★政府与党の無策ぶりにあきれている国民が多いことは街の声を聴けばわかる。選挙を控える与野党の衆院議員はオリンピック(五輪)で沸く東京から離れ地元に帰ると、国民の政権への怒りと疲弊が限界に達していることがわかるはずだ。ある議員は「09年の政権交代の時の雰囲気すらある」と警戒する。あの時は麻生政権。その麻生太郎が副総理兼財務相でいまだ君臨し続けている政権だということもあながち無関係ではないだろう。前首相・安倍晋三は「悪夢のような民主党政権」を繰り返し国民に訴え人気を博してきたが「民主党政権の後の10年がもっとひどかった」が国民の実感だ。

★あれほど全国遊説を続けていた安倍も嫌疑不十分となっていた「桜を見る会」前夜祭疑惑について東京第1検察審査会が「公選法の不起訴は不当」の議決をしたことで表舞台に立ちにくくなった。五輪の開会式の欠席は「菅否定」なのかもしれないが「安倍・桜」問題は衆院選挙にも影響が出るだろう。与党政局はいわゆる安倍を軸とした3Aと首相・菅義偉の官邸周辺、幹事長・二階俊博の3つの思惑がぶつかる状況になりつつある。今後は政治的な発言が続くだろうが、与党の空気は「菅降ろし」に他ならない。

★1日、公明党代表・山口那津男は宮崎市内で講演し、ワクチン接種について「現場の実情と距離があったのでは、その志が満たされない場合がある」と政権に注文を付けているが、これも菅批判だ。気を付けなくてはならないのは国民の怒りに乗じて与党内で菅降ろしが始まるのだろうが、それは与党の権力闘争でしかない。与党の思惑と国民の実情と距離があったのでは同根といえる。それでは五輪に沸き、ワクチンの接種がはかどれば政権に人気が戻ってくるとの考えとさして変わらない。国民を軽く見てはいけない。(K)※敬称略