)農水省とも話し、以下3点で、畜産やペットの獣医師養成とは差別化できると判断した。
1.ライフサイエンスの観点で、ハイレベルな伝染病実験ができる研究施設を備えること。また、国際機関(国際獣疫事務局(OIE)?)が四国に設置することを評価している、と聞いたので、その評価していることを示すものを出してもらおうと思っている。
2.既存大学を上回る教授数(72名)とカリキュラムの中身を増やすこと。また、愛媛大学の応用生物化学と連携するとのこと。
3.四国は水産業が盛んであるので、魚病に特化した研究を行うとのこと。
○一方で、愛媛県は、ハイレベルな獣医師を養成されてもうれしくない、既存の獣医師も育成してほしい、と言っているので、2層構造にする。
○和泉補佐官からは、農水省は了解しているのに、文科省だけが怖じ気づいている、何が問題なのか整理してよく話を聞いてほしい、と言われた。官邸は絶対やると言っている。
○総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた。工期は24ヶ月でやる。今年11月には方針を決めたいとのことだった。
○そうなると平成29年3月に設置申請をする必要がある。「ハイレベルな教授陣」とはどういう人がいるのか、普通の獣医師しか育成できませんでした、となると問題。特区でやるべきと納得されるような光るものでないと。できなかったではすまない。ただ、そこは自信ありそうだった。
○何が問題なのか、書き出して欲しい。その上で、渡邊加計学園事務局長を浅野課長のところにいかせる。
○農水省が獣医師会押さえないとね。
新文書 その意味は
萩生田官房副長官が文部科学省の局長と面会し、官邸や内閣府の考えを伝えた発言をまとめたとするこの文書。
面会した日付は去年10月21日と記されています。
事業者が加計学園に決まる3か月前で、国家戦略特区諮問会議が獣医学部新設を決定する11月9日の20日近く前でした。
しかし、文書には、この時点で「加計学園」の名前が記されていました。
そして、開学の時期を「平成30年4月」と区切り、文部科学省に早く新設を認めるよう求める内容となっています。
また、文書には、萩生田官房副長官が文部科学省に対して、今治市のある四国で獣医学部を新設する条件をクリアするための具体的なアドバイスをしたと記されていました。
さらに、文書の後半には、「加計学園の事務局長を文部科学省の課長のところに行かせる」という発言があったと記されています。
NHKの取材では、実際に、この6日後、加計学園の事務局長が文部科学省の担当職員と会っていたことが明らかになっています。
「説明には不自然な点が多い」
文部科学省が20日、存在を認めた新たな文書について現役の職員からは、「説明には不自然な点が多く、事実をしっかり解明すべきだ」という声があがっています。
職員の1人は、「萩生田官房副長官に面会した局長や文書を作成した職員はいずれも記憶があいまいで文書の内容は不正確だと説明しているというが、私たちは内容を忘れないため記録に残しており、事実と受け止めるのが当然だ。文部科学省は当時の経緯について事実を解明し、納得できる説明をするべきだ」と話しています。
また、別の職員は「省内では加計学園ありきで話が進んでいたことは、共通認識だったので、文書の内容に驚きはない。萩生田官房副長官の発言以外がメモに書かれているという説明は不自然で理解できず、再び国民からの批判を招きかねないものだ」と話しています。
官房長官「問題あれば説明責任果たす」
菅官房長官は閣議のあとの記者会見で、「萩生田官房副長官からは『文書のような発言はなかった』と報告を受けている。今回の獣医学部の新設は、特区の指定、規制改革項目の追加、事業者の選定のいずれのプロセスも国家戦略特区法等の関係法令に基づいて適切に実施されており、圧力が働いたり、行政がゆがめられたことは一切ない」と述べました。
そのうえで、菅官房長官は、記者団から、政府内で意見の違いがあることを踏まえて第三者による調査が必要ではないかと指摘されたのに対し、「それぞれの調査は大臣が責任を持って行い、その結果を国会でも述べている。新たに説明すべき問題があればそのつど真摯(しんし)に説明責任を果たしていきたい」と述べました。
また菅官房長官は、記者団が、この問題で安倍総理大臣が改めて記者会見を行う必要性はないか質問したのに対し、「安倍総理大臣は全く関与していないと明快に申し上げているので、それはない」と述べました。
地方創生相「内閣府の問題ではない」
国家戦略特区を担当している山本地方創生担当大臣は、閣議のあとの記者会見で、「きのう新しい文書という報道がなされたことは承知しているが、資料は文部科学省から入手したという内容だったと聞いているので内閣府の問題ではないと考えている」と述べました。
そのうえで、山本大臣は、内閣府で再調査などを行う考えがあるか質問されたのに対し、「文書をよく見て、それから検討する」と述べました。
一方、山本大臣は、先の、文部科学省の追加調査で見つかった萩生田副長官の関与を指摘するメールをめぐり、先の国会で、「文部科学省から内閣府に出向してきた職員が陰に隠れて本省に注進していた」などと述べたことについて、「言いすぎだったと反省している。職員には電話で『ちょっと言いすぎたので申し訳なかった』ということは申し上げた」と述べました。
自民 二階氏「いろいろな場面で説明を」
自民党の二階幹事長は、記者会見で、「関係者が、まだ理解が深まっていないと判断すれば、重ねて、いろいろな場面で説明すればいい。われわれから『説明せよ』とか言うつもりはない」と述べました。
民進 大串氏「どちらかがうそ」
民進党の大串政務調査会長は記者会見で、「文部科学省の文書があったということと、萩生田官房副長官の『書かれているようなことはなかった』ということは、どちらかがうそをついているということだ。方法はただ1つで、しかるべき人々に国会の場に来てもらい、予算委員会の集中審議や文部科学委員会などを開いて、証人喚問も実施し、真実をはっきりさせるべきだ。これすら拒むのであれば、安倍総理大臣が『丁寧な説明をする』と言ったことは、うそだったということになる」と述べました。
