ロシアの侵攻が激しさを増すなか、ウクライナを追われた避難民が8日に200万人を突破した。欧州連合(EU)は避難民に一時的な滞在許可を与える特例措置を初めて決定し、2015年の欧州難民危機後とは対照的に積極的な受け入れ姿勢を示した。将来的な避難民は500万人とも700万人とも推計されており、寛容な政策を維持できるかEUの真価が問われる。(ポーランド南東部プシェミシル・谷悠己、ベルリン・蜘手美鶴)
数十分置きに到着する大型バスの前に、荷物を抱えた避難民らが列を作る。ウクライナ国境に近いプシェミシル市内の大型量販店の跡地は、越境直後の避難民が短期滞在する簡易宿泊所と欧州各国へ向かうバスの出発拠点となっている。
ボランティアリーダーのラシェルさんは8日、「避難民の数は日に日に増えている」と疲労感をあらわにした。前夜は2000人以上が宿泊。深夜でも避難者の求めに対応するため睡眠時間を削っているという。
◆中東・アフリカとは別「ウクライナは欧州人」
避難民の主要目的地の1つがEUの経済大国ドイツだ。独政府は入国者数を4万人超と発表しているが、押し寄せる避難民をベルリン中央駅で待つボランティアらは「明らかにそれ以上」と口をそろえる。
EUの一時保護措置は、最長3年の滞在を許可し、就労や教育の権利を保障する。シリア内戦などで中東・アフリカからの難民、移民が急増した15年以降、EU各国は受け入れに消極的だった。今回破格の厚遇を決定した背景には「ウクライナ人は欧州人」(ルドリアン仏外相)という同胞意識がある。
ただ、避難民の滞在が長引くにつれて住居確保や言葉の問題が出てくる。15年の難民危機後に訪独したシリア人看護師アリさん(32)は「死に物狂いでドイツ語を学び社会になじむよう努力した。ウクライナ人も語学ができないと仕事を得るのは難しいだろう」と自身の体験になぞらえる。
◆いつまで「移民に寛容」でいられるか…
ベルリン市民のガントスさん(39)は「ドイツは移民に寛容なイメージが強いかもしれないが、必ずしもそうではない。難民危機の時のように国が二分されるのではないか」と懸念する。
一時保護措置も一部の中東欧諸国が反対したため、各国が独自措置を取れる「抜け道」も用意された。反対国の中には120万人超の避難民が入国しているポーランドも含まれ、避難民の滞在が長期化した国が負担増から抑圧的になる可能性も指摘される。
非政府組織(NGO)「欧州難民協議会」のキャサリン・ウーラード理事長は声明で「避難民が欧州を漂流する事態になりかねない」として、加盟国で受け入れ数を適正分配する仕組みの必要性を訴える。
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