自民党の岸田文雄新総裁が誕生した。競争を重視する新自由主義からの転換などの路線修正を打ち出すが、最終的に安倍晋三前首相や二階俊博幹事長ら「安倍・菅政治」の中心メンバーから支持を受け、しがらみを排して改革に取り組むのは容易ではない。中・低所得者層への分配強化など、政策面では重なる部分もある立憲民主党は次期衆院選を見据え「表紙を変えただけ。自民党は変われない」(枝野幸男代表)と批判を強める。(川田篤志、我那覇圭)
◆アベノミクスは「経済を成長させた」
「新しい資本主義など、未来にかかわる重大な課題が山積している。今日から全力で走り始める」
岸田氏は総裁選勝利の直後、党所属議員を前に目指す社会像の一端を披露し、実現への決意を示した。
総裁選では、新型コロナウイルス禍を受けて格差が拡大していると明言した。中間層の底上げが必要として、子育て世帯向けの直接給付など分配の強化を公約に明記。小泉純一郎首相の時代以降、自助や民間主導を重視した政策が弱肉強食を助長したとの批判を踏まえ、新自由主義が社会の分断を招いたとの問題意識も明かした。十分な経済対策を条件に挙げた上で、菅政権が否定的だったロックダウン(都市封鎖)法制の整備は「将来的に必要」と言及した。
そうした発言とは裏腹に、第2次安倍政権以降の経済政策「アベノミクス」は「経済を成長させた」と評価。9年近い「安倍・菅政治」の否定と受け取られるのを避ける狙いとみられるが、改革に取り組む「本気度」には疑問符がつく。
岸田氏は2回の投票が行われた会場で「総裁選は終わった。ノーサイドだ」と呼び掛けた。自身が率いる岸田派は50人に満たず、ラグビーでは試合終了と同時に敵味方でなくなることを意味する言葉から、他派閥への配慮がにじんだ。
◆立民「説明しない政治」決別で差別化
枝野氏は29日、岸田氏の新総裁選出を受け記者団に「安倍・菅政権と何が違うのか、説明するのが最初だ」と注文を付けた。
新自由主義からの転換や中間層への手厚い支援など、政策面で岸田氏と共通点が少なくない立民。だが、アベノミクスを「株価が上がっただけで国民生活は豊かになっていない」と批判し「失敗だ」と断じる。
コロナ対策を含め、時限的な消費税率5%への引き下げや、年収1000万円程度以下を対象にした所得税免除を掲げる立場から、枝野氏は岸田氏の発信に関し「抽象的な言葉は言っているが、具体的に何をするのか示していない」と指摘する。コロナ対策でも、経済との両立を意識した発言が目立つ岸田氏に対し、より感染抑止を重視。ロックダウン法制も「検討はするべきだ」(幹部)と前向きだ。
総裁選の期間中、立民は次期衆院選で掲げる各分野の政策を相次いで発表し、目指す社会像を示してきた。これとは別に、最も差別化が図れるとみるのは、国民の不信感を助長している「説明しない政治」からの決別だ。
枝野氏は、第2次安倍政権下で起きた森友・加計学園や「桜を見る会」の問題など、一連の疑惑の再調査や検証に後ろ向きな岸田氏の姿勢に照準を合わせ、こう強調している。
「ウソやごまかしの政治ではなく、まっとうな政治を期待している人がいる」
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